旅支度編 2 〜ノビ vs エドゥアルト〜
ダークに近づけねば……と思いつつもΣ('◉⌓◉’)
――ギルド支部の一室を借りたゴクトーたち。
「そう言えば、パメラさん上手く逃げられたかしら……」
横で腕を組んでいたゴクトーがニヤリと笑う。
「ん? 大丈夫だ。アウリアが知らせてくれたからな」
それでもエリナがどこか不安げな表情を見せる。
「パメラさんの弟って……何をしにきたのかしら? ねぇ旦さん……」
「うむ……ちょっと心配だな。ノビ、お前はパメラと動け!」
ゴクトーの言葉に、ノビが驚いたように目を丸くする。
「え、したっけ、今から?」
「まだ細かいことは決めてないが……このまま静観するのもまずい気がする。エドゥアルトが何を企んでいるか探る必要がある」
「そ、それは……確かに……あるんさ」
ノビは少し悩むように漏らしながらも、最終的には小さく頷いた。
「ならば某らも探りを入れてみましょうぞ」
圭介の言葉にShadowWind の面々も首肯する。
その時、ゴクトーの傍に立つ九音が振り返り、唇を動かした。
「ご主人様、お任せください。カルディア王太子の動向を探るのは、オノら『忍び』が最も得意とするところゆえ」
「頼りにしてるぞ、九音」
ゴクトーの言葉に彼女は眼帯の紐を結び直し、得意げにたわわな胸を張った。
「さて、先ずは……」
ゴクトーは改めて仲間たちを見渡した。
クラン『リリゴパノア♾️』としての結束が強まり、仲間との絆も深まっている。そう実感するほどに、皆も心が満たされるのを感じていたのだろう。だが、今は感慨に浸ってる場合ではない。
ゴクトーは、クイックイッと人差し指を手前に引く合図で、仲間たちを集めた。
暫くして――ギルドの扉が勢いよく開かれた。
「た、大変です!カルディア王太子が到着しました!」
ギルド職員の報告に、場が一気に緊張に包まれる。
「……来たか」
ゴクトーは静かに立ち上がる。
「どうやら、悠長に構えている時間はなさそうだ――」
その言葉とともに、ゴクトーは仲間たちに合図を送った。
――その頃、路地をなん度も曲がりつつ、表情に焦りの色を滲ませ、紫色の髪を揺らしながらひた走る、パメラ・ルシーヌ・カルディアが必死に息を整える。
「はぁ、はぁ……まさか、こんなことになるとはっ!……エドゥアルトめ、こんなところまで追ってくるなんて……!」
彼女はギルド支部の裏口からこっそり抜け出し、人気の少ない道を選んで移動していた。
その後ろを汗だくになりながら懸命に追い縋る小さな影が近づく。
「待っでーー!」
「ノビ、貴様のせいで、ややこしいことになったぞ……!」
振り返り、どこか嬉しそうに口角を上げつつ、彼女は空を見上げる。
(……さて、どうしたものかしら?)
エドゥアルトがビヨンドに現れたということは、カルディア本国の動きもただ事ではない。今後の展開をどうするか――パメラは眉間に皺を寄せながら、逃げ道を模索していた。
一方ビヨンドのギルド支部に到着したエドゥアルト。パメラが逃げ出したことに気づいた彼は、すぐさま魔力を高めた。
「くっそ、一足遅かったか……馬を用意せぃ!」
彼の周囲には紫電が弾け、ギルド支部の扉がバチバチと火花を散らした。
そんな状況の中、必死に逃げるパメラとノビが細い路地を曲がった瞬間、背後で馬蹄の音が鳴り響いた。
「したっけ、オラがくいとめるんさ! 先生はさきに逃げて……」
ヒヒィーン!ブルルッ!
「どうどうどう! ……姉上、一体どこに行かれるのかな……?」
見事な白い馬から飛び降りたエドゥアルトの低く囁くような声。だが、その言葉の奥に隠された激情を感じ取ったノビが身構えた。
「お前、先生に、何の用があるんさ?」
エドゥアルトがゆっくりとノビを見据える。その瞳には冷たい光が宿っていた。
「貴様が、姉上の傍にいること自体が不愉快だ。消えてもらおう」
――ズドンッ!!
その刹那、大気が裂けた。
エドゥアルトの足元から濃密な魔力が炸裂し、紫の稲妻が地面を砕く。衝撃波が周囲に吹き荒れ、近くの樽や木箱が粉々に弾け飛んだ。
「【ギガント・ナックル】! ――先生ーー!!早く、逃げるんさっ!!」
その言葉に一瞬だけ振り返るパメラ。その後方ではノビが両腕を肥大させ、黄金に輝かせる拳を十字に組み、咄嗟に身構えた。
「……!」
次の瞬間、エドゥアルトの姿が消えた――否、目にも留まらぬ速度でノビに肉薄していた。
「雷槍【レヴィ・ジャベリン】!!」
空間がひしゃげるような轟音とともに、雷光の槍がノビの眼前へと突き出された。
「ぐっ……!!」
ノビが反射的に右拳を突き出す。
バヂィィィッ!!!
凄まじい雷撃が拳に直撃、ノビの全身に衝撃と激痛が走る。足元の石畳が砕け、体勢を崩した彼の身体が沈む。
「ふん……そんなものか?」
エドゥアルトは冷笑を浮かべ、ゆっくりと歩み寄る。
だが――。
「……な、舐めんじゃ……ねぇ……したっけ……」
崩れた膝を伸ばし、ノビが立ち上がった。握る拳、足も震えている。それでも彼の瞳は、まったく怯んでなどいなかった。
「……ほぉ」
エドゥアルトの表情が僅かに歪む。
「ならば、これならどうだ?」
彼が右手を掲げる。すると周囲の空気が一気に張り詰める。
次の瞬間、紫電が空を裂き、無数の雷刃がエドゥアルトの頭上に展開された。
「【雷獄陣】!!」
風がピタリと止み、一瞬の静寂が訪れた――その直後、無数の雷刃が雨のようにノビに降り注いだ。
「うおおおおおおっ!!」
ノビが雄叫びを上げ、全力で両拳を目にも止まらぬ速さで突き上げる。だが、その振るった拳の速さより、雷刃の数が上回った。
――ドガァァァンッ!!
炸裂する雷光、砕ける石畳。その勢いでノビの身体が弾き飛ばされ、彼の身体が宙を舞う。
だが、その瞬間――
「……これで終わりじゃ……ないんさッ! これでも、うげでみろっ!」
空中を舞いながら、バク転して着地。そしてノビは自らの脚力を活かし、地面を蹴り返した。
ゴォォォォン!!
瞬間移動にも等しい速度でエドゥアルトに肉薄し、拳を突き出す。
「こっちもおがえしなんさっ!カエル拳【烈震打】――!!」
――ドグゥゥン!
ノビの右拳がエドゥアルトの腹部にめり込んだ。
紫電が弾け、エドゥアルトの身体が弧を描いて吹き飛ばされる。衝撃で石畳が割れ、土煙が舞う中、沈黙のときが場に落ちた。
やがて――土埃の中から、ゆっくりとエドゥアルトが立ち上がりつぶやく。
「……ククッ……面白い。貴様……ただの田舎者ではないようだな」
「言っておぐ……パメラ先生はオラのもんではないんさ。したっけ、お前のもんでもないんさ。そこを勘違いしてるお前さ、きっちり叩き直しでやるんさっ!」
「訛りがひどいが……ほう……なら、見せてもらおう。どこまで耐えられるかを」
雷鳴が轟く中、エドゥアルトは今までとは桁違いの魔力を放つ。
「なるほど……ならば、貴様を「本気」で消し去るとしよう」
エドゥアルトの周囲に雷雲が形成され、雷が渦を巻く中、カルディア家の【奥義魔法】が展開された。
「【雷龍】!」
轟音とともに、紫電を纏った龍が唸りを上げる。雷の奔流が一箇所に凝縮され、圧倒的な破壊力を秘めた雷龍の形を成す。
「これ以上……好きには、させねぇんさッ!」
ノビは右拳を庇いながら、ギリギリの状態で左拳を構えた。彼の脚は震え、視界は揺れる。
それでも――「これが……お前の必殺の一撃っでことかッ!」とノビが吼えた。
雷龍が咆哮とともにノビに襲いかかる。その一撃はまさしく一点集中。
「………が、負げるわけにはいがねぇんさっ!!」
ノビが天に左拳を突き出し、全身の力を込める。
「うおおおおおぉっっ!!!」
雷龍がノビの拳と激突。 バリバリィッ!
その瞬間、凄まじい閃光と爆音が周囲を揺るがす。大気が裂け、石畳が粉々に砕けた。
「が……ッ!」
ノビが弾き飛ばされる。片腕では耐えきれず、彼の身体が宙を舞った。
――ドガァァンッ!!!
瓦礫が飛び散る中、ノビは無惨にも地面に倒れ伏した。
一方、エドゥアルトは雷光を収め、満足げに息をつく。
「……この田舎者がッ!」
だが――。
「……ッ」
パラパラパラ…
崩れた石の中からノビが身を起こした。全身は血に塗れ、左腕はぶらりと下がっている。それでも、彼の足はまだ地面を踏みしめていた。
「……まだ……倒れねぇんさ……!」
エドゥアルトの瞳が僅かに細められる。
「ほう、まだ立つか」
彼は嘲笑し、再び雷の力を解放する。
エドゥアルトの全身に雷が収束し、かつてないほどの魔力が膨れ上がる。雷撃の刃が彼の背後に渦巻き、まるで王の戴冠のように煌めいた。
「ならば――完全に終わらせよう!」
「そこまでよ、エドゥアルト!」
凛としたパメラの声が響いた――。
読んでくださりありがとうございます。
第1幕を改稿中のため……更新が遅れてしまい申し訳ありません。
引き続きお楽しみいただけば、嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




