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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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旅支度編 3 〜パメラの決断〜



 戦闘シーンは苦手で……ダークに染めきれない……Σ('◉⌓◉’)

 





「そこまでよ、エドゥアルト!」


 凛とした声がその場を制した。

 エドゥアルトが振り向くよりも早く、紫電の奔流が突如として弾かれた。


「……何ッ!?」


 エドゥアルトの周囲に展開されていた雷刃が、まるで見えない壁に遮られるように消失する。

 ビヨンド村の路地に立っていたのは、艶やかな紫の髪を靡かせるパメラ・ルシーヌ・カルディアだった。そして彼女が静かにノビの前に踏み出す。


「先生……?」


 ノビの血塗れの姿を一瞥し、ふっと息をついた。


「まったく……この大馬鹿者め。なんで貴様は、そんなに無茶ばかりするのだ?」


 そう言いながらパメラの視線は、エドゥアルトへと向けられる。


「エドゥアルト、姉として言っておくわ……あんた、カルディア王族としての誇りをどこかに置き忘れてきたのかしら」


 エドゥアルトの瞳が細められる。


「……何が言いたい?」


 パメラが片手を上げ、淡々と告げた。


「この場で証明してあげるわん。カルディア王族の力が、決してあんた一人のものでは――ないということをね!」


 彼女の手の平に、魔法陣が展開される。そこから浮かび上がったのは、真紅と黄金に彩られたカルディア魔法国の紋章――三本の剣と一対の翼を従えた重厚な盾紋が真紅に輝く。そして、円環の魔法陣の上で苛烈な魔力(マナ)を放った。


挿絵(By みてみん)


「……!?」


 エドゥアルトの表情が僅かに揺らいだ――その時、艶やかなパメラの唇が、歌うように動き、胸を弾ませながら軽やかに飛び上がる。


「血湧き、肉踊る、我が血よ!パメラ・ルシーヌ・カルディアの名のもとに、豊かな胸の力、今ここに!【風胸爆裂弾(ウィンド・ブルルン・ボンバー)】!」


 ――その刹那、爆発が起きた。


 詠唱の完了と同時に、彼女の誇る豊満な胸の『爆弾(ダイナマイト)』が弾けるように躍動し、そこから生み出された狂暴な竜巻が、周囲の瓦礫ごと大気を激しく巻き込む。それはまさに彼女の二つ名、『紅玉の爆弾(ダイナマイト)』に恥じぬ威力だった。


「なっ……胸の力!?」


 その瞬間、エドゥアルトが顔面を肘で覆いながら息を呑んだ。


 挿絵(By みてみん)


 エドゥアルトが展開していた、紫電を帯びた堅牢な雷魔法が、パメラの放った桁外れの風圧によって、まるでロウソクの火のように一瞬で吹き消された。


 ノビがその衝撃に顔を覆う中、パメラは爆風が吹き荒れる中に悠然と佇んでいた。

 エドゥアルトの目が見開かれたその刹那、再び滑らかに彼女の唇が動く――。


「弾め、我が胸!包み込みなさい、我が真紅の抱擁――弾け咲け!豊穣なる胸の盾!【胸爆結界(バブルガム・ブルン)】!!」


 パメラの全身から、柔らかくも弾力に満ちた魔法の障壁が瞬く間に展開された。その色は鮮烈な深紅。まるで彼女が纏う紅色の装備そのものが、光となって広がったかのように艶やかに輝く。彼女とノビの二人を優しく、かつ決して何者も寄せ付けない薄い膜で包み込んでいった。


「何ぃ!……胸の盾だと……?」


「その雷、通じるとは思わないで欲しいわね!」


「ならば、試してみるまでっ!」


 パメラの制止を切り捨てるように、エドゥアルトが腕を突き出し、苛烈な雷撃を解き放つ。


 ズドォォォン!


 凄まじい雷光が二人に直撃する――はずだった。


 次の瞬間、バチィィィンッ!


 咆哮を上げた雷撃が、まるでゴムの膜に弾き返されるかのように激しく散乱した。


挿絵(By みてみん)


「な……!?」


 信じがたい光景に、驚愕の表情を浮かべるエドゥアルト。


「この魔法は、ゴムの性質を持つのよん」


 そう言ってパメラが『爆弾』をブルンと揺らし、旋風を巻き起こしながら薄く微笑む。


「すなわち、雷を完全に遮断するわん」


「……馬鹿な、そんな魔法が……!」


 エドゥアルトは唇の端を噛みしめ、眉間に深い皺を寄せた。

 対照的に、パメラの唇は余裕の笑みを湛えて弧を描く。


「ふっ、これは私が編み出したオリジナル魔法だもの。誰も知らないのも無理はないわ」


 パメラの【魔法障壁】が、柔らかくも絶対的な存在感を解き放つ。


「貴様に私とノビを裁く権利はない。……今すぐこの場を立ち去りなさい、エドゥアルト」


 雷とゴム――対極の力が衝突し、激闘の幕はパメラの介入によって新たな局面を迎えた。


「したっけ、先生に守られるままじゃ、オラの男がすたるんさ!【マグナム・ナックル】!」


 叫ぶノビが防御障壁を突き破って飛び出し、力強く大地を蹴る。左腕がメリメリと音を立て、黄金の輝きを放ちながら凶悪に膨れ上がった。


「ならば……この田舎者だけでもっ!」


 エドゥアルトの叫びとともに、雷龍【ヴォルト・ドラグーン】が天を裂く。紫電を纏った龍が咆哮し、ビヨンド村の空を灼き尽くさんばかりに舞い降りた。


「――ノビッ!」


 パメラの悲痛な声が響いた時には、雷光が石畳を打ち割り、大気を焦がしながらノビへ迫っていた。


 全身血に塗れ、右腕は既に使い物にならない。


「したっけ……っ……まだ……まだぁ!」


 それでもなお左拳を天に突き出し、ノビは正面から雷龍の威圧を受け止める。

 朦朧とする意識の中、膝を突きそうになりながらも足を踏ん張り、渾身の力を込めて拳を握りしめた。


 ノビが僅かに時を稼いだその刹那、パメラが赤蛇の杖を天高く掲げ、朗々と詠唱を紡ぐ。


「我の胸より駆け巡れ、風縫いし精霊ブルン。妖艶な真紅の薔薇が呼び覚まし、深淵の大炎霊サラマンダーよ、その身を委ね目覚め、吹き荒べ!――目覚めし二つの咆哮よ、我が血肉と交わりて灼熱の渦となれ!――抱擁の果てに散りなさい。【薔薇胸爆砕(ダイナマイト・バン・エクスプロージョン)】!!」


 ゴォォォォォォ༄༄༄༄༄༄༄༄༄!


挿絵(By みてみん)


 次の瞬間、豪火に包まれた雷龍が消し飛んだ。


 激しい爆風と炎の嵐が路地を駆け抜け、エドゥアルトの放った紫電を根こそぎ呑み込んでいく。灼熱の衝撃波がビヨンド村の空を焦がし、やがて嵐が去ったあとに残されたのは、真っ白な煙と、ただならぬ静寂だけだった。


「……くっ……はあぁっ……!」


 煙の向こう側で、エドゥアルトが膝をつき、信じられないものを見る目でパメラを睨みつける。服の一部は焦げ付き、誇り高き表情には焦燥と動揺が色濃く滲んでいた。


「言ったでしょう、エドゥアルト。今のお前では、私にも……そして、ノビにも届かないわ」


 パメラは赤蛇の杖を静かに下ろすと、靡いていた紫髪を優雅に手で整え、一歩前に出る。その背後では、ノビが左拳を握りしめたまま、荒い息を吐いてギリギリのところで立っていた。


「……エドゥアルト。お前にこれ以上、ノビを傷つけさせるわけにはいかない」

 

 パメラが静かに言い放つ。


「ほう……姉上が……ボクに刃向かうと?」


 エドゥアルトが睨み返し、その歪んだ顔に激情を滲ませた。


「逃げることしかできない姉上ではなかったのか?」


 パメラが冷たい視線をエドゥアルトに向ける。


「……今までならね……けれど、お前がこんな真似をするなら、話は別。私は逃げるだけじゃない。……戦うわん」


 パメラの周囲に、真紅の魔法陣が次々と展開される。


「面白い……ならば、その覚悟、確かめさせてもらう」


 エドゥアルトの周囲に再び紫電が奔る。だが、彼の目は先程とは違っていた。


(――姉上の魔法。これが、カルディアの血筋の証明……)


 愉悦に満ちた笑みが、エドゥアルトの唇に浮かぶ。


「ますます……あの揺れるブルンが欲しくなった」


「んなっ!?」


 エドゥアルトを見据えるノビの眉が吊り上がる。


「田舎者の貴様などに、姉上を渡す気はない……!」


 エドゥアルトの紫電が収束し、再び一点へと凝縮される。


「だったら、力尽くで止めてみなさい!!」


挿絵(By みてみん)


 パメラも魔法を強化し、対峙する。再びカルディアの血を引く者同士の、本当の戦いが始まろうとしていた。


 その時だ――。


「そこまでだ、エドゥアルト殿下!」


 鋭い声が響いた瞬間、空気が張り詰めた。

 エドゥアルトの雷撃を受け、膝をつきながらも立ち上がろうとするノビ。その前に、深紅のローブを纏った一団が姿を現す。


 中央に立つのは、威厳に満ちた壮年の男。カルディア魔法国直属の近衛騎士団長、ラグナ・ジジ・ガングだった。


「王家の血を引く者同士が、このような路地裏で争うとは――実に嘆かわしい」


 彼の一言で場の空気が変わった。


「……何の用だ、ラグナ」


 エドゥアルトが不快げに睨むが、ラグナはそれを意に介さず、ゆっくりとパメラに視線を向けた。


「パメラ・ルシーヌ・カルディア姫殿下。陛下があなた様の帰還を望んでおられる」


 その言葉に、パメラの表情が僅かに揺らいだ。


 ――陛下、すなわち父であるカルディア国王。彼女が宮廷を追われ、冒険者となって久しい。


(今さら何のつもりで……?)


「……くだらない冗談はやめてちょうだい。私が今さら戻るとでも?」


「姫殿下がどう思われようと、これは王命です」


 ラグナの声は揺るがない。

 口元を引き結んでいたエドゥアルトが口を開く。


「……僕が姉上を連れて帰る。貴様らの出番はない」


 だが、ラグナはゆっくりと首を横に振った。


「いいえ。エドゥアルト殿下、貴方様は今回の件で独断が過ぎた」


「……何?」


「国としての正式な手続きを経ず、私情で動いた。これは王家の威信に関わる問題となる。ゆえに――」


 ラグナが片手を掲げる。


「王太子殿下、貴方様の拘束を命じられている」


 エドゥアルトの目が鋭く細められる。


「王家の問題……?したっけ、エドゥアルトの暴走扱いってこど?」


 ノビがつぶやきながら、驚いたように視線を巡らせた。


「……はぁっ? 王命だと? 父上も腑抜けになったものだな」


 エドゥアルトが嘲るように笑い、次の瞬間、戦闘態勢を整える。


「拘束されるつもりはない!」


 その一言にラグナの背後の騎士たちが、一斉に剣を構えた。一触即発の緊張した空気が周囲に満ちる。


 しかし――。


「……いいわ」


 パメラの声がそれを断ち切った。彼女は一度だけノビを見つめ、そしてラグナへと視線を向けた。


「私がカルディアへ戻ればいいのでしょう?」


 ラグナは静かに頷く。


「話が早くて助かります」


「……ただし、条件があるわ」


 パメラは妖艶な笑みを浮かべた。


「エドゥアルトの身柄には手を出さないこと。そして――「わたくしの仲間」には一切危害を加えないこと」


挿絵(By みてみん)


 その言葉に、ノビが目を見開く。


「したっけ、先生……?」


「貴様のせいで……大変なことになったんだからね、ノビ?」


 そう言いながらパメラが悪戯っぽく、パチッとウィンクし、ノビの額を軽くパチンと指で弾いた。


「でも……ちゃんと戦ったわね。見直したわよん」


 ノビの胸が熱くなる。


(……ボロボロでも、ちゃんと先生を守れたのかもじれない)


「さてと。ノビ――行きましょうか」


 パメラはノビの手を引き、ラグナの前に進み出る。 

 一方でラグナは満足げに頷き、騎士たちに指示を出した。


「……では、参りましょう。カルディア魔法国へ」


 こうして、パメラは王都へと戻ることとなった。それが、さらなる波乱の幕開けとも知らずに――。








 アニメ調に仕上がったかな?と不安に駆られますが、このエピソードを読んでいただき、感謝です。

 ブックマークに追加して、次の更新をお待ちいただけたら嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

 

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です! 『戦闘シーンが苦手』なんてとんでもない! アニメの劇場版を見ているかのような大迫力バトルに大興奮でした! パメラさんの【胸爆結界】や【薔薇胸爆砕】の華麗さと強さ、そしてノビの意地…
パメラさんが自分の意思でエドゥアルトさんと向き合い、大きな決断を下しましたね。 これまで逃げていたパメラさんが、傷だらけのノビさんを守るために前へ出るところが格好良かったです。【風胸爆裂弾】や【胸爆…
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