強がり、嫉妬5
「お疲れ様です」
「着替えてるの?」
「はい、雨に濡れてしまったので」
着替え終えて顔を出すと、刀を置いた沖田さんも、隊服を脱いで着替えているところだった。
「朝からずっとですね」
結んでいた髪の毛をほどき、それを手ぬぐいで拭きながら言った。
片側に寄せ、そこでもう一度結ぶ。
「そう言えばさっき、近藤さんが探してたよ」
「分かりました。ありがとうございます」
立ち上がり急いで部屋を出た。
近藤さんの部屋の前まで行くと、かけるよりも先に、後ろから声をかけられた。
「くれはさん」
「あ、近藤さん」
「雨の中買い物大変だったろう」
「お気遣いありがとうございます。その、私は平気なのですが、頼まれていた物なんですけど、この雨では濡れてしまうと思いまして、急ぎではないとおっしゃってたので後日改めてでもいいですか?」
「ああ。機転を利かせてくれてすまんな、ありがとう」
「いえ。それで、私に何か?」
「とりあえず、部屋に入りなさい」
言われるがままに通されると、一旦背中を向け、すぐにこちらに向き直った。
「この饅頭、君にと思ってね」
近藤さんは、わざわざ包みをほどいて見せてくれた。それは、現代でも見た事のある形で、丸くて白い、小さめの饅頭だった。
「いいんですか?」
「もちろんだよ。さ、受け取りなさい」
「ありがとうございます。後でいただきますね」
「ああ、ゆっくり食べなさない。それと、総司に取られないようにな」
冗談なのか本気なのか、声が笑っている。
近藤さんはああ言ってくれたけれど、せっかくなら沖田さんと一緒にいただこう。甘い物が好きな彼なら、絶対に喜んでくれるはずだ。
足取りも軽く部屋の前まで戻り、声をかけながら襖を開いた。けれどそこに彼の姿はなく、刀もなくなっていた。帰ってきたばかりで、またどこかへ出かけたのだろうか。隊服はきちんと畳まれている。仕事でないとすれば——考えたくはないけれど、真っ先に考えてしまう。あの日、四条河原町で沖田さんと一緒にいた女性の事が頭を過った。
力なく襖を閉め、踵を返した。思い出したかのように台所へ行くと、いつもの場所にかごは戻され、野菜もきちんと並べられていた。




