↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

初恋はきっと何処かで嘘をつく。[六話]

夏織と復縁した透は、三浦梓に促され、清水葵にそのことを伝える。それでも葵は、透を好きでいることを諦められずにいた。


夏織から謝罪を受け、二人と花火をすることになった三浦。

透の「彼氏ができたら寂しい」という言葉に、秘めていた恋心を揺さぶられる。後日、葵と話す機会を得た三浦は、同じ人を好きな彼女に共感し、その恋を応援する。


三浦が自分の気持ちを伝えられない背景には、中学時代の出来事があった。

透の最初の彼女は、三浦への嫌がらせを目的に彼と付き合っていた。その事実を知る三浦は、透が傷ついたのは自分のせいだと、今も責め続けていた。

サブタイトル

[前振り]


-新学期九月・中村夏織-

今日から新学期だ。

夏休みの私は爛れていた。

相沢のバイトのない日は家へ行き、体を重ねる日々。


相沢に求められるのは嬉しかったし、こうしてないと不安で堪らないのだ。


「かーおーりー!」


「小鳥」

小鳥の肌は、部活で少し日に焼けていた。やっぱり運動部は大変そうだ。


「あれから大丈夫?」

小鳥は相沢と復縁したことは知っている。


「大丈夫、仲いいよ」


小鳥の眉がピクッと動いた。

はぁと大きなため息をつく。

「それなら良いんだけどさ……」


「ごめんね、心配かけて」


部活を辞めること、相沢と復縁すること、全部小鳥には反対されていた。

だけど綾香のグループにいじめられても、私のそばを離れようとはしなかった。

私の親友。


「でさ!夏休みはなんかしたの!?」


相沢のことはあまり好きじゃないらしいが、恋バナは好きみたいだ。

私としても、親友が相沢をよく思わないのは少し寂しいが安心してしまう。


「多分、全部したよ」

そう言って小鳥に、微笑む。


女子同士の下ネタがエグいとか色々言われてるが、きっとあれは身体的に変化があるからかも知れない。


痛かった?とか血が出た?とか、きっと男子側は特段変わらないから。

具体的に話す分、エグいように聞こえてしまうのだろう。


「ぎゃぁーー!」と喚く、小鳥。

それをくすくすと笑う私。


部活も辞めた、男子とも話さない。

夏だってずっと一緒に居た。


でも不安は拭えない。


前に、突然振られた時の感覚。

学校が始まった途端、あの時の不安が戻ってきた。


相沢は、先輩から告白もされていた。

自分から女子と関わらなくても、引き寄せてしまう何かがあるのだろう。


あの時私を綾香達から守ってくれたように、きっと彼は誰にでも……。


早く相沢に会いたい。


-翌日和菓子屋漆戸バイト終わり・相沢透-

九月になり、バイト帰りにはもう外は薄暗い。

俺は三浦を家まで送るのが、日課になっていた。


「吉田さんのアカウント見つけた」

突然三浦がスマホを見せつけてきた。

スマホの画面には、吉田綾香の名前があった。

「なんだこれ?」


「アプリだよSNSってやつ」


三浦SNSなんてやってるんだ。

そっちの方が意外だった。

「これがどうした?」


「これアイコン真っ黒だろ?なんかあったんじゃね?」


そういうものなのか。

三浦のプロフィールが気になって、ぽんとスマホをタップしてみる。

アカウント名は『賢い柿』。アイコンは亀のしっぽだった。

「お前のアカウント一体なんだよ……」


「昔飼ってた亀」

「陰キャは本名でSNSなんかしないぞ」

三浦のアカウントを見てみたが、フォローはアニメやゲームの情報サイトやグッズイベント告知のアカウントだらけだった。

そしてフォロワー0。三浦らしくて、少し安心してしまう。

「私のは良いよ!吉田さん真っ黒ってことはまだお前のこと引きずってんじゃない?」


「アイコンくらいじゃわかんないだろ……」


「失恋した時とかに真っ黒にする奴、たまにいるじゃん」


やってないから分からない。

「そういうものなのか」

今更綾香に関しては興味もない。

夏休み前のあの出来事は、ほぼ絶縁宣言のようなものだ。


ふと気になることがある。

「三浦でさえやってるなら、結構いろんな人がやってる?」


「でさえってなんだよ……まぁやってるんじゃない?」


「じゃあ夏織もやってるのかな?」


「まぁ調べてみないと分からんけど。聞いてないならやってないんじゃない?」

三浦がぽちぽちと検索してくれた。

「あ、いた」

アカウント名中村夏織演劇部一年生。

フォローもフォロワーも、大体二百人ほどだった。

「結構男子も多いな」


「まぁ中村さん美人だからね」

美人だからと言う言葉に少し胸がざわついた。


「このアプリってメッセージとか出来るの?」


「出来るぞ、投稿にコメントつけたりDM(ダイレクトメッセージ)とかもな」


「そ……そうなんだ」


「お前そんな事も知らないのかよ」

知らなかった。

うーん。

前に、ほかの男子とはメッセージしていないと言われたことはあるが。

それでも、どうしても気になってしまう。


三浦がじーっと俺を見てくる。

「不安なら本人に直接聞けばいいだろ?」


俺は不安なのだろうか?

ただそれを指摘するのは嫉妬深いと思われそうで、俺の方が夏織を好きに見える気がして嫌だった。


「うーん」


「深く考えるなって、気にしなくて良いと思うぞ!」

ポンポンっと背中を叩かれた。

「不安なら始めれば良いじゃん!」

パシャリ、と音がした。三浦がスマホをこちらに向けていた。


「急に何すんだよ」


「アイコンの写真撮っとかないと!後で送るからさ」


「良いよ、やらないから」

俺の知らない夏織がいた。

そのことに胸が苦しくなってしまった。


-翌日図書室放課後・相沢透-

放課後、クラスの男子から「図書室でお前を待ってる人がいる」と伝えられた。


めちゃくちゃ曖昧な呼び出しだ。

こんな事をする奴は一人しかいない。


「ねぇーー!相沢くーーん!君の彼女にぶたれたー!」


テーブルの上で上半身をバタバタとする澤愛。

今日は図書室に誰もいない。


「……お前どうせ嫌味でも言ったんだろ」


「普通の恋バナだよ!」


普通の恋バナねぇ。

『恋愛なんて、好きな気持ちが大きい方が傷つくんだからさ』。

未だに、澤愛の言葉がチラついてしまう。


「また中村さんと付き合ってるの?」


「恋バナする気はないぞ」

澤愛と話してると自分がよく分からなくなってしまう。

「ふふふふふ」


「何笑ってるんだよ」


「不満、不安、不和、不穏」

「そして不本意」

「不が五つ」


「中村さんと別れたいんじゃないの?」

「先輩にも告白されてるんでしょ?なのに好きでもない中村さんと付き合ったのはどうして?」

ピリッと胸が痛む。

いやそうだったんだ。

どうせ夏休みが終わるまで付き合えない。

そう思って、夏織とやり直したんだった……。


だけどメッセージは、送っちゃったから……。


「中村さんのこと好き?」

黙って俯く俺を澤愛は下から覗き込む。


俺は夏織のことを……。


-ロングホームルーム・相沢透-

文化祭。

そう九月末には文化祭がある。

坂本も大張り切りだ!

「よっしゃぁーー!」

「出し物何にする!?何にする!?」

新学期早々テンションが高い。


「文化祭って言ったらあれだろ?お化け屋敷とかが無難じゃない?」


「バカやろー!文化祭マジックだ!教室で文化祭のために一緒に作業する、すると今まで見えなかった一面が見えてくる、たちまち異性として意識してしまう二人。文化祭後今日親いないんだよね?とはじまる二人の恋!」

坂本は熱く語る。

「カップル同士で過ごせるダンス会場にしよう!」

「定時で音楽流して!教室もそれっぽく飾りつければそれで終わり!」


でも、この案にもいいところはある。

ダンス会場とやらが出来るなら、文化祭当日はほぼ暇だ。

回る分には楽しめるだろう。


「よし乗った」


「いいねぇ!」


今更だがこんな準備のない出し物なら、ほとんどクラスメイト内の交流は無いだろう。

そのことに関して坂本は気づいていないようだ。


「誰も案がないなら先生もそれで良いぞ」

担任がそう言ったらなんも出ないだろ……。

「先生も誰と誰が付き合ってるか知りたいし」


おいおい。お前おっさんだぞ?

普通若い女教師が言う奴だろそれ……。


その後特に意見も出なかった為ダンスフロアに決定、俺たちのクラスはほぼ休憩室だ。


ふと視界に、机に伏せる吉田綾香が映った。


-独白・吉田綾香-

私の初めての彼氏。

そんな彼氏が友達に取られた。


その友達を友達が虐めていたら、私まで巻き込まれた。

私だってそのいじめを見て気が晴れていたが、やったのは別の連中だ。


それなのに大きな声で透があんなこと言うから。

私は彼氏を取られた被害者なのに、夏織は幸せそうに透と過ごす。


-夜自室・三浦梓-

意外だった。

相沢は結構嫉妬深い。

私にそんな一面……。

私……男子との絡みほぼねぇ……。


ただこれで一つ問題ができた、あの天真爛漫清水先輩だ。

きっと彼女は誰にでも話す陽キャタイプ。

相沢との相性だけで言うなら、他の男子を寄せ付けない、影のある美人タイプの中村さんの方が多分良い。


少しメッセージしてみるか。

「先輩、実は相沢結構嫉妬深いところあるんです、面倒くさくて。地雷がたくさんあってそれを相手に説明しない感じで……。相沢のことそれでも好きになれます?」


ぽちっと。

ぴこん。

先輩からの返信は早い。

「多分大丈夫だが、急にどうしたのだ?」


……。

急だな、確かに急だ。


とりあえずこれまでのアプリの件の経緯をメッセージにする。

「男の子は結構細かいところを気にするのだな……」

清水先輩は引いてしまっただろうか。


「多分相沢だけだと思います、それに中村さんには聞けないみたいで」


「そうか、私は大丈夫だ」


「この前は無責任に頼んですみませんでした」


「この前?」


「頑張って欲しいって……」


「大丈夫だ、元より告白するくらい好きな人だ。君に言われなくても頑張っていたさ」

この人は優しい。

自分とは違う明るい世界で生きていて、人の悪意に触れたことないような。


私は悪い子だ。

先輩に恋を押し付けて、自分は逃げている。

こんなこと誰かに知られたら、またイジメられてもしょうがないのかもしれない。


相沢にも嫉妬する一面があって驚いたのかも知れない。


この前の写真。

日も落ちたバイト終わりの帰り道、街灯に照らされた相沢の横顔を見つめる。


スマホを投げて、枕に顔を埋めた。

今日はもう寝よう。


-翌日放課後・三浦梓-

下校する時間だ。

今日はバイト、学校をでたら私は一人和菓子屋へ行く。

中村さんが相沢を呼びにきた。

二人は今日一緒に帰るようだ。

部活へ向かう生徒たちと別れ、私たち三人は下駄箱へ向かった。


下駄箱へ向かう途中清水先輩がいた。

何やら別の生徒と言い合っているようだ。

「辞めるなんて言わないでくれ!私だって怪我をしても諦めずに」


「私はもういいの、どうせ全国で勝てないし」

どうやら部活を辞める女子部員を引き止めているようだった。


「あ……あぁ!待ってくれ!」

話していた女子生徒は行ってしまった。


「清水先輩?」


「あ!三浦くん!……みんな一緒なのだな……」

少し気まずそうだった。

それもそうだ。告白した男子とその彼女がそばに居るんだ。

「あ……相沢、私先輩と話してから帰るから」


「二人は知り合いなのか?」


「いいから、お前は今邪魔だからどっか行けって」

そう言えば相沢は私と先輩が話してるのを知らない。

相沢の背中を押し、あとは中村さんに任せた。


-その後帰り道・中村夏織-

今日は相沢のバイトがないので二人で帰れる。


相沢は機嫌が悪そうだ。

こちらを見ずに、いつもより歩くスピードが早い気がする。

「相沢?なんかあった?」


相沢はふうっと息を吐き、しばらく立ち止まった。

「……夏織?浮気とかってしてないよね?」

意外な言葉だった。

初めて聞く、相沢の不安の声。


「してないよ?何かあった?」


「いや……なんでも」

なんでもない事は無いだろう?

「なにか不安なら話聞くよ?」

「誰かから何か言われた?」


私は夏休みずっと相沢と居たのだ、今だって。


きっと誰かに何か言われたに違いない。

綾香?はまずない。清水先輩も周りくどい言い方をする人じゃない。となると残りは。

「三浦さん?」


「いや、違うよ。夏織SNSやってるでしょ?」

これまた意外な返答だ。


「もう使ってないけど」

本当に使っていない。

入学しばらくはやってたけど、綾香達とのごたごたもあって見たくもなかったのだ。


「いや男子のフォロワーたくさんいるなって思ってさ」

そんなことで不安になられても私も困る。


「嫌なら、消すよ」


「嫌ならって……」

どうして欲しいのだろうか。

今までアプリがあったこと自体気に入らないのだろうか?


「どうしたら信用できる?」


「ごめん。俺のただの考えすぎ、前他の男子とメッセージしてないって言ってたからさ」


「してないよ……」

「でも相沢だって私以外の女子と仲良くしてるじゃん!三浦さんとずっと一緒で!私には相沢しかいないんだよ!」

正直幼馴染の女子とバイトも一緒、たまたまだって言われても苛立ってしまう。


「三浦を見守るきっかけ作ったのは、夏織だけどね」


「……。」

こればかりは強く言えない。

でも私は知らなかった事だ。


「それに、三浦はそのアプリ、男のフォロワーいなかったぞ」

三浦さん、三浦さんって。

実際に女子と関わってるのは相沢なのに。

使ってないアプリのことで責められるなんて。


「相沢が三浦さんと関わらないなら、アプリは消す」


相沢の目が鋭く私を見た。

「三浦と関わらないならって、やっぱりそのアプリでメッセージとかしてるんだ」


今の言い方で、相沢の触れられたくないところに触れてしまった気がした。

「ちがう!……っ。してないよ!ほら!見なよ!」


「見てもわかんないよ、俺そのアプリ知らないし」


なんなのよ、もう!

今まで順調だったのに……。

悔しくてどうにかなりそうだ。


「私は演劇部だって辞めたのに……」


「そんな事頼んでない」


軽く言ってくれる。

でも、前に振られた時を思い出してしまう。


「なんでもするから……」

「なんでもするから信用してよ……」


「まず信用されないことしなければ良いのに」

それから、相沢と話すことはできなかった。

半ば義務のように家まで送ってもらった。


-夜自室・中村夏織-

最悪だ。

最悪だ、最悪だ。


こんなことで亀裂が入るなんて。


私はアプリのアカウントを消した。

そして相沢にメッセージを送る。

「ごめんなさい。アプリはアカウントも全部消しました、お願い許して」


いつもなら早い返信が今日は来なかった。

不安でたまらない。


誰か、こ……小鳥に電話してみよう。


「もしもし、小鳥?」


「どうしたの夏織?珍しいじゃん電話なんて」


「ごめん夜中に、少し落ち着かなくて」


「大丈夫だよ?何かあった?」


「いや、もし小鳥の彼氏がさ?アプリやってて女子のフォロワーたくさんいたらどう思う?」


「んー……私はやっぱり嫌かな?それが普通じゃない?」


「……そうだよね。それが普通だよね」


「まさか、相沢そんな事してんの?ほんっとあり得ない!」


「ち……違うよ!相沢はそんな事してないよ」


「そっか。また相沢と何かあった?」


「……別に何もないよ!知り合いの話!少し気になって」


「そっか、また明日学校で話そー。私もう眠くて」


「ごめん本当夜中に!また明日ね!」


「じゃあね〜」

電話が切れてしまい、また一人ぼっちだ。

寂しい。

相沢返事を頂戴。


-翌日ロングホームルーム・吉田綾香-

「今日からダンス会場?の準備をはじめるぞー!まずはリーダー決めから坂本!お前で決定な!」

先生が、文化祭の準備について説明をはじめた。

「ちょっと待ってくださいよ!なんで俺なんすか!」


「お前やりたかったんだろ?」

「後装飾とか色々作るからなぁ、吉田!お前坂本のサポートしてやれ!」


「えぇ!なんで私なんですか?」

男子は苦手だ、透と付き合ってたから話せてたけど今は違う。


「お前美術部だろ、ポスターの作成とかも頼んだぞ?クラスメイトは適当に誘っても良いから」


文化祭一週間前は部活も休みで、文化祭の準備をして良いことになっている。

まだ二週間はある、それまでに何をするかを決めてみんなをまとめて……。


……私には無理だ、あの一件以来みんなに無視されていた。

手伝いなんて頼めるはずない……。


「よし!吉田!一緒に頑張ろうぜ!」


「え?」


「なんだよ!遠足同じ班だったろ?ほら!」


「でも……」


「じゃあどんな感じの模様にするか決めていこうぜー!」

坂本くんが仕切り始める。


「じゃあ手伝いにこれる奴どんくらい居る?部活よりしんどく無いって!」

徐々に坂本くんの周りに、手伝う人が集まってくる。


なんだろう、安心する。

きっと私が無視されてることも、何をしたかも知ってるはずなのに。

何もなかったように振る舞って。


私の事で小言一つ言わずに、クラスをまとめてる。

ただ楽しく文化祭をしたいから、それだけで頑張っているように見えた。


-放課後・吉田綾香-

「……ごめん!坂本くん!放課後時間あるかな?」


「大丈夫だけど文化祭のこと?やる気だねー!良いね!」


「ちょっと違うんだけど二人で話がしたくて」


「別にいいよ!部活始まるまで時間あるから!」

二人であの場所へ行く。この学校でほとんど人が訪れることのない、あの非常階段下。

よく話してたっけ、嫌な思い出ばかりなのに、ここが一番話しやすい。


正直に話しておこう。

私と居ると坂本くんまで何か言われてしまうかも知れない。

「坂本くん……私みんなから無視されてて」


「うん、なんとなく知ってる」


「坂本くん……私中村夏織って子のこと凄く嫌いで。友達がいじめてるのを黙って見てて」


「それも、なんとなく知ってる」


「前、透と私付き合ってたでしょ?夏織相談してたのに、別れた瞬間透と付き合いはじめて」


「そうだったんだ……」

坂本くんは若干気まずそうだ。

「ざまあみろって思って笑ってたんだけど、透は私がいじめてるって勘違いして……みんなの前で」

「それでみんなから無視されてて……だから私と話してると坂本くんまで無視されちゃう」

「文化祭の手伝いはなんでもするから!何かあったら言って!でもみんなの前ではあんまり話さない方が……良いかも」


「うーん。俺は相沢とも友達だからあんまりどっちがどうとかは無いけど。まぁ大丈夫!普通に話すよ!吉田とも」


「え?」

「聞いてた?私みんなに無視……」


「無視って言ってもどうせ女子達だろ?俺あんまり話してないから!無視されてもかわんねぇから!」

「まぁ彼女は遠のくかも知れないけどな……」

とほほ、と泣いたふりをしてくれる坂本くん。


「ごめんね……ありがとう」


「気にすんなって!」

「じゃあさ!また明日!」

スタスタと坂本くんは部活に向かってしまった。


異性と話してない……か。

透と付き合ってた頃の私は馬鹿だったな……。

舞い上がって他の男子と話して、透のことを不安にさせて……。


喧嘩をしてからずっと窮屈だった美術室も、今日ならきっと良い絵が描ける。


-同日和菓子屋漆戸・三浦梓-

「んー!」

バイトも終わり背伸びをする。


今日は相沢も一緒。


今日のバイトは長かった、餡子の納品日。

か弱い女子には辛いものがある。


「「お疲れ様でした!」」

二人で挨拶をし和菓子屋を出る。

何も言わずに相沢は家まで送ってくれる。


夕日が落ちた、暗い帰り道。


「そーいえば三浦、この間清水先輩と話してたよな」


ギクっ……。

「そ……そうだねー。和菓子屋で会って学校でも会ったからさー……」


「三浦そんなに先輩と仲良かったんだな」


「ま……まぁなー。たまたまな、たまたま」

私は清水先輩の相沢への気持ちを直接聞いた……。

なんて話したら一体どんなことになるのだろう。

「それより、お前はどうなんだよ!彼女とはさ!」


「今喧嘩してて……」


「喧嘩?」


「そうアプリのこと聞いてみたんだ」

意外。吉田さんの時は気に入らなかったらすぐ振ってたのに。


「そうか……連絡でも取ってた?」


「いや取ってないって……でも不安でさ」


不安?

それよりこいつ、こんなに嫉妬深かったか?

「なんでそんなに不安なんだ?吉田さんの時はそんなに嫉妬深くなかったろ?」


「なんとなく昔を引きずってるって言うか……」


「昔?」


「昔彼女に振られた時さ、その子のこと好きだったんだけどさ」


「……。」

あの子の事を好きだったかぁ。

自分の髪先を触ってしまう。

「その時の彼女、きっと俺のこと好きじゃなかったからさ」


「そ……そんなことわからないだろ!」

分かってる、だってそう言ってたんだもん。


「そう思えなくて、だからきっと振られたし」

「それから自分から好きって言うのが怖くて」

返す言葉が見つからない。

以前聞いた女子たちの笑い声が蘇る。

相沢の顔を見られない。


……嫌だ。


「ら……らしくないな!相沢らしくもない!」

自分なりに声を張ったつもりだった。


「……そうかな?」


「あんな奴振ってやったくらい吉田さんの時は言ってたろ!」

「今回だってアプリで男のフォロワー沢山いる中村さんが悪いだろ!」


「……らしくないのは三浦の方だろ、どうしたんだよ急に」


「うるさい!うるさい!」

右手で相沢の横っ腹を殴る。


「いって!」

顔だけは見せちゃいけない、今私どんな顔してる?

幸い周りも暗い、家までだってもうすぐだ、私は無心で走り出す。


「ちょっと!おい!」

後ろから相沢が呼ぶ声が聞こえる。


-自宅玄関・三浦梓-

「はぁ……はぁ……」

久しぶりに走ったせいで膝もガクガクだ。


逃げた……。


私は相沢から……違う。

相沢からも過去の自分からも逃げ出した……。

好きって言うのが怖いって、私もだよ。

ずっと……ずっと……私だって怖い。


あの時、何かできたら……。


私は相沢にちゃんと好きって言えたのだろうか。

あの時何かできたら、相沢は今より素直に恋人と付き合えたのだろうか……。


声にならない声で私は泣いた。


-自宅・相沢透-

「なんだったんだよ、三浦のやつ……」

殴られた腹をさする。


でもあんな三浦初めてみた。

「ごめん、俺なにかしちゃった?したならちゃんと謝りたい」

メッセージを送る。


今の今だぞスマホぐらい見てるだろ……。


まぁ良いか……。

少し疲れた。


ぴこん。


三浦?


メッセージは夏織からだ、そういえば昨日の返信してなかったな。

「もし私のこと信じられないなら、別れよう」


ふー……。

少し落ち着いた。

心臓を冷たい何かが通るような感覚に近い。


俺から言うのは気まずかった、むしろ好都合なのかもしれない。


ここで了承したらきっと、それまで。

三浦もよくわからないし、夏織もよくわからない。

もう疲れた。


不本意……。

澤愛の言葉をふと思い出してしまう。


「分かった、別れよう」

メッセージを送る。


これで何にも悩まなくて済む。


-同日少し前自宅・中村夏織-

今日は相沢がバイトだ。

そして小鳥が家に泊まりに来てくれている。


「相沢となんかあったの?」

パジャマ姿の小鳥が聞いてくる。


「……なんかって?」


「いやこの間アプリがどうのって聞いてきたじゃん」


「うん……私の使ってないアプリ男子から結構フォローされてるでしょ?それで疑われちゃって」


「それでこの前の……」


「うん」

簡単にまとめるとこうなる。

あの時は突然言われて少し気が立ってしまった。

すぐ使ってないから消すと言えば良かったのに。

三浦さんの事を出してしまい。

引くに引けなくなってしまった。


「使ってないとか言ったの?」


「説明したけど、私も少し怒っちゃって。それからは連絡返ってこなくて」


「そっか……。ねぇ、相沢と付き合うの疲れない?」

「夏織幸せそうに見えないって言うか」


疲れる……か。

そうかも知れない。


「わかんないや。でも相沢のこと好きなの」

「相沢もきっと、この不安をどうすれば良いか分かんないんだと思う」


「じゃあ、返事来るまでずっと待つの?」


「……うん」


「でもそれ辛くない?相沢いつ返事来るか分からなくてさ、もう少しで文化祭だよ?早く仲直りしないと一緒に回れないよ?」


「……うん」


文化祭か。

一緒にまわりたいな。

拳をギュッと握ると、少し目の前が滲んでしまう。

あんなことにならなければ。


「じゃ……じゃあさ!私のこと信用出来ないなら別れようって聞いてみれば?」

「もし夏織のこと好きなら。嫌だ、ってきっとすぐ返事くれるよ!」


「そんな……もし分かったとか言われたら私……」


「そうだよね……やっぱり、やめとこうか」

「私の意見は前から変わらない、相沢と付き合うのやめた方が良いよ」


……。


そういえば相沢から好きって言ってくれたこと、今まであったっけ。

いつも不安で、どうしたら良いか分からなくて。

「……小鳥、私送ってみる。さっきの信じれないなら別れようって」


「……良いの?」


「きっと大丈夫だから」

「それに小鳥が居ないとこんなメッセージ送れないよ」


私は、メッセージを送った。

大丈夫、相沢はきっと私のことが好きだから。


-六話終-

登場人物まとめ

相沢透 主人公

身長165㎝ A型

帰宅部

好きな人 ???

好きなもの、RPG 甘いもの

嫌いなもの、特に無し


三浦梓 相沢の幼馴染

身長152㎝ A型

帰宅部

好きなもの RPG 和菓子

嫌いな人 中村夏織


吉田綾香

身長158㎝ O型

美術部 

好きな人 坂本太一

嫌いなもの 女子グループ


中村夏織

身長163㎝ B型

演劇部

好きなもの 努力 RPG

嫌いなもの SNS


坂本太一

身長168㎝ B型

剣道部

好きなもの、恋バナや噂話 

嫌いなもの、テスト

ワンポイント

吉田綾香が中村夏織をいじめていたことは知っている


小鳥秋穂

夏織の親友 テニス部

身長161㎝ A型

好きなもの 恋バナ 少年漫画

嫌いな人 相沢透


澤愛瑠花

身長150㎝ AB型

図書委員 部活は未所属

好きなもの ???

嫌いな人 嘘のない人

ワンポイント

中間テスト期末テスト実はずっと学年一位


清水葵 二年生

身長173㎝ B型

陸上部

好きな人 相沢透

好きなもの カレー 家族 陸上

嫌いな人 勝負する前から諦める人

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。