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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 13  〜恩人たちとの再会〜



 ダークファンタジーの道のりは険しいΣ('◉⌓◉’)

 



 雲海がどこまでも広がる天上の特等席。  


 下界の様子を映し出す巨大な神聖スクリーンを前に、神シロ、女神東雲、そして人柱トランザニヤの3人は、それぞれ思い思いの体勢でゴクトーたちのその光景に見入っていた。

 

 スクリーンに映し出されているのは、まさに今、ゴクトーの部屋の前で起きた大スペクタクルーーダークエルフの元エージェント・エレノアが血の契りに陶酔し、さらにはサキュバスの『ズット・ハート』を取り込んで、淫らな翼と角を生やした、あまりにもカオスな『覚醒の瞬間』であった。

 

 パリッ……ポリッ。

 

 静まり返った雲の上に、心地よい煎餅の咀嚼音が響く。  

 

 神シロは右手に湯呑みを持ち、左手で煎餅をつまみながらなんとも言えない複雑な表情でスクリーンを凝視していた。


「いやぁ……最近の下界は、教育に悪いというか何というか……。ゴクトーの周囲、年々女難の度合いが跳ね上がっとらんか?」


「ふふ、何を言ってるんですかあなた。若い男女の熱い絆ですよ、絆」

 

 隣で優雅に紅茶を啜っていた女神東雲は、涼しい顔で微笑みながら片手で空中に光るパネルを操作している。


挿絵(By みてみん)


「エレノアさんのあの青いドレスーー彼女の脱ぎっぷりは見事でしたわね。 

……あら? ココリド製執事服のタグの裏に、隠しオプションがあったわ。

『サキュバス対応』……? まさか尾が出せるミニスカートと「おパンツ」があったとは。さっそくわたくしの端末でもオプションを探して、ポチっておかなきゃ」


「シノや? 下界の修羅場を、通販のカタログ代わりに使うのはやめんかッ!」

 

 呆れ顔の神シロが大きく息をつきながら長い白髭を撫でつける。

 

 そんな二人のやり取りに苦笑しつつ、トランザニヤが黒銀の目を細めた。

 

「しかし我が子孫、ゴクトーの血をわけた途端、皆がこうも限界突破していくのはどういうわけだ? あいつの血には、人間の理性を溶かす薬でも混じっているのかッ!?」


「薬というか……あら、いやですわ。トランザニヤ様ご自身が下界におられた時に散々周囲を掻き乱したーー【魅了覇気】がそもそもの原因ですわ……よ? もちろんご存知でしょ? うちの旦那様より授けられた『妄想図鑑』。この図鑑の持ち主特有の、周囲を狂わせる引力みたいなものじゃないかしら?」

 

 二人のやり取りに神シロが「やれやれ」と漏らし、肩をすくめつつ、ゴクゴクと喉を鳴らしながら熱いお茶を飲み干した。

 一方その傍で、女神東雲が嘲笑を浮かべながら唇を動かす。


「まぁ、いいじゃありませんか。これからあの覚醒したエレノアさんが、晩餐会場の不審者やら、下心満載の貴族の野郎どもを文字通りーー骨抜きにして蜂の巣にしてくれるんですから……。まさにエンタメとしては最高の一級品ですわよ」


「それは……その……ゴクトーにとっても助かるだろうが……蜂の巣って……」

 

 トランザニヤが苦笑いを浮かべつつ、下界で丁寧な給仕をするエレノアの姿と落ち着きなくソワソワしているゴクトーを見据えてつぶやく。


「ゴクトーの奴、そろそろ自分の肉体のキャパシティと、精神力が限界突破しそうだが……。まぁ、あの賑やかなハーレムの仲間たちに囲まれているうちは、死にたくても死ねんか」


「ふふっ、本当に。……サキュバス化したエレノアさんが、どんな風に悪い男たちを料理するのかしら。 あなた、お茶のおかわり淹れますから、もっと大きく映してくださいませ!」


「はいはい、わかったわかった。っと、っと。

 どうやら不穏の種が集まってきたぞ。ほら、見てみなさい」

 

 天上の神々と女神の楽しげな笑い声が、雲の果てへと消えていく。  

 カオスと狂騒の渦巻く下界の宴は、いよいよ最高潮へと向かっていこうとしていたーー。


 

 そんな神々のやり取りなど知る由もないゴクトーは、アドリア公国から支給された軍総司令の黒い軍服に身を包み、晩餐会に出席する招待客の名前をチェックしていた。



 挿絵(By みてみん)



 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇


 

 「……しかし、錚々たる面子だな。アドリア公国の重鎮たちか……面倒なことにならなきゃ良いがな」


 不審者のことが頭から離れない俺は思わず漏らす。

 周囲の警備はクロニクに指揮を任せ、ノビ、コガラ、ShadowWind の面々が警戒態勢に余念がない中、一抹の不安が頭をよぎる。


 設計当時はワクワクした希望に満ち溢れ、鍛冶師のポロンと可能な限り、自分たちの希望を入れつつ、設計はしてみたもののーー今は、この屋敷の広さに、頭を抱えてしまった。


 リリゴパノアの女子たちが晩餐会に出席するため、身支度を整える中、執事となったエレノアをはじめ、図鑑からの強力な助っ人ーー赤絹・シタギ、ミラ・アカノ、紅子がメイドとなり、晩餐会の警備を務めることには、なってはいるが、それでも心許ない。


 いざとなれば、ドレス姿でも戦う女子メンバーのことは、十分理解はしているつもりだ。だが、あまりの来客数に、混乱しないかと不安は募る。


 猫の手も借りたいーーそう願うばかりの俺は、息をつきながら窓の外を見つめた。

 星々が煌めき、二つの月が美しく白き輝きを見せる中、大型の飛行船が次の行き先を求めるように、ゆっくりと夜空を運行していた。


 コンコンコン


 扉のノック音に振り返りつつ、「どうぞ」と返答する。カチャリと開かれた扉ーーその先に立っていた人物に、思わず目を丸くした。


 「旦さん、お久しぶり。逢いたかったわ!」


 ダダっと勢い良く駆け寄り、俺の胸に飛び込んできたのは、【七つの大罪】の一人にしてーー Lust(色欲)の【美神(ヴィーナス)】こと、S級冒険者のエリナ・エイマスだった。首に腕を回されたせいで、その豊満な柔らかい感触と温かさが俺の身体に伝わる。


 挿絵(By みてみん)

 

 思わず耳まで熱くなるが、腕がまだ言うことを聞かない俺は、ただ抱きつかれたままの状態でエリナが離れるのを待っていた。

 

 「ふぅー良い匂い。やっぱり独特の香り……いえ、見えない何かなのかしら? 

 旦さんのそばにいるとドキドキもするけど、安心するわ。ふふ」


 艶やかな唇を緩めるエリナが俺の目をじっと見つめる。その視線を逸らそうと俯いた瞬間、彼女の胸元からこぼれるようにーーチラリと目に飛び込む赤いレースに思わず息を呑んだ。

 

 そんな中、彼女がようやく巻きつけていた腕をとき、頬を赤く染めながら唇を噛む。


 「旦さん、水臭いわね……先ほどミリネア女史から聞いたわ。人手が足りないって。アタシはもう、クラン『リリゴパノア♾️』の立派なメンバーなのよ。まず、最初に相談してくれなくちゃだわ!」


 そう言って頬を膨らませる彼女はーー二年前のサイクロプスとの戦いの後、倒れていた俺たちを、冒険者ギルドまで運んでくれた恩人であり、仲間の一人。


 何かを言いたい。だが喉の奥で声が詰まってしまう。俺の頬には自然と涙が伝っていた。無言のままの俺に、エリナが人差し指で俺の涙を掬いながら口を開く。

 

「旦さん、晩餐会の警備のことなら心配いらないわ。ココリドさんに頼んで、メイド服は仕立ててもらったの。みんな入ってらっしゃい!」


 その言葉が部屋に響いたその瞬間、エリナの妹たちがメイド姿で現れた。

 

 久しぶりの再会に俺の目が潤む中、エリナのすぐ下の妹、次女のアウリアが青い髪を靡かせつつ、「クラマス!お久しぶりです」と杜人(グアルダボスケス)の血を引く彼女が長い耳をピクリと動かす。

 どこかダークエルフのように見える、陽気なムードメイカーだが身体に浮かぶ金色のルーンと白いエプロンが、黒いメイド服をさらに際立たせる。


 その後ろには、三女のルナが控えていた。部屋に足を踏み入れた彼女が長いグレーの髪を揺らし、妖艶な髪色と揃いのエプロンを翻す。


「ワタシは、執事のエレノアさんのサポートに徹するつもりです。マスター!」

 

 そう漏らす彼女もダークな肌色だが、金色ルーンとのコントラストは美しくーー文字列が刻まれた黒いメイド服が、バッチリハマっていた。


 後方に控える四女のノクターナ、五女のアクア、六女のフローラ、末っ子のフレアと、四人の妹たちも個性豊かなメイド服に長い耳、全員身体にルーンが浮かぶ。 髪型や色が違うーー色とりどりの個性が華やかさを漂わせていた。


 挿絵(By みてみん)


 「久しぶりだな、みんな。助けてくれてありがとう」


 俺の言葉に彼女たちは無言で頷き、うっすらと涙を浮かべた。

 強力な戦力を誇る仲間たちの気遣いと優しさ、その温かい再会に、胸がギュッと締め付けられる俺だったーー。


 


 

 







 


 エリナ・エイマスと妹たちが本編に帰ってきました╰(*´︶`*)╯♡

 読んでいただけて嬉しいです。

 引き続きお楽しみいただければ嬉しいです。

 

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です! 冒頭の天界トリオの会話(東雲様のサキュバス対応オプションポチりに爆笑です!)から最高でした! そしてエリナさん&妹さんたちの本編復帰、本当におめでとうございます! 抱きついてくる…
二年前にゴクトーさんたちを救ってくれたエリナさん姉妹との再会が温かったです(о´∀`о) 冒頭の天上界では、エレノアさんの覚醒を眺めながら相変わらず自由に盛り上がる三人に笑いました。女神東雲さんがま…
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