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第3話 早朝。

フローラの朝は早い。


まだ薄暗い頃に、隣に眠っている娘を起こさないようにそっと起きると、着替えて顔を洗いに行く。そこの鏡で髪を一本に縛る。ついでに娘の洗顔用の水を汲んでくる。


病院の職員用の独身寮はトイレも炊事場も風呂場もフロアーごとに共同。

部屋には小さなベッドと机とイス。作り付けのタンスが一つ。部屋に戻って、昨日の夜机に広げていた看護学の教科書を片づけて、娘の着替えを一式そろえる。


隣の病院の1階にある従業員用の食堂まで行って、食券で朝食のトレーを一つ貰ってくる。フローラの部屋は2階にある。階段をのぼりながら…このところたくさん食べるようになってきた娘のために、そろそろ2食分にしなきゃな。そんなことを考える。


寮費は安いし、食費も安い。職員用の託児所も安い。でも積み重なると看護助手の給金なんかあっという間だ。


娘の着替えは子育ての終わった先輩方が持ち寄ってくれたのでほとんど買わずに済んでいる。それでも下着や靴下は買う必要がある。ゆくゆく…娘が大きくなった時のために、学費は貯めたい。できれば結婚資金も貯めてあげたい。


…あ、そういえば髪ピンが欲しいって言ってたな。そのくらいなら買ってあげれるかな…お誕生日のお祝いにしようかな。

フローラは頭の中で財布の中身を数えながら、階段を上った。


「ラーラ、おはよう。起きて、いいお天気よ?」

部屋の小さな窓を開けて空気を入れ替える。もう朝日が昇っている。寒いけどいいお天気だ。


「ほらほら、ママとご飯食べようよ」

もにゅもにゅと目をこすりながら、私の娘がやっと起きる。


最近は何でも自分でやりたいらしく、

「じぶんで!じぶんで!」と主張する。顔を洗うのも着替えるのも…時間がかかる。

これが無ければ、あと30分は寝ていられた。


手を出したり口を出したりするとぷんすか怒り出すので、娘が一生懸命ブラウスのボタンを留めたり、靴下を履いたりするのをじりじりしながら待つ。


…これがいわゆる”反抗期”ってやつかしら?


顔を自分で洗っていた娘の顔が、タオルから覗く。満足そうに笑っている。


白っぽい金髪に、ラベンダー色の瞳。かわいいったらないわね。私もいい加減、親バカだわ。

そう思って私まで笑ってしまう。


「はいはい、席についてね。お祈りをしましょう」

そう私が言うと、椅子によじ登って座った娘が、子供らしいむくむくの手を組んで食前のお祈りを始めた。


私が産んだ、私の娘。

ラウラはもう3歳。





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