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第22話:廃墟都市の死闘と、いびつな三位一体

「ギャハハハハッ!! 飛べ飛べェ!!」


 灰色の廃墟都市を爆走する、巨大な移動要塞『ガウェインの鉄靴』。

 その甲板の上で、モルドレッドの凶悪な笑い声が響き渡る。


 四方八方の廃墟から、要塞のキャタピラや装甲に群がり、這い上がってくる無数の死霊兵(アンデッド)たち。

 モルドレッドはギザギザの大剣をバッティングセンターのように振り回し、這い上がってきた端から死者たちの胴体をカチ割り、空の彼方へホームランのように弾き飛ばしていた。


「モルドレッド! 遊び半分で大振りするな、隙だらけよ!!」


 エレンの鋭い叱責が飛ぶ。

 彼女の白銀の細剣レイピアが、モルドレッドの死角から飛びかかろうとした屍食鬼(グール)の眉間を、正確無比な細い線画の軌道で貫き、甲板から蹴り落とす。


 狂犬の『圧倒的な暴力()』と、従騎士の『完璧な精密動作()』。

 本来なら絶対に交わるはずのない二つの剣技が。移動要塞の上という極限の防衛戦において、奇妙なパズルのようにガッチリと噛み合い始めていた。


 だが、敵は腐るほどいる死者の街(ネクロポリス)

 要塞の前方にある巨大な崩れかけた時計塔から、数十体の重装アンデッドが、進行ルート目掛けて一斉に飛び降りてきたのだ。


「チッ、上から束になって来やがった! エレン、捌き切れるか!?」

「無理よ! 私の剣では重装甲ごと貫通はできないわ!」


 エレンが歯を食いしばった、その時。


「――どけ、エレン!!」


 要塞の炉心室(ボイラー・ルーム)から、真っ黒な煤と油にまみれて飛び出してきたアッシュが、右腕の『黒陽シリンダー』をギリギリと鳴らしながら甲板を蹴った。


(……モルドレッドが敵の陣形をかき乱し、エレンが隙を作る。なら、俺の役目は……!!)


 アッシュは、空から降ってくる重装アンデッドの群れを見上げる。

 以前の彼なら、ここで闇雲に熱を噴き出して、自滅していただろう。だが今は違う。王都の裏側で、二人の規格外の師匠から叩き込まれた、熱を一点に束ねる確かな『(スキル)』がある。


「おい狂犬!! そいつらを一箇所にまとめろ!!」

「あァ!? 誰に指図してやがる!! ……が、面白ェ!! 纏めてミンチにしてやるよォ!」


 アッシュの意図を本能で察したモルドレッドが、巨大な大剣を渾身の力で横薙ぎに一閃する。

 その凄まじい風圧と質量で、空中の重装アンデッドたちが『一つの巨大な鉄と骨の塊』へと、強引に押し集められた。


「エレン!!」

「……ッ、野蛮人共が!!」


 エレンが瞬時に踏み込み、その『塊』の関節部分――装甲の隙間目掛けて、目にも留まらぬレイピアの連続刺突(数発の楔)を正確に打ち込む。

 装甲の結合部が完全に削がれ、アンデッドの塊が空中で完全に無防備な状態ホールドになった。


 モルドレッドの暴力が敵を束ね、エレンの技術がその装甲を剥がす。

 それは、白亜の王都では決して並び立つことのなかった、この三人だからこそ成立する、泥臭くも完璧な『お膳立て(アシスト)』。


「……貰ったぜッ!!」


 アッシュが、要塞の煙突を蹴って宙へ跳んだ。

 右腕に極限まで圧縮された、致死量の黄金の熱。

 二人が作ってくれた『的』のド真ん中へ、アッシュは大剣を構え、全ての排熱弁を全開にして振り下ろした。


「『蒸気の牙(スチーム・ファング)』ッ!!!」


 ――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!


 空中で、巨大な黄金の爆発が弾け飛んだ。

 アッシュの剣の先端から放たれた極太の高圧蒸気が、束ねられた重装アンデッドたちを文字通り『粉微塵』に粉砕し、灰色の廃墟都市の上空に、美しい黄金の火の粉の雨を降らせる。


「シューゥゥゥゥ……!」


 強烈な反動で甲板に着地したアッシュは、黒煙を上げるシリンダーを誇らしげに掲げた。


「ギャハハハハッ!! やりやがった! ド派手な花火じゃねェか!!」

「……全く。要塞の甲板まで焦がす気ですか、この馬鹿二人は」


 大爆笑するモルドレッドと、胃の辺りを押さえながらも、どこか誇らしげに口角を上げるエレン。

 ガラムの操る移動要塞は、三人のいびつで最高な『三位一体』の連携によって死者の群れを蹴散らしながら、魔王軍の支配域を猛スピードで蹂躙していく。


 だが、この痛快な爆走の先に待っているのは、勝利の美酒ではない。

 廃墟都市を抜けた彼らの視界は、やがて空の色すら淀む猛毒の湿地帯――悪意と冒涜に満ちた『腐海の森(ふかいのもり)』へと、ゆっくりと呑み込まれていくのだった。

第22話、お読みいただきありがとうございます。

王都ではあり得なかった、3人の連携!


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