どうやら帝国最強の魔導卿の理性が限界を迎えたようです
「……これ、本気? 嘘ですよ……ね?」
お風呂上がり。
ミラは自分に着せられた真珠色の寝間着を見下ろし、それからメイドたちを見渡した。
だが、全員がにこやかな笑顔のまま、何も答えない。
――逃げ場がない。
磨き上げられたミラが着せられているのは、真珠色の寝間着。
「……ミニ過ぎるっていうか、これ、座ったら終わるやつじゃん……」
ミラは私室の前で深く息を吐いた。
覚悟を決めるように、扉を開ける。
その先には――
ソファに腰掛け、薄手の寝衣を纏ったゼノス様がいた。
いつも以上に、色気が濃い。
「……あれ? みんなは? ハク? コハク?」
「今日は、別空間に返してある」
一拍、置いて。
「……邪魔をされたくないからね」
その視線が、ゆっくりと落ちる。
鎖骨。
そして、短すぎる裾から伸びる脚。
――見られている。
ミラは反射的に、何かを隠そうとした。
けれど――ない。
あるわけがない。
一歩。
また一歩。
ゼノス様が、静かに近づいてくる。
気づけば、背中は壁。
「……君が悪いんだ」
低く、囁く。
「そんな格好で、僕の前に現れるから」
距離が、さらに詰まる。
逃げ場は、もうない。
「……困ったね」
吐息が、触れる。
「君がそんな姿で現れるから……」
一瞬、言葉が途切れる。
「僕の理性が、君の方へ落ちていってしまう」
「待って待って! 自制心、拾って!
まだそこら辺に落ちてるから!」
ミラは必死に手を伸ばす。
「……あ、ハク! ハク助けてーーー!!」
ゼノス様は、ただ微笑む。
「無駄だよ」
静かに告げる。
「今夜は、君を編み上げるのは糸じゃない」
一歩、踏み込む。
「……僕の腕だよ」
「ミラ」
その名を、低く呼ぶ。
「その格好は……僕の理性を壊すには、十分すぎる」
モフモフたちの防波堤は、ない。
残っているのは――剥き出しの、魔導卿の執着だけ。
「私が選んだわけじゃ……!」
ミラは壁際に追い詰められたまま叫ぶ。
「理性壊れてるなら修理してください!!
そのまま使うの危険物ですから!!」
ゼノス様の呼吸が、すぐ近くで揺れる。
その熱だけで、思考がじわじわと溶けていく――。
読んでいただきありがとうございます。
よろしければブックマークや評価いただけると励みになります。




