■番外編.集結する悪意 ※無色の騎士【ミンネ】視点
〈とある街のスラム地区 酒場〉
「おい、店主。もう一杯だ」
「わちきにももう一杯でおじゃるよ」
とある街の寂れた酒場にはかつて王国騎士団長と王国随一の軍師と呼ばれていた二名の姿がありました。
日の沈まぬ内から酒を浴びるように飲み、結果酒に呑まれている壮年を迎えようとしている二人は過去の栄功を築いた時代が嘘であったかのようにみすぼらしい服装に身を包んでおり……最早見る影もない程に肥満体に変貌しています。
それは自身の所業による結果によるものではあるのですが……元より『職業差別』を徹底していた二人にはその凋落における鬱憤の晴らし場をその要因となった人物にぶつける他ないようです。
二人の名は【アーサー・フェイク】【マリオン・ローレスト】。
ウルベリオン王国と魔王軍四業幹部【テロリズム】一派により巻き起こった王都戦争にて逃げ遅れた下民職の住民達を囮にする事を目論見、結果危険に晒した人物。
王にそれが露見した後に解職及び国外追放処分を受け、現在は山脈を越えた先にある隣国ドワーフ達の国【オメガライト】にある第三炭鉱街スラム地区に定住しているようです。
形はどうあれ、二人は国を守ろうとした判断によりああいった手立てに出るしかなかったというウルベリオン陛下と大神官マリア様の恩情により、親交のあったオメガライトのドワーフ王に受け入れてもらい一から出直すことで許された二人でしたが……彼らにはその想いは伝わらなかったらしく、怒りを酒の肴にして愚痴を溢しています。
その矛先となっているのが……ウルベリオン陛下と、要因となった警備兵兼騎士となった【イシハラナツイ】君でした。
「なぁ軍師さんよ……なんとかして復讐する方法はねぇのかよ」
「わちきはもう軍師でないでおじゃるよ……アーサー、機会を待つでおじゃる。職を失ったわちき達に出来る事は限られてるでおじゃる……相手が悪すぎるでおじゃる……少なくともわちき達が国政に関与できる立場になるか……協力者でも得ないと勝ち目はないでおじゃる……」
「……くそっ……王はともかくあの警備兵だけは絶対に許さねぇ……」
「わちきは王を許さないでおじゃるよ……国のために下民を切り捨てることの何が悪いでおじゃるか……考えが甘すぎるでおじゃる。いつか必ず命取りになるでおじゃるよ」
「今さらウルベリオン王も国もどうでも良いが……策はなんかねえのかよ?」
「だから言ってるでおじゃる、協力者でもいない限り……どうする事もできないでおじゃるよ……………」
二人は次々と愚痴と溜め息吐き出します。
しかし、毎晩のように酒を飲みそうする事しかできない様子でした。
(脅威は無いと判断して良さそうですね、確かに職を失った今、それくらいしかできる事はないでしょう。王に反旗を翻すようでしたら始末する他ありませんでしたが……暫く放っておきましょうか)
しかし、元軍師さんが次に紡いだ言葉は看過できるものではありませんでした。
「……一人だけ、権力を持ちながらわちき等に手を貸してくれそうな人物を知っているでおじゃる。接触を図れれば……あるいは……」
「あ? 誰なんだそいつは?」
「ウルベリオン辺境伯、野心家にして絶大な軍事力を持つ【マルグラフ】でおじゃる」




