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一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい  作者: 司真 緋水銀
二章第二節 一流警備兵イシハラナツイ、〈続〉借金返済の旅

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百三十一.想いの警備


ザァッ……ザァンッ………ザァッ………


 寄せる波が停泊場のコンクリートによって消波してはまた押し寄せる。人の想いとよく似ている、はね除けられてもそれは完全に消える訳ではない。壁を乗り越えようと必死にもがくその波は如何に滑稽に映ろうとも燦然(さんぜん)と輝き世界を照らしている。


 俺とムセンは船上にて出港するまでの間、陸と海の地平線と水平線を同時に眺めていた。

 

「……二人きりになってしまいましたね、イシハラさん」


 ムセンは地平線ーー俺達が召喚された国のあるナントカ大陸と空との境界線を眺めて呟いた。

 不安があるのだろうか、その表情はどこか複雑そうだ。


「二人じゃないぞ、こいつがいるだろう」

「いやぁ旦那、彼女さんは旦那との二人になった時間に想いを馳せてロマンチックなムードとなるきっかけを作ろうとしただけでさぁ。汲んでやってくださいな」

「ありがとうございますっ! その通りなんですがっ! それをばらすのは恥ずかしいからやめてくださいっ! そして紹介もないままなんですが何ですかその喋る蜥蜴(とかげ)さん!?」

「蜥蜴じゃない、馬鹿かお前。シャベリューだ」

「いやぁ旦那はお上手でさぁ、『喋る竜』だからシャベリューときましたか。気にいったんでアッシの名はこれから【シャベリュー】でさぁ、よろしくお願いなすってお嬢さん」

「そんな適当な名前でいいんですか!? 色々と突っ込みたいんですがよろしくお願いしますムセンですっ!」


 【ヴェロラプト】改め地竜の【シャベリュー】はムセンと紹介し合う、こいつとは王都~港町の走行契約だったらしいがどうやら何故か大陸を跨いでまで付いてきてくれるらしい。


「旦那と語り合ってアッシは旦那が気にいったんでさぁ。自由且つ気ままに生きるその姿を眼に焼きつけたいんでさ、お代はいらねぇんで同行させてくだせぇ」


 焼き鳥がいない今、脚があるというのは非常に助かるというわけでこいつも連れていく事にしたわけだ。


「ぴぃさんは……大丈夫でしょうか? 見つかっていないといいんですが……」

「形態変化で小さくなっていれば大丈夫だろう」


 そう、ムセン達と一緒にいながら所在不明だった焼き鳥。

 一体どこに行ったのかというとーー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ーー潜入している? 焼き鳥がか」

「ええ、戦いが始まる前に鳥さんが自らセーフ・T・シューズの元へ飛んでいきましたわ。『御主人様が来るまでぴぃがシューズ様を守るっぴ』と言って……そして」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 宿でのですわ騎士との会話を思い出す、どうやら焼き鳥は単独で船に乗り込んでいたようだ。


「ある程度までシューズに近づけば音で知らせてくれる、つまり発信源のような役割を果たしてくれるらしい。これで今後シューズの居場所は大体わかるというわけだ。いい仕事をしたな、焼き鳥」


 なにせ未知の大陸のうえに陸路でまだ5日ほどかかる。あちらさんも物資の調達に何処かに寄るだろうから相手側の本拠地に入る前に押さえられれば面倒を軽減できるかもしれない。そのためには焼き鳥にはシューズの側にいてもらう必要がある。


「………」


 色々と話していてもムセンの表情は完全には晴れない、確かにこれからの旅は二人のうえに未知なる大陸ーー憂慮するのもわからなくもない。


「いえ、そういうわけでないんですが………私、海と言うものを初めて見たんです。今までの宇宙航海では海のある惑星には行けませんでしたから……でも、話には聞いていて凄く憧れていたんです。それを今イシハラさんと一緒に見れて……でももう少し違うかたちで見たかったなって思って……それに……こうして眺めていると自分が如何に小さな存在かっていうのを思い知らされまして…………すみません、うまく纏められないのですが……」


 まぁなんとなく言いたいことは伝わった。

 だが、何を感じようが結局のところはやるしかない。


 俺は海を眺めながらムセンに言った。


「安心しろ、何があろうが俺が警備して想いを届かせてやろう」

「……ふふっ、心配なんかしていませんよ。イシハラさんの警備なら必ず無事にたどり着けると信じています。ーー行きましょう、イシハラさん」



 そうして、俺達はこの世界で初めての航海へと出発する。

 この世界に喚ばれた時のように、二人しかいないがやるしかあるまい。

 この先に拡がる大きな闇に呑み込まれていく俺達を示唆するかのように、船は大海原に向かって出港していくーー



【属性検定(まほう)『風』+猫人族生態による開発技術 『超跳躍(かぜにのるにゃあ)』】


「ちょーっと待つニャアーーーーーーっ!!!」


 ーー瞬間、なにか跳んできて俺達の前に降り立った。


「ウチらの事忘れてニャいかニャ!? 一緒に行くって約束だったでしょっ!!」


 跳んできたのは昔懐かし猫娘だった。久しぶりだな、どうしてたんだこいつ。


「そんなに過去の人じゃニャいでしょ!? 必死にナツイにゃんを追いかけてきたに決まってるニャ!! 間に合ってよかったぁ~、ね! ジレ爺!!」

「…………」

 

 猫娘におんぶされていた爺さんは返事をしない、どうやらまた黄泉との境を彷徨(さまよ)っているらしい。


「きゃあぁぁぁぁっ!?」


 突然、ムセンの叫び声が響く。

 今度は何事かと見てみると、船体の外側から手が伸びていた。幽霊か?


「ゼェ……ゼェ……お……おいコラ……ゼェ……ゼェ……ハァ……ハァ……やっと……おいついたぜ……ハァ……ハァ……」


 幽霊の正体はヤンキーだった、船をよじ登ってきたらしい。バカかこいつ。


「ハァ……ハァ……テメーとはまだ決着がついてねぇからな……勝ち逃げぁ許さねーぞコラ………勝負しやがっ……………!!!!???」


 息も絶え絶えのヤンキーはわけのわからない事を言いながら突然言葉に詰まる、何故かムセンを見て驚いているようだ。

 ムセンの方はというと俺の後ろに隠れて怪訝な顔をしている。


「あ……あの……どなたですか? 私がなにか……」

「……………ま……まびぃ…………っス……」


 マブいとかいう昭和懐かしの化石言葉をヤンキーは呟く、顔を真っ赤にしながら。そして借りてきた猫のように大人しくなってしまった。


「っス……お……オレぁけ……警備兵のビリーっス……よ、よければオレと清く健全に付き合ってくれ! ……っス」

「………え?」


 ふむ、どうやらヤンキーはムセンに惚れたようだ。

 たどたどしい挨拶がその証拠、まるで硬派一筋の女慣れしていない不良そのものだ。

 それに対しムセンは更に怪訝な顔をして返答する。


「えっとビリー……さん? ごめんなさい、私イシハラさんと婚約していますので……」


 ムセンもわけのわからない事を言う。俺達がいつ婚約したんだ?

 いや、そうか。ストーカー(ヤンキー)を諦めさせるための常套句だな。ならば仕方あるまい、そういう振りをしてやるとするか。


「ニャはは、ナツイにゃんは他人に関しては鋭敏なくせして自分の事となると鈍感ニャよね」

「まったくその通りですよイシハラさん……」

「んなっ!? こ……この野郎と……ちきしょう……テメー……勝負しろこの野郎!!」

「……おや? ほっほっ、久しぶりじゃのうイシハラ君や。ご飯はまだかのぅ?」


 船上は一気に騒がしくなる、人手が増えたのは結構だが気苦労と面倒さは倍増した気がする。

 奇しくも警備兵が集まったな。

 まぁどうでもいい、さっさと解決してだらだらスローライフに戻るとしよう。


「出発だ、準備はいいか?」

「はい! 必ず……シューズさんを救います!」

「ニャア! ウチらも役に立ってみせるニャよ!」

「ちっ……テメーに指図されんのは癪だが仕方ねぇ。借りはきっちり返してやんよ!」

「ほっほっ、仕事仕事じゃ」


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◇新パーティー結成

・職業【一流警備兵】イシハラナツイ

   【警備兵】ムセン・アイコム

   【警備兵】エア・ブロー

   【警備兵】ビリー・ナイトスティック

   【警備兵】ジレ・ヤコウ

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