40.狸親父
下界ではメリルたちの活躍で辺境の砦が壊滅し、魔法が解けて目を覚ましたテイタム第一王子が王位を継承して、その後両国に和平条約が結ばれた。
天界の騒乱も二人の王子の活躍ですぐに治まり、それからしばらくした後青年と少女を連れたメリルたちが天界に戻って来た。
「おお、よく来たな。ショー、リル。」
父親によく似た金色の翼を持った青年が宰相を抱きしめた。
「お爺様、お久し振りです。」
次に後ろにいた濡れ羽色の翼をしたリルが宰相を抱擁した。
「お爺様ご無沙汰しています。」
「おお、リルもますます可愛くなったなぁ。」
鬼の宰相と言われる男の目に涙が浮かんでいた。
そこに花束を抱えたリチャードがやってきた。
「やあ久しぶりだね、リル。」
リチャードはそう言うと大きな花束をリルに渡した。
「わあ、リチャードおじさま。ありがとう。」
リルはリチャードに抱き付くと嬉しそうに花束の匂いを嗅いだ。
「うーん良い匂い。」
「お嬢様それは私が今日泊まるお部屋に飾っておきますので、取り敢えず王宮の舞踏会がありますから着替えをお願いします。」
リルは屋敷のメイドに促されもう一度お爺様に挨拶すると着替えに行った。
「ショー様もお願いします。」
執事に促されショーも着替えに消えた。
応接間に残ったリチャードは彼らが消えた方を見ながらぼそりと呟いた。
「叔父さんもしかして彼らに会いたいがためにあの時あんな行動をしたの?」
呟いたが答えが返ってこないと思っていた宰相から返答があった。
「当たり前だ。孫だぞ。会いたいに決まっている。」
やっぱりな。
二人の王子を迎えに行ってメリルの大きいお腹を見た時ふと頭を過ぎった考えは間違っていなかったようだ。
アン女王では下界に降りた孫に会いに行く許可は、ぜったいださないだろう。
それをわかっていた宰相は第二王女と第三王女の件を使って、今回の事件を起こした。
でもあんなに思惑通りに普通は動かせるもんなの。
「お前の叔母の通り名は”天界の預言者”だ。」
どうやら漏れてしまった独り言に叔父がまたも答えてくれた。
そうだった。
叔母は類まれな預言者でその予言を外したことがない。
とは言ってもここまで思い通りに事を運べる叔父をリチャードはこの”狸親父”と心の中で罵った。
それから数十年後。
メリルとジェシカの生んだ娘たちはそれぞれ二人の王子と結婚した。
最も結婚する時は二人の父親による壮絶な妨害があったようだが、孫に頼まれた宰相と宰相に脅されたリチャードによって無事結婚式は行われた。
それ以後王妃になったリルのお爺様と彼女の父によって天界は永い平和が続いて行った。




