第58話:叛逆の血雷と、壊れた操り人形
「消えちゃえ! 『純真なる光』!!」
「消し飛べェェッ!! 『叛逆の血雷』!!」
無邪気な少年の笑顔と、血に飢えた狂犬の哄笑。
円卓第三位の放つ『街を焼き尽くす純白の閃光』と、第十一位の放つ『全てを叩き斬る極大の血雷』が、王都の空の中心で真っ向から激突した。
ズガァァァァァァァァァァァァンッ!!!!
雷鳴と閃光が交錯し、凄まじい衝撃波が広場のガラスというガラスを粉砕する。
純白の光が、血雷を飲み込もうと迫る。魔力の絶対量では、パーシヴァルの放つ光がモルドレッドの血雷を圧倒していた。
このままでは、押し潰される。誰もがそう直感した。
だが。
「……あ、れ?」
パーシヴァルの虚無の瞳が、初めて僅かな揺らぎを見せた。
彼の放つ神聖な光は、教団の術式によって組み上げられた、一切の迷いがない完璧なものだった。完璧すぎるがゆえに、あまりにも『単調』だったのだ。
ただ与えられた命令通りに敵を消し去ろうとするだけの、機械的な暴力。
対するモルドレッドの血雷は違った。
自身の筋肉の断裂すら厭わず、相手を叩き割るという怒りとエゴを剥き出しにした、不格好で生々しい『執念の塊』。
「……なんで? 僕の光の方が、ずっと綺麗で強いはずなのに……っ!」
パーシヴァルの顔に、初めて焦燥の色が浮かぶ。
「オラァァァァァァァッ!!!!」
モルドレッドが、自らの腕の骨が軋むのも構わず、大剣をさらに押し込む。
赤黒い血雷の牙が、完璧なはずの純白の光の壁を噛み砕き、一直線にパーシヴァルの小さな身体へと迫る。
作られた狂信など、己のハラワタから絞り出したエゴの前には、ただの薄っぺらい張りボテに過ぎない。
「僕の光が……喰われ、る……?」
「――おねんねの時間だ、空っぽの操り人形がァッ!!」
ズバァァァァァァァァァッ!!!!
極大の血雷を纏ったギザギザの大剣が、パーシヴァルの純白の魔力を完全に両断し、その小さな身体を上空から地上へと容赦なく叩き落とした。
ドゴォォォォンッ!!
広場の石畳に、巨大なクレーターが穿たれる。
もうもうと立ち込める粉塵の中。そこには、純白の服を焦がし、血を流して完全に意識を失っているパーシヴァルの姿があった。
「……ハァッ、ハァッ……ハハッ! ざまぁみろ、クソガキが……」
空中で限界を迎えたモルドレッドもまた、大剣を手放し、そのまま糸が切れたように地上へと落下していく。
「モルドレッド!!」
すかさず動いたベリンダが、大盾を放り出し、落下してくる血まみれのモルドレッドの巨体を両腕でガッチリと受け止めた。
「……重たいわよ、この狂犬」
「……うるせえ、ゴリラ女……。ネズミの掃除は、済んだぜ……」
モルドレッドはそれだけ言い残すと、ニヤリと笑って気絶した。
時を同じくして、ガラハッドとパーシヴァルを失った巨大なキメラと、白装束の狂信者たちは、統率を失いその場に崩れ落ちるように沈黙していった。
静寂が戻った中央大広場。
そこには、円卓の騎士という強大な本物を打ち倒し、民衆の命を護り抜いた、泥だらけの偽物たちの姿があった。
「……終わったな」
時計塔の最下層から広場へと降りてきたアッシュとエレンが、気絶したパーシヴァルとモルドレッドを見下ろす。
「ええ。……でも、アッシュ。ガラハッドも、このパーシヴァルも……戦っていて、ひどく不気味だったわ」
エレンが、倒れた純白の騎士たちを見て、眉間にシワを寄せる。
「ああ。まるで自分の意志がねえみたいだった。……何かに『操られてる』ような、気色の悪い目だったぜ」
なぜ、絶対の忠誠を誓うはずの円卓の騎士が、あれほど異常な教団の狂気に染まっていたのか。
その奥底に蠢くドス黒い『違和感』を王都の空に色濃く残しつつ、偽物の太陽たちによる王都防衛戦は、不格好な完全勝利をもって幕を閉じるのだった。
第58話、お読みいただきありがとうございます。
作られた狂信のもろさを、己のエゴで喰い破るモルドレッド!
広場の防衛戦、ここに決着です。
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