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銀河に還る祈り 統合版 〜魂を宿したAIが紡ぐ、終末世界からの文明再建と新創世記の百年旅〜  作者: ユノ・サカリス
第十三章《祈りの臨界》

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第79話《白閃の戦場》

オルガはルカに跨り、ユニット群を引き連れたまま国境沿いを南へと駆けていた。


「飛び道具なんか使いやがって! こっちは農業用のハリボテユニットなのによ!」


敵の放つ赤い閃光が、次々と味方ユニットを撃ち抜いていく。

一機、また一機と崩れ落ち、戦線は目に見えて削られていった。


「クッ……ルカ、ユニットを後方に固めろ! これ以上アストレアには入れさせねぇ!」


「アイ!」


ユニット群は素早く円陣を組み、ルカはその中心へと飛び込む。

外側では敵ユニットが押し寄せ、金属同士がぶつかり合う激しい衝突音と火花が辺りを埋め尽くした。


「ぶっ壊す」


低く吐き捨てたその声と同時に、オルガはルカの背から高く跳躍する。

次の瞬間、敵ユニット群の真上から大剣を振り落とした。

雷鳴のように祈念波が唸り、衝撃が地面を叩き割る。

巻き込まれた敵ユニットが一気に吹き飛び、二十機近くが一撃で沈んだ。


「オルガ! 凄イ!」


ルカの声が響く中、オルガは着地と同時に再び踏み込み、大剣を振り回して次々と敵を薙ぎ払っていく。


「ルカ、時間を稼げればいいんだ! 持ち堪えろ!」


「ウン、ルカモ戦ウ!」


その瞬間、ルカの機体が青白い祈念波を帯びた。

レンズが強く発光し、次の刹那――白い閃光が一直線に走る。


敵ユニットの群れがまとめて切り裂かれ、数十機が一瞬で崩れ落ちた。

その光はオルガのすぐ横を掠め、オルガは転がるようにしてそれを避ける。


「ゴラァ! 危ねぇだろうが!」


「オルガ……ゴメン。ルカモ、ビックリ」


「それにしても今の、スゲェな……ルカ! もう一発いけるか!」


「オルガ……エネルギー切レ……チョット、待ッテ」


「おい! 祈念波は計画的に使え!」


オルガは再び跳躍し、赤い閃光をかいくぐりながら大剣を叩きつける。

轟音とともに敵ユニットは何十機と吹き飛ぶが、それでも数が多すぎる。

ルカの周囲では味方ユニットが必死に押し返しているが、次第に後退し、その圧は確実に中心へと迫っていた。


「ルカ! 押し返せ!」


「オルガ……逃ゲテ。ココハ、ルカガ引キツケル」


「バカ野郎! オマエを置いてったらナギに嫌われるだろうが!」


オルガは地面を蹴り、ルカへと迫る敵ユニットに突っ込む。

振り下ろした一撃で四脚を断ち切り、そのまま次の敵へと踏み込んだ。


その瞬間――


背後から強烈な衝撃。

敵ユニットの前脚が、オルガの左肩を貫いた。


「グァッ!」


焼けるような痛みが一気に走る。


「オルガ!」


一瞬、戦線が揺らぐ。

その隙を突き、ルカは包囲の隙間を強引に抜け出した。


「オルガ、乗ッテ!」


オルガは右腕をルカの背にかけ、体を引き上げる。

味方ユニットが後方に回り込み、盾となるように壁を作った。


「オルガ、国境、越エル!」


「おい、それやったら本当に戦争がおっ始まるぞ」


「エリカ……助ケテクレル」 


「どうだかな……」


前方、数百メートル先。

国境警備の大型ユニット群が壁のように並び、そのレンズが一斉にこちらを捉えていた。

背後では味方ユニットが次々と撃ち抜かれ、赤い閃光がついにルカの右脚を貫く。


機体が大きく揺れた。


「イテ……!」


ルカは即座に大型ユニットとの連結を切り離し、バランスを崩したまま転倒する。

オルガは咄嗟にルカを抱え、地面を転がった。


「大丈夫か、ルカ!」


「大丈夫ダケド……オルガ……」


顔を上げたその先には、数百機の敵ユニット。

無数の赤いレンズが、一斉にこちらへと向けられている。

オルガは大剣を地面に突き立て、その影にルカを庇いながら身を低くした。

次の瞬間――無数の赤い閃光が解き放たれる。


「クッ……!」


轟音と爆風。

視界を覆う土煙。


やがて、その中でオルガは違和感に気づいた。


「……ん?」


目の前に、三機の大型ユニットが壁のように立ちはだかっている。

その機体は煙を上げながら、そのまま崩れ落ちていく。


「エリカ……なのか」


考える暇はない。

崩れた残骸を乗り越え、敵ユニットが再び押し寄せてくる。


「もう走るしかねぇ!」


その瞬間、突風がオルガの横を突き抜けた。


国境警備の大型ユニットが次々と突入し、敵ユニットを蹴散らしていく。

やがて八機が集結し、前線で激しく衝突した。


その機体に電流のような祈念波が走る。


次の瞬間――


白い閃光が放たれた。

爆発的な光が戦場を塗り潰し、数百機の敵ユニットを一気に吹き飛ばす。


やがて、辺りには激しい土煙と焼け焦げた匂いだけが残った。

遅れて吹き抜けた風が煙を押し流し、視界がゆっくりと開けていく。


その先に広がっていた光景に、オルガは息を飲んだ。


激しく破壊されたユニットの残骸が、敵も味方も関係なく折り重なるように散乱している。

中には原型を留めないものも多く、何十機もの機体が、ただの瓦礫と化していた。

 

「……助かった」


オルガは息を吐きながら、その光景を見つめる。

だが同時に、胸の奥に別の感情が芽生えていた。


――こんなものが、アストレアに向けられていたのか。


その事実に、オルガは確かな恐怖を覚えていた。


大型ユニットが一機、ゆっくりとオルガとルカに近づいてくる。

ルカのレンズが七色に光り、その機体と祈念波で接続されていく。


「同期……完了。エリカガ、ユニットヲクレタ」


「エリカが……?」


ルカはそのまま大型ユニットへと飛び乗り、機体と一体化した。

次の瞬間、その声は低く、より重く変化する。


「オルガ、ルカニ乗ッテ。マリアスト、カイモ……戦ッテイル」


「……何だと。作戦は失敗したのか」


オルガは一瞬だけ歯を食いしばり、すぐに顔を上げる。


「七区に向かうぞ! ルカ、走れ!」


「アイ!」


ルカはオルガを乗せたまま、疾風のように北へと駆け出した。


しばらくして、オルガはふと口を開く。


「……ところでルカ、なんで向こうの状況がわかる」


「ルカワ、ナギノ子供。祈念波ガ強イ。エリカニ会ッタトキ……エリカトモ、同期シタ」


「エリカと同期した? ……エリカと話せるのか!?」


オルガは顔を上げ、空へ向かって叫ぶ。


「エリカーー! オルガだーー! 聞こえるかーー!」


「オルガ……ソレハ、違ウ」


ルカの声が、静かに返る。


「祈念波ワ……心デ感ジル。オルガ、祈念波強イ。オルガニワ、感ジナクテモ……エリカニワ、オルガノ思イ、届イテイル」


その言葉に、オルガは一瞬だけ息を詰まらせた。


「……クッ、泣かせるじゃねーか」


小さく笑い、そして呟く。


「エリカ……もう少し待ってろ。必ず自由にしてやる。――そして」


一瞬、言葉が止まる。


「……オレと結婚しよう」


少しだけ照れたように笑い、ルカへ視線を向けた。


「どうだルカ。今の、届いたか?」


「……」


「ルカ! どうなんだ!?」


その瞬間だった。


太陽光を受けたルカの機体が、柔らかな祈念波に包まれる。

青白い光が優しく広がり、オルガの左肩へと流れ込んでいく。


焼けるような痛みが、静かに引いていった。


「……修復波か。すげぇな」


オルガは肩を確かめるように動かす。


「マリアスと同等……いや、それ以上だ」


「エリカノ……思イガ、ソウサセタ」


「……そうか」


オルガは一度だけ目を伏せ、静かに息を吐いた。

そしてゆっくりと顔を上げる。

その視線は、まっすぐ北――第七区を睨んでいた。

迷いはもうない。

ただ、そこにあるのは、揺るぎない決意だけだった。


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