百三十四.死語
「「な(ニャ)……何ですか(ニャんニャのニャ)その制度!??」」
女児の言葉を受け、ムセンと猫娘はニャンニャン喚く。異界人のムセンはともかく猫娘もこの国の制度を知らなかったらしい。
「話には聞いてたけど……ここまで酷い国ニャんて知らなかったよぅ」
「まぁ事情は把握した。だが、あの野蛮人共が【上級国民】とやらの職業なのか? 全然そうは見えなかったが」
「それは……前回の『大会』であの人達の職業……【傭兵】って職業が三位になったからなんです……」
「OK、把握した」
新たな設定のワードが出てきた為、俺は話を打ち切った。絶対に面倒な設定だと面倒な予感を知らせる面倒センサーが鳴り響いたからだ。じゃあさっさと町を出よう。
「待って下さいイシハラさんっ! 話の内容はともかくとして……この子達はどうするんですか?」
ふむ、ガキ共の事情や国の内情はどうでもいいが助けておいて中途半端も良くないからせめてはぐれたと言っていた引率者くらいは見つけてやるか。
そう思った瞬間ーー目的の人物はすぐに見つかった。
物凄い勢い且つ鬼の形相でこちらへ走ってくる女子、そいつが俺達に明確に敵意を向けているからーーというより超デカイ声で叫びながら猛進してきたからだ。
「くおらあああああっ!!! テメーらかぁぁぁあーしの弟妹達に手ぇ出そーとしてるヤカラはぁぁぁ!!!」
あーし。
コンビニでバイトしてる、今や死語であるギャルがよく使う一人称だ。
余談だが世の中では死語という言葉も既に死語だとか何だとか。そうなると死語(死語)と表記しなくちゃいけなくなり、死語も死語だから(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)……なんて事になって世の中の書き手は大変な事になるななんて思いつつーー
ーー【一流警備兵技術『護身術』】ーー
ーー話し合いが通じそうにない様子だったので護身術を使い、ギャル(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)(死語)に間接技をかけて動きを封じた。
「痛たたたたた!? なにやってんのアンタ!? わかったギブギブ!! 落ち着いて話し合おーし!?」
ギャルはすぐに音を上げた。
年齢は16.7ぐらいだろうか。栗色の髪、ハイビスカスのような形をした髪留め、長い睫毛、細眉、薄紅くなった目尻、耳や首もとにつけた装飾品、色白い肌、紛う事なくギャルだ。
とりあえず落ち着いて話をするため、地元民であろうギャルに人目につかず休める場所に案内してもらう事にした。
------------------------------------------
〈港町.宿屋『ハ・タラ・キタク・ナイ・DE・ゴザル』〉
「やー、あーしの勘違いだったんじゃんね! マジごめんね! それとこの子達助けてくれてサンキュー!」
事情を伝えるとギャルは陽気に謝り軽く礼を言った。
俺達はギャルの案内でバカみたいな店名の宿に身を潜めていた。このギャルとガキ達と親しい間柄にある店主の経営する宿のようでここならば衛兵達に身元がバレるような事はないらしい。この国の制度に則れば既に指名手配とかされててもおかしくないからな。
「あーしは【ミチュリん】っつーんだ、この子達の長女っつーか……まぁ保護者的な?」
「ふざけてるのか? 偽名にしてももっとマシなのにしろ」
「ふざけてねーし! 本当にあーしの名前だし!」
ミチュパだかミチュぽよだか名乗ったギャルは頬をふくらませて肩たたきするように俺をドコドコ叩いた。初対面の癖にこの距離感、さすがギャルだな。
「つーかナッちん、むーせん、えあニャンさー」
「待ってくださいミチュリんさん! ムーセンって誰ですか!? 変な呼び方やめてください!」
「えー、いーじゃーん。むーせん真面目だなー。何このイカした服、おっぱいデカっ、うりうり♪」
「やっ……何触ってるんですか!! ふざけてないて真面目に話してください!」
優等生タイプのムーセンは予想通りにギャルと対立している。
「イシハラさんまで変な呼び方しないで下さい!?」
「それよりもナツイにゃん、ムセンにゃん。これからどうするニャよ!? さっそく動き辛くなっちゃったニャ!!」
「仕方あるまい。ヤンキー達と合流してさっさと町を出る、街道は避けてなるべく端っこを通って行く。人と相対するより魔物を対処した方が面倒は少ないだろうからな。そして情報収集は捨て、シューズ一行より先回りして待ち構える」
「……そうですね……イシハラさんがいればどんな魔物でも対処できるでしょうし……遠回りすれば時間はかかるかもしれませんが、これ以上この国での制度に反発しているとシューズさんに追い付くのも不可能になってしまいます。それどころか……私達の身元が判明してしまえば国と国の国際問題にも発展しかねません」
「ふーむ……ニャるほど……確かにナツイにゃんなら簡単に魔物をあしらえるニャ、だったら人がいない道を選んだ方がいいかもしれニャいニャね」
「あー……ナッちん、事情はなんとなしにわかったけどさー……結構ムズいと思うんだよねー」
これからの対策を話しているとギャルが口を挟んできた。
「何故だ?」
「いや、魔物がどうとかは置いといてさー……ナッちん達は『ストレア王都』に行きたいんしょ? そのシューズちゃんとやらを救うためにさー」
「ああ」
「そこから激ムズなんだよね、ストレア王都はー……なんだっけ? 街の造りがー……ほら、樹の年輪みたいな感じのー……」
「同心円状か?」
「そうそうそれ! それになっててー、中心の城にたどり着くまでに【4つの壁】がある感じ。【特別区】【上級区】【一般地区】【最下層】の間にね。区はそれぞれ職業のランクが当てはまる感じでそのランクの人達しか入れない感じ。それぞれの区の間には物理的な壁と技術結界が張られててー……通るには許可とか色々必要なワケ」
ふむ、予想していた事だが非常に面倒だ。
「なら……その前にシューズにゃん一行と接触するニャ!」
「でもさ、それが間に合わなかったら? もし入られちゃったらアウトじゃん? だからもしもん時のために対策しといた方がいい感じじゃない?」
ギャルはなにか話を誘導しているフシがある。何か言いたい事でもあるのだろう。
「ナッちんわかってんねー、あーしの頼みを聞いてくれたら全部解決すっかもって話がしたいの」
「話次第だ、言ってみろ」
「実はさ、あーしはこの国のクソみたいな制度をぶっ壊そー的な活動してんの。なんだっけ? なんかそーゆー集まり」
「レジスタンスか?」
「そーそーそれそれ! 【底辺職】ってゆー括りにされた職業の人達が集まってんの! ナッちん達も入ってよ! 今は人手がマジ必要なんだよレンジスタンスに!」




