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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 18 〜過去の残響、交錯する因縁と影〜



 過去のお話が入りますΣ('◉⌓◉’)





 

 執務室兼寝室を兼ねた俺のベッドには、艶っぽい夜着を纏う公妹モンロー・リマリが座り、仲間たちに「二人だけにしてくださる?」と、上品に美しい声を響かせた。その言葉に、納得のいかない様子の仲間たち。

 アカリ、ジュリ、ミリネア、ミンシア、エリナ、イブ、ココ、紫苑、九音、エレノア、紅子、そしてコガラまで、凄い表情で公妹を睨む。


 「したっけ……まだ、話が……」


 悔しそうに、痛ましい拳を握るノビをパメラが、首を横に振りながら無言で制す中、クロニクの腕を掴んで扉の外に出ようとするミーア。

 

 妖精龍の姿のコガラが「あるじーー添い寝はコガラとーー!」と、可愛い声を響かせ、クロニクの肩に留まりながらも、何度も振り返った。


 「ちかたないわね。ゴクトーちんは右腕が不自由でちょ、何かあったら困るから、わたちが……」


 そう言いかけたポロンだが、モンロー・リマリの鋭い眼光と、その圧倒的な威圧の前に、言葉が止まった。ポロンも肩をすくめながら渋々、部屋を出ていった。その背中を見送るリマリが口元を緩めながらポツリ。


「ふふふ。これで伯爵と二人きりの甘く、熱い夜が過ごせますわ」


 その言葉に仲間たち、特に女性陣の肩が震えていた。


 リマリが本当に不安で来たのか、演技なのかは、わからない。

 ただ、彼女のブルーの瞳の奥には、どこか謎めいた光が宿っているように感じた。

 

 バタンと閉じられた執務室の扉。だが、足音が聞こえたのは僅かだった。

 皆、聞き耳を立てる気配が何となく伝わる中、リマリが艶やかな唇を動かす。


「実はゴクトー伯爵に、お話したいことが……」

 

 リマリはベッドに座ったまま、魔族襲撃について語る。


「先ほどの魔族……本当に怖かったですわ」


 真面目に話を聞こうとする俺に、リマリが少しずつ距離を詰めてくる。


 ……この人、本当に怖かったのか? それとも……?

 公妹だから無下にもできないよな。

 ……ドルサードが屋敷内部に侵入していたと聞いたし。


 そう思わずにはいられなかった俺は尋ねてみた。


「……リマリ殿下。さっきから、なんか変じゃないですか?」


 どこか考え込む彼女が顎に手を添えながら口を開いた。


「実は、晩餐会の最中に……怪しげな淫靡な香りと、【邪気】を振り撒いていたあの女性――『マヌカン伯爵』の次女、リュミエール・マヌカン・ネルルが、気になっておりますの」


 「ああ、円卓に挨拶に来た黒髪の美しい女性だよな。俺もあの香りと雰囲気は尋常ではないと感じていたが……」


 俺の言葉に、リマリが頷きながら答えた。


「……メデルザードに留学していたわたくしですが、冒険者ギルドの本部を視察中――角を生やし、青い髪に変わった彼女が、ギルド内で、和装の銀髪エルフと対峙しているところを、偶然見ましたの」


「何だと?」


 思わず声と顔に出ていたのだろう――リマリがビクッと身体を跳ねさせた。

 

 「その銀髪のエルフは、多分だが、俺の幼馴染のエルフだろう。巨大な虎を連れていなかったか?」


 問いただしたその瞬間――ドガンッ!と扉が蹴破られ、エリナが踏み込んできた。


挿絵(By みてみん)


「旦さん……、あの神のようなお方と幼馴染なの?」


 顔に焦燥を滲ませつつ、彼女の息も上がっていた。


「エリナ、実は2年前、ワイバーン討伐でハゴネの山中を彷徨っていた時、「生き神」と名乗る巨大なボアの魔物――『ボアゾン』と対峙した。その際、巨大な虎に乗って現れ、銀髪のエルフが助太刀してくれたんだ。その時は、それが幼馴染の華と気付かなかったが、ShadowWind の長兄、風組の頭の侘助から、養子にもらわれていった華が、棟梁になったと聞かされた……。その時思ったよ。ああ、華が助けてくれたんだと」


 俺の言葉に顔が引き攣っていくエリナが唇を噛む。


 「アタシ、あの『始祖の一族』が治める小国、『トランザニヤ』が、ヒドラ討伐を依頼したせいで、ギルド本部に呼び出されたの……。アタシが任されたのは、ワイバーンの調査及び討伐だったのだけれど、ワイバーンを一体倒して、妹たちと一度本部に戻ったのよね。その時、本部長のハンニバル・スミスと話していたトランザニヤ国の末弟、ドミナス公爵を見かけたの……。その後、恐ろしいことが起こったわ」


 

 その言葉は、天上界の人柱、トランザニヤの黒銀の瞳を閃かせる。

 彼は大きなスクリーンに映し出されていた下界の様子を一旦静止した。

 そして――『映写神具』のダイヤルをカチャカチャと弄り、過去の映像を映し出す。それは、メデルザードにある冒険者ギルドの本部の様子だった――。


 



 「おやおや。せっかく静かに“お誘い”をしていたというのに。鼻の利く野良猫と……神の加護を纏った――『不届きな姪御さん』がお見えのようだ」


 ドミナス公爵が不気味な靴音を響かせる。

 青い髪を靡かせ、その瞳はもはや人間のものではない。

 縦に割れた赤い瞳孔が、妖しく発光している。


 彼の背後には、顔面を蒼白にしたエリナ・エイマスが、戦斧の柄に手をかけたまま、金縛りにあったように立ち尽くしていた。


 「エリナ・エイマス! そこをおどきなさい!」


 銀髪のエルフーー華の声がギルド内に凛と響き渡った。

 一方で二階の奥、壊れた扉の向こう側で――ハンニバルが「やれやれ」と頭をペタンと叩きながら、苦笑い混じりに身を起こした。


「……エリナ、だから言ったじゃろう。『大事な客人』と話中だと。……だが、これほど早く『最悪の答え合わせ』が来るとはのぅ」


 ハンニバルの目が、現役S級の鋭さを取り戻す。


 公爵――いや、魔族の男は、華の持つ黄金に輝く刀をじっと見つめ、優雅に一礼した。


「【魔王ガーランド】に連なる者として、歓迎しましょう。……さて、どなたから『二度と戻れない国』への切符を受け取りますかな?」


 華はギルド本部で【桜刀・黄金桜大文字】を抜いた。


 カツ…カツ…カツ…


 階段を降りてくるドミナス公爵の残像が、碧い燐光となって霧散し、現れたのは夜の闇を凝縮したような――黒のドレスを纏う、圧倒的な美女。

 

 彼女は周囲の戦慄を愉しむように薄く微笑み、呆然と立ち尽くす冒険者たちを見据えると、しなやかな所作でドレスの両端を指先でつまみ上げ、片脚を斜め後ろに引いた。



「私自身で名乗ることは少ないのだけれど……初めましての方々に、少しご挨拶を――」



 挿絵(By みてみん)

 


 背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま、膝を静かに折り曲げて深く腰を落とす。それは、王宮の舞踏会でもこれほど完璧なものはないと思わせるほど、優雅で美しいカーテシーだった。


「魔王様の配下、四天王がひとり、北のドルサードと呼ばれていますわ。どうぞご贔屓に!」


 顔を上げた瞬間、金虹の煌めきを宿す琥珀の瞳が妖しく細められた。

 

 挨拶という名の『死の宣告』。その優雅すぎる振る舞いが、かえって彼女の異質さと、逆らえば一瞬で塵にされるという圧倒的な格の差を際立たせる。



 バァァァン!!


 耐えきれなくなった華の相棒ティグルが魔導銃を放った。



 だがドルサードは、カーテシーの姿勢から立ち上がる流れのまま、まるでダンスのステップを踏むかのように、無造作に躱した。


 放たれた魔弾が――パキィィィン!と、高い音を立ててギルドの壁を貫通する。


 「ふん、蚊が飛んできましたわね」


 彼女はドレスの裾を持ち激しく翻す。

 

 一階のフロアにまで届くほどの碧い呪詛が渦を巻き、ギルド本部の石造りの壁が、その圧力だけでミシミシと悲鳴を上げ始めた。


「華しゃん、この魔族……”つおい”にゃ……」


 ティグルの声が震えている。


「ふふふ。可愛らしい子猫だこと」


 鈴を転がすような美しい声を出すドルサード。だが、彼女が瞳を細めた瞬間、ギルド内の温度が氷点下まで急降下した。


「……あ、あ……」


 最強の女戦士、エリナ・エイマスが膝をつく。

 彼女の戦斧を持つ手が震え、金属が床に触れてカタカタと情けない音を立てた。

 その刹那、震える手でティグルが反射的に放った光弾は、空気を切り裂く轟音とともにドルサードの眉間を狙う――。


 だが、ドルサードは視線すら動かさない。しなやかな指先を伸ばし、飛来する魔力の塊を、まるで羽虫でも捕らえるかのように優しく包み込んだ。



  パキィィィィィィン……!



 結晶が砕けるような鋭い音が響き、ティグルの渾身の一撃は――ドルサードの掌(てのひら)の中で無残にも握りつぶされ、ただの光の塵へと還っていった。


「退屈ですわね。……せっかくのご挨拶ですもの、この街ごと『更地』にして差し上げますわ」


 ドルサードが腕を広げた刹那、彼女の背後に、世界を焼き尽くすほどの質量を持った碧い呪詛が渦巻く。ギルド全体を呑み込むほど、碧い呪詛は膨れ上がり、空間がミシミシと悲鳴を上げる。

 

 だが、その破滅が解放される直前。


「……させないわよ。その穢れた呪詛魔術、この空間ごと閉じ込めてあげるわ――神代の檻に、収まりなさい」


 その声は、静謐でありながら世界を震わせる響きを持って放たれる。


「――明けの明星よ、九重の天より降り注げ。東雲が統べし黎明の光、我が刃に宿りて闇を灼け。顕現せよ、不浄を排する神代の結界。


 荒ぶる魔の蠢きを、一筋の光の檻へと収束せん!女神東雲が真名に代わりて命ず――奥義! 神代封殺――【黎明一閃】!」



 本来なら街ごと吹き飛ぶはずのドルサードの呪詛魔術と、

 華の天変地異さえ起こす神代の金光が衝突した――その瞬間。


 挿絵(By みてみん)


 黄金の光を帯びた華の【桜刀・黄金桜大文字】が、その破滅の予兆を真っ向から切り裂いた。さらに華は【桜刀・黄金桜大文字】を虚空へ向け、黄金の魔法陣を展開する。

 

 ドルサードが解き放とうとした破壊の奔流が、まるで見えない重力に引かれるように、黄金の魔法陣がそれらすべてを「檻」の中に包み込む。


 膨大なエネルギーがギルドの壁一枚傷つけることなく――華の掲げた魔法陣の中心一点へと吸い込まれ、凝縮されていく。

 

 片手で魔力弾を握りつぶしたドルサードが、自分の魔術を「握りつぶされた」ことに驚愕し、その妖しい琥珀の瞳を見開いた――。


 黄金の魔法陣が吸い込んだ魔術の雫が、華の指先でパチンと弾けて消えた。


 あとに残されたのは、耳が痛くなるほどの静寂と、氷点下までさがったギルド内の冷気。


 そして、完璧な絶望を――「無」に帰されたドルサードの凍りついたような微笑だった。


「……あら。私の『ご挨拶』を、これほど無作法に……握りつぶしてくださるなんて」


 ドルサードの碧い髪が、怒りか、あるいは初めて覚えた高揚か――生き物のようにうねる。


 琥珀の瞳が細められ、獲物を定める蛇のような鋭さを帯びた。



 「にゃ、にゃんて力にゃ……」

 

 ティグルが腰を抜かしそうになりながらも、魔導銃を構え直す。


 彼女の野生の勘が叫んでいた。


 今、目の前で起きたことは、この世界の魔法体系を根底から覆す「神の業」なのだと。


 

 その時、二階の奥から、低く、だが地響きのような声が響いた。


「そこまでだ、ドルサード」


 ハンニバル・スミスが、ゆっくりと階段の縁まで歩み寄る。そのツルツルの頭は、先ほどまでの滑稽な輝きを失い、今はただ静かに、重厚な魔力を湛えていた。


「ギルド本部で、これ以上暴れるなら、この老骨に鞭打って、お主を『ガーランド』へ塵にして送り返さねばならんが……どうするかのぅ?」



「ふふ、ハンニバル本部長。……今日はこのあたりで、お暇させていただきますわ」


 ドルサードは、何事もなかったかのように――再び優雅なカーテシーを見せた。だが、その視線はハンニバルではなく、真っ直ぐに華へと向けられている。


 

 挿絵(By みてみん)



「東雲の姪御さん……。あなたのその『光』、魔王ガーランド様への良い手土産になりますわ。いずれ、我が国でお会いしましょう。……招待状は、地獄の業火で焼いたものを――お届けしますわね♡」


 碧い燐光が、微笑するドルサードの姿を足元から飲み込んでいく。


「待ちなさい!」


 華が【桜刀・黄金桜大文字】を構え直すが、その瞬間に碧い光は爆散し、ドルサードの気配は完全に消失した。


「ま……魔族……」


 転げ落ちた受付嬢の震える声だけが、静まり返ったフロアに響く。



「……嘘、でしょ……」


 階段の途中で、エリナ・エイマスが膝をついた。

 ワイバーンを仕留めた自分たちの誇りが、この数分間で粉々に打ち砕かれた。

 エリナは震える声で、傍らに立つハンニバルへ縋るように告げる。


「……本部長、聞いて。……私が、ハゴネの山中でワイバーンを討ったとき、

 感じたのは魔族の気配だけじゃなかった。もっと……もっと神々しくて、冷徹なまでの『格』の違い。あれは、魔族なんてものじゃなかった……」


 エリナの脳裏には、ワイバーンという雑魚の背後に潜んでいた、世界の理――そのものを塗り替えるような、黄金の覇気が焼き付いていた。


 「魔王四天王」の絶望すらも「収束」させてしまう華の背中を見て、エリナは悟る。


 自分が戦っていたのは、この世界の表層に過ぎなかったのだと。そして、気丈な彼女らしからぬ態度をギルドに晒した。力なく階段にヘナヘナと横たわる姿に、ギルド内がざわつき始めた。


 挿絵(By みてみん)



 エリナ・エイマスは折れたプライドを抱えるように、ただ華を見つめていた。


 「……あなた、一体、何者なの……?」


 その問いに華は、刀を鞘に納め、銀髪を掻き上げ、 巨大虎に変貌したティグルに跨る。


 彼女の視線は、もはやギルド内にはない――遥か天上、自分を見下ろしているであろう「伯母様」と、そして、この世界の異変の元凶へと向けられていた。


「私はただの、お節介な姪よ。……ティグル、行きましょう。

 まだ、鼻を利かせなきゃいけない――『ネズミ』たちが残っているわ」

 

 

 スクリーンの大画面を見つめていた、女神東雲がため息をつく。

 

 「姪の華は、今もドルサードを追っていますわ。きっとゴクトー君の近くで様子を見ているでしょうね」


 その言葉は雲の切れ間に消えていった――。

 







 お読みいただき、ありがとうございます。


 仲良くしていただいております、

 『桃源 華』様をモデルにした『風代 華』に特別友情出演していただきました。


 桃源 華様 Xアカウント @hana_tougen  @Tougen87  


 華ちゃんは、カクヨム、アルファポリスサイトで人気のファンタジーも掲載してます。


『\19000PV超感謝/ おっさん、異世界で スローライフはじめます

 〜猫耳少女とふしぎな毎日~ #おっスロ』 tougen_87著


 https://kakuyomu.jp/works/16818622173856934382

 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/817268736


 こちらも読んでいただければ嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆





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更新お疲れ様です! 冒頭のリマリ様 vs 女性陣のバチバチ感から、過去のメデルザードギルドでの大迫力バトルへの怒涛の展開に大興奮でした! 四天王ドルサードの『優雅な死のカーテシー』の絶望感も凄かったで…
モンロー・リマリさんの証言をきっかけに、ドルサードさんと華さんの過去の因縁が明らかになりましたね。 ゴクトーさんと二人きりになろうとするリマリさんを、仲間たちがものすごい表情で睨んでいるところに笑い…
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