side story5.令嬢騎士vs貴族軍人 ※ムセン視点
港に、いえ、町全体に刃の交差する音が響きます。
それは勿論、戦いを表す音。
それぞれの持つ武器の刃が持主を守らんと、持主の目的を遂げようと、敵を刈り取ろうとする剣撃音。
ウテンさんと私が影達の相手をしている間に、ウルベリオン王国騎士であるツリーさんと、イルムンストレア王国の守護貴族セーフ・T・ネットさんの戦いは激化していました。
「随分変わった武器をお持ちですのねっ!? 初めて目にしましたわっ!! 剣に余計な装飾を施すなど余程腕に自信があると見えますわっ!!」
「戦闘中にお喋りしていると舌を噛みますよ?」
二人は剣を何度も交差させながらでも、優雅に、まるで演劇を興じているかのように台詞も交わします。
【騎士&令嬢 融合技術『ユグドラシル』】
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・『騎士』と『貴族令嬢』を掛け持つツリーの融合創作技術。周囲にある木々を自在に操るだけではなく、木や花を芽吹かせ成長させる事も可能。
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ツリーさんは翠の剣に技術を乗せ、辺り一帯から木の蔦を産み出し自身に纏うかのように伸ばしました。
意思を持ったかのような蔦は操り手である主人を守るかのように蠢き、合図を待ちます。
それを見ていたウテンさんは私と同じ感想を呟きます。
「……話には聞いていたけど……凄まじい技術の持ち主……令嬢騎士」
「ツリーさんですか……いつも思っていましたが……あれは自然に存在する植物の類を操る技術という事なんですか?」
「そう、そして【無からの創生】もできる。属性の事象を産み出す技術より桁外れに難度が高い。相当な高度技術を有する才と自然界の精霊達に愛されるという芸当をなし得なければならない常人には不可能な技術……」
オルスについて不勉強な私にはウテンさんの言ったことはあまり理解できませんでしたが……つまりとにかく凄いお人だという事です!
序列という制度はウルベリオン王国から撤廃されたようですが、それまでは序列六位であったツリーさん。有数の技術者であろう事は私にも理解できます。
そんなウテンさんと私の会話が聞こえたのか、ネットさんはこちらに視線を向け冷たい眼をして口を開きます。
まるで、ツリーさんの技術を意に介していないと余裕を見せるように。
「『彼岸』。何をやっているのですか貴女は? 罰として暫くそのままでいなさい」
「……はーい、すみません~ネット様~」
ウテンさんの所持していた髪の毛(私の)で素早く全身を縛り上げられた影の人にネットさんは冷たく言い放ちます。
仲間の動きを封じられ、船上にいるであろう兵士達の増援も呼ばないまま、ほぼ三人対一人の状況でありながら余裕を見せているという事はよほど戦闘に自信があるのでしょうか?
『彼岸』と呼ばれたこの少女も抵抗の素振りすら見せません(動こうにも動けなさそうですが)、表情は微笑みすら浮かべているようにも見えます。
なにかこの状況を打破できるような策でも講じている?
しかし、戦闘ごとに関して素人の私にでもこの束縛から容易に抜け出せるとは思えません。
(……だとするなら……ネットさんがツリーさんに勝てると信じている、という事でしょうか……?)
【コードネーム雨天 適性武器技術『雨涙シクシク』】
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・ウテンの適性武器『糸』を使った技術。五感を糸の束で塞ぐ、
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シュルルルルルルルルルルル……
「んむっ!!?」
「五月蝿いからもう喋らないで大人しくしてて」
ウテンさんが私の髪の毛を使って影の人の目、耳、鼻、口を覆うと影の人は嗚咽すらも漏らさずに静かになりました。
一体どんな技術なのか、という事よりも……私の髪を拘束具のように扱われるのはなにか恥ずかしい感情が湧いてきます……。
そんなどうでもいい私の思いを余所に、ツリーさんはネットさんの余裕が勘に触ったのか苛立ったように言います。
「わたくしの技術を前に余所見とは良い度胸ですわ……大層凄い技術をお持ちなのでしょう、是非拝見したいところですわ」
「いいえ? 私の職業から会得できる技術など貴女の持つ創生の技術の前では霞んでしまうでしょう」
「………その割には随分と呑気ですわね。わたくしがこの距離から植物を放てば貴女は技術を使う間もなく木々に貫かれますわよ?」
ツリーさんは恐らく相手の出方を見ようとしているのか……蔦を周囲に蠢かせながら、ただ剣のような武器を無造作に構えているだけのネットさんを挑発します。
「貴女もただ強い技術を持つだけが強者の証だと決めつけているのですね。技術というものはそんな単純なものではありません、現在この世界には人には把握しきれないほどの技術があります。職業から得られる『通常技術』、異界人が使う『異界技術』、種族の特性や魔物の生態独自の『生態技術』、二種の職業技術を掛け合わせた『融合技術』、属性検定により取得した『属性検定技術』……もはや技術に差異や優劣をつけるにはこの世界の職業や技術は膨大となりすぎてしまったのです」
ネットさんはツリーさんに応え、まるで教授するかのように長々と話します。
私は、それに少し違和感を覚えましたが……更にネットさんの話は続きます。
「話が逸れましたね。ですから私は相性が重要だと考えています。戦いにおいてもそれは同じ……ゆえに強者弱者の区別は【職業の差】そして【勝利した者】でしかありません。今からそれをお見せしましょう、私の最適性武器【十徳ブレード】……火を噴きなさい」
ネットさんの剣の持ち手からは、オルスでは見た事がなかった、オルスには流通していない筈の武器が金属音を立てて飛び出しました。
しかし私には馴染みがあります。
私のいた世界……私の前職の世界でもあった【宇宙船】、そこで見た事があったからです。
それは……【銃】。
私の持つ光線銃とは違う形態の……【長銃】、その銃身は剣の刀身と折り重なるようにツリーさんの方へ向き、言葉通りに火を噴きました。




