新たな拠点編 29 〜チクリとバリバリ。昇格試験の結末〜
戦闘シーン……苦手ですが、頑張りましたΣ('◉⌓◉’)
ギルド地下深奥――天井のスポットライトが、薄暗い闘技場を照らす。
二人の戦士の気迫が満ちていた。
観客たちは息を殺し、中央に展開する一触即発の光景を見守る。
九音の紫色の和装柄は、銀河系がそのまま布地に溶け込んだかのように、星々が静かに煌めいている。右目を黒い眼帯で隠す彼女は、左の青い目で冷徹に相手を見据え、『鑑定士』のスキルを発動――相手のステータスを読み取った。
【【 名前: キアラ・ファーフェル
種族:フックス・テラインスロボス(狐獣人族)
年齢: 26歳
Lv: 35(闘士)
HP: 4,500 / 4,500
【ステータス】
STR(腕力):185
DEX(器用):210
AGI(素早さ):245
VIT(体力):160
INT(知力):95
MND(精神):110
【スキル】
固有スキル『瞬刻の稲妻』(AGI+50%・雷属性追撃)
『獣の直感』(回避率・命中率向上)
武技スキル『雷轟二刀連撃』(トンファ専用技)
『真空斬』
魔法スキル『風雷陣』(低レベル広範囲)
【装備】
武器:『雷鳴のトンファ』(魔力伝導率+25%)
防具: 『銀月獣皮鎧セット』(AGI+20・雷耐性) 】】
「ふぅ。ここにトンファーがないのが幸いした。まぁ、それで小太刀の二刀流なのは、納得でござる」
小さくつぶやきながら九音が踏み出すと、スポットライトの落とす眩い光が、鎖帷子に包まれた彼女の揺れる胸元を仄かに透けさせる。
緊張のせいだろう。木剣を握り締める彼女の肩が僅かに震えていた。
対するは、金色に近い橙の毛並みが美しい狐獣人族の女性――キアラ・ファーフェル。
大きな獣耳に、長い尻尾、鋭い目が印象的だった。
石造りの壁に浮かぶ巨大な青い光を放つ魔法障壁が、円形の闘技場をぐるりと囲む。
観客の熱気と天上のスポットライトの光で満ちていた。
闘技場の中央には、黒の三角帽を斜に被り、漆黒のローブを靡かせ、ピンク色の長い髪が艶やかに光る女性が立つ。
美しい顔立ち、濃い目の化粧が年齢をあまり感じさせない。
上品かつ豪奢な刺繍が施された赤の法衣は、へそまでV字に深く切れ込んでいた。黒い網タイツに腿までの赤いエナメルブーツが、闘技場のディボットを踏み平す。
そして、妖艶な彼女が中央の二人を見据え、艶やかな唇を動かした。
「二人とも用意はいいかい? あたしゃ、この試験の審判、試験監督長のババ・アデ・ワルイカだ。二人とも正々堂々とおやりな!」
その言葉に九音もキアラ・ファーフェルも無言で頷く。
「そうかい。んじゃ、始め!」
二人は、まるで互いのエネルギーが引き付け合うかのように、静かに睨み合っていた。
青い短髪を風に揺らした九音が、低い姿勢から一気に踏み込む。
紫紺の星屑を散らした衣が裾を翻す。両手で握った九音の木剣が、青白い雷光を纏って弧を描く。
「沈め、巫代流抜刀術【輝羅星】!」
短い吐息とともに、木剣が空間を切り裂いた。青い軌跡が残光となって伸び、土煙を巻き上げた。
煌めきを纏う無数の斬撃。目にも止まらぬスピードに、狐耳をピクッと僅かに動かした――キアラ・ファーフェル。
九音のそれとは異なる――青い稲光がバチバチと火花を散らしながら彼女の身体を包み込んでいた。
褐色の肌に薄い布と金属の腕甲を纏い、まるで飛んでくる方向を微かな音で察知するかの如く、チューブトップの胸元を激しく揺らし、炎のように揺れる金髪を靡かせつつ後方に飛び避ける。
躱す、弾く、躱す――振り抜く彼女の小太刀が雷を纏う。
だが、斬撃の余波で身体が後方へ投げ出され、土片が彼女の周囲で爆発するように舞い上がった。狐尾が激しく振られ、長い髪が乱れながらも歯を食いしばった顔には、まだ闘志が残っていた。
「巫代流抜刀術【金星の導き】!」
九音の木剣が放った一筋の光の斬撃が、ファーフェルの身体をさらに押しやる。九音の左上段からの薙を躱し切れず、まともに喰らったファーフェルは、胸から地面に倒れ込み、土煙を上げた。
「きゃー!あの白の豪奢な刺繍の古代文字は、絶対【ドナイヤ・シリーズ】よ!」
「きっと何かの付与がされているわ。素敵すぎる……でも金額が……」
女性冒険者たちが立ち上がり、興奮冷めやらぬ表情で、うっとりとしていた。
青い魔導スクリーンが二人の動きを大きく映し出し、観客席からも、どよめきと黄色い歓声が入り混じる。
ファーフェルは両手で地面を掴み、すぐに身体を起こした。だが、九音はすでに次の一歩を踏み出しており、紫紺の裾が風に鳴り、網目の隙間から覗く美脚が土を蹴る。
この一瞬、闘技場の空気は張り詰めたまま、次の一撃、いや、彼女たちの一挙手一投足に固唾を飲む。
その瞬間、ファーフェルが動いた。
低く構えた態勢から一気に飛び出し、小太刀を振り上げる。
「【瞬刻の稲妻】!」
「【真空斬】!」
右手から放たれた青い斬撃がバリバリと轟き、九音の身体めがけ、稲光の奔流が宙を走っていく。
一方で左から放たれた斬撃刃は、刃に微かな光を帯び、空を切り裂くかのような斬音を響かせる。
二つの斬撃を躱し切れないと悟ったのか。
「【風遁・隠刃】!」
音が響く方向に九音が木剣を横一閃に振り抜く。
九音が放った旋風を纏う斬撃が、左から迫る斬撃刃をスパッと真っ二つにしつつも、九音の太ももと裾を切り裂く。
「…っく……!」
眉をしかめる九音。直後、青い稲光が彼女の身体を包んだ。
「ぐ、ぁああああああああ!」
左目が白目になるほどの衝撃と痛みが九音の身体を貫く。
膝から崩れ落ちる九音。
だが左目が青き輝きを取り戻す。
その瞬間、九音の身体は蜃気楼のように揺れ、まるで空間に馴染むように、ふっと消えた。
「な、なんだ? 何が起こった?」
闘技場を見つめる冒険者から声が上がった。
ファーフェルもその光景に目を丸くする中、彼女の狐耳が僅かに動く。
次の瞬間、ふわりと何者かの気配が彼女の肩の上に漂う。
その刹那――ファーフェルの首筋にチクリとした痛みが走った。
「あ、あ、ああっ」
今度はファーフェルが白目を剥きながら白い泡を吹き、バタン…と土煙を舞い上げながら卒倒した。
その時だ――。
眼帯した青い蝙蝠がバサバサと小さな黒い翼をはためかせる。スポットライトに照らされた蝙蝠の影が闘技場の地面に、徐々に長い影を映し出す。
ゆらゆらと揺れる空間からまるで飛び出すかのように、九音が現れ、降り立った。
「特異スキル……【永劫の蝙蝠】……」
ガクッと膝をつく九音のその言葉に、ニヤリと笑みを浮かべる試験監督長のババ・アデ・ワルイカ。そして彼女が「それまで!」と試験の終わりを告げた。
観客たちは、その光景に圧倒され、ただ見守るしかなかった――。
――昇格試験を終え、九音が無事なことに胸を撫で下ろすゴクトーたちは、歓声が鳴り止まぬ闘技場を後にした。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
俺たちは結果を待ちながら闘技場から鍛錬場に移った。
ココの昇格試験の見学も兼ねてだ。
やがて――鍛錬場に足を踏み入れた、試験監督長のババ・アデ・ワルイカの判断が下された。
「18番風代篠介!」
「22番風代羅音!」
「29番風代九音!以上、三名のB級昇格を認める!」
試験結果を聞いた仲間たちの歓声が、鍛錬場に響き渡った。
この後、試験を受けるココは緊張など微塵も見えず、むしろ彼女の口元は微かに緩んでいた。
試験監督長のババ・アデ・ワルイカがココに向き直る。
「では、これより最終の昇格試験を開始する。試験内容は模擬戦だ。お前の実力を見せてもらう」
ココは小さく頷き、自身の胸元をチラッと覗き込む。
そしてしっかりと拳を握りしめた。
……なんで、わざわざ胸元を見たんだろうか?
まぁ、「ココ最近」のココの胸には、目を見張りますけども……。
そう思うが、口には出せない。
僅かな緊張感が漂う中、そんな俺を他所に、ババ・アデ・ワルイカが艶やかな唇を動かす。
「ココハナ・カムヨさんはF級だが、S級冒険者二人のお墨つきだ。対戦相手はB級冒険者二名。手加減はしないからそのつもりでいてちょうだい」
その言葉に鍛錬場の影から現れたのは、戦士と魔法使いの二人組。
ギルドの正式な試験に出てくるだけあって、実力は本物だろう。
「この子が受験者? ちょっと頼りなさそうだな……」
ミスリルの鎧を纏う、がっしりとした体躯の戦士がニヤリと笑い、木剣を肩に担ぐ。
「まぁ、ギルドが決めた試験だ。全力でやらせてもらうぞ」
茶色のローブを纏うヒョロイ魔導士も杖を握り、淡々と構えを取る。
「ココ、準備はいいか?」
俺が尋ねると、ココは静かに頷いた。
「はい。やります」
そのルビー色の瞳には迷いはなかった。
「はじめ!」
試験監督長ババ・アデ・ワルイカの合図と同時に、戦士が踏み込む。
大剣を振り被り、真っ向からココに斬りかかる。
だが――。
…スッ
ココはまるで風のように軽やかに後退し、一瞬で間合いを外す。
「はぁ?」
眉をつりあげ、横薙ぎ払う戦士の木剣が空を切る。
次の瞬間――「っ……なにっ!?」
背後にいたはずのココが、一瞬で懐に入り込んでいた。
戦士の死角、完全なゼロ距離だ。
「しまっ……」
言葉を言い終える前に、ココの掌底が戦士の胸に炸裂した。
――ドンッ!
巨体の戦士が吹き飛び、鍛錬場の地面を転がる。
「な、何が……?」
周囲がざわめき始める。
しかし、試験はまだ終わらない。
「フッ、甘く見るなよ! 雷鎖よ、縛れ!【サンダー・ホールド】!」
魔導士が詠唱を終え、強力な【雷撃魔法】を放つ。
バリバリバリバリッ!
空間を切り裂くような雷光がココを包み込む――はずだった。
だが次の瞬間、ココの木剣が横一閃に振り抜かれる。
「【ガサンダ・インパクト】!」
雷鳴とともに紫雷を纏った斬撃が放たれた。
ᜰᜰᜰᜰᜰᜰᜰᜰバリバリバリィ!
ズバァァンッ!
魔導士が放った雷撃の軌道が一瞬にして変わり、彼の頭上へと跳ね返った。
「な、なんだと!?」
「……反射した?」
「いや、軌道をズラしたのか?」
観戦していた冒険者たちが息を呑む。
「凄い……」
居合わせたイドヒ・ドイタ嬢も感嘆の声を漏らす。
ココが木剣を軽く握り直し、静かに相手を見据えながら言った。
「まだやりますか?」
その穏やかな声に、戦士と魔導士は動けなくなっていた。
試験監督長ババ・アデ・ワルイカは腕を組み、一瞬考え込むと、ゆっくりと手を挙げた。
「やめ!」
鍛錬場が静寂に包まれる。
戦士と魔導士が目を丸くしつつ立ち上がる。
「……なんて奴だ。完全に格が違う」
「B級どころか、A級でも勝てるかどうか……」
仲間たちも、そのココの実力に、ただ驚愕するばかりだった。
きっと二年間、休まず鍛錬を続けていたのだろう。
そして、その様子をじっと見つめていたギルド支部長のハウゼンが、静かに口を開く。
「……これはB級にしておくのは惜しいね」
彼の一言に、周囲がざわつく。
「ハウゼン支部長……やはりですか……」
「ああ、A級は確実、いやS級への推薦だ」
ハウゼンは悠然と立ち上がり、ココへと歩み寄る。
「正式な特例として、君をS級冒険者に推薦する。文句はあるまい?」
「えっ!? B級の試験じゃ……」
ココは戸惑いながらも、ハウゼンの真剣な眼差しを見て、ようやく状況を理解する。
「……ありがとうございます」
そう漏らすココの声には、これまでにない自信が滲んでいた。
ハウゼンに話しかけられていた俺の肩をちょこんと叩き、
「とりあえず、A級になれました……閣下、……我は、今日勝負の日と思い、実は買っていただいた屋台の勝負下着の……」
ココが頬を朱らめながら、俺をじっと見つめた。
「ん!?キツかったのか、そんなにキツくはないだろ?」
「えぇっ!」
(なんで!?なんで閣下はわかったのかなぁ……?『Caravan・Climb』のオレンジの上下……最近ちょっとキツイのよね……これ)
「ココならもっと上のヤツでも……」
目を丸くするココに、俺はひと言だけ添えた――。
どうしてもダークの引きができない……。
読んでくださりありがとうございます☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
引き続き、楽しんでいただけるように、執筆頑張ります(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾




