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十一話 悪夢と願い


「砦が壊滅しているだと」


「斥候隊からの情報です。突然変異種と思われるオーガに砦に襲撃され、守備隊の一人は斥候隊に情報を伝えて、息を引き取りました。その後、生存者を探索しましたが守備隊の全滅が確認されました」

 

兵から伝えられた情報はアウルに衝撃を与えた。守備隊はピグロ辺境領で厳しい調練を受けて、各砦に配備されていた。


「ピグロ閣下はなんと言っている?」


「予定を変更して、近くの砦に集合せよと連絡が来ています」


「了解した」


 目的地の砦が壊滅した為、ピグロは近くの砦に集合するように指示を出していた。しかし、斥候兵が聞いた話によると変異種のオーガが一匹のみで砦を落したということになる。


「まさか、魔王種が現れたのか。だが、現れたら教国の巫女が警告を発するはず」


 オーガの突然変異種だろうと百人以上が警備している砦を落せると思えない。魔王種が可能な話である。


 だが、魔王種が現れたら教国の巫女が予知し、各国に警告をするように決まっていた。だからこそ、教国は魔国以外から侵略を受けずに支援もされていた。


「気を引き締めることにはことには変わらないな。移動を開始する」


 教国の事は記憶の隅に追いやり、進路の変更を命じた。もし、魔王種が存在するなら王国の危機ではすまない。世界全体の存亡を賭けた、魔物との戦争となる。


「なんだと、前線の砦が全て壊滅だと! それは正しい情報なのか?」


「はい。各砦から負傷兵が次々と後方の砦に移っていると報告がきております。負傷兵の中に副隊長も証言しており、正確な情報と思われます」


 最前線の砦の数は十二か所。退却した者の情報を集める同じ時間帯に十二か所全てが攻撃を受けて、陥落していた。十二か所の魔物の全てを合わせた数は十二万に上る。


「前回の四倍。魔の森にそれだけの魔物を養う食物は無いぞ」


「閣下、このブルーイン領軍は一兵になろうとも魔物達を食い止めましょうぞ」


 そうだ、そうだと後ろの貴族達も声を出した。しかし、南辺境軍の総数は約四万。これは後方支援要員も含めての数である。


「王都、周辺の領地は強制退去。皆、すまないがここで死んでくれ」


「身命を尽くしても守りましょう、南辺境の民を!」


 ここに集まった貴族は前回のテラス・キマで家族や友人を失い、復讐に燃えている者も多い。


「閣下、我が全員が討死にしてしまったらこの責任を取るものが居りません」


「そうだな。誰か、いい案を持つ者はいないか?」


 突然、ピグロとブルーインが訳の分からない話を始めてた。もし、ここにいる全員が死ねば、王国は崩壊するだろう。しかも、テラス・キマは災害に近く、責任を取れるものなど居るはずない。


「私は老いぼれが死ぬのは構わないですが若い者が死ぬのは耐え難いと考えております」


「儂もそう思う。いっそのこと、その者に儂の地位も譲るとするか」


 二人はアウルを見る。周りの貴族も耐えられなくなったのか笑いだした。


「そういうことだ、カラミタ卿。貴卿は若い、生き残れ」


「儂も元から考えていた。エリーゼと結婚すれば、儂の後も継ぎやすいだろう」


「ですが、私も閣下ともにここで朽ち果てる覚悟にございます」


「これは南辺境伯としての命令である。アウル・カラミタ子爵は辺境軍が崩壊した場合、戦域を離脱。我が娘エリーゼを娶り、南辺境伯を継承せよ」


 アウルはピグロにここまで言われてしまったら何も言えない。しかし、自分が退けば、カラミタ領軍も退くだろう。最高戦力であるカラミタ領軍が居なくなれば、全滅することは目に見えているはずだ。


「拝命いたしました。しかし、一つだけ質問してもよろしいでしょうか」


「よかろう」


「何故、私なのですか?」


 ピグロに質問した瞬間、目にも止まらない速度でブルーインに拳骨を落された。


「アウル、お前は若い。もちろん、それだけではない。南辺境は他の辺境に比べれると経済や文化が栄えない。何故かって、テラス・キマで五十年に一度の周期で全てが無に帰るからである」


 前回はアウルの両親が魔物達を統制していたオーガ・キングを倒したため、被害は小規模で済んでいたがそれまでは南辺境を全域を使った、焦土戦で食い止めいた。


「よく、王都に行くと田舎者と馬鹿にされたものだよ。しかし、アウル。お前がいろいろな物を開発して、みるみるとカラミタ領は発展して豊かになった。しかし、お前は開発した道具や技術をカラミタ領だけで独占せずに儂らに惜しみなく、我々に提供してくれた。この中にはお前のおかげで領民を飢えさせずに済んだ者も多い」


 アウルは領地開発で忙しく、王都に行くことが無い為に南辺境を田舎と思ったことはなかった。周りを見ると頷く者もいた。


「儂は思うのだ。アウル、お前が居れば、南辺境の民は迷わずに済むと。だから、お前には生きてもらう」


「かしこまりました。しかし、閣下が生き残れたら関係のない話でございますよね?」


「あぁ、その通りだ」 


 アウルはこの狸を生かして、領地へと返してやると意気込んでいた。


「さて、王国の救うために作戦を考えようとしよう。皆、意見を出してくれ」


 アウル達は十二万の魔物達から王国を救うべく、計画を練っていくのであった。



 亀更新ですがよろしくお願いします。


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