百三十五.少年ジャンプ
ギャルのミチュリんとかいう女はレジスタンス活動に俺達を加えたいようで勧誘してきた。するとムセンが不思議そうな表情をして言った。
「イシハラさん、レジスタンスとは何でしょうか?」
ムセンはどうやらレジスタンスを知らないようだ。そういえばこいつはほとんど文明らしい文明に触れていない宇宙パイロットっていう設定だったな。
俺はウィキペディアから引用したような感じで簡略的に説明した。ちなみに直ぐにスマホで検索する癖をつけると記憶力の低下になるから気を付けろ、面倒くさい時はしょうがない。
「──成程、権力に抵抗運動を示す勢力ですか。独裁制度を敷いている以上……当然、抗う人達が出るものですよね」
「そーそー、あーしもこの子達も実はその一員でさー。同志をマジめっちゃ募集してんの!」
「それで? そのレジスタンスに入れば俺達の問題がどう解決するんだ?」
「んー……なんつーかー……なんかあんじゃん? なんだっけ? ほら王様とかに会えるやつ! その権利がもらえたりすんの! 大会に出て上位に入れば!」
「「???」」
ギャルの言葉にムセンと猫娘は難しい顔をして首をかしげる。仕方あるまい、説明が下手すぎて何言ってんのかわからんのだろう。
「んーダメだー、あーしこう見えて勉強嫌いだから難しい言葉とか説明とか苦手なんだよねー」
「安心しろ、どう見てもそうだ」
「ナツイにゃん翻訳してニャ! 一を聞いて百を理解するナツイにゃんなら今ので理解できたニャよね?」
「エアさん……いくらイシハラさんでも今の説明では……」
つまりギャルが言いたいのはこういう事だろう。
さっき女児が言っていた大会というワードから察するに、この国では定期的に何らかの大会が開催されている。それに勝って上位に食い込めば【底辺職】から【上級国民】へとその職業はランクアップができる。そして、王への謁見も可能になる。予想するにそれ以外も特典があり、何らかの意見通しや嘆願も許可される。
俺達がその大会でその権利を得れば、シューズ達に接触する機会を作れるどころかシューズに下った刑罰すらも無効にできる可能性があるとか何かそんな感じだろ。
「そーそー! ナっちんマジヤバい! 天才じゃん!?」
「本当に理解してたニャ!? 凄すぎて逆に怖いニャ!?」
「だが、それが本当だとして俺達がレジスタンスに入る理由にはならん。普通に俺達だけで大会に出ればいいだけの話だ」
「んー、まぁそーなんだけどさー……ナッちん達はこの国に来たばっかでエントリーとかそーゆーのやり方わかんないっしょ? それにもぅまともに外歩けないかもしんないし」
「……確かにそうかもしれニャいニャ……」
「それはあーし達のせいでもあるからさ、お詫びっつーかー……助け合いの精神でいくべきっしょ! って思ったんだよねー。だからナッちん達も入ってよ!」
ふむ、確かにレジスタンスの人間であれば様々な地域に密偵などを潜伏させているだろうし情報収集はお手のものだろう。それに入れば情報共有も簡単に出来て非常に捗るのではないのだろうか。
「いいだろう、それで? どうせ面接とかあるんだろ? 入ってやるから案内しろ」
「やりぃ! あーしらの本拠地はこの町を出てすぐの……あれ? なんだっけ? 拠点の名前」
「話が進まないからそこの女児、変わって説明してくれ」
「え……と、『コショウ古城』っていう廃墟の地下にみんな隠れて暮らしてて……そこにリーダーがいますのでまずは話してみて下さい」
「それそれ! コショウ少々!」
初めからこの女児に説明させておけばよかったと思いながら準備を進める。これから天下一武道会的なテコ入れ間延び展開が始まるかと思うとうんざりするが、同時に期待もできる。その大会に参戦して優勝してしまえば【シューズの解放】という一同の願いも手っ取り早く解決するかもしれん。国の法に則っているのだから国家間のいさかいの火種にもならんだろう。王道に正面衝突するより裏技的で非常に捗る。
誤解のないように言っておくが、俺は少年ジャンプの大会編は好きだ。なんたって心は少年ジャンプだからな。
その後、宿の主人にマントを人数分貰いこそこそ隠れながらヤンキー達と合流して町を出た。予想通りにヤンキーはトラブルを起こしていた。が、シャベリューがちゃんと荷車を手に入れていたので問題はない。ヤンキーに何があったのかはめっちゃどうでもいいので記さない。この先もその物語が語られる事は決してないだろう。
「いや語れや!!」
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〈朽ちた古城〉
「ここがあーしらの拠点の……あれ? 名称なんだっけナッちん」
「『味噌を一杯』」
「違いますよ! コショウ少々……じゃなくてコショウ古城です!」
「ぁぁぁ……儂は塩さえあれば別にいぃがのぅ……」
大所帯となり、カオスを究めた荷車から降りる。ガキを含めると十人を越えるだけあって全員が好き勝手喚くとやかましいったらありゃしない。
街道を避けながらたどり着いたのは荒野に取り残された城だった。かつてはここも人が住み、なんかしらの歴史があったのだろうと一瞬思ったが俺には関係ないので切り捨てる。
城の扉の前まで行くとギャルが先陣を切るかのように手をあげ大声で叫んだ。
「おーいっ! あーしだよー! 合言葉なんだっけ? 『ゴマを少々』?」
見張りらしき人間が城のボロボロになっているのこぎり型回廊の隙間から顔を覗かせる。さっきから味噌やら塩やらゴマやらコショウやらを聞いてラーメンが食べたくなってきた。
「『拓けゴマ』だよ……まったく、アンタは何回言っても覚えないんだからねぇ……それで? そっちの子らは何だぃ?」
ラーメンに想いを馳せていると、結構な高さにいたであろう見張りがいつの間にかギャルの前にいた。ラーメンの事を考えていたとはいえどうやって降りたのかわからんかった。中々やるな。
「ミチュリん、面倒は起こさなかっただろうね?……聞くまでもないか………一体何だぃその連中は?」
「プンスカすんなよーマジうけるツバキん。あーしがせっかく新人見つけてきたのにさー」
「確かにリーダーは同志を募るとは言ったけど『信用できる奴』って条件をつけたはずだよ。あたぃにはどう見てもそのお眼鏡に敵うような連中には見えないんだけどね? 胡散臭いイロモノ集団なんかお呼びじゃないんだよ」
「落ち着けよツバキん。変な格好に関してはツバキんも大概だぞ。キャラ付けした新キャラはもう沢山だ、ここは少年ジャンプじゃないんだぞ。どう見ても二十代後半くらいなんだからもう少し大人の余裕を持ったらどうだ?」
俺は思わずツバキんに指摘する。
二十代後半くらいのツバキんとか呼ばれた新キャラは『ザ・くのいち』と言っていいほどザ・くのいちだった。黒髪ポニーテール、赤い服の軽装に鎖かたびら、手足には包帯、口元は黒布で覆われ両手にはくない。美人ではあるが二十代後半に見えるツバキんがその格好をするには少々キツいものがあるだろう。
そして諜報員的キャラは既に何人も出てきてるから新鮮味がない、あと何度も言うが短絡的に新キャラを出すな。ついさっきギャルが出てきたばっかなんだからもう新キャラはいらん。あと二十代後半なら露出を控えろ。
「イシハラさんっ全部声に出てますって!」
「ーーふっ……ふふふっ……そういえばこんな条件もあったねぇ……『強者』である事っ!! あたぃはツバキんじゃなくて【ツバキ】だ!そして年と格好のことは言うなっ! あたぃが面接してやるよっ!」
そう言ってツバキんは襲いかかってきた、いきなりバトルとはこれじゃあ少年ジャンプだ。こんな調子じゃあまたこの物語は間延びするだろう。
まったく、これだからジャンプ展開は嫌なんだ。




