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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 17 〜キリキリと軋む胃袋〜 



 ブックマークの追加ありがとうございますΣ('◉⌓◉’)

 



 ――その頃、晩餐会の会場内では。


「エリナ殿、久しぶりじゃ。妾たちを救うてくれた恩は忘れてはおらぬゆえ」

「お久しぶりね。あらエリナさん、ちょっと綺麗になったわねん?」


 イブとパメラの何気ない会話に、困惑するエリナが口を開く。


「ええ、久しぶりね……みんな、油断は禁物よ。この会場でさっき、魔族の、それもアタシが見たことのある――四天王の一人、ドルサードを見かけたわ……」


 小声で囁かれたその内容に、イブたちが目を丸くし、息を呑んだ――その瞬間。


「ハァ……♥ ごきげんよう、皆様……」


 艶めかしい吐息とともに、会場の一角からすれ違う貴族の男性たちの魂を、根こそぎ奪い取るような――甘い声が響く。

 

 警備担当として――毅然と給仕を取り仕切っていた執事エレノアだったが、その背中には微かに不穏な魔力(マナ)の尾が揺れ、瞳は魅惑のピンク色に染まっていた。

 先ほどのズット・ハートとの融合で目覚めてしまった――サキュバスの本能が完全にバグを引き起こしたようだ。


「あ、あぁ、なんと美しい……!」

「なんだあの麗しさは……! 我の心を撃ち抜いたのは――悪魔か、それとも天使か……いや、もうどちらでも良いわ!」


 お高く留まっていたはずの貴族の寡男(やもめおとこ)たちが、エレノアが一歩歩くたびに次々と膝を折り、その場に崩れ落ちるようにメロメロになっていく。

 

 数秒前まで優雅に社交ダンスを楽しんでいたはずの紳士たちが、我先にとエレノアの足元に群がり始め、会場は瞬く間に、「良からぬ意味での大パニック」へと突入した。


 一方で料理を運ぶメイド姿のミラ・アカノとエリナの妹アウリアは、その様子に呆れながら立ち止まる。


「サキュバス執事のエレノアのことは、放っときゃよござんす、さぁ、あっしらは、仕事に戻りやしょう」


 赤絹・シタギの渋い口調に「ええ」と頷き、彼女たちは、給仕をそつなくこなしながらも、警戒の目を光らせた。


 挿絵(By みてみん)



 その騒ぎに、二階で警戒するミンシアとミーアも、何事かと足を止めた。

 ミンシアが世界樹の葉をあしらった、深くスリットの入った白いショートドレスから緑のガーターセットをチラリ。溢れんばかりの胸元を揺らし、二階の桟に手をかけ、赤い編みタイツで包まれた美脚をあらわに、白いヒールをコツッと響かせながら身を乗り出す。

 

 「あの冷静なエレノアさんが、まさか……ご主さんの『眷属』――あのサキュバス、ズット・ハートが乗り移ったの? ふふ、男どもが躍起になっているけれど、アタシだって負けないわ!」

 

 その時、ミーアが胸元が大胆にV字にカットされた、どこか夜空の星座を思わせる――紺碧のショートドレスの裾を靡かせ、白い編みタイツに包まれた美脚とともに、紺色のエナメルピンヒールを踏みしめながらコツコツ…と、二階の回廊に足音を響かせる。

 そしてミンシアに近づき、冷静な表情を見せるミーアが彼女の肩をポンと叩いた。


「姉様……ココリドさんお手製――【ミセタイノ・コンヤノ・ドナイヤ】の緑の紐パンが見えてますよ。……うちらはうちら。さぁ、警備に戻りましょ!」


 その言葉に、唇を尖らせるミンシアがポツリと零す。


 挿絵(By みてみん)

 

「そう言うあなたの、【ヨセナイ・コノタニマハ・ドナイヤ】は、随分とおとなしいデザインね。まぁ、どうせパンティも地味な白のオーソドックスタイプでしょうけど?

 それより、いいなぁ、スタイルならアタシも負けないのに……貴族たちをはべらせに、アタシも下の階に行きたいわッ!」


「だからっ、姉様……それ余計」


 その場からミンシアを強引に引き剥がす中、どこか不満げな表情を見せ、渋々離れた彼女にミーアが苦笑いを浮かべる。


 ミンシアの舌打ちが微かに二階に響いたのは、さておき。




 その頃一階では、まだ騒ぎは収まらず――。


「ちょっ、ちょっとあなたたち! 給仕の邪魔よ、離れなさい……って、はぁっ、んっ……♥」


 追い払おうとするエレノアの声色すらも、サキュバス特有の誘惑ボイスに変換されてしまい、群がる男たちの理性をさらに破壊していく。

 エレノアに触れたその瞬間、男たちの耳まで変貌させてしまう魔力が漏れる。冗談にもなっておらず、もう始末に負えない。


 その光景を見ていたゴクトーは、立ち上がろうにも、公妹のモンロー・リマリに、いまだに左腕をガッツリ掴まれたまま、立ち上がれずにいた。


 一方でエレノアの変貌――いや、男どもを手玉に取るその姿に、アカリが「エレノアさん、何やってるのよ!?」と、慌てて引き離そうとするも、周囲の熱気と混沌(カオス)は、もう誰にも止められなかった。


 そんな中、少し離れた場所で、メイド長紅子が零す。


 「……はぁ。やっぱり、こうなりましたか」


 と言いながら構築した――【魔導障壁】の結界を微調整しつつ、冷や汗を拭う。

 外の音や魔力は完全にシャットアウトされているものの、「会場内のこの混沌と、熱気までは……防ぎきれなかったわね」と、どこか達観しつつ、ニヤリと口元を緩めながらつぶやいた――。


 

 挿絵(By みてみん)


 

 ――その頃、はるか雲の上の天上界では。


「いやぁ、それにしてもドルサードの秘術の奥深さは……って、おいシロッ!いま下界のゴクトーの屋敷、なんか凄いことになってないか!? あの執事が大変なことになってるぞ、ししし!」


 トランザニヤが大スクリーンのモニターを指差して腹を抱えて笑う。

 

 神シロも、「あの大仰な貴族たちが、見事なメロメロ状態じゃな……」と、呆れたような苦笑を浮かべる。

 

 一方その傍で、女神東雲だけが冷や汗を流しながら、慌てて手元の『神界タブレット』を操作していた。


「ま、まずいですわ! わたくし、ついさきほど、【ドナイヤ】ブランドのセールに釣られて、『ポチ』ってした、サキュバス対応の執事服オプション――精神耐性・強制冷却ファン付きの【コレデ・オトスワヨ・ドナイヤ】』を、うっかり、配送設定の現在地を『地上』のままにしていたかも……?!」


 次の瞬間、ゴクトーの屋敷の真ん中、まさにエレノアが男たちを従えて艶然と佇むその頭上空間が、ピシャリと音を立てて割れた。


 ズドンッ!!!


 轟音とともに、天界から直送された――『謎の巨大段ボール箱』が、ゴクトーの屋敷の華麗なシャンデリアを見事に避けながら、天界にいる女神東雲の位置情報を頼りに大広間に落下した。その勢いの中、飛び出したのは、露出度が限界突破した挙句、艶やかに怪しく光る――ガーターベルト付き『超ハイテクサキュバス対応執事服』だった。


「……は?」


 腕を絡めていたモンロー公妹を思わず放り出し、ゴクトーの額に青筋が浮かぶ。

 外では魔族たちとの戦闘、会場内では執事がサキュバス化して大パニック、さらに頭上からは謎の神具の誤配送。

 

 ゴクトーの胃痛は、限界を突破しようとしていた――。




 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇


 


 盛大に、そして混沌の中、幕を閉じた晩餐会の後。

 喧騒とは、かけ離れた美しい夜の帷が降りる中、玄関の門には、正気に戻った執事のエレノアをはじめ、メイド長の紅子を筆頭に、シタギらメイドたちが顔を揃える。


 「それでは、またなゴクトー卿!」

 「では、後日、アドリア城で会える日を、楽しみにしておりますぞ!」

 

 イイダル・コス・ハルツーム侯爵と、シモンヌ伯爵が豪奢な馬車で帰っていったのを皮切りに、どこか虚げな目をして馬車に乗る『マヌカン伯爵』、上機嫌で帰っていく来賓たちを見送った。


 メイドやドレス姿の仲間たちがカーテシーを執る中、ふっと肩が軽くなった俺は、傍で来賓を見送るミリネアに労いの言葉をかけた。


 「ミリネア、色々ご苦労だったな」


「いえ、ワタクシよりも皆が、頑張ってくれましたので……」


 少し頬を赤らめるミリネアの横では、ミンシア、ミーア、アカリとジュリも美しいドレスを月明かりに輝かせていた。


 一方で、アリーとイブとパメラも俺の顔を覗き込みながらニコリと微笑む。


 俺はミリネアとアカリに肩を貸してもらいながら、ようやくの思いで執務室へと戻ってきた。


 部屋の扉を開けると、そこにはすでに外での激戦を終えた面々が待ち構えていた。


「――お疲れ様なんさ、ゴクどーさん!」


 腕の痛みを堪えつつ、ノビが荒い息を整える。

 傍らには、返り血を拭ったクロニクや人化を解いたコガラ、そして気配を消すように佇む――ShadowWindの面々が揃っていた。


「外の魔族どもは、オイラたちで方をつけておいたよ。……だが、数は伊達じゃなかった。兄貴がいたら、もっと早く片付いたがな」


「ピィ。あるじの真似した――!」

 

 コガラを肩に乗せるクロニクが疲れた様子で、晩餐会で残った肉を二人で頬張りながら報告する。


 ノビの激闘、紫苑たちの秘術による迎撃、そして魔族たちが残していった被害の状況。次々と交わされる報告を聞きながら、眉を寄せながら頷いたその瞬間――。


「……みんな、ちょっといいかしら……」


 ピリついた空気の中、エリナが重い口を開いた。

 彼女の背中にある【戦斧ジェミニ】が微かだが、不穏な余韻を漂わせていた。


「外の連中は、掃討できたかもしれないけれど……。アタシ、あの会場の奥で見たのよ。魔族四天王の一人、空間を操った『北のドルサード』を。すでに、この屋敷の内部に入り込んでいたわ」


 その言葉に、執務室の空気が一気に凍りついた。

 魔族の本命は外の陽動ではなく、内側からの崩壊が目的だったのだろう。


「……っ、ふざけた真似を……許せないんさ!」


 ノビが痛めた拳を握りしめた、その時。

 ノックの音とともに、夜の静寂を切り裂いて響いたのは――

 

「失礼いたしますわ、ゴクトー伯爵」

 

 美しくも危険な響きを持つ、アドリア公妹モンロー・リマリの声だった。


 すでに夜着の上から、艶やかなシルクのローブを羽織っただけの彼女は、側近の警護の制止を軽くいなすように――すぅっとプライベートな執務室へと滑り込んできた。


「夜分遅くに申し訳ありませんこと。ですが、どうにも動揺して眠れなくて……

 ねえ、伯爵? この不安を鎮めるために、もう少し……二人きりでお話しをいたしませんこと?」


 艶然と微笑みながら、すらりとした美脚をちらつかせ、俺のベッドに座るリマリ。


 

挿絵(By みてみん)


 

 魔族の脅威に頭を悩ませた矢先、今度は最高権力者の危うい色香が俺を逃がさない。


 外の魔族、内の潜入者、そして迫る公妹。

 胃が軋む夜は、まだまだ終わりそうになかった――。










 ゴクトーの胃は、持つのでしょうか?

 続きも楽しんでいただければ嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です! 『キリキリと軋む胃袋』のタイトル通り、ゴクトーさんの胃痛が画面越しに伝わってくる怒涛の面白さでした! エレノアさんのサキュバス無双と二階のミンシア&ミーアの【ドナイヤ】談義に爆笑…
タイトル通りゴクトーさんの胃が痛くなる出来事が次々と押し寄せてきましたね(≧∇≦) サキュバス化したエレノアさんが貴族たちを次々と骨抜きにしていくだけでも十分カオスなのに、女神東雲さんの【ドナイヤ】…
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