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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 22 〜召喚せざるを得ない神〜




 ダークファンタジー……にならない。神話をどうぞΣ('◉⌓◉’)








 

 「……俺はもう、何も見たくない……」


 湯気の向こうで、ゴクトーが静かに白目を剥いて崩れ落ちた――。

 だが、彼は数秒でむくりと起き上がった。その様子にほっと胸を撫で下ろす女性陣。


「俺はちょっとここから遠慮するよ……皆は、ゆっくり湯に浸かって、疲れを癒してくれ。薬湯もあるし……アリーに入り方を教えなきゃだったな。五右衛門風呂はそうだな……アカリとジュリが教えてやってくれ」


「わかりましたわ、ダー様」


 アカリは、見る者を熱波に誘うような、深紅のレース【ドナイヤ】に身を包んでいた。

 カップからストラップへと流れるように配置された繊細なフローラルレースが、まるで肌に直接咲き誇る紅い薔薇のようであり、谷間を強調するプランジデザインが、隠された甘美な領域への招待状となっていた。

 ハイウエストのパンティーは、腹部に幾重もの細いストラップが交差するケージスタイル。それは、彼女の意志の強さを象徴する束縛のようでもあり、挑発的な透け感が、さらなる想像力を掻き立てる。

 そして、太ももまで伸びたガーターベルトと、網目から覗く素肌が、クラシカルでファム・ファタルな雰囲気を完璧に完成させていた。



 「へんダー、任せてよ!」


 対照的に、ジュリはブルーのレース【ドナイヤ】セットを身につけていた。

 艶やかなサテン地に可憐なレースが縁取られ、その胸元に設けられたカットアウトと、胸を横切る細いストラップが、アバンギャルドでモダンな印象を与えていた。

 肩紐から背中へと続くストラップの複雑なラインは、彼女の背中の曲線を美しく際立たせている。ハイレグカットのパンティーにも、華奢なガーターベルトが合わせられ、ブラックのサイハイストッキングを着用して美脚を際立たせる。

 ニーハイ部分は、レーストップがエレガントに覗き、甘さと辛さが絶妙なバランスで同居しているかのようだ。鮮やかなピンクの髪とのコントラストが、彼女の魅力をさらに引き立てていた。


 蒸気がうっすら漂う大浴場。

 

 ゴクトーの軍服は、その水気を吸収していくかのように、ポツリ…ポツリ…と水滴を垂らす。

 彼も思いの外、ズッシリくるその重さと、彼女たちの視線の圧の重さに、次第に耐えきれなくなっていった。


 後ずさるゴクトーを横目に、「待ってられないにゃ!」と、いきなり大浴場にアリーが勢いよく飛び込む。「気持ちいいにゃ!」と満足そうに、彼女がふわふわの銀尾を湯に浮かべた。


 イブが「確か、この丸板を踏みつけて、入るんじゃったか?」と、尋ねながら、五右衛門風呂に丸板を入れ、風呂に足を入れた瞬間、アカリから「そうよ!」と短く返ってきた。


 イブの手前で、五右衛門風呂に足を入れるか迷っていたココも、その会話を耳にしながら、ぽちゃり…と足を踏み入れた。


挿絵(By みてみん)

 


 ――その様子を天上の大スクリーンで見ていた女神東雲は、その傍で目を伏せるトランザニヤなどお構いなしで、ニンマリと口角を上げつつ、『神具タブレット』の画面をスクロールしながらポチポチ。


 「イブちゃんの【トドメノ・ササール・ドナイヤ】……これも、素敵なセットでいいわね、金色が豪華だし。でもこれも見逃せないわね――ココちゃんのオレンジの『Caravan・Climb』もスポーティーで、ジョギングにも使えそうだわ。でもさすがわたくしの末裔ね、アカリとジュリの【ドナイヤ】だけは非売品なのね」


 独り言のように漏らす女神東雲。

 だが次の瞬間――神シロが手を翳し、タブレットタッチする東雲の指をサッと制した。


「シノや……ネット通販は癖になるでのう。もうそのくらいで……」


「あら? ご無体な……わたくしは『夜のお勤め』のため、老体な、あなたのために、買っていますのよ」


 その二人の会話にトランザニヤの顔が真っ赤になった。

 そして――。


 「そういうのは、家に帰ってからやってくれ!!」


 その怒号は雲の流れに乗るように、遥か彼方まで響いた――。

 

 

 一方、ゴクトーの屋敷の大浴場では――。


 チャプ…。


 五右衛門風呂に肩まで浸かるコガラちゃんが叫んだ。


「気持ちいいお湯ーー!あるじと一緒に入りたかったーー!」


挿絵(By みてみん) 


 反響したその声は、 少し離れた場所に腰をかけ、息をつくゴクトー君の耳にも届く。よっぽど気持ちが良いのだろう。ゴクトー君を見つめる彼女の琥珀の瞳がグレーに閃いた。ふとした時、コガラちゃんは瞳の色を変える。感情が昂っている時は赤く、冷静な時は琥珀。そして、涙を流す時は水色に染まる。

 

 「あら? グレーの瞳は、初めて見るわ……まるで何かに共鳴しているみたい。

まさか……龍皇一族の誰かが、この近くに?」


 自然と顎に手を添えてしまう。

 旦那様のシロとトランザニヤ様も、彼女の瞳の色の変化を気にかけていた。

 

 ポチポチの手を止められたわたくしは、ゴクトー君を囲む女性陣――末裔のアカリとジュリや、九音の姿に、大スクリーンを見ながらギリギリと奥歯を鳴らすしかなかった――。



 そんな天上界の神々のことなど、露ほども知らないゴクトーは、屋敷の大浴場でかしましい声を響かせ、疲れた身体を癒す、女性陣を少し離れた場所で見ていた。



 

 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇


 

 「ご主様――!気持ちが良いですわ!この天然温泉。湯あたりも柔らかくて……この独特の硫黄の匂いも、ワタクシは好きです!」


 湯に長い緑髪がつかないように――しなやかな動作とともに、右手で髪をたくしあげるミリネアが俺に振り返る。紫色の【ムラット・シタラ・ドナイヤ2】を纏うその姿は妖艶だが、どこか神々しいとさえ思える。


 

 挿絵(By みてみん)


 

 ……まぁ、ミリネアは温泉好きだからな。

 まさに、天上界で俺を生き返らせた、湯の神――女神ロカベルみたいだな。



《「ご主様……なんとも畏れ多いお言葉。心中で褒めてくださるのは、嬉しいですが、コガラや九音、ココ殿にまでその思考が届いております。見てください。彼女たちのあの表情――」》



 ミリネアが寄越す、皮肉めいた念話が顳顬(こめかみ)に響く中、彼女たちの鋭い視線に、胃がキリキリと痛み出す。



 その時――。


「あ、危ない! ミテミナさんの足元、なんかモクモクしてるっ!」


 左目を青く光らせる九音が叫んだ瞬間。

 ミテミナのインナーに組み込まれた――カルディア魔法国産の『グラトニー・シープ』の毛が、周囲の熱気とカロリーを過剰に吸収し暴走を始めたのか、彼女の足元からぼふっと可愛らしい白煙が噴き上がった。


「きゃっ!? なにこれ、熱っ……じゃなくて、なんだか身体が勝手に――!」


「これは……ハイテク機能の誤作動によるハプニング……」

 

 九音がつぶやく最中、ミテミナのサイドタイがほどけそうになる。

 咄嗟に紐をたくしあげるミテミナが、俺の視線に気付き、頬を朱に染めながら胸を両手で隠す。


 挿絵(By みてみん)


 何を今更と思いつつもその照れた姿に、ドキンッ!

『江戸っ子鼓動』が『妄想図鑑』から飛び上がりながら叫ぶ。


「旦那!あっしにも、新たなスキルが。これなら……ししし」


 俺だけにしか見えない――《想霊体》のまま姿を現す。場が騒然となる大浴場の一角で、俺は頭を抱えた。

 

 湯気と熱気が立ち込める中、それぞれの【ドナイヤ】に身を包んだ女性陣が、視線のバチバチとした火花を散らし始める。その傍らで、九音が自分のガーター・テディの端をそっと引っ張りながら、青く輝く左目で周囲を観察していた。


 だが、俺の視線に気付いたのか――九音が両手でお尻を隠し、振り返りこちらをちらり。


挿絵(By みてみん)


(うぅ……これ、ご主人様に買っていただいた手前、身に着けてはみましたが……本当に動きやすく、忍術の威力も上がりそうですけれど、恥ずかしさは尋常じゃないのです……。このオノの勇姿を……)


 

 可愛げある九音の内心が俺の「心読スキル」を発動させる。


 「似合ってるぞ……九音……」


 その言葉に火がついたのか。

 今まで沈黙していたアカリとジュリが、スッと「髪を掻き上げる風」――悩殺ポーズを執りながら目の前に立った。


 「ダー様。ところで……私のへそピもセットの【トビデル・シタチチ・ドナイヤ】は、お眼鏡にかないましたか? 美肌、美乳効果が付与されていますわ。青い髪とインナーの色の対比が、とても気に入っていますの」


 青と赤のオッドアイで俺を見つめるその傍で、ジュリも負けじと唇を噛む。

 

挿絵(By みてみん)



「へんダーの好みとは、少し違うかもだけど……自慢の白い肌と、この【ビビッド・シビレタラ・ドナイヤ】のブルーは、わたしの桃色のポニーテールによくあっていると思うの……。へそピもお洒落でしょ? セットには、魔力上昇、胸のサイズUPの付与がされているのよ。この黒い柄タイツに繋がるガーターも、色気上昇が付与されていてとてもお気に入りなの」


 その二人の猛烈なアピールに、ゴクリと唾を飲み込む。

 胃がズキズキと痛み出し、次の瞬間――「パキリ」とした音が体内に響いた。激しい胃の痛みが全身を貫く。意識は遠のいてゆき、目の前の景色がふっと消えた――。



 

 

 ◆(ここから『江戸っ子鼓動』のあっしが、語り部をつとめやす!)◆



 「旦那、しっかり! これは、まずいでやんす……心臓が……」


 焦りながらも図鑑をめくる手が冷や汗でじとり。


 何を探しているのかもわからずに、無我夢中で、あっしは『妄想図鑑』に記されている記述を眺める。癒しの力を秘める妄想体はいない。

 焦るあっしは、天を仰ぎ、神代の大神に祈りを捧げるように紡ぎ出す。


「かしこみ――かしこみ――天上に輝きし大いなる神よ、永劫(えいごう)の理を越えて我に応えよ。この主を救け給え!」


 《想霊体》のまま紡ぎはしたものの、なんの変化も起こらなかった。

 

 

 一方で大スクリーンを注視していた神々が、その様子に天上界で慌てる。


 白目を剥いて床に倒れ込んだゴクトーに、贅沢な石造りの大浴場では、かつてないほどの異様な緊張感が漂い、その場を制していた。


「ご主さん、しっかり!」


 ミンシアがまるで空間を割くように、『アイテムボックス』を顕現させた。その中から【エルフの涙】と、万能薬(エリクサー)を素早く取り出す。

 

 シュポンッ、シュポンッと親指で小瓶の蓋を弾き飛ばし、ゴクトーの口に澄んだ緑の液体と、緋色に輝く液体を同時に流しこむ。だが、ゴクトーの口からこぼれるのは白い泡ばかり。呼吸も止まっていた。


 ミンシアが緩んだ緑Tパンの紐をぐいっと腰にひき上げながら――

 「……ここで死ぬなんて許さないわよ!」と気合を入れ、ゴクトーに跨った。


挿絵(By みてみん)


 そして、彼女が心臓マッサージを始めた。「1、2、3、4……」とリズムよく胸部を圧迫し、ゴクトーの顎を持ち上げると、その唇に息を吹き込んだ。

 数回繰り返されるが、ゴクトーの意識は完全に天へと旅立っていた。しかし、倒れたゴクトーを放置して、その場が収まるわけがなかった。


 「あるじーー!」


 風呂から飛び出してきたコガラが叫ぶ!

 ダッと駆け寄るが、見えない何かに阻まれる。


「いたっ!」


 その瞬間――顕現した『江戸っ子鼓動』が『妄想図鑑』をばさりと、湿気が立ち込める大理石の床に落とした。

 その様子に脇目も振らず、ゴクトーに抱きつくコガラが涙を零しながら息を吹き込む。

 

 その時だ――。

 

 黄金に輝き出した『妄想図鑑』がパラパラと乾いた音を響かせた。そして――光の中から黒い影が顕現した。


挿絵(By みてみん)


 ベージュの髪を巻貝のように束ね、黒い肌に白い眉とまつ毛が、この世界のどの種族にも属さない――異様な雰囲気を醸し出す女性。

 胸部装甲には巨大な円形紋章が刻まれ、そこには――『キャベ神』の文字が浮かび上がっていた。

 

 琥珀の瞳でこちらをちらり。その瞬間、頬と唇はレッド・ローズに染まる。

 肩部には葉脈を思わせる装甲に、たおやか、かつ豊満な胸元。

 X型の銀のへそピアスを輝かせつつ、獣皮を思わせる腰巻きを靡かせながらこちらに歩み寄る。

 

 白のガーターに網タイツ、装甲と同じ紋章が浮かぶヒールが大理石に冷たい音を響かせた。手足には緑色のガントレットを備え、盾を携えつつ、その盾には、キャベツの葉を象徴する紋章が描かれている。


 ――その姿は至極神々しかった。

 

 彼女が無言で手を翳した瞬間、緑光を帯び、まるでキャベツの葉のような光が、ゴクトーの全身を包み、ゆっくりと折り畳まれる。

 その刹那、目の前には緑、黄、白の眩い三光の筋が重なり、混じり合った。

 バクッと動き出すゴクトーの心臓――その鼓動とともに、白目を剥いていたゴクトーの目に正気が宿り、彼の意識が戻った。

 

 ――そして。

 

 ゴクトーが目覚めた瞬間、『妄想図鑑』のページには、新たに『キャベ神』の名が記された――。


 







 

 読んでくださり、ありがとうございます。

 最後、ゴクトーの胃にトドメを刺したのは、桃色姉妹の【ドナイヤ】でしたw

 次話は『妄想図鑑』です。

 引き続き楽しんでいただければ嬉しいです。☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆



 







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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です! アカリちゃん&ジュリちゃんの【ドナイヤ】アピールが可愛すぎて目の保養でした! しかしその猛攻撃でついにゴクトーさんの胃袋と心が撃破されて白目を剥いたのは爆笑しました(笑)。 ミン…
前回の落差の大きさに引き続き、今回も大浴場コメディから緊迫した展開への振れ幅がすごかったですね! アカリさんやジュリさん、九音さんたちが次々と【ドナイヤ】をアピールし、ゴクトーさんの胃が本当に限界を…
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