表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切り騎士と堕ちた王女の反逆戦記 ~世界を敵に回しても、この熱(リンク)だけは離さない~  作者: レオン・クラフト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/30

第8話:白銀の再会、琥珀の嫉妬

視界が、真っ赤に焼けるようだった。


 それは私の怒りではない。

 私の右手に触れているレオの、肺の奥からせり上がるような、猛烈な「嫉妬」の色だ。


「……手を放せ、セバスチャン卿。貴様に彼女の指先一つ触れる権利はない」


 レオの声は、地を這う獣の唸り声に似ていた。

 カイル・セバスチャン。

 かつて、私と婚約を交わし、レオと共に剣の修行に励んでいた、太陽のような騎士。

 白銀の鎧を纏った彼は、困惑と悲しみが混ざり合った瞳で私を見つめている。


「エララ様、震えておいでだ。……レオ、君は彼女を脅しているのか? それとも、あの『呪い』で縛り付けているのか?」


 カイルが一歩踏み出す。

 その瞬間、私の右腕の銀の鎖が、ギリギリと音を立てるように疼いた。

 レオの心臓が、激痛に悲鳴を上げている。

 カイルが「正論」を口にするたび、レオの自己嫌悪と独占欲が、毒となって私の中に流れ込んでくるのだ。


「救いに来た、と言ったわね。カイル」


 私は、レオの腕に縋り付いたまま、声を絞り出した。

 感覚が混ざり合っているせいで、自分の声なのか、レオの絶望が形になったものなのか分からなくなる。


「ええ。皇帝陛下には既に、貴女を『帝国の保護下』に置くよう上奏してあります。ハスカール公爵の非道な振る舞いは、既に騎士団の間でも問題視されている。……エララ様、今すぐこちらへ」


 カイルが、その白く清潔な手を私に差し出す。

 一瞬、その手を取れば、この冷たい公爵邸からも、感覚同期の苦痛からも解放されるのではないかという誘惑が頭をよぎった。


 ――その瞬間。

 レオの心臓が、一瞬だけ「止まった」かのように静まり返った。

 絶望。

 (ああ、やはり彼女も、光を望むのか)

 言葉にならない彼の嗚咽が、私の脳裏に直接響く。


「……嫌よ」


 私はレオの手を、自らの両手で強く握りしめた。


「エララ様……?」


「カイル、貴方の言う『保護』とは何? レトラを滅ぼした帝国の、厚意という名の監視下に置かれること? ……それこそが、私の望まない『地獄』だわ」


 レオの指先が、ビクリと震えた。

 驚愕。そして、狂おしいほどの歓喜。

 彼の中から溢れ出した熱が、私の冷え切った体を内側から温めていく。

 レオは私を、壊してしまいそうなほど強く引き寄せ、カイルを冷たく射抜いた。


「聞いたか、セバスチャン。……彼女は、私の傍にいることを選んだ」

「……洗脳でもされているのか、レオ! 君が彼女に何をしたか、私は知っているんだぞ! あの滅亡の夜、君が王を――」


「そこまでだ」


 冷ややかな声が、ホールの喧騒を切り裂いた。

 一斉に、人々がその場に跪く。

 玉座からゆっくりと立ち上がり、こちらへ歩み寄ってくる人影。

 皇帝。


 私はレオの腕の中で、息を潜めた。

 先ほど視た「黒い影」が、皇帝の足元から這い出し、会場全体を飲み込もうとしているのが見える。

 ……予言の力は、まだ不安定だ。けれど、この男がもたらす未来が「破滅」であることだけは、銀の瞳が告げている。


「仲睦まじいことだ、ハスカール公爵。……亡国の王女をそこまで愛でるとは、余も予想だにしなかった」


 皇帝は、獲物を定める蛇のような瞳で私を凝視した。


「エララ・フォン・レトラ。……余の騎士であるセバスチャンが、貴女の『救済』を強く望んでいる。だが、公爵もまた貴女を離したくないようだ。……面白い」


 皇帝は、薄く笑いながら、私に手を差し出した。


「ならば、このワルツの旋律に合わせて、答えを出そうではないか。……エララ、余と共に踊れ。貴女の『銀の瞳』が何を視ているのか、直接確かめさせてもらおう」


 凍りつくような沈黙。

 皇帝と踊る。それは、私の魂を直接差し出すに等しい。

 レオの全身から、殺意を通り越した「恐怖」が伝わってくる。

 (行くな、エララ。……行かせない。死んでも、離さない)

 リンクした神経が、彼の叫びで焼け付きそうだ。


 けれど、私はレオの震える手を、そっと解いた。


「……大丈夫よ、レオ」


 私は彼にだけ聞こえる声で囁き、皇帝の手を取った。

 その瞬間、カイルの背後に視えていた「黒い影」が、より色濃く、実体を持って揺らめいた。


 ――それは、カイル自身が抱える「歪んだ正義」の正体だった。


(カイル、貴方は……私を救いたいわけじゃないのね?)


 楽団が、不穏な短調の旋律を奏で始める。

 私は皇帝の手に引かれ、レオの絶望的な視線に見送られながら、毒蛇の舞踏会ダンスへと足を踏み出した。

カイルの登場により、物語はさらなる混迷へ。

エララが選んだのは、かつての初恋相手の「光」ではなく、自分を裏切ったはずのレオの「熱」でした。

しかし、その代償として、彼女は帝国の支配者との危険すぎるワルツを踊ることに……。


カイルの背後に揺らめく「黒い影」の正体とは?

そして、感覚が同期した状態で皇帝と踊るエララは、レオに何を伝えてしまうのか。


次話、第9話「断罪のワルツ、銀の覚醒」

舞踏会の中心で、ついにエララの「銀の瞳」が真実を暴き出します。


「レオの嫉妬が重すぎて最高……!」「カイル君の裏がありそうな感じがゾクゾクする」

そう思っていただけましたら、ぜひブックマークや【☆☆☆☆☆】の評価で、この物語を支えていただけると嬉しいです!

皆様の応援が、エララとレオを地獄から救い出す力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ