百二十九.敗北の夜
「着きましたで、旦那ぁ。ここが港町『ボウソウハントウ』でさぁ」
◇ <港町『ボウソウハントウ』>
だもん騎士達と別れた翌日の夜更け、俺は港町に到着した。
町は既に閑散としており、曇り空のためか家々から漏れる灯りが唯一の光源だ。
灯台から差す光と潮の香りだけが、この町が港町であることを物語るほどに薄暗い。
道中は特に問題なく、何事もなく無事にサブイベントの発生を回避する事ができた。
強いて言えばこの地走竜【ヴェロラプト】が喧しかったことぐらいだ。
どうやらこいつは精霊の資格を持っており、人語を話す事ができるらしい。【ヴェロラプト】というのは自分で付けた名前のようだ。
こいつとは色々話したけどどうでも良い事なので割愛する。
「アッシはここで大人しく待ってまさぁ、必要であればまたお声をおかけなすってくだせぇ」
「わかった」
俺はヴェロラプトを町の入口にある竜舎に繋ぎ、港を目指すーー
「……イシハラさぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
ーーために歩き出した瞬間、見知った顔が横から飛び付いてきた。
俺は『危険予知』をして難なく避けた。
ドタッ
「痛っ!! なっ……なんで避けるんですかっ!?」
「なんとなく」
地面に叩きつけられたムセンは起き上がり、再度抱きつこうとしてきたため仕方なく抱き締めた。
「お疲れさん、無事で良かったな」
「ぅう……ぐすっ……ごめんなさい……約束したのに……シューズさんを救うことがっ……できませんでした……ぐすっ……」
「気にするな、所在を突き止めただけでも御の字だ。良くやった、ウテンとですわ騎士は無事か?」
「ぐすっ……はい、今は宿で安静に眠っています。それよりイシハラさん、アクアさんとリィさんはどうされたのですか?」
俺達は情報の共有をするため、適当に酒場に入ることにした。
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◇<港町 酒場『カツウラコミナト』>
入った飯屋ではこれでもかというほどに海の幸を堪能できた。
しかし、この町もそうだがそろそろこの世界の屋号について考察する時がきたのかもしれない、名称が適当すぎる。
確か俺の場合スマホの技術によりこの世界の言語や各地の名称を俺にもわかるように自動翻訳しているみたいだが飯屋の名前が靴下だったりホテルの名前がバナナだったり色々とおかしい。翻訳機能がバグっているのではないだろうかそもそも異界文化の入り乱れた世界とは言ってもたまに翻訳されるのが英語になったりするのは一体どういうわけかこのオルスも大陸などによって言語に差異がありそれが翻訳に影響されているのだろうかということは骨っ娘だとか地走竜とか偽変態だとかの訛りもただのキャラづけかと思ったが出身や扱う言語によってそれが翻訳に影響しているということなのだろうかだとしたらあいつらと同じ出身のやつらがいたらそいつらは全員同じ言葉遣いで翻訳されてしまうのであってそうしたら誰が誰なのかごちゃごちゃになってわからなくなってしまうのであって
「……ふふ、イシハラさんのその考え事をしている時のよくわからない顔を見ると落ち着きます。いえ、そんな場合ではないんですけど……本当にいつもどんな時でも変わりませんね」
俺は飯をたいらげた後にこっちで起きた出来事をダイジェストにしてムセンに話した。
「…………魔王軍の中にも色々な方がいるのですね……でもみなさん無事で良かったです。いえ……リィさんとアクアさんは現在どうしているのかはわかりませんが……」
「それで? こっちでは何が起きたんだ?」
「……はい、最初からお話しします」
そして、港町で起こった事を聞いた。
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「ーーそして、ツリーさんは植物を使いネットさんを捕縛しました」
ムセンは起きた出来事を詳細に話す、バトルもの漫画よろしく本当にバトルしていたらしい。
ですわ騎士とウテンは戦闘では、シューズの姉とお付きの諜報員に勝っていたらしい。
では何故その二人が重症を負う事になったのか、をムセンが話し始める。まぁ大体予想できるけど。
「そして、ネットさんは『そろそろですね』と無表情で言いました……するとーー」
「ウテンが毒に侵されていて倒れた。それを見た一瞬の油断を突かれてですわ騎士は敗れた」
「!! ど……どうしてわかったのですか!? イシハラさん!」
「なんとなく」
勝負に負けながらも余裕綽々の態度であった事や、『彼岸』とかいうコードネームやらから適当に推察したが当たっていたようだ。
つまり連中は初めから真面目に勝負する気はなく、ただこいつらに後を追わせなければそれだけで良かったらしい。
自国にシューズを連れ帰ってしまえばもう本拠地だし手を出すのはより難しくなるであると考えて。
「……そうです……ウテンさんは短刀に塗られていたであろう毒により突然倒れました……そしてその瞬間にネットさんは蔦を燃やして捕縛を逃れ……ツリーさんを凶弾により襲いました」
「ですわ騎士の傷の具合は?」
「幸い……というべきなのか銃弾は全て急所から逸れていました。恐らくツリーさんはあの一瞬で急所を避けたのでしょう……大事には至っていません。しかし、その場はもう立つ事もできずに意識を失い……私も治療に必死でどうする事もできませんでした……」
そして、そいつらは難なく出港していったというわけか。
相手が悪かったな、予想ではあるが船にも何人かの技術者がいただろう。町で戦闘事になっていたにも関らず町民や衛兵が騒ぎ立てなかった事を考えると魔女のような空間隔離技術を持ったやつとかもいたかもしれない。
「ごめんなさい……私……」
「謝らなくていい、命があっただけ良かった。全員無事で何よりだ、少し休め」
「……ぅっ……うわぁぁぁぁんっ! イシハラさぁぁんっ!」
ムセンは店内にも関わらず再度泣きながら抱きついてくる、まぁ怖い思いをしたんだろうから仕方あるまい。
さて、今日は船も出ないだろうし夜も遅い。
ひとまず眠ってから考えるとしよう、おやすみ。




