重ならない想い6
「くれはさんが諦めなければ必ず見つかりますよ」
「ありがとうございます」
山南さんに言われると、不思議と大丈夫な気になれる。
「それじゃあ私、部屋に戻りますね」
そう言って立ち上がろうと腰を浮かせた瞬間、呼び止められて再び腰を下ろした。
「ひとつ、聞いてもいいですか?」
口元に手を添えると、小さく咳払いをした。
「今度、あなたくらいの年頃の女性に贈り物をしようと思っているのですが、どういった物がいいと思いますか?」
例の恋人の存在が一気に濃くなった。
「その人は、山南さんの好きな人ですか?」
遠慮がちにそう聞いた。
「ええ、まあ」
頬が赤くなるとまではいかないけれど、少なからずその表情は照れているのが分かる。
「羨ましいです、そういう人がいて」
照れ臭そうに笑った顔が、どこにでもいる年頃の男子といった感じで、その笑顔からは到底人を切るような人間には思えない。
「何と言う方なんですか?」
「明里と言う女性です」
ぼんやりとしか分からなかった歴史が、くっきりとした事実になった。
「綺麗な名前ですね」
山南さんは自分の事のように目を細めた。
「明里さんは何色が好きなんですか?」
「確か、赤や橙といった明るい色が好みだと言っていました」
「そうなんですね。あの、この前原田さんに匂い袋を買って頂いたんです。なんて言うか、付き合わせたお礼にと言って。私は、白色に小さな花の模様が入っている物にしたんですけど、それで、匂い袋なんてどうですか?」
「なるほど」
腕を組みそう言った。
「自分がもらって良かったっていうのもあるんですけど、それが好きな人からだと、香るたびに幸せになるというか、顔が浮かぶというか。なかなか会えなくても、いつも一緒にいるような気持ちになれると言いますか——」
そこまで言うと、山南さんがふふっと笑ったのが分かった。
「え?」
「いえ、くれはさんがものすごく嬉しそうに話すものですから」
「あっ、いや……」
一瞬でも沖田さんの顔が思い浮かんだ事はもちろん言わないけれど、きっとだらしない顔をしていたのだろう。
「それでは今度、匂い袋を見に行ってきます」
「はい、お役に立てて良かったです」
明里さんの話をしたのはほんの少しだけれど、彼女の事を大切に想っている事がすごく伝わってきた。
いずれ訪れる山南さんの最期の日、それは事実で、それが運命なのだろうけれど、彼女の気持ちを考えると、正直たまらなくなる。




