百三十六.少年ジャンプになろう
心はいつでも少年ジャンプーーそれは世の成人男性なら誰しもが持ち得るものだろう。学生時代に少年ジャンプを通らない方が難しいと言われるほどに皆が熱い主人公が織り成す冒険活劇に夢を馳せた。
だが、時代は変わった。今では主人公は何の努力もしないで最強でハーレムだし、主人公の力を見抜けなかった奴等は落ちぶれても助けてやらないし、冒険しないでスローライフしたいし、なんだったら最強の姉が変わりに全部やってくれればそれでいいらしい。そんな最強モテモテスローライフもう遅いのたれ死ね系主人公に読者の心は奪わているのだ。
と、いうわけでそんな時代への迎合心を持った俺はそれに倣って即座にアラサーくのいちを組伏せた。
今の時代、熱い戦闘シーンなんかいらないらしいからな。即座に終わらせるのが好まれる……まったく嘆かわしいものだな。
「イシハラさん……チキュウの文化の事はよくわからないですけど……時代に適応するために仕方なく少年の心を捨てたみたいに言ってますけど……あなたは最初からそんな感じでしたよ!? むしろ時代の申し子ですよ!? ほとんどイシハラさんに当てはまりますから!」
ムセンの失礼な突っ込みが炸裂する。俺がいつ最強でモテモテになって悪人に興味なくて誰かが変わりにやってくれないかな冒険しないで定時で帰りたい、なんて奴になったんだ。
いや、よく考えたらそんな物語あったら楽でいいな。嘆かわしくもなんともないなーーと、思い直した。やっぱり時代はなろう系だな。
「アンタ達一体何の話をしてるんだぃ!? わかった降参だよ! 痛い痛い地味に痛い! お願いだから放してっ!」
アラサーくノいちはすぐに音を上げる、ギャルもそうだったけどこいつらこんな弱くてよくレジスタンスなんかやってるな。
「はぁ……はぁ……やるじゃないか……少しは認めてやってもいいよ……だけどその程度じゃあリーダーには敵わないね……きっとすぐに泣きべそをかく事になるよ……それが嫌だったら引き返しな……」
なんでやられたこいつがこんな偉そうなんだ。
するとムセンと猫娘が険しい顔をして前に出る、なんか怒っている様子だ。
「にゃははは、泣きべそをかくのはアンタらの方じゃニャイかニャ? ナツイにゃんの実力はこんなもんじゃニャいよ? おしっこ漏らす前に早めに謝った方がいいと思うけどニャ?」
「その通りです。イシハラさんは何があっても泣きべそなんてかきませんし、あなた方のリーダーなる人に負けるわけもありません」
二人の怒気にあてられてアラサーくノいちはたじろぐ。まったく、初対面相手にすぐにケンカ腰になるんじゃないといつも言ってるだろうに。そんなんだから要らぬトラブルに巻き込まれるんだよ。
「いや、オメーのせいだろうが。真っ先にケンカ売りにいったのは誰だよ」
「まーまー、ツバキん。ナっちんは傭兵達からサヨっち達を助けてくれたんだって。いい奴等ってのはあーしが保証するから一回リーダーに会わせてあげよーよ」
「………………ふん、ついてきな」
ギャルが仲介に入り、アラサーくノ一はしぶしぶ入口の門を開く、俺達はアジトに足を踏み入れた。
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〈コショウ古城地下 『レジスタンスのアジト』〉
アジトは城にあった地下牢の更に下にあった。まるで迷宮のような地下道を抜けた先には大層な扉があったり、見つからないよう結界を張っているという双子の子供の門番がいたり、扉の先には様々なキャラ立てした奴等が二十人くらいいたりして生活していたりしたが、全部紹介していると新キャラの宝石箱になってしまうので全部カットした。
というわけで、俺達はこいつらを率いているリーダーとかいうやつに接触した。
「ばっはっはっ、子供達を助けてくれたんだってな。ありがとよ、何のもてなしもできねぇがくつろいでってくれ」
ギャルとアラサーくノ一とガキ達と別れたのち、俺達警備兵一行は部屋の中でそいつと対峙する。
リーダーは巨体の大男で名を【ド=ゴーン】といった。まるでプチ巨人みたいにでかいその男(大体4メートルくらい)は笑いながら樽を片手で持ち一献傾けている。酒臭いから中身は酒だろう。
その脇には用心棒みたいな細長い侍みたいなのがいる。袴姿に長い髪、腕組みをして瞳を閉じたそいつは一言だけ【ジロー】と名乗った。
「話はツバキから聞いたぜ、俺らの同盟に加わりてぇらしいが……どういった理由だ? 俺が言うのもなんだがこれは遊びじゃねぇしロクなもんでもねぇ。命がけだ、半端な気持ちならすぐに帰りな」
ミニ巨人男は温和な態度とは裏腹に鋭い眼光を見せる
、どうやら面接はもう始まっているようだがムセンや猫娘、ヤンキーはデカい男にたじろいでいるしジジイはいつも通り朦朧としているしシャベリューはそもそもただの協力者であるため必然と注目は俺へと向いている。
「加わりたいとは言っていない、互いに利益がありそうだから利用されつつ利用させてもらいに来ただけだ」
俺は適当にそう述べた、真実だしこういった圧迫面接みたいなのは嫌いなんだ。
「ほぅ……? お前さん達が俺らに利益をもたらしてくれるって?」
「そう言ったが」
「とてもそうは見えねぇが、お前さんがどんな恩恵を与えてくれるっつーんだ?」
「それを考えるのはお前の仕事だろ、バカかお前。囮でもなんでも使えばいい、俺達は俺達のやりたい事をやる。それを陽動に組み込むとかやり様があるだろうに」
「……………ばっはっはっ!!! なるほどな!! 技術なんざ無くても誰にだってできる事はあるってことか!! 俺を前にして微塵も物怖じしやがらねえとは……気に入ったぜお前さん!! 歓迎するぜレジスタンスによ!」
ミニ巨人男は堰を切るかの様に笑い出した。面白くてしょうがない様子で腹を抱えて天を仰いだのちに俺と握手を交わした。
なんか漫画みたいな展開だ、不躾な態度の方が好印象を与えて面接を通るやつ。実際の面接でこんな事をしたら門前払いされるから気を付けろよ新卒。
「わ……わかっているならそうしてくださいっ! いつも心臓に悪いんですよイシハラさんの態度はっ!」
「待たれよ、主はすぐに誰であろうと招き入れるな……こやつらが役に立つとは到底思えん。【職業展開】も使えぬのだろう……せめて某に見極めさせよ」
すると棒侍から待ったがかかる。
棒侍は地球にいた時に流行っていた『領域やら術式展開』的なワードを口にした。
「イシハラと申したな、某が相手をしてやろう。貴様がいかに井の蛙であるか思い知らせてやろうぞ」
遂に俺の物語にも流行りの領域やら術式やらの展開技術が登場するらしい。やっぱりジャンプは最高だな。




