百十七.面倒だけどクエストに付き合おう②
「準備できたんなら問題の場所にさっさと向かうぞ。場所はどこなんだ?」
「……ナツイにゃんは話が早すぎニャ……うちらがナツイにゃんを利用してるだけとか思わニャいのかニャ……?」
「そうだとしてもどちらでもいい、どちらにせよやるだけだ。ごちゃごちゃ考えるのは嫌いだからな、流れに身を任せるだけだ」
「………淡々としてるニャあ……場所は王都から港町に向かう途中にある【フルト・フランク大遺跡群】っていうところニャ。そこは危険野良魔物地帯になってて魔王軍も近寄らない場所ニャよ」
なんか毎回話に出てくるが『野良魔物』と『魔王軍』ってどーいう関係なんだ?
『野良魔物』ってのは魔王軍傘下じゃあないって事だろうか?
「同じ魔物に分類されてても違うんだニャ、『野良魔物』っていうのは主に【先代魔王時代の生き残り】と【発生源不明】の二つに別れてるニャ。【先代魔王時代の生き残り】ってのは前魔王を失ってから魔界に帰れずにオルスに住み着いて数を増やした魔物の事だニャ。こいつらは『現』魔王に与する奴等もいるし、逆に『前』魔王配下でありながら『現』魔王の反対派もいる。好き勝手に生きて人間に関わらない稀な魔物ってのもいるんだニャ」
なんて面倒くさい世界だ、つまり要点を纏めるとこーいう事か。
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◇『魔物』の勢力分類
1.現魔王率いる魔王一派、【魔王軍】に協力する魔物→魔物
2.前魔王一派で現魔王反対派且つ人間を襲う魔物→野良魔物
3.どちらでもない穏健派
4.【発生源不明】→野良魔物
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「前魔王配下である野良魔物はほとんどが『役職』なんてものとは無縁じゃったからのぉ……知性を獲得せんからほぼ能動的に人間を襲うようになっておるのじゃ……」
爺さんが会話に入ってくる、いたのかよこいつ。
「ふむ、じゃあその【発生源不明】の野良魔物っていうのが今回の肝なんだな?」
「ナツイにゃんは理解が早くて助かるニャ、うちはそう見てるニャよ。【発生源不明】の野良魔物ってのは勢力とか縄張りとか生息地だとかそういったものとは一切関係無しに現れる魔物なんだニャ」
確かに関所でもダンプカーみたいなどデカイ美味かった魔物が突然現れたな。
あんなものがあちこちに生息してたら人類なんぞ瞬く間に滅びるだろう、あれはイレギュラーな存在【発生源不明】の魔物という事か。
「そして調査を重ねてその大元を割り出したニャ、それが【フルト・フランク大遺跡群】……発生源不明の魔物達の出現箇所からそこが一番怪しいと踏んだんニャけど……」
「お前らだけじゃ死にに行くようなもんだから俺について来いって事だな?」
「んだとコラァ!?」
「黙ってニャようんこ!! その通りなんだニャ、だから頼むニャよナツイにゃん!」
「いや、わかったって言っただろ。あとは現地に行ってから聞く、別にもう聞きたい事ないけど」
さぁ、さっさと済ませよう。
寄り道は面倒だが、大遺跡群ってところには少しワクワクする。
男の子は廃墟とか遺跡というワードに魅力を感じるからな。
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◇
<王都バルトルイム> →→ <ガラス街道>
俺達は馬車で王都を出てフランクフルト遺跡群に向かう。
来た時とは別門から王都を出たが、そこにいた門兵達とヤンキーがなんかケンカして言い争っていた。なんてどうでもいいシーンは凄くどうでもよかったので俺の物語からはカットした。
「落ち着くニャよビリー、すぐに分からせてやるニャ。この問題を解決すれば警備兵の評価も取り戻せるニャ、我慢するニャ」
「………」
目的地までは二時間ほどあるらしい、俺は暇なので瞑想する事にする。
「ところでナツイにゃん、あの女の子置いてきて本当に良かったニャ? 戦力は少しでも多い方がいいんニャけど……」
「ZZZ 骨っ娘か? あいつは警備兵じゃないし構わない。連れてこない方が良い」
「……危ないからかニャ? 意外と優しいニャ」
「それよりもお前らなんでそんなに警備兵に固執してるんだ? 見た感じ警備兵の評価を上げるために躍起になってるようだが」
「………」
猫娘は少し考えたのちにやがて口を開く。
あ、これは回想やらで話が長くなるやつだと感じた俺だったが今は居眠り中なので子守唄代わりに聞く事にした。
「うちらはみんな警備兵に救われた事があるんニャよ、かつてただの村人でありながら町を救ってのちに警備協会を立ち上げた【アラン・ピンカー】様にニャ。前勇者の時代だニャ」
初めて聞く名前が出てきたな。
どうやらこのオルスで初めて警備協会を発足させたやつの話らしい。
「それまでにも警備っていう業務はあったんニャ……各地の衛兵達から選出された兵士達による警備……けど、それはあまりに大きな税と傲慢な兵士達の存在の上に成り立っていた酷いものだったんニャよ。戦う力のない人間から税収を絞り取り、その上いざという時には無責任に逃げ出して人々を見捨てるような酷いもの……それが前魔王時代では当たり前のように行われていたニャ」
ふむ、まぁこれまでウルベリオンの兵士達を見てきたからなんとなくは想像がつく。
だもん騎士でさえ丸くなるまでは村人から警備税なんてものを取っていたくらいだし。
「それを見かねた【アラン・ピンカー】様は自衛の技術を身に付けて兵士達に頼らずに一人で魔物達と戦ったんニャ。アラン様は村人だったから特筆するような技術は一切持っていなかった、だからいつもボロボロになって瀕死だったって聞いているニャ。ただ、『生き残るのと防御や回避術が上手かった』……それが今、うちらが警備兵として使える『技術』……主に防御術や回避術、索敵術や斥候術に転じたんニャけど……とにかくそうやって人知れず魔物達と戦い続けたアラン様っていう第一の警備兵がいたんニャよ」
なるほど、そしてその男の戦いが職業神とやらに認められてこの世界の『警備兵』という職業が確立されるに至ったとかそんな話か。
きっと勇者と魔王が戦い続ける中で目の届かない場所をその男が守ってたりしたんだろう、凄い男だ。
しかし、職業神に認められるには至ったが職業差別の酷いオルスの人間達にはすんなりとは受け入れられず、また警備兵が確立された事により税収や評価を失った兵士達との確執により警備兵という職業はどんどんと追いやられたのだろう。
アランとかいう奴に助けられた一定数の人間達も声の大きい兵士達には逆らえず、警備兵は最下層の職業として世界中に認識されるようになってしまったとかそんなんだろう。
それが警備兵という職業の現状というわけだ。
「……その通りなんニャけど……理解が早すぎて説明し甲斐がニャいニャ……ナツイにゃんは本当に異界人ニャのかニャ……」
「……かっ! クソ野郎どもが……てめえらは村人達を守る気なんざ更々なかったくせに……仕事が別のやつに持ってかれそうにると権利だけを騒ぎ立てやがる……だからオレぁ兵士が嫌いなんだ」
そしてこいつらはそのアランとやらに救われた奴等で数少ない兵士に逆らおうとする奴らって事か。
「ナツイにゃん、警備協会は潰されたり人員不足だったりでどんどん数が減っていってるニャ。だから助けて欲しいニャ、うちらが……」
「何度も言わせるんじゃない、しつこいのは嫌いだと言っただろう。それが約束だからやってやる、ただしお前らも約束は守れよ。どっちでもいいけどzzzz」
「………」
「かっ、オレぁてめえを信用してねーからな! せいぜい足引っ張ったりすんじゃねーぞ!」
「うんうんうんこちゃん、カルシウムというものを知ってるか? 魚の骨をさっきの食事処から持ってきてやったから食え」
俺は持っていた魚の骨をヤンキーに突き刺した。
「痛えっ!!? てめえ食えとか言っときながらなに顔に突き刺してんだこの野郎!?」
「うるさいニャよビリー!! もうすぐ危険地帯に入るんニャから静かにしてるニャ!!」
どうやら遺跡群とやらが近づいてきたようだ、あちこちに建造物の残骸のようなものが散りばめられている。
さて、警備を始めるとしよう。
俺はライトセイバーを片手に走っている馬車の幌上部へと登り腰かける、風が気持ちいい。
「ほっほっ、どうかしたのかのイシハラ君よ」
馬の手綱を握っているじいさんに話しかけられる。
いいから黙って運転しろと俺は注意する、アクセルとブレーキを踏み間違えるなよと付け加えた。
「なっ……何やってるんニャ? 危ないニャよ」
「おいてめえ!! いきなりわけわかんねー事してんじゃねえ!」
ヤンキーと猫娘が幌から顔を覗かせる。
その瞬間、訳のわからない雄叫びが辺り一面に響いた。
〈ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァガ!!〉
「「!!?」」
早速、魔物達が登場したようだ。




