新たな拠点編 15 〜中庭の激突、火を噴く影風の秘術〜
目指せアニメ調ラブコメ風ダークファンタジー! なんて……ね。Σ('◉⌓◉’)
「ジェミニが……震えているわ」
晩餐会場でエリナが背中の戦斧の振動に気づき、小声でつぶやいたその頃。
一方で、中庭にて警備をしていた、人化したコガラも【桜刀・黄金桜一文字】の震えに気づき、鞘からすぅーっと引き抜き、白刃を二つの月に閃かせながら零す。
「あるじの刀が、何かに共鳴している……」
彼女の瞳が覚悟を宿し、見渡す視線が鋭くなる。
「……クロにぃ! ノビしゃん! 屋敷の中に、妙な魔力が流れ込んできてるーー!」
コガラの叫び声に、クロニクがすぐさま黒いローブを翻し、インカム代わりの通信魔導具を叩く。
「くそっ、やっぱり正面の賑やかさに紛れて、中に入り込みやがったか! ShadowWind、こっちに来てくれっ!」
その時、ノビが異様な気配だと感じたことのある【覇気】に気づく。
「あいつだ。あん時は、ぶっ飛ばせなかったんさ……! ちょうどいい、相手してやるんさ」
ノビが指をバキバキと鳴らし、「【ギガント・ナックル】!」
詠唱しつつ大地を蹴る――みるみる巨大化していくノビの右腕。
その刹那、屋敷の重厚なエントランスの扉が、凄まじい爆風とともに吹き飛んだ。
「――お前は、いつぞやのチビではないか。随分と盛大なお出迎えだな」
煙の向こうから現れたのは、魔族四天王キライマカの腹心、ヒバラガガだった。 だが、ヒバラガガは薄ら笑いを浮かべたまま、その場で不気味に指を鳴らした。
その瞬間、空間が歪み、夜空に不気味な灰青色の魔法陣が浮かび上がり、魔法陣から湧いてくるように、巨躯の魔族たちが次々と降りてくる。
あっという間に、50体にも及ぶ魔族が中庭に降り立った。その光景にコガラはポカンと口を開け、目を見開く。
一方で、クロニクが瞬時に取り出した緋色金のハルバードを構えた。
そしてコガラに向かって叫ぶ。
「くっそ、コガラ、ボーとすんな、切り倒すか、火焔を吐くかで、こいつらをぶっ倒せ!」
「ごめん、クロにぃ!わかったーー!」
ハッと我に返ったコガラが、巨躯の魔族たちに突っ込んでいく。
その光景にヒバラガガがほくそ笑む。
「ふっ、この屋敷の主人も、まさか我が、忍び込むとは思うていまい。さあ、二年前の祭りの続きを始めようか――貴様や、ここにいる末裔たちすべてを灰燼に帰してやろう!」
「ぬかせ!【ギガント・ナックル】!」
ノビの怒号とともに巨大化した黄金の拳が、ヒバラガガの正面を打ち抜く――。咄嗟に身を躱すヒバラガガの鋭い爪が、その巨大化した拳と交わりながら火花を散らす。
ガキィィンッ!
荒れ狂う風を切り裂き、金属がぶつかるような硬質な轟音が響き渡った。
ノビの放った一撃は地面を砕き、周囲の敷石を粉々に吹き飛ばしたが、ヒバラガガはその巨腕の軌道を見切るように、さらりと軽やかにバックステップを踏み冷徹な笑みを崩さない。
ノビとヒバラガガの激しい衝突が大地を僅かに揺らした。二人の攻めと守りが瞬時に入れ替わる。
――息をもつかせぬ攻防一体の戦闘を繰り返す中、無数の巨躯の魔族たちが一斉に咆哮を上げ、中庭の警備網を押し潰そうと雪崩れ込んでくる。
「あるじは、確か、こうして……」
ゴクトーの技を見よう見まねのまま、コガラが【桜刀・黄金桜一文字】を逆手に持ち替える。
「巫代流抜刀術、【無音】!」
と鋭い喝声とともに、一閃。
白刀は風を切り裂き、鋭いシュンという音を立てた。
純白の白刃から放たれた鋭い斬撃が、先頭を走る魔族の装甲を紙細工のように両断し、間髪入れずにコガラが吐き出す、高熱の紅蓮の炎が闇夜を赤々と染め上げる。
圧倒的な熱量が敵の群れを呑み込み、毒々しい緑血の生臭さと焦臭さが夜風に入り混じる中、クロニクが、ハルバードを薙ぎ払い――死角から迫る、魔族の首を的確に狩っていく。
「チッ、数が多いな……!」
だが、倒しても倒しても、灰青色の魔法陣からは次から次へと魔族の増援が湧き出してくる。
正面の華やかな晩餐会の喧騒とは対照的に、中庭は一瞬にして血と硝煙の匂いが立ち込める――殺伐とした戦場へと変貌していた。
その最中、ヒバラガガは冷ややかな目を細め、ノビとクロニクを見据える。
「無駄な足掻きだな。主賓であるゴクトー卿も、あの広間の奥で今頃――我が同志の『甘い香り』に骨抜きにされている頃合いだ」
その言葉に、クロニクの眉間がピクリと動く。
「……なにっ?」
「フッ、気づかなかったか? マヌカン伯爵の娘に化けたドルサード様が、すでにあの華やかな大広間の奥へ入り込んでいることに……。美酒と芳香に酔いしれる貴族どもごと、あの屋敷は内側から崩れ去るのさッ!」
ヒバラガガの不敵な笑みに、ノビが怒りで顔を歪め、眉を吊り上げた。
「ふざけんなっ……! ゴクどーさんのところに、そんな虫唾が走る野郎を、近づけさせるもんかさっ!」
ノビはさらに闘気を爆発させ、黄金の巨腕に凄まじい魔力を集中させる。
その時、不意にバルコニーに現れたのは、 『マヌカン伯爵』の娘リュミエール――その正体は魔族四天王の一人、ドルサードであった。彼女は中庭の光景に目を見開き、舌打ちした。
「良いところだったのに……とんだ邪魔が入ったわ」
彼女の纏う薔薇の香りが、甘美な毒の瘴気へと変わり、周囲の空気を歪ませていく。
「キライマカめ……魔王様にこっぴどく詰められたものだから、功をあげようと必死ね……マヌカン、あなたは、ここに残りなさい」
「……はい。ドルサード様」
虚げに返事をする『マヌカン伯爵』の瞳が赤く光った。
「……興醒めね」
ぼやく、ドルサードがパチッと指を鳴らす。
「また会いましょう、ゴクトー卿……ふふふ」
不敵な笑みを零すドルサードの姿が、蜃気楼のように揺らぎ、その場から消えた――。
その光景を大スクリーンで見ていた、天上の神シロが顎髭を撫で付け、片眉を吊り上げた。
「発動の瞬間に生じる魔力の残滓も、空気を震わせる特有の駆動音すらもないわい。まるで世界という布地を一度切り裂き、別の場所へと縫い合わせたかのように、掻き消えるとは……あれは確か……あの女神が得意としていた魔術じゃな」
その言葉に頷く、女神東雲も表情に驚きの色を滲ませる。
一方で、どこか納得した表情を見せるトランザニヤが口を開く。
「一般的な転移魔法が、 『術者を光の粒子に分解して超高速で移動させる』という――物理的な制約を孕むものであるならば、この魔術は次元そのものを飛び越える。距離、障害物、そして強固な結界すらも。堕天した――『女神ネルル』の娘、ドルサードが神代の秘術を使うのも、まぁ、頷けるがな」
神々は、ゴクトーの屋敷が魔族に襲われているにも関わらず、この場を去ったドルサードの魔術のことについて、さらにヒートアップしていた――。
――その頃、地上では颯の如く、屋敷を駆け抜ける五つの影が、中庭にようやく降り立つ。
「なんだぁ?この数はーー!」
叫びながらも篠介が大鎌を振り抜く。
バシュッ!
「グゥオーー!」
雄叫びを上げる魔族の鮮血が迸り、夜風に緑の霧が霧散する。
倒れる魔族に、トドメを刺す羅音のクナイが月明かりに鈍く光る。
「巫代流刀術【村雨】!」
息を整え、魔族の懐に飛び込む九音が、低い姿勢から逆手で刀を振り上げる。
ビュッと飛び散る返り血をものともせず、魔族を斜めに切り裂いた。
一方、圭介は魔族の背後の影からすぅーと姿を現し、背中を一刀両断――
バタッと倒れる魔族の影から次の影へと忍び込む。
月明かりを覆い尽くさんばかりの魔族の軍勢は、それでも怯むことすらなく――不気味なまでに、無機質な嘲笑を浮かべている。
迎撃するクロニク、コガラも、そのタイミングで勝機を掴み、魔族たちを切り倒していく。
中庭の噴水に飛び散る赤と緑の鮮血が微妙に混じり合い、やがて黒い水に変わっていった。
他方、茶髪を夜風に靡かせる紫苑が顔を赤くしつつ、「八咫鴉様の寵愛を受けるには――まずはあれを……なんとかしなきゃだわね」とつぶやき、次々と魔族が降りてくる魔法陣を見据えつつ、指を立て――
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」と静かに口ずさむ。そして言霊をのせるかの如く、豊かな胸を揺らしながらそれぞれ異なる『印』を結ぶ。
その刹那、風がピタリと止んだ。
紫苑が刮目し、「【火遁・大焔號】!」と澄んだ声を響かせる。
次の瞬間、大地が震え、
ゴォォォォォォ༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄༅༄!
紅蓮の炎が巨大な火柱となって、灰青の魔法陣を突き抜けた。
その瞬間、降りてくる魔族数十体と、魔法陣が跡形もなく燃失した――。
なんとあのノビが!そして紫苑が! ですが戦闘シーンは苦手なんです(T . T)
ですが――本作を楽しんでいただけたなら僥倖です☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




