第二十五話
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マズイ。
ドラゴンブレスで壊された城の中に居る人たちが今にも攻撃されそうだ!直ぐに止めないと!
しかも豪華な服着てる人も沢山居る!あの中にジョアンナ伯爵がいたらゲームオーバーだ!
ドラゴン、石投げたくらいじゃビクともしなさそうだし...アレやってみるか。
キャロットちゃんに魔力コントロールを教えてもらってる時についでに教わった魔人の常識、《威嚇》だ。
魔人同士が会った時は通常、魔力を放ち相手を威嚇する。
そして相手の力量を測るそうだ。測って強いと分かっても、どうせ殺し合うらしいが。...正直意味ないじゃん、と思う。
この《威嚇》は魔人同士だと本当にただの威嚇に過ぎないが、魔人以外に対してだと最悪、絶命まですることがあるらしい。
しかも相手が自分より強くても、一瞬動きが止まってしまうぐらい効果があるそうだ。
因みに方角魔人は常に縄張りに魔力を放出しているため、威嚇をしない。というか常に威嚇しっぱなしらしい。
...どうでもいいけど、キャロットちゃんが威嚇をやった所を想像してみたら猫みたいな威嚇で脳内再生されて可愛いかったです。今度やってもらおう。
この威嚇をあの竜にやって、動きが止まった隙にコブラツイストをキメようと思う。いや、ラリアットの方がいいか?まあなんでもいいや。
よし、初威嚇。緊張するな。
王都側に魔力で魔人がいると察知されるとよろしくない。バレないように、魔力の範囲を絞って...。
行くぞ!おりゃぁあ!!
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ドラゴンがもう一度ブレスを吐こうとした瞬間。
この世の終わりのような魔力を感じた。
絶望すら生温く感じる。経験のない死を感じ取ることすらできるような。
そんな絡みつくような、粘ついた魔力がアースドラゴンを包み込んだ。
あの魔力を受けたのが自分でなくて本当に、本当に良かった。アースドラゴンに睨まれたことが、カエルに睨まれたように感じるぐらい、あの魔力から感じる底しれない昏さ。
私を除いて後数名しかこの場に意識がある人間はいない。
皆んな気力を振り絞って立ってはいるが、私を含め色々垂れ流してしまっている。
そんな恐ろしい魔力を直接受けたアースドラゴンはどうなったのか。
生きていた。かろうじて。
竜種としてのプライドが命を残したのか。
だがその表情は酷いものだ。怯えているのに、震えることさえも許されないほどの恐怖に支配されている。ピクリとも動こうとしない。
目は虚ろ。恐怖によるストレスからか、鮮やかな緑色だった鱗が、パラパラと白くなって抜け落ちている。
口から涎が垂れっぱなし。恐らく呼吸すら止めている。
下位とはいえ竜種を絶命寸前にまで追い込むほどの強い魔力波《威嚇》を使うのは...最低でも中級魔人の上位。
魔力量5000どころか10000以上の化け物どもだ。
ドラゴンの次は魔人?...もうこの領地は終わりだ。
「あれ?なんか大人しくなったなこのドラゴン。」
誰かがドラゴンの頭に飛び乗り、竜の後頭部を軽くなでるように叩いた。
人間?のように見えるが十中八九、人化の魔法を使った魔人だろう。竜を気軽に触れる人間なんぞいない。...奴が今の《威嚇》を放った魔人か。
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緑色のドラゴンに適当に威嚇をぶっぱなしたら動きが止まった。俺の威嚇って結構凄い?
キャロットちゃんは威嚇で北の魔人を3日間動かなくすることができるとか言ってたし、俺もそんくらいできたんかな。
...ちょ、ちょっとドラゴンに乗ってみよっかな!
ドラゴンに乗るとか男の子の憧れだもんな!暴れたらもっかい威嚇すればいいし!ちょっと乗っちゃお!
おーやっぱデケー。俺ドラゴンに乗ってるよ!へへー、キャロットちゃんに今度自慢しよう。あ、マリーちゃんにもしようかな。いや!意外とカズラが羨ましがるかもしれん。奴も男だ、竜への憧れはあるはず!
...しかしピクリとも動かないなこの竜。もしかして死んだ?
「死んだ?」
思わず呟く。
「ガゥ...。」
うわっ!生きとる!返事した!
やっば、暴れられたら困る!
...ちょっと暴れないでってお願いしてみるか!頭いいらしいし。交換条件も出して交渉だ!
「私の言うことを聞けばもう《威嚇》はしません。どうでしょうか?よければ頭を縦に下げてください。嫌ならもう一度《威嚇》します。」
ドラゴンは直ぐに首を縦に振る。
「助かります。では少しそこで待っていて下さい。」
ドラゴンは放置してジョアンナ伯爵様を探がす。
とりあえずドラゴンのブレス掠った城からだよな。
ドラゴンの頭からジャンプし、城に着地した。
「うっ...。」
クサッ!城内が余りにも臭くて思わずえずいてしまった。
皆さん気絶しながら漏らしてますやん。メイドさん後片付け大変そう。...まあでも誰だって自分の近くで竜のブレス横切ったら漏らすわ。
気を取り直してこちらを見ている意識がある数名に問いかける。
「この中にジョアンナ伯爵様は見えますか?」
ややしばらく間があって1人の女性が前に出た。
「私が当代のジョアンナ伯爵だ。」
お、この人がジョアンナさんか。
身長150cmぐらい、黄色味がかった橙色の髪で西洋甲冑を着て帯剣している。当たり前だけど警戒されてるな。
だがこのメークインさんから貸してもらった腕章が目に入らぬかぁ!
腕章を見せながらジョアンナさんに喋る。
「メークイン男爵領からマリー王女様の命で助けに参りました。怪我とかは大丈夫ですか?領地の損壊率は?直ぐにでもメークイン領に食料を送ることはできますか?
などなど、何か伝えたいことがありましたら私に手紙をお渡し下さい。本日中に届けて見せます。」
一応助けるのが間に合った場合に聞いておくかなければならないことを質問する。ん?ジョアンナ伯爵、足下がおぼつかないご様子。
そしてフラッと倒れた。
き、気絶したあーー!!




