百十五.繁忙季
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☆『これまでのあらすじ』
街道をぶらり行軍していたら個性溢れるシュヴァルトハイムの警備兵(ヤンキー、猫娘、ジジイ)の面倒な馬鹿に絡まれて、それにウルベリオン騎士、死霊術師(骨っ娘)の面倒な馬鹿が応戦した。
俺は見守り役に徹する事にした。
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脳内でこれまでのあらすじを繰り広げる。
そしてあらすじを繰り広げている間に決着はついた。
俺は猫娘の上に乗りながら『早い展開で済んで良かった良かった』と安堵していた。
「ニャあッ!! よくないニャよ!! あんた一体何者ニャよ!! なんでそんな強いニャ!?」
「ウルベリオンの警備兵と言っただろう。お前達が弱すぎるだけだろう、よくそんなんで検問なぞ任されたな」
俺は襲いかかってきた猫娘を【護身術】ですぐに捕らえて難なく動きを封じていた。
戦闘描写なんか一文字もいらないくらい、大層な武器を使うから面倒な奴かと思ったらまるで相手にならなかった。
そして、他の奴等もどうやら同じようだ。
「威勢の割に呆気無さすぎる、それで良く私の旦那様に手を出そうとしたものだ。恥を知れ、もう一番同じ事をしたら次は本気で殺す」
「がっ……くそがっ……」
ヤンキーはだもん騎士にボコボコにされて地面に倒れていた。
まぁヤンキーに関しては相手が悪かった、だもん騎士がたとえ残念美人でも一応騎士だし超修行したとか言ってたから普通の人間じゃあ敵わないだろう。
「生まれてきてすまんかった……嗚呼……どうやらお迎えが来たようじゃ……天使が手招きしておる……」
「絶対許さないネ、そのまま召されるといいアル」
骨っ娘はジジイに幽霊を憑依させて気力を削いで決着したようだ。仁王立ちしている骨っ娘の足元でジジイは地面に座りこんで空を見上げ朦朧としていた。
武術の達人みたいな強キャラ感を出しておいてなに簡単に負けてんだこのジジイ。
「まぁこれで怪しい者じゃないのはわかったろう。賊の類いならわざわざお前らを生かしたりしない。俺達が賊じゃなくてよかったな」
「……にゃ~……まぁそれもそうニャけど……じゃあそのウルベリオンの警備兵が何の用にゃっ?! ここいらの警備仕事はあんたらの管轄外のはずにゃっ!」
「仕事で来たわけじゃない。説明は面倒だから絶対しないけどとにかく王都に用があるだけだ。通行証だってある」
「だめにゃっ! 通りたいならちゃんと説明するニャ!」
猫娘は意地でも来訪の理由を聞こうと動かない、いや、動けなくしてるのは俺なんだけど。
しかしおかしいな、この国ではただの警備兵がこんなにも幅を効かせられるくらいの権限を持っているのか?
それだったらエメラルドが警備兵の存在を知らなかったのはおかしいし、エメラルド母も自国の警備兵の存在にすら触れた事はなかったぞ。
何やらこいつらにキナ臭いものを感じとったがどうでも良かったので俺は交換条件を出す事にした。
「わかった、説明してやるからお前らの警備協会に案内して飯を用意しろ。それから地走竜とかいう移動手段もだ、なかったらテレポートできる奴か空を飛べる竜だ。そして安眠できる布団、山脈で採れる新鮮な飲み水、あと情報屋みたいな奴も連れてきてくれ。あ、飯には炒飯と唐揚げ、なかったらそれに似た料理が食いたい。なんか疲れたから滋養強壮剤みたいなものもあるといいな」
「要求が多すぎるニャ!? うちらの得られるリターンがほとんどないニャよ!?」
「じゃあいらない。それじゃあ息災で、二度と会う事もないだろう。お疲れ」
「ま、待ってニャっ!! む~……わかったニャよ……ギルドに案内するニャよ……」
「じゃあそれでいい」
こうして俺達は無事平穏にシュヴァルトハイムの王都に案内してもらえる事になった。
人との出会いというのは大事なものだな、としみじみ実感したりしなかったりして俺達キャラ付け軍団は王都への街道を歩いていった。
「……なんか釈然としないニャ……」
猫娘達はぶつくさ言いながら大人しく案内してくれた。
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<王都バルトルイム 『警備兵協会』>
王都に着いた俺達は寄り道をせずに真っ直ぐ警備ギルドへ向かってたどり着いた。
王都はさすがの王都って感じでまさに王都って感じだった。建物とか王都の雰囲気とかの感じとかそーゆー描写は全て省く。
どーでもいいからな。
シュヴァルトハイムの警備ギルドも俺達の会社(警備ギルド)と似たり寄ったりな感じで特筆すべき点は何もなかった。
俺達は客間みたいなところに通されて着席する。
一つ気になったというか、別になってはいないけど目に付いた点は王都にはしっかりと街への厳重な検閲が入口に敷かれており、シュヴァルトハイムの兵士達によってチェックされていたこと。
じゃあこの猫娘達は一体街道で何してたんだ、ということだ。
兵士に聞いてみたところこちらの警備ギルドにそんな依頼はしていないと言っていた。
やっぱりこいつらは私兵団の如く、勝手にやっていたに過ぎなかったらしい。
「………ニャるほど、ナツイにゃんは異界人で前の世界で似たような仕事で経験を積んでたんだニャ。それならあの強さも納得ニャ……そしてウルベリオンで起きた『王都戦争』の立役者がまさにナツイにゃんだった……【四業幹部】を倒すなんて普通じゃニャいよあんた……」
俺達は一応約束通りにこれまでに起きた事と今やっている事をダイジェストにして猫娘達に説明した、主にだもん騎士が。
猫娘は勝手に人の事をナツイにゃんとか呼んでるが、どーでもいい事なので無視した。
客間には、真剣に話を聞く猫娘と話をするだもん騎士、イライラしてそっぽを向いてるヤンキー、今さらになって人見知りを発揮して借りてきた猫みたいに大人しくなってる骨っ娘、今にも徘徊老人になりそうなジジイ、今日のやる気分が無くなった俺、と個性溢れるメンバーが手狭に座る。
「そして今は仲間の警備兵が行方知れずになったから捜索してるのニャ。ふむふむ……それがセーフ家の三女……」
「知っているのか?」
「名前だけはニャ。守護貴族のセーフ家は有名だニャ、まぁとにかくわかったニャよ。騎士さんがいるんだったら間違っても害はなさそうだしニャ、それでこれからどうするニャ?」
「騎士のつてを使って王都でセーフ・T・シューズの居場所を探る、もし有益な情報が出なければ地走竜を借りて港町で別れた仲間と合流するつもりだ」
「随分まどろっこしいな、んな事するよりイルムンストレア国に突っ走ってそっちで探した方が早ぇんじゃねえのか?」
話しているだもん騎士と猫娘の会話にヤンキーが乱入した。
「勿論そうできるならそうしている、だが、セーフ・T・シューズの足取りがわからない。恐らく一人で行動していると仮定すると……道中で魔物による襲撃にあっている可能性も高い、このシュヴァルトハイムには厄介な魔物が棲みついている場所があると聞く。警備兵ならば知っているんじゃないのか?」
「………ちっ」
「なるほどニャ……だから騎士を二名も選出して捜索に当たってるニャね……地走竜だけど……たぶん借りるのは難しいニャよ? 今シュヴァルトハイムでは【繁忙の季】に入っちゃったから大手の商会がほとんど独占してるニャよ」
「……そうか、シュヴァルトハイムでは今が【繁忙の季】なのだな……だとするとますます急ぐ必要があるな……」
「アクア、【繁忙の季】って何アルか?」
「別名を【活性化】とも言ってほぼ全ての職業の業務が多忙を迎える時季があるのだ、騎士であろうと農民であろうと商人であろうと満遍なくな。魔物達が荒くなる事で戦う者達が、怪我人が増して医療従事者が、土地が荒れる事で農民が……といった具合にな」
また新たなワードが出てきてしまった。
あれか、地球で言う12月や3月に多い決算期のようなものか。
「つまり……魔物達が荒れ始める時季って事アルか……」
「ならばモタモタはしていられないな、ナツイ。私は知り合いに情報を当たってみるからナツイは別口から情報を探してみて」
「合点」
だもん騎士はそう言ってギルドから出ていった。
さて、ならば俺は飯をとりつつ酒場でも行ってみるか。
やはりRPGの情報収集といえば酒場がセオリーだろう。
「待ってニャ、ナツイにゃん」
席を立つと猫娘が俺の手を取って呼び止めてきた。
なんか俺に用があるのか? 会ったばかりなのに『金貸してニャ』とか言うんじゃないだろうな。
「仲間の捜索……うちらも手を貸すニャ。人手は多い方が絶対いいニャよ? 人海戦術ってやつニャ」




