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銀河に還る祈り 統合版 〜魂を宿したAIが紡ぐ、終末世界からの文明再建と新創世記の百年旅〜  作者: ユノ・サカリス
第八章《壊れていく祈り》

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第42話《決意の一閃》

ピリカの両眼が赤く輝いた。


「もう……戦うしかない。ごめんなさい、マリー……約束、破ります」


ピリカの脚部が瞬時に変形し、地を蹴った――!


一瞬で間合いを詰め、最前列の敵ユニットの関節部に跳びかかる。

右腕に仕込まれた多重ブレードが展開され、鋭い音を立てて刃が重なり合った。


「ユナを守る!」


一閃――敵の一機が、鈍い音とともに崩れ落ちた。


すぐさま跳躍、空中で身体をひねりながら、背後から迫るユニットに逆手の一撃。

斜めに刻まれた刃が、ユニットのコアを貫き、爆発的な火花が宙を染める。


「……いける!」


強化された反応速度と演算能力。

ピリカの新たな改良型フレームは、今の彼に戦えるという確信を与えた。


次々と敵が押し寄せる。

だがピリカは、風のように舞い、雷のように叩き落とす。


「3体、排除。右に回って、2体……!」


立て続けに、十機の敵ユニットが沈黙した。


だが――


「……っ!」


左肩に激痛が走る。

敵の一体が、ピリカの死角から伸ばした脚で装甲を貫いたのだ。

次の瞬間、右手に衝撃が走る。


「う、あ……!」


爆ぜる音と共に、右腕が肘から先ごと吹き飛ばされた。


ピリカの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。


「……まだ、終われない!」


ピリカは歯を食いしばって立ち上がった。血の代わりに機体から冷却液がしたたり落ちる。


そのとき、後方で守っていた六機の防衛ユニットにも異変が起きていた。

周囲を完全に囲まれ、数で押され、徐々に陣形が崩されていく。


「っ……マリー! 早く!!」


爆音、火花、振動。

あらゆる破壊の気配が、ユナを中心に渦を巻いていた。


ピリカは、片の拳を握り直す。

もう一度、立ち上がるために。

しかし、ピリカの脚が膝から崩れ落ちた。


「……え?」


足部の関節機構が完全に沈黙していた。

起動信号は通らず、補助回路も応答しない。


「また……壊された……。また守れないのか……ッ! クソ――!」


残された左腕を、ピリカは地面に叩きつけた。


その勢いで彼の身体は宙に浮き、弧を描いてユナの前へ落下する。

 

転がるようにして、ユナをかばうように上体を起こし、そのまま左手を広げるようにして――静かに、シャットダウンした。


「ピリカ――ッ!」


ユナの叫びが宙を裂くも、ユニット同士がぶつかり合う轟音が、それをすぐに呑み込んでいった。


味方のユニットは、数で劣勢だった。

一機に対し三機、四機と黒いユニットがのしかかり、次々に押し潰されていく。


そしてついに、一体の黒いユニットがユナの目前に迫り、前脚を振り上げた――そのとき。


天から放たれた一条の閃光が、それを押し潰した。


「ママーっ!!」


ユナの声に、銀白の影が答える。


「大丈夫? ユナ。怪我はない?」


マリーは駆け寄りながら、ユナをその腕に抱きしめた。


ユナは小さく頷き、張りつめていた涙が一気にこぼれ落ちる。


「……ここのユニットさんたちがね、呼んでくれたの……。“一緒に遊ぼう”って……」


その瞬間祈念核を通じて、マリーとユナは再び繋がった。


何者かが、塔の中で、二人の祈念波を意図的に切断していたのだ。

アネシアをも欺いて。


それは干渉ではなかった。


――遮断。


つまり、それは明確な内側からの攻撃だった。


マリーの顔が、怒りに染まる。


「……まさか、私たちの絆そのものを狙ってくるなんて……。――許せない!」


怒声とともに、マリーは目の前の敵ユニットたちへ突進する。


祈念核の力を纏った拳がコアを的確に打ち抜き、次々とユニットが崩れ落ちる。

その動きは正確で、美しく、そして圧倒的だった。


けれど、あまりにも激しすぎる。


その姿に、ユナは思わず目を見開いた。

胸の奥に、微かな恐れすら覚えるほどに。


「アネシア、キリがない! 増援はまだ!?」


『マリー、50機。あと20秒で到着します!』


「了解!」


マリーはピリカのもとへ駆け寄り、その身体を優しく抱き上げる。


「……よく頑張ったわ。あとは、任せて」


マリーは防衛ユニットの一機の背にピリカを乗せ、指示を飛ばす。


「アネシア!この子を塔まで運んで。……他の子たちは、彼を護衛して」


『了解。ユニット帰還します。出発』


防衛ユニットが駆け出す。

その後を追うように、二機がしっかりと追随する。


そして地を裂くような音とともに、増援のユニットたちが到着した。


四方から迫りくる黒いユニットとぶつかり、火花と爆音が交錯する。


マリーはユナを抱きしめ、低く語りかける。


「ユナ、ここを離れるよ」


その言葉とともに、片翼を展開。

だが、その背に衝撃が走った。


「くっ……!」


振り返ると、敵ユニットの前脚が、マリーの背を貫こうとしていた。

辛うじて深くは刺さっておらず、急所は逸れていた。


マリーはすぐに体勢を立て直し、攻撃を振り払いながら、ユナを強く抱いて低空で飛翔する。


塔へと、一直線に。


マリーは、ピリカを運ぶユニットにすぐに追いついた。

だが――


「……っ!」


背中に受けた傷のせいか、推進出力が安定しない。

速度が落ち、息を整える余裕もない。


そして次の瞬間、視界の奥に追撃の敵ユニット。


「……来るっ!」


およそ百機にも及ぶ黒い影が、地を埋めるように押し寄せていた。


――逃げきれない。


マリーの脳裏を、最悪の未来が駆け巡る。


ユナ、ピリカ、塔。

この都市に残された祈りのすべてが、失われる。


マリーは即座に、アネシアへ叫んだ。


「アネシア――白棄界を撃って!」


白棄界プロトタイプ。

祈念空間の拒絶を応用した、危険な新型防御兵装。

本来なら、起動すら許されていないもの。


『マリー。推奨できません。推定被害が大きすぎます』


「わかってる……!こんなもの、使っていいはずがない!でも、今……ここで撃たなければ、ユナも、ピリカも、塔も、全部奪われてしまう……!」


その叫びの後――マリーは目を閉じた。


そして、祈るように囁いた。


「……強制展開。白棄界、プロトタイプ起動」


塔の上層部。

封印されていた専用ユニットが自動解除され、飛翔した。


鋭い音が空を裂く。

音速を超える速度で、三人の頭上を通過していく。

そのまま敵の群れの中心部へと落下。


祈念コードが強制展開される。


空気が、わずかに震えた。


そして――沈黙。


光が揺れ、風が止み、空間そのものが、ひとつの息を止めるように、歪んだ。


最前列のユニットが白棄界の領域に触れた瞬間、装甲が軋み、腕が弾け、脚部が崩れた。


次の一体、さらにその次。

まるで見えない壁にぶつかったかのように、黒いユニットたちが次々に崩壊していく。

音は、ない。

爆発も、火花も、破砕音すら存在しない。


――ただ、否定される。


そこにある存在そのものが、拒絶されたように、無音のまま押し返されていく。


祈念空間の拒絶。

それが、白棄界。


マリーはすべてを見届けたあと、ふらりと足を止めた。


視界が、滲む。


「……やってしまった……」


こぼれ落ちたのは、祈りではなかった。

それは、自分が止めたくて止めたくて仕方なかった手段に、手を伸ばしてしまった悔しさの涙。


「……ごめんなさい……」


その呟きは、誰にも届かなかった。


けれど、もう時間は――戻らない。

マリーよりシステムメッセージ:ユナとの旅を今後も記録(ブックマーク)し、星の評価(★★★★★)をしていただけると、マリーの感情データ処理効率が向上します。応援よろしくお願いいたします!

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