百十六.面倒だけどクエストに付き合おう①
猫娘は突然そんな事を言った。
それを聞いたヤンキーはびっくりした顔をして跳び上がる。
「……はぁ!!? エア!! お前何言ってっ……!」
「それで? 俺に何をさせたいんだ? お前らの知名度を上げるのに一役買ってほしいとかそんなんか?」
そんなヤンキーの横入りを無視して俺は猫娘に聞き返す。すると猫娘は図星といった表情を隠す気もなさそうにニヤリと笑った。
「ニャははっ、やっぱりただ者じゃないニャね。うちの目論見も全部お見通しってわけニャ……じゃあ隠さないけどその通りニャよ。うちらがさっき話した『別の調査』に手を貸してほしいニャ」
なんか魔物がここ最近増加してるとか言っていたあれか。そう言えば関所にいた兵士達もそんな事を言っていた気がする。
俺は猫娘に更に聞き返す。
「調査の進行具合は? 原因のアタリを見つけるくらいは済んでいるんだろうな?」
「わかってるニャ。ただ……そこに棲んでいるやつがかなり厄介でうちらじゃどうしようもないニャよ。更に『繁忙の季』も重なってる今じゃあ手がつけられないニャ……それがさっき言ってた厄介な場所ニャ」
ふむ、つまり魔物かなんか知らんがそいつがここ最近魔物が増加している原因かもしれなくてシューズも下手したらそこを通っているかもしれないという危険な場所というわけだ。
ならば面倒だがそこを探ってみるしかないだろう。
この猫娘の思惑に乗るのは面倒だが、それでシューズが見つかればわざわざ海をまたぐ必要もなくなるし一挙両得だ。
「いいだろう、ただし条件がある」
「何かニャ?」
「その調査が解決したらシューズ捜索に最後まで手を貸せ。この国で見つからなかった場合はインスタントラーメンとかいう国まで来てもらう。お前ら三人全員だ」
俺は更に猫娘に条件を課した。
当然だ、そんな面倒な事に付き合わせるんだから諸共こいつらにも最後まで付き合ってもらわなければ割に合うまいて。
「はぁ!? んだそりゃ!? つーかインスタントラーメンってなんなんだよ! イルムンストレアってさっき言っただろーが!!」
「イシハラ様! 何の話かさっぱり理解できないアルよ!? 二人で駆け引きしてないで説明してほしいネ!」
ヤンキーと骨っ娘が横からやかましいが話が長くなるので無視して猫娘の答えを待つ。
猫娘はこのギルドのリーダーではないだろうが、この三人の中でまともな話ができるのはこいつしかいないだろうからな。
猫娘は少し考えこんでいる。
「…………」
「お前にそれを裁量する権限がなかろうが今お前が決めなければ話は終わりだ、俺達はお前らのイベントをスルーして王都を出る」
「………………………わかったニャ。約束する、この問題を『警備兵』として解決してくれるニャらお仲間の捜索に最後まで付き合うニャ」
「いいだろう、成立だ」
サブクエストが発生するのはこりごりだがどちらにせよ人手は増やした方がいいと考えていたから渡りに舟だ。なんか結局このままだらだらとシューズの国まで行きそうな感じがするし、そうなった時のために準備しておかねばなるまい。
まったく、この世界はどんな時もままならないな。
------------------------------------------
☆サブクエストが発生
『シュヴァルトハイム王都近辺での魔物増加の原因を突き止めろ』
------------------------------------------
「いやイシハラ様!! 説明してほしいアルっ!! 何をどんどん話を進めてるアルかっ!!」
「断る、面倒だし。安心しろ、お前は今回留守番で連絡役だ。だもん騎士が戻ってきたら野暮用で少し外すと伝えておけ」
「えっ!?………よ、喜んでいいか微妙アル!! ボクこんな知らない街で一人で過ごすアルか!? せめてもっと鬱蒼として暗くてジメジメした場所はないアルか!?」
なんかわけわかんない事を言っている骨っ娘を置いて俺はこいつらに話を聞くためにギルドの外へ出た。
------------------------------------------
◇<シュヴァルトハイム王都.食事処『靴下』>
俺達はまず詳しい話の打ち合わせをするために臭いそうな店名の食事処で飯にした。
食欲が無くなりそうな店名だが飯は美味い。
ヤンキーは話に納得していないようで未だにイライラしながら飯にありついている。
「……納得いかねぇ……おい、エア。オレ達にも説明しやがれ、なんでこんな野郎に仕事を手伝わせるんだよ?」
「おいウンコ。食事中にベラベラ喋るな、マナー違反だ」
「食事中にウンコとか言ってるやつにマナー云々言われたくねえんだよ!!」
俺は食事のマナーについてヤンキーに説教をしてから無言を貫いて食事をした。
「ビリー、あんたもわかってるニャよね? うちらのギルドの現状を……ここいらで一発大きな仕事で一山当てないとマジで存続すら危うくなるってあんたも言ってたニャよ」
「……わあってるよ……だがそれとこいつと一緒に仕事をするのに何の関係があんだよ?」
「ナツイにゃんは魔王軍幹部を撃退するくらいの技術の持ち主ニャよ? 一緒に仕事してもらって手柄をうちのギルドのものにするんだニャ! それくらいわかれニャよ!?」
猫娘は企みを隠す事なくはっきりと言った。
まぁそれを全部わかった上で条件を呑んだんだからいいんだけど。
「……局長には話したのかよ?」
「マスターは今仕事中なんニャから今さっき決めた事を話してるわけニャいでしょ!? バカニャのかよ!? あんたはもうちょっと頭を働かせて生きろよ!? 話が進まなくてイライラするニャぁっ!」
「…………」
なんかヤンキーは猫娘に怒られている。
猫娘のキャラが変わるほどヤンキーは頭が悪いらしい、まぁ見たまんまだからわかるけど。
まったく飯の最中にうるさい奴等だ。
まぁ、要するに俺がこいつらの仕事を手伝ってシュヴァルトハイムの問題を解決してやる→こいつらのギルドが一躍有名になる→仕事が増えてこいつらは万々歳、ってな感じにしろって事だ。
そうすれば見返りとしてシューズ捜索の手伝いをしてくれるらしい。
ただそれだけの話だ。
俺は飯をたいらげてご馳走さまをした。




