百二十五.台風の時は飛んでくる看板に気を付けて
<フルト・フランク移籍群>
「うらあああああああああああああっ!!!」
「ほっほっほっ」
「ニャァァァァァァァ!!」
ヤンキーと爺さんと猫娘が雄々しく叫ぶ、視界の先には多数の魔物達。
遺跡には魔物が溢れかえっている、三人はそれぞれが武器を手に取り目的を果たさんと必死になっていた。
「おい!! もっと速く走れや! 追い付かれんだろジジイ!」
「ほっほっほっ……老骨にはきついのじゃ……ところでご飯はまだかのう?」
「ニャァァァ!! ナツイにゃん!! なにやってるニャ!? さっきの結界みたいなのを張ってよぅ!!」
そう、必死になって走って逃げていた。
よく考えてみればそれはそうだな、そもそも俺がこの世界に召喚されたのも魔物が強すぎるから異界の戦士を集うっていう話のうえでだったし。
訓練を積んだ騎士や兵士達ならともかく、村人に毛が生えた程度の警備兵のこいつらに簡単に倒せてたら誰も苦労しないよな。
「ナツイにゃんなら勝てるのにニャンで一緒になって逃げてるんだよう!!」
「なんかまた何処かで勘違いした奴らがシリアス展開を繰り広げてそうだったから」
何度でも言うが俺の人生の物語をバトルものにするんじゃない。
確かにバトルものというのはどんな作品にも必ず取り上げられる題材であろう、人生と言うのは常に戦い。人が生きていく上でバトルは切っても切り離せない。超常的な能力バトル、心理戦頭脳戦、殴り合い、恋の争奪戦。青春群像劇にだってはたまたペットを題材とした作品でさえどこかしらで何らかのバトルを繰り広げている。人々に夢を見させる作品にはどこかに刺激がなければいけないという意味ではその姿勢は正しいといえよう。
しかし、俺の人生にはいらない。これは俺が異世界にてどうやって仕事を適当にこなして生きていくかの記録である。俺は魔物や魔王がいるファンタジー世界にいながらバトルを避ける方向を目指す。
「わけのわからない事言ってニャいでお願いだから早く倒してよーーっ!!!」
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「「はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……」」
何とか逃げおおせて身を隠した。
こいつら警備兵どもは息を切らして寝転がりもう既に満身創痍といった様子だ。ジジイに至っては横になって静かに休息しているから生きてるのか天に召され中なのか判断できない。
「お前らそれでも警備兵か? よく今まで生きてこれたな」
「はぁ……はぁ……うるせぇ……てめぇみたいにイカれた技術なんざ持ってねぇんだよ俺らは……」
「はぁ……はぁ……それに今まで正式な魔物討伐なんて仕事は警備兵には回ってこなかったニャ……だからウチらは野良魔物を相手にしたりして技術をあげるしかしてなかったニャ……正式な【仕事】をこなさなきゃ【職業レベル】はあげられないんニャよ……」
なんだかまた職業レベルだの何だの伏線めいたことを言っているが、伏線を回収する気はないから無視することにした。
しかし、バトルものになるのは御免だがこいつらに合わせて逃げてたら目的を遂げるまでに何年かかるかわからんな。
目的地まで結界を張って行ってもいいが疲れるのは嫌だし、なにより最終地点には魔物を産み出している魔物とやらがいるんだから結局ボス戦は避けられない。
ふむ、なにかバトルをせずに楽をしながら直ぐにここのボスを片付けるような方法はないものだろうか。
こいつらの技術にそんな技術があればいいのだが。
俺は猫娘に聞いてみた。
「猫娘、会得している技術をステータス画面で見せろ」
「ニャ? いいけど……あ! ウチの身体のステータスは見ないでニャよ!? 恥ずかしいニャ!」
「言われなくても興味ないから見ない」
「………」
俺は猫娘のステータス画面、技術一覧を見た。
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NAME 【エア】
◇ ~技術一覧~
∇職業【警備兵】による取得技術
・『周囲確認術』LV17 ・『危険回避』LV36
・『守りの壁』LV15
・『危険察知』LV25
∇種族【亜人『猫人族』による生態技術】
・『夜眼』 ・『超五感』
・『柔軟化』
◇ ~資格~
・『属性技術検定【風】二級』
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「これだけか?」
「……そうニャ、あとは適性武器を使う事による個人の『開発技術』ニャ」
「開発技術?」
「自分の閃きや発想にて顕現する技術ニャ。例えば……一口に火を使う技術でもそれをどう扱うかは本人次第、『技術』をどういう発想により応用するかで発現するのが『開発技術』ニャ」
ふむ、なるほろ、ほろよい。
今まで俺が出してきたようなあんな技術やこんな技術は全て『型通りの技術』でしかないわけだ。
要するに就職や検定で覚える技術というのは『下地』、それをどう応用するかで更に新たな『開発技術』を開発する事もできるわけだ。
そういえばオルスの人間が技術を使用する時、たまにTHE・中二病みたいな技名がついているやつがいたな。
あれらは取得した技術を応用した自分だけの必殺技というわけか。
「『開発技術』はステータスには表記されないニャ、もしもステータスに書き留めて覚えておきたい場合は教会に行けばステータス記入してくれるニャよ。お金かかるけどニャ」
なんで金を払ってそんな面倒な事しなきゃならんのか。
自分の技術くらい自分で記憶しておけばいいだけだ。
しかし考えもしなかったな。
俺が今まで発動してきた技術は、仮に俺と同じだけの技術力を持っている異界の警備兵ならば誰でも発動可能というわけだ。
そこから技術をどう使うか、更に変化させることができるならそれは唯一無二の必殺技になる。
つまりこれから先、俺と同じ技術を使う持ち主がいてそいつとバトルになった場合ーーその応用力の差異で勝負の明暗はわかれるというわけだ。
「……いや、あんなデタラメな技術を使える警備兵はナツイにゃん以外いないと思うんだけどニャ……」
「で? お前らは『開発技術』とやらは持ってるのか?」
「勿論だニャ! ウチが取得した【風】属性検定の技術にのせて素早く放つ攻撃を見たらナツイにゃんも吃驚するニャよっ!」
聞いておいて何だがどうでもいいな。
だが、おかけで一つ思いついた。これならば戦うことなく、疲れもせずに素早くこの余計なサブクエストを終える事ができる。
俺は進化した異界マップ(3D)を発動させる。
そして、なんか人型魔物らしき怪しい奴が遠くで儀式めいたことをしているのを見つけた。
どうやらこいつが魔物増加の原因っぽいな。
原因っぽいなこれ、あ、原因っぽいなそれ。
ぽいなぽいなぽいなぽいな。
たぶんこいつだ、うん、絶対間違いない。
ていうか魔物だし間違いでも別にいいか、面倒くさいし。
まぁ一応なにやってるか確認してみるか。
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◇ <フルト・フランク遺跡北西部 コーラ遺跡最奥部>
「ーークククッ……順調ジュンチョウ……ここならば……魔女を畏れテ迂闊にニンゲンどもは踏み込まないと読んだガ正解ダッタようだ……おかげデ邪魔サレズ自由に計画をススメられるというものだヨ」
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・喋る魔物は祭壇の上にある魔法陣に囲まれた黒い渦巻く水晶を眺めながら笑って呟いた!
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「さて……幹部の【あのお方】に怒られないウチに早くこの『異界召喚ゲート』の実験をオワラセテしまうヨ……この私……【暗黒神官】の職を承りし『ベリヤン』ガ……」
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・魔王軍【暗黒神官】のベリヤンは自分の血を『聖職石』に纏わせ、祈りとともに祭壇に捧げた!
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「クククッ……ニンゲンどもが【異界の戦士】を集うならバ……私たちも【異界の魔物】を喚び出すだけヨ! 悪鬼どもよ姿を現スのヨ!」
パァァァァァァァァァァァァァァァ…………ッ………
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・闇の光とともに魔法陣から異形の怪物達が姿を現す!
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「ククククククッ!! 順調ジュンチョウ!! 実験はセイコウだ!! これならば実用に至るでアロウヨ!! 更に召喚の場を増やし世界各地に魔物を喚び出せばオルスはマタタク間に魔王軍のものとなるヨ!! 早速【あの方】にホウコクせねばーーーー」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
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・遠くから地響きのような音が聞こえる、音はどんどんと近づき震動まで起こしはじめた!!
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「ーーーーな、ナンダこの揺れと音はっ!!?」
【イシハラナツイ異界技術
-開発技術 『魔物通行止め看板倒し』-】
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
プチッ
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◇<フルト・フランク遺跡北西部『コーラ遺跡最奥部』>
終わった。
巨大な通行止め看板を倒したら。看板は遺跡を破壊しながら怪しい魔物をそのままドリフのコントみたいに押し潰した。
潰れちゃったけど、まぁ原因っぽいなこれだしよかったよかった。
「クエストクリアだ。おめでとう」
「「「………」」」
三人の警備兵どもはなんか納得いかないような表情をしていた。
ちなみに看板をわざと倒すのはダメ絶対、台風の日は飛んでくる可能性もあるから気を付けろ。
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◇サブクエスト『シュヴァルトハイム近辺での魔物増加の原因を突き止めろ』 CLEAR?
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