表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切り騎士と堕ちた王女の反逆戦記 ~世界を敵に回しても、この熱(リンク)だけは離さない~  作者: レオン・クラフト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/30

第23話:反逆の号砲、二人の戦場

雪原の向こうから響く地鳴りは、帝国の傲慢そのものだった。


 地平線を塗り潰す黒い軍勢。数万の歩兵、重装騎兵、そして空を覆う魔導兵。

 かつてレトロ王国を滅ぼした「鉄の濁流」が、今再び、一人の王女と一人の裏切り者を飲み込もうとしている。


「……数え切れないな。私一人の首に、これほどの兵を割くとは」


 レオが低く笑い、剣を抜く。

 その左腕の袖は破れ、そこには私と分け合った「銀の半龍」が、夜明けの光を吸い込んで白銀に脈動していた。

 リンクした神経が、彼の高揚を私に伝える。

 ドクン、ドクン。

 それはかつての自己犠牲の悲鳴ではない。獲物を前にした、冷徹で、かつ狂おしいほどの歓喜だ。


「一人ではありません。……私も、貴方の一部なのだから」


 私はレオの右側に立ち、彼の手首をそっと握った。

 私の右腕にも、同じ龍の紋章が刻まれている。

 熱い。

 彼が剣を握りしめる力強さ、雪を踏みしめる筋肉の緊張、そして私を「絶対に生かして返す」という猛烈な執着が、私自身の意志のように脳を焼く。


「……来るぞ。舌を噛むなよ、エララ」


 先陣を切った重装騎兵が、怒涛の勢いで雪を跳ね上げた。

 咆哮と鉄の擦れる音。

 レオが一歩踏み出す。

 その瞬間、私の銀の瞳が、全方位の戦場を「視た」。


(レオ、十時方向から魔法矢ボルト! そのまま三歩前、右から来る騎兵の喉元を薙いで!)


 私の思考が、レオの脳内に閃光となって走る。

 彼は迷わなかった。予言を確認する間さえ置かず、私の言葉を「真実」として身体を預ける。


 閃――。


 レオが振るった一撃は、もはや人の域を越えていた。

 銀の半龍が咆哮し、剣筋から放たれた白銀の衝撃波が、真正面の騎兵隊を馬ごと吹き飛ばした。

 飛び散る鉄屑と、舞い上がる赤。


「……あ、っ……!」


 レオが斬った感覚が、私の腕にそのままフィードバックされる。

 肉を断つ感触、骨を砕く衝撃。

 痛い。けれど、それを上回る「万能感」が私を支配していた。

 二人の瞳が銀色に燃え上がり、戦場のすべてが、私たちが動かす「盤上」へと成り下がる。


(次は背後! 潜んでいた魔導兵が発動するわ! 三、二、一――今!)


 レオが空いた左手で虚空を掴む。

 リンクを通じて私の「魔力」がレオへと流れ込み、彼の手から巨大な銀の障壁が展開された。

 降り注ぐ爆炎の雨が、私たちの前で虚しく霧散する。


「……素晴らしい。これなら、国の一つや二つ、本当に堕とせそうだ」


 レオが返り血を浴びた顔で、不敵に笑う。

 彼は私を引き寄せ、戦場の真ん中だというのに、その額に自分の額を重ねた。

 共有される熱。

 数万の敵に囲まれている恐怖など、この密着した「二人だけの世界」の前では塵に等しい。


「エララ、貴様は私の『眼』だ。……私は貴様の『剣』だ」


「ええ。……世界中を敵に回しても、私たちは独りじゃない」


 私たちは、敵の渦中へと突き進んだ。

 レオが振るう剣は、私が視る「死の隙間」を完璧にトレースし、敵の包囲網を紙細工のように切り裂いていく。

 銀色の閃光が雪原を走るたび、帝国の誇る精鋭たちが次々と泥の中に沈む。

 

 絶望していたはずの戦場が、いつの間にか私たちの「独壇場」へと変わっていた。


 だが。

 本陣の巨大な天幕が割れ、そこから一筋の「黒い光」が放たれた瞬間、レオの身体が強張った。

 リンクした神経に、今までにない冷徹な、そして「死」そのもののような重圧がのしかかる。


 現れたのは、皇帝直属の魔導処刑部隊――「黒き太陽」。

 そして、その中心で鎮座しているのは、カイルでも、ヴォルグでもない。


 全身を黄金の甲冑で包み、レオの「銀の龍」と対をなすような、不気味な「黄金の瞳」を持つ男。


「……ようやく見つけたぞ。我が不出来な従弟いとこと、その玩具を」


 男が言葉を発した瞬間、レオの腕の紋章が、恐怖に震えるように赤く変色し始めた。


(レオ……!?)


 レオの心臓が、痛いほど激しく脈打つ。

 リンクを通じて、私に流れ込んできたのは――レオの記憶の奥底に封印されていた、絶対的な「敗北」の記憶だった。

感覚を共有し、圧倒的な力で軍勢を蹂躙するレオとエララ。

しかし、その無双を打ち砕くように現れたのは、レオの血縁者にして、皇帝の真の代行者。

黄金の瞳を持つ男の登場により、レオの腕の紋章に異変が起こります。


「二人で一つ」になった絆は、果たしてこの「血の呪縛」さえも超えられるのか。

物語は、いよいよ第1部の最大にして最後の壁にぶつかります。


次話、第24話「黄金の支配者、血脈の檻」

レオの隠された出自、そして「銀の龍」と「黄金の瞳」の忌まわしき関係が明らかになります。


「二人の無双シーンに痺れた!」「新しい強敵の登場にワクワクする!」

と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、感想をお寄せください!

皆様の応援が、二人の反逆をさらに熱く燃え上がらせます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ