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濡れ羽色に輝く片翼の戦士  作者: しゃもん
第三章 天界の変革
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39.二人の王子。

 宰相は病死を発表した後、リチャードを呼ぶと下界にいる第二王女と第三王女が生んだ息子二人をすぐに天界に連れてくるように命令した。


「第二王女と第三王女の息子!それって下界のどこにいるんですか?」

「居場所は義娘むすめのメリルに聞け。」

「えっ!なんでここでメリルちゃんの話がここで出てくるんですか?」

「第二王女と第三王女が翼を折って下界に降りて息子を生んだ後、二人はメリルに息子を託したんだ。」

「はあぁ?それじゃ処刑した後、城門に晒した翼はいったい何だったんですか、叔父さん?」

「女王からはもっとも屈辱的な死に方をさせるようにとのご命令だったのでな。二人に自ら翼を折らせて下界に落としたんだ。」


 まったくこの腹黒狸は・・・。


「まさかその話、彼女たちの伴侶には言ってないでしょうね。」

「そう言えばどんな酷い処刑をしたんだとトーマスに詰め寄られた時、今の話をしたようなしないような・・・。さて良く覚えておらん。どっちにしろ二人は下界で息子を生んだ後、まもなく亡くなったんだ問題ない。」


 このぉー狸親父はぁー。


 全く動かないリチャードに業を煮やした宰相は彼を怒鳴りつけた。

「いいから早く行け。」

「はいはい。」

 リチャードは怒鳴り始めた宰相に背を向けると王城の廊下を駆けた。

 駆けながら熱愛していた妻に死なれたのにあの誇り高いトーマスが、命乞いをしてまであのアン女王の愛人になった態度が今まで腑に落ちなかったんだが、いまの話を聞いてやっとその理由に納得した。


 あいつ自分の息子を助けるために・・・。

 馬鹿な男だ。

 リチャードの目に涙が滲んでいた。


 下手をすると辺境で反乱を起こしたジェームズもトーマスから聞いてこの話を知っていたっぽいな。

 だから息子たちに目を付けられないように負けるとわかっていてあんな戦いを挑んだのか。

 なんとも胸糞悪い話にリチャードは思考を止めると部下に緊急招集をかけると、宰相に言われた通り下界に向かった。


 一応、下界でのメリルとヒューの屋敷は知っていたのでその屋敷近くの森に降りたった。


 全員が翼をしまうと屋敷を囲むように部下を配置してからヒューが張った結界を敵意をにじませながら足で踏みつけた。


 途端、結界が反応して人の目には見えない白い光が上がった。

 これですぐに誰か来るだろう。

 案の定、ヒューが非常に不機嫌そうな顔で現れた。


「なんでここにお前がいる?」

 リチャードは両手を頭の上にあげてヒューを見た。

「宰相に頼まれたんだ。」

「はぁなんでまた。」

 ムッとした顔でヒューは何かを考えるとついて来るようにリチャードに言うと屋敷に向け歩き出した。


 屋敷に近づくと初老の男性が玄関に佇んでいた。

「客だ。」

 男性は頷くと扉を開いてくれた。

 ヒューはリチャードをその扉を通ってすぐ傍にあった応接間に案内した。

「へえ結構しゃれてるじゃん。」

 リチャードが周囲を物珍しそうに見て回るのをヒューが扉の前に立って見ていた。

「それで何のようだ。」

「メリルちゃんに会いたい。」

「なんで?」

「天界の血を引く王子の行方が知りたいからだ。」

 リチャードが真剣な顔で振り向くとヒューの手が剣に伸びた。


「何のことを言ってる?」

 ヒューの態度でリチャードも気がついた。

 どうやらここに王子たちはいるようだ。


 さてだがどうやって目の前でいきりたっている従兄から王子たちを引き渡してもらうか。

「一応言っておくけど周囲はもう部下が押さえているから逃げられないよ。」

「誰に言っている。」

 そうなんだよね。

 ここには隊長クラスの実力者が二人と副隊長クラスの実力者も二人いるんだよね。

 まともにぶつかったらこっちが潰されそうだよなぁ。

 やっぱりここは相手に同情してもらうのが一番か。

 そう思ったリチャードはサラ女王が死んだ経緯をヒューに話した。


 話し終えたとき突然ドアを開け銀色の髪をしたトーマスの若い頃にそっくりな青年が現れた。

「トーマスが死んだって本当ですか。」

 リチャードは一瞬目を瞠った後頷いた。

 青年は落胆して肩を落とした。

「それでミケイル王子は天界に戻りますか?」

「何で僕の名を知っているんですか?」

「あなたはトーマスの若い頃にそっくりですよ。」

 リチャードの言葉に彼は嬉しそうに微笑んだ。


「トーマス。」

 そこにお腹が大きいメリルとジェシカそれに金髪の青年が入ってきた。


「えっメリルちゃんそのお腹・・・。」

 まさかあの狸親父。

 リチャードはこの騒乱の原因を見た気がした。


「はい、もうすぐ生まれます。」

 メリルが嬉しそうに話す隣でヒューがクリスになんで止めなかったんのだと文句を言っていた。

 騒がしくなった所で二人の王子は決心した顔でメリルたちにこれまでのお礼を言うと、リチャードを見た。


「このままだと天界は滅茶苦茶になりますよね。」

 リチャードは頷いた。

 二人はすぐにリチャードと一緒に天界に戻った。


 天界での争いは第二王女と第三王女の遺児を連れたリチャードが現れてすぐに鎮静化された。

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