新たな拠点編 21 〜絶望のドナイヤ祭と淫靡の牢獄〜
東雲さんに代弁してもらおう!Σ('◉⌓◉’)
天上界では。
神シロとトランザニヤがいない隙に、しれっとミリネア愛用の【ムラット・シタラ・ドナイヤ】を試着しつつ、女神東雲は両手に持つ【ドナイヤ】を見比べながら、どこか悩んだ様子で唇を噛む。
「こっちのグレーのブラ、【ダークファンタジー・ナラ・ドナイヤ】は、暗い影を演出する魔法付与が施されているし、こっちの刺繍が可愛いパンティ、【ピンクノママ・ススメタラ・ドナイヤ】の方も、ビジュアルアップの魔法が付与されているのよね?
この上下を身につけて、【ダークピンクニ・ソメタラ・ドナイヤ】と名付けようかしら。これ新しいジャンルだわっ!」
それを見ていた上の階の上位神、神代の大神が呆れていたのはさておき。
――その頃、ゴクトーは胃がキリキリ痛む中、大浴場で待つ軍人たちの元へ頭を抱えながら向かう。ゴクトーは女性陣たちの前でいかにうまい言い訳をするのだろうか、と女神東雲はニヤリと笑みを浮かべていた。
古の宮殿を思わせる石造りの大浴場。
色褪せた大理石と真鍮の配管に囲まれ、アーチ型の窓から柔らかな陽の光が差し込み、湯気が立ち込める。
最も深い浴槽の前でミテミナ・ビボウ中将は水面を覗き込み、僅かな波紋に自身の姿を映し出す。
「赤の差し色にパーソナルカラーの緑を入れて貰えて良かったわ」
そして、銀色の髪を整え、家紋の入った胸元のペンダントを揺らす。湯気に包まれながら彼女が唇を噛む。
「遅いわ……」
漏らす彼女は、両手を頭の後ろに回し、そのポーズは無防備に見えて、その実は、すべてを見渡すかのような監視者のようだった。
湯気が天井まで立ち上る。
その天井には、複雑に絡まり合う真鍮のパイプや、怪しげな圧力計が取り付けられ、ビクトリア調の美と、無骨なスチームパンクの機構が奇妙に融合していた。
「ゴクトー様は、何をしてらっしゃるのかしら……」
つぶやきながら待ちくたびれ、何気なく歩き回る彼女。
特別にあしらえた白いストッキングは、湿った空気の中で異質な清潔さを放ちながら、長い脚を際立たせる。
引き締まった身体に、鮮やかな赤と緑のコントラストが美しい、インナー上下と白いストッキングは、ココリドにオーダーしたもの。
「さすがココリドさんだわ……レースの緑の部分に、カルディア魔法国産のグラトニー・シープの毛を使っただけはあるわ。1セット金貨18枚はちょっと、お高かったけれど、【ホドケルワヨ・ヒモ・ドナイヤ】――サイドタイ・タイプをオーダーして良かった。紐付きで便利だし。これならいつでもスルッと……ふふふ」
ミテミナ中将の零すその言葉に、まるで合わせたかのように――壁から突き出た巨大なライオンのブロンズ像が、咆哮を上げているようなその口から、熱い湯の代わりに蒸気を噴き出す。それは熱すぎず、適温なのだろう。気持ちよさそうに瞼を閉じる彼女の背後で霧となって漂っていた。
その時だ――。
「ん? ビボウ中将殿、風呂にも入らず、何をされておる?」
肩に掛からないぐらいの青髪を揺らし、全身漆黒のレース、コルセットとガーターが一体化された――ガーター・テディを纏う九音。まるでボディスーツのようなインナー上下は、九音の豊かな胸元と肌の白さを際立たせる。
差し込む陽光に艶やかなガーターとストッキングを輝かせながら、足音さえさせずに九音がミテミナ中将に近づく。
「誰かを待っておるのでしょうか? オノはお邪魔でしたか?」
右目の眼帯がどこか妖艶な雰囲気を醸し出す、九音の青い左目がミテミナ中将の姿を射抜いた。その瞬間、『鑑定士』に目覚めていた彼女の左目の前には、青白く淡光を放つスクリーンが浮かんでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◾️名称:【ホドケルワヨ・ヒモ・ドナイヤ】
◾️製作者:ココリド ◾️インナースタイル:ビキニ・サイドタイタイプ
◾️素材:グラトニー・シープ(カルディア魔法国産)
◾️付与・特性
美乳形成;100%上昇
ウエストシェイピング形成:100%上昇
ダイエット効果:余分なカロリーを自動的に吸収・分解
微量な熱エネルギー(ほんのり温かい防寒効果)に変換、空気中に放出
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うむ……オノの【ドナイヤ】と比べてみるか……」
そうつぶやく九音の左目が青く輝く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◾️名称:【トロケルシャドウ・バットワ・ドナイヤ】
◾️製作者:ココリド ◾️インナースタイル:ガーター・テディタイプ
◾️素材:黒光蛾の繭(フィルテリア産)
◾️付与
素早さ;100%上昇
色気:100%上昇
蝙蝠変身時の効果:主人、ゴクトーの血を吸収・体内にて分解、
魔力エネルギーに変換、最大忍術を放出
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
九音は画面を黙って見つめ、髪をもしゃっと掻き上げた。
その様子にミテミナが首を傾げる。
九音が物音に気づいて振り返ったその刹那、彼女の目の色が徐々に変わっていった。
「お待たせいたしました、ビボウ殿……あら、九音殿までこちらに?」
緑色の髪を靡かせつつ、ミリネアが声をかけ、ガーターに留められたストッキングの美脚で歩み寄る。紫色の繊細なレースの豪華4点セット――【ムラット・シタラ・ドナイヤ2】が、その白く美しい彼女の豊満な胸を揺らしていた。
知的な眼鏡は曇り防止が付与された最新式――その眼鏡の奥から覗くエメラルド色の瞳は、どこか楽しげで、かつ艶やかだった。
九音がどこか恥ずかしそうにつぶやく。
「ご主人様に言われて、作ったものの。こんな艶やかなインナー装備は、生まれて初めてで……オノの身体に合っておりますか?ミリネア殿」
「お似合いですよ九音殿。懐かしいですわ……夜市の露天商、あの『Caravan・Climb』で、九音殿を採寸させていただいたのを思い出しますわ。ふふ」
ミリネアの言葉に、九音の顔が焼け木杭に火がついたかのように赤くなった。
髪を纏めようとしていたミリネアが、気配を察して振り返る。
大浴場に近づく足音が二つ。
「ここが大浴場にござんす。それではエリナ殿、あっしはこれで」
「ありがとうござんす」
ここまで案内してくれたメイドの赤絹・シタギに、「仁義」を切るエリナ・エイマス。
それとほぼ同時に、アナ・ドレンも大浴場に辿り着く。
――その頃、二階のゴクトーの執務室兼寝室では。
「――というわけで、皆の者、身支度を整えて大浴場へ移動するぞ! 朝風呂こそ一日の英気を養う、最重要命題だからなッ!」
ゴクトーが、これ以上ないほどの軍総司令の威厳を滲ませ、必死の逃避を込めつつ叫んだ。
アカリが「……ダー様、後でお説教の続きをたっぷりさせてもらいますわ」と、ひとまず殺気を引っ込めて渋々頷く。
さすがに、モンロー・リマリは側近たちに止められ、膨れっ面のまま、ゴクトーの部屋を後にした。
こうして、ゴクトーを先頭にした『訳あり修羅場御一行』は、一触即発の重たい空気を纏ったまま、屋敷の一階、奥にある広大な大浴場へと雪崩れ込んだ。
一方で大浴場のミリネアたちは待ちきれず、湯に入っていく。
湯気がもうもうと立ち込める贅沢な大浴場の扉を開けた瞬間――。
「いやぁ、流石は軍総司令閣下のお屋敷だ! この広さといい、お湯の柔らかさといい、極楽極楽……って、あっ?」
ふわりと舞う湯気の中から現れたのは、燦然と群青色に輝くインナーを纏ったアナ・ドレン少将だった。
その隣では、ミテミナ・ビボウ中将が、湯上がりの火照った頬をパタパタと扇ぎながら優雅に寛いでいる。
しかし、彼女たちの姿を見た瞬間、ゴクトーの後ろにいた女性陣の動きがピタリと止まった。
「……ちょっと、待ってよ」
アカリとジュリが目を丸くし、ココとイブが絶句する中、「綺麗にゃね。二人とも!」と、アリーが笑顔で声を上げた。
それもそのはず。
アナ少将とミテミナ中将が身にまとっていたのは――【ドナイヤ】ブランドの最新作。それはあまりにも露出度が高く、かつ、ゴクトーを落とす戦略が見事に練り込まれた危険な特製インナーだった。さらに、エリナや九音まで身につけている。
「あ、あなたたち、その格好は一体……ッ!?」
ミンシアが引き攣った声を上げる。
「ん? ああ、これは、ミリネア殿が仲介してくださったココリド殿が、自ら、採寸までして仕立てた―― 【クギズケニ・シタラ・ドナイヤ】だ」
アナ少将が眉をひそめ、青い目でミンシアを睨みつける。
一瞬の静寂。
だが、我に返ったかのようにアナ少将が「ふっ」と口元を緩めた。
「執事のエレノアさんが『今朝の納品に合わせて、朝風呂のついでにご試着を』って、勧めてくれたものだから。いやぁ、流石、機能性が抜群で――」
アナ少将がケラケラと笑いながら胸元を張る。その横でミテミナ中将も、妖艶な笑みを浮かべつつ、ゴクトーへと視線を向けた。
「ゴクトー様、私のオーダーした【ホドケルワヨ・ヒモ・ドナイヤ】、なかなかの仕上がりだと思うけれど……感想を聞かせて下さらない?」
――昨夜の記憶のブラックアウト、ベッドルームを埋め尽くしたヒロインたちの修羅場、そして朝っぱらから大浴場で、「キワドイ新装備」を試着している軍人コンボ。
ゴクトーの脳内で、ついに限界を超えた胃袋が「もう無理です」と、パキリと音を立てて砕け散った。
「……俺はもう、何も見たくない……」
湯気の向こうで、ゴクトーが静かに白目を剥いて崩れ落ちた――。
――そのほぼ同時刻。
ズードリア大陸南東の島――魔族の国ガーランドでは、四天王キライマカが、松明がポツリ、ポツリと灯る、薄暗い地下の長い階段を降りていた。
徐々に階下が見えてくると、凄まじい【邪気】の気配が漂う。
ガシャーン! ガシャーン! ガシャーン!
激しい金属音が響く中、地下牢の前に立つキライマカがニヤリと笑う。
「けけけ……100年間も幽閉されて、副官だった貴様もおかしくなったか?」
「何を仰せかと思えば、とんだ戯言。100年ではなく200年でございますよ……ふふふ。我、仇敵のキライマカ様……」
妖艶かつ低い女性の声が暗闇に響いた――。
読んでくださりありがとうございます。
このエピソードの【ドナイヤ】祭りは、「何を読まされているのだろう?」、「早く物語を進めてくれ!」と、声が聞こえてきそうで怖いですw
「次回こそは、ダ、ダークに!」
ブックマークの追加をしてくださった方に感謝とお礼を!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




