初恋はきっと何処かで嘘をつく。[五話]
夏織へのいじめを止めに入った透は、彼女の嘘が原因で三浦梓が狙われたと知る。夏織を助けたものの、三浦を巻き込んだことは許せずにいた。
そんな中、陸上部の先輩・清水葵から告白される。夏織との事情を知った葵は、返事を秋まで待つと伝えた。
約束の日、演劇部を辞めた夏織は「好きな人ができたら捨てていい」と復縁を懇願する。泣き崩れる彼女を抱きしめ、やり直すことを決めた透。
しかし、その胸には、葵とはまだ付き合えないのだから、という身勝手な考えがあった。
サブタイトル[三浦]
-体育館・三浦梓-
今日は終業式。結局私はほぼぼっちだった。
幼馴染の相沢は女を侍らせて。
私はというと、変にその女達に巻き込まれる。
そんな日常。
この三ヶ月で相沢の周りには色々起きた。
相沢の高校最初の彼女の吉田綾香さん。
中村さんをいじめたという話が広がり、吉田さんのグループは散り散りになってしまった。
そして吉田さんは孤立した。
二人目の彼女、中村夏織さん。
中村さんは部活を辞めた。
いじめられたからとか、色々と噂は流れた。でも私は、相沢から本当の理由を聞いている。
清水先輩に告白されたばかりなのに、今、相沢は中村さんとよりを戻したという。
最近の相沢はよく分からない。
なんでこんなにモテるようになってしまったのか。
そして、なんで私はモテないのか。
もし終業式後に誰かに告白されて、それを相沢に相談しちゃったりして。
そんな事があったら相沢はどう思うのだろう……。
-和菓子屋漆戸・三浦梓-
そして、そんな事はなかった……。
「なんにもなかったーー!」
「うるさいぞ、なんだよ急に……」
また相沢は真面目に働いている。
「いやー……普通終業式なら、あるじゃん?夏休み会えなくなっちゃうから……連絡先ください!みたいな?」
「普通ないだろ。それにお前男子と関わりあんのかよ」
「相沢しかいない……」
「何が『会えなくなる』だよ。今も一緒にいるだろ」
それはそう。
私達はバイトがあるから、夏休みも変わらず会える。
「でさー、実際なんでより戻したんだよ?」
「いや〜。俺のこと好きって言われるとやっぱり弱いのかも」
こいつには、簡単に付き合いすぎだって言ったばかりなのに。
「先輩はどうするんだよ?」
「先輩は、返事は秋までいいって言ってたから」
「返事を待ってくれるって、他の女の子と付き合ってもいいって意味じゃないだろ」
「……夏織との話に決着をつけるまで、待ってくれるんだと思ってた」
「より戻したなら、それが決着じゃん」
相沢は黙った。
「先輩に伝えときなよ。とりあえず復縁しましたって」
「そうだな、わかった」
ちゃんとそれは送るんだ。
-自室・相沢透-
先輩にメッセージを打つ。
「すいません。夏織とよりを戻すことにしました」
あーあ。これを送ってしまったら。
先輩との恋愛はこれで終わり。
夏織は俺のことを好きでいてくれている。
先輩にメッセージを送る。
あの一言だけで、どのくらい俺を好きになったのだろう。
勿体無いな。
ぴこん。先輩からメッセージが届く。
「そうか、すまないなタイミングが悪くて色々考えさせてしまったかも知れない」
「ただ君のことは諦められないかも知れない、しばらく君を好きでいても良いか?」
好きで良いかってなんだろう?
好きでいてもらったところで、何か変わるのだろうか?
よく分からない。とりあえずメッセージを送らなければ。
「大丈夫です、ありがとうございます」
-八月頭自室・相沢透-
俺の家族は父が単身赴任、母が看護師をしている。
家は一軒家で、母は十九時頃まで帰ってこない。
夏休みの午後五時、冷房の効いた部屋。
カーテンを閉め切る、薄明かりが差し込む。
ごそごそ
「ん、んー!相沢どうかした?」
ベッドからちょこんと夏織が顔を出した。
あの復縁からもう何度か夏織は俺の部屋に来ている。
最初にこの部屋に来た時、前の約束を夏織は果たしてくれた。
お互いの初体験だった。
「せっかくの夏休みだからどこか行く?」
「デートってこと?嬉しい」
俗に言う、お部屋デートしかしてない事に少し後ろめたさを感じていた。
デートに行きたいとは思わないが、彼氏としては一度くらい出かけないと、と言う半ば義務感のような提案だった。
「どこか行きたいところあったら教えてね」
「ありがとう、分かった」
そう言うと夏織は下着を履きシャツを着る。
「花火したいかな……」
「見に行くとかじゃなくて、手持ちのやつ」
「わかった、準備しとく」
俺の彼女は、美人だ。
それに俺のことを、きっとすごい好きでいてくれている。
でも、彼女が俺を好きなほど、俺は彼女を好きじゃない。
そのことが、すごく気持ちよかった。
-和菓子屋漆戸・三浦梓-
「ありがとうございました」
相沢が常連さんのレジを終える。
餡子の納品も終わり、ようやく暇な時間が訪れる。
「結局どうなったのよ」
私が茶の間から、顔を出し相沢に尋ねる。
相沢は、中村さんとの関係がはっきりしないまま、陸上部の清水先輩に告白された。
「どうって言われてもなぁ」
「先輩には、よりを戻したって言ったよ」
そうか、先輩は振ったのか。
「先輩なんて言ってたの?」
「まだ好きでいて良いですかって」
まだ好きでいて……か。
まさに恋する乙女って感じだな。
「彼女とはどうなんよ」
「家でよく会ってるよ」
「家かよ」
「まぁお互い、人混みが嫌いだから……」
「そっか……中村さん美人だもんな」
「なんだよ」
「美人家連れ込んでなぁ〜!って」
「それは別に良いだろ?」
「お前だったら彼氏できたら何すんのさ?」
「……なんだろ?」
恋人なんて出来たことないんだから、何するかなんて知らない。
「だいたい高校生の小遣いじゃ、そんなにあちこち行けないだろ」
「おばちゃん!給料低いって相沢がぼやいてる!」
「言ってないです!」
相沢が慌てて茶の間に飛び込んできて、私の口を塞いだ。
-少し戻ってメッセージを受け取る・清水葵-
ぴこん。相沢君からだった。
「すいません。夏織とよりを戻すことにしました」
そうか……そうか。
自分自身に女性としての魅力があるかと聞かれれば、正直言って自信はない。
ただ……私は選ばれなかったと想い人から言われるのは辛い。
それでも秋まで返事をしなくても良いと言ったのに、相沢君はすぐに返事をくれた。
きっと私に中途半端な期待を持たせないようにしてくれたのだろう。
「そうか、すまないなタイミングが悪くて色々考えさせてしまったかも知れない」
……悔しいな。
文字を打つたびに心が軋む気がした。
彼は誰かと競わなくても良いと言ってくれた。
でも、この恋だけは、彼女に勝たないと意味がない。
「ただ君のことは諦められないかも知れない、しばらく君を好きでいても良いか?」
これは私のほんの少しの抵抗。少しでも彼の意識を私に向けたい。
-和菓子屋漆戸・バイト終了後・三浦梓-
「ごめんなさい!」
こいつ……。
バイト終了後何故か私は相沢の彼女に謝罪されていた。
唐突な謝罪は、美人の特権とでも言うのだろうか。
こんな風に中村さんに謝罪されるのは二度目だ。
「まさか暴力を振るわれるとは思わなくて……」
まぁ嘘はついたが、そこまでされるのは想定外と言ったところだろう。
逆の立場でも、そこまでされるとはきっと思わない。
ただ実際にはああなった。
ジト目で中村さんを見る。
「……。」
相沢も少し呆れ顔だ。
とんとんっと肘で相沢に突かれた。
顔を寄せ小声で話しかけてくる。
「俺に気を使わないで言いたいこと言ってやってくれ」
親友の彼女だからと言って加減はしないでいいとの事らしい。
「あ……相沢!私こいつ嫌いだ!」
……。
少しの沈黙。
どうやら私の返答は、中村さんにとって想定外だったらしい。
「……仲直りできたら、三人で花火しようって話だったんだ」
相沢が小声で付け足した。
カップルに挟まれる花火などなにが楽しいものか。
「俺は止めたんだぞ……」
相沢が小声で耳打ちしてくる。
何故美人はいつも自分本位なのだろう、私が謝罪を受け入れる前提で予定組んでるじゃん。
ガチャリ。店長がやって来た。
店の裏でこそこそ喋ってる私達の様子を見に来たようだ。
「……もしよければ三人で花火やろうと思ってて」
中村さんは少し気まずそうに視線を相沢に向けた。
「まぁ夏らしいわね!梓ちゃんも行って来なさい!」
店長にまで楽しそうに言われると、もう断る言葉が出てこなかった。
ここで嫌だと言い張ったら、私だけが意地悪みたいじゃないか。
-花火・三浦梓-
大きくため息をついてしまう。
本当に私は押しに弱い。
夜だからと言う理由で、私の家の近くで花火をする事になってしまった。
おばちゃんなんも知らないんだから!
心の中で思っても、もう遅い。
中村さんはせっせと花火の準備をする。
バケツ、チャッカマン、花火。
合コンでサラダを取り分ける女子がモテるらしいが、きっとこう言う子のことをいうのだろう。
ぼーっと眺めてると相沢が話しかけてくる。
「店長のせいで逃げられなくなっちゃったな」
いたずらっぽく笑う。
いつもは私がいじる立場なのに、こいつは嬉しそうだ。
「全く、貴重な夏休みをどうしてくれるんだ」
「ごめんて……この間の話覚えてるか?」
「この間って?」
「この間、三浦に彼氏ができたらってさ」
「あー、それが?」
「……出来たら寂しいなって」
そんなこと言うなって……。
いつもみたいに冗談が出てこない。
だって相沢には恋人が居て。
「相沢ー!三浦さーん!準備できたよ!」
中村さんは花火を配る。
「せーの!」
次々に花火に火をつける。
青に、緑に、炎色反応って奴だ。
でもそんなことはどうでもいい。
相沢は、どんな顔して言ってたんだろう。
花火のかすかな光だけでは、相沢の表情までは分からない。
こんなに楽しくない花火は初めてだった。
なんで……なんでそんな事言うんだよ。
私は……。
パチパチと、花火が次々に咲く。
さっきまで鮮やかだった色が、もう目に入らなかった。
「これで最後だな」
花火もこれでおわり。
相沢が線香花火を手に取った。
「四本か、一本余るな」
「私二本もらっていい?」
「?いいけど」
相沢が線香花火を渡してくれた。
「私後でやるからさ、二人やっちゃいなよ」
「後ってなんだよ?」
「いいから、いいから」
何やら会話してるようだが私には聞こえない。
恋人同士の線香花火。
肩を寄せ合う、二人の距離は近い。
だけど、私でも手の届くような。
そんな不思議な、寂しい気持ち。
もっと素直になれたら、どれだけ楽だろう。
あの時中村さんの花火の準備がもう少し遅かったら、私はなんて言ってたのだろう。
余った線香花火をギュッと握りしめる。
なんで相沢は、あんなことを言ったのだろう。
二人の線香花火はぽとりと落ちた。
-八月末和菓子屋漆戸・三浦梓-
今日は相沢が休みで、店番は私一人だ。
あの花火以降、相沢の顔を見るのが少し気まずい。
はーあ、客来ないでくれないかなぁ。
お客さんのたくさん買ったところで、バイトの私に関係ないし。
からん。からん。
そんなことを言えば来客だ。
ただいつものおじちゃん、おばちゃん達ではない。
松葉杖をついた清水先輩だった。今日は、いつもより女の子らしい格好をしている。
この人も相沢に告白したんだよな。
「いらっしゃいませ〜」
「あ……」
清水先輩は私を見て少し固まった。
相沢じゃなかったのがショックだったのだろう。
「相沢今日いないですよ」
「そ……そうかありがとう」
気まずそうだった。
「とりあえず選ぶか」
とショーケースを見ようと松葉杖をつく。
カシャンと乾いた音がした、同時に清水先輩が体勢を崩す。
ガタンっ!
「イッテて……」
先輩は転んでしまった。
急いで駆け寄る、松葉杖を見ると長さを調節するネジが壊れてしまっていた。
これでは使えないだろう。
「だ……大丈夫ですか?」
「大丈夫だが、これでは歩けないな……困った」
奥から音を聞いた店長がやって来た。
「あら、大丈夫?」
「大丈夫です!ありがとうございます!」
どう見ても大丈夫じゃないだろう。
「困ったわね、おじいちゃん今出かけちゃって車がないのよ」
先輩は一人では歩けない。店の車もない。
となれば……。
「梓ちゃん、少しお願いできるかしら。給料は出すから送ってらっしゃい」
そうなりますよね〜。
-清水先輩の家・三浦梓-
先輩に肩を貸しとぼとぼ歩いた。
身長差があるせいでうまく肩を貸せず、足取りがふらついた。
十五分ほどで、先輩の家に着いた。
「ありがとう!疲れただろう。少し飲み物でも出そう!」
そう言って部屋に案内された。
先輩の家は一軒家。
部屋は男の子っぽいというか、女の子っぽいものがあまり無かった。
そして部屋の片隅に開けてもいない煎餅の箱が少し積まれていた。
「いや、恥ずかしいところを見られてしまったな!」
先輩が壁に手をつきながら片足で飲みものを持って来てくれた。
器用だな、さすが運動部。
「べ……別に気にしないです」
氷の入ったジュースを一口飲む。
チラッと、家族にお使いを頼まれたはずの開けていない煎餅を見てしまう。
「君の見た通りだよ。相沢君に会えないかなって思って……」
「そうでしたか」
この人でかいのに、めっちゃ乙女だ。
このギャップはきっと好きな男子が多そうだ。
「そう言えば自己紹介がまだだったね!清水葵、二年生だ!」
「み……三浦梓、一年生です」
「三浦君は相沢君と仲がいいのか?」
「幼馴染で……」
「そうか……相沢君にはもう恋人がいるのになかなか気持ちを切り替えられずに、女々しいばかりだ……」
一般的に見れば。
振られたのに、付きまとうやばい人でしかない。
ただ私は中村さんより、この人の方が好きな気がした。
「せ……先輩はなんで相沢の事を好きなんですか?」
「うーん、一目惚れとは少し違うかな。一言惚れと言ったところか」
「相沢君だけが、私に大丈夫と言わないでくれたのだ」
「大丈夫?」
「そう、無理をしないで良いに近いかもしれないな」
相沢は人たらしとおばちゃんに言われていた。
きっと優しい言葉でもかけたのだろう。
「ひ……一言だけでそんなに好きになったんですか?」
「一言でなってしまったんだ」
そう考えると私も
『寂しいな』あの一言に心を揺らしていた。
「君は相沢君を好きになったりはしなかったのか?」
「私はそんな事言えないから」
……私は。
「そんな事言われたらほぼ肯定じゃないか……」
「辛いな好きな人が側で恋人を作ってしまうのは」
ああ、私はやっぱり中村さんよりこの人の事が好きだ。
「先輩!が……頑張ってください!」
「今の相沢の彼女私嫌いなんです……」
だから、だから。
「そうか……君が頑張れと言うなら、まだチャンスはあるみたいだね」
「ありがとう……もう少し頑張ってみるよ」
先輩はにこりと笑ってくれた。
だけど私も知っている、好きな人に恋人がいる辛さを。
きっと先輩も辛いのだろう。
頑張れなんて無責任かもしれない。
……でも私にはこれしか。
からん。
ジュースの氷が少し溶ける。
それからの談笑は他愛のないものだった。
「今日は本当にありがとう!」
見送る先輩に、私はぺこりとお辞儀をし和菓子屋に戻る。
とぼとぼと歩きながら私は中学の頃を思い出していた。
-独白・三浦梓-
中学時代の私はいじめられていた。
髪は長く顔を隠し、性格も暗く、言葉もうまく出ない。
今思えばまるでお化けだ。
そんな女子がいれば、みんないじめるだろう。
ただ、私は合気道を習っていた。呼び出されて手を出されても、負けはしなかった。
そんなことをしているうちに、私の周りからは人が居なくなった。
なんでこんな目に遭うのだろう。
いじめられて、手を出されてやり返しただけなのに。
ある日、中学校の近くの公園に呼び出された。
また女子達に手を出されそうになっていた。
いつも通り、相手を転ばせた。
「おい!」
男の子の声だった。
あーあ、転んだ女子を助けてヒーローにでもなるのだろう。
そう思うと憂鬱だった。
「大丈夫?」
その男子が手を差し伸べたのは私だった。
周りの女子達は納得がいってないようだった。
私だっておかしいと思った。
だけど彼は
「一人をみんなで取り囲むなんて卑怯だ」と言った。
次の日、学校で彼を見つけた。
勇気を振り絞り、私は彼に声をかけた。
こんな私でも彼は話してくれた。
きっと彼は誰とでも話すのだろう。
それでも、私は嬉しかった。
彼とは同じ小学校だったらしい。
他の生徒のことなんて、まして男子のことなんて知らなかった。
初めてできた友達だった。
どこの高校に行くかも聞いた。
同じ高校に行きたいな。
それくらいに好きだった。
私はたくさん彼と話した。
彼と話すようになってから私は手を出されなくなった。
無視はされていたが、そんなことはどうでも良かった。
中学三年、彼には彼女ができた。
すごく辛かったが、彼が幸せならと思ってしまう。
彼女はショートカットの綺麗な子だった。
もしかしたらショートカットの子が好きなのかもしれない。
思い切って髪を切った。
彼はそっちの方が似合うと言って笑ってくれた。
しばらくして彼の彼女が、友達と話しているのを聞いてしまった。
「彼氏イケメンじゃん、良かったね」
「別に、つまんないから別れよっかなって」
「なんで付き合ったの?」
「三浦って子いるじゃん?アイツ陰キャのくせに男子と話しててウザいからさ、その男子取っちゃった」
「ウケる!そんな理由で付き合ったの?」
今でも忘れられない。
ケタケタと笑う女子の声。
しばらくして彼は振られてしまった。
何も……何もできなかった。
私のせいで……私の好きな人を傷つけてしまった。
悲しむ彼の背中を見ても、励ますことすら出来ない。
そんな私の中学時代。
-和菓子屋漆戸前・三浦梓-
和菓子屋に戻って来た。
なんだかんだ一時間近く掛かってしまったな。
「おばちゃん。戻ったよ〜」
あらあら、と奥から店長が出て来た。
「結構掛かったわね、お疲れ様。お菓子あるからね」
茶の間に行く。
座布団に座り一息。
いつものアレがやって来た。
急に来てしまう自己嫌悪。
いじめられてた時の思い出。
相沢の中学時代の彼女と友達の会話。
今でも忘れられない。
「うっ……うっ」
涙がじんわり溢れ出す。
「梓ちゃん?」
遅れて茶の間に来たおばちゃんが、心配してくれている。
いつもおばちゃんは優しいが。
今日はその優しさが身に染みる。
昔も、いじめられて泣きそうになると、よくここに来た。
「大丈夫……昔のこと思い出しちゃって」
「あの子に何かされた?」
「違う……先輩はいい人だから」
「そう……」
そう言うと、おばちゃんも座布団に座り、膝をぽんぽんと叩いて、私を呼んでくれた。
「うわーーん!」
今日くらいは甘えても良いだろ。
思いっきり泣いて少しでも気を晴らそう。
おばちゃんがよしよしと、頭を撫でてくれる。
「ありがとう……」
おばちゃんが言う。
「こちらこそ、いつも頑張ってくれてありがとう」
「うわーーん!うわーーん!」
よしよしと、優しい手が私を包む。
もう少しで夏も終わる。
きっとこれからも、私の恋は辛いのだろう。
-五話終-
登場人物まとめ
相沢透 主人公
身長165㎝ A型
帰宅部
好きな人 一応中村夏織
好きなもの RPG 甘いもの
嫌いなもの 特に無し
三浦梓 相沢の幼馴染
身長152㎝ A型
帰宅部
好きな人 相沢透、店長
好きなもの RPG 和菓子
嫌いなもの 群れてる女子
中村夏織
身長163㎝ B型
演劇部
相沢の高校二番目の彼女 復縁
好きな人 相沢透
好きなもの 努力 RPG
苦手な人 三浦梓
清水葵 二年生
身長173㎝ B型
好きな人 相沢透
好きなもの カレー 家族 陸上
嫌いな人 勝負する前から諦める人
苦手な人 中村夏織




