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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 4 〜ワイバーンのお肉は元気が出るにゃ〜



仲間たちが続々とΣ('◉⌓◉’)

 



 頬を朱に染めたミリネアに抱え起こされながら、

 俺はベッドから身体を起こし、

 白いシャツに黒いパンツ姿のまま立ち上がった。

 そんな俺を、ミンシアが狩りの獲物を見据えるような鋭い目で見つめる。

 彼女の唇の端には、挑発的な笑みさえ浮かんでいた。


「……何よ、その格好。

 もう少し、見栄え良くしてからベッドから出なさいよね?」


 ミーアがその言葉を聞いた途端、

 頬を真っ赤に染めて顔を背け、クロニクの影に隠れる中、

 クロニクが気まずそうに顔を赤らめながら口を開いた。


「ミ、ミンシアさん、それは言い過ぎだろ……。

 ところで兄貴……

 師団長たちが『ファルダット自由国』に帰るって言ってたんだけど……

 その身体じゃ無理できないだろ? 代わりにミリネアさんとアカリ姫、

 それにパメラ嬢、三人のサブリーダーたちが見送りに行く手筈なんだが……」


 クロニクのその言葉には寂しさが滲んでいた。

 俺を見つめるその目が、まるで「本当は来て欲しい」と言いたげだ。


 「もちろん、見送るさ」


 思わず漏らす俺に、ミリネアが黒いジーンズを差し出す。


 「ご主様、まずは軽い食事を……」


 そう言うミリネアに肩を支えられ、ジーンズをやっとのことで履いた俺は、

 新たに増設されたダイニングへと移動した。

 まだ全身に鈍い痛みが残っているが、

 無理にでも動かなければ、身体が言うことを聞かなくなるはず。

 前世でも骨折はしたことはあるーー言うなればリハビリだ。

 

 そんな中、ダイニングテーブルに座ったミンシアが、

 ふと鼻息も荒く、声を張った。


「そうだ! 忘れてたわ!

 倒れていたアタシたちをここまで運んでくれたーー 

 エリナさんたち姉妹も、見送りに行くって言っていたわ!」


 その姿はどこか興奮した子供のようだ。


「無理をされては……まだ、お身体が言うことを聞きませんよね?」


 ミリネアが静かに俺に尋ねたその時、

 階段をダダダダダッ!と早いリズムで駆け上がる足音が響く。

 

「僕も行くにゃ!」


 銀色の垂れ耳がドアからひょっこり。

 白いTシャツでジーンズ生地のオーバーオールスカートのアリーが、

 手を挙げながら垂れ耳をピンと立て、眩しい笑顔を見せた。

 その可愛げある仕草と表情に釣られて、俺も少しだけ口元が緩む。

 一方でアリーの後ろには、ジュリと涙を溢すアカリが立っていた。


 「ダー様……良かった」


 そう漏らす彼女は、頬の涙を拭いつつ、こちらに歩み寄る。

 遅れること数秒、パタパタと音を立てる足音が階段に響きを与え、

 腕に怪我を負うノビがグレーのシャツにジーンズ姿で、

 ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。


「ゴクどーさん、まだ無理しぢゃダメでづ!」


 言いながらも彼も首から包帯を下げて腕を吊るしている。

 そんな中、痛みに顔をしかめつつ、

 こちらを気遣う姿に胸が締め付けられた。

 

「それはお前の方だろ?」


 思わず返した俺の言葉にノビが苦笑いを浮かべる。

 一方でノビの背後から顔を出すパメラがグレーの短パンに、

 同じ色のタンクトップの軽装で、

 胸元から溢れんばかりの赤いレースの『爆弾(ダイナマイト)』を弾ませ、

 呆れたように息をついた。


「まったく、この馬鹿ガエルってば、怪我してるのにーー

 『パンだって焼けるんさ!』なんて、無茶ばっかり言うのよん」


挿絵(By みてみん)


 その言葉にノビが照れくさそうに頭を掻きながら、

「したっけ……頼りにされてたがら……」と小さな声でつぶやいた。


 俺は苦笑しながら、

 意識を失い、ここに連れてこられた経緯を聞くことにした。


「俺は、どうやってここに?」


 ミリネアが微かにエメラルドの瞳を揺らしながら、口を開いた。


「依頼(レイド)を終え、コンラッドから帰ってきた、

 エリナさんたちにギルド支部に運び込まれ、

 アカリ殿たちの献身的な治癒魔法を受けたご主様は……」


 ミリネアが紡ぎ終える寸前、ミンシアが肩を揺らし、笑いながら口を挟んだ。


「そして、アタシの生成した万能薬(エリクサー)、

 【エルフの涙】が効かないとわかった途端、クロニク皇子が、

『何かできることはないのか?飯ならオイラが!』って、

 血相変えながら焦っていたわよね」


 その言葉を聞きながらーー

 クロニクが恥ずかしそうに視線を逸らしていた。


「ゴクにぃと僕らたちをここまで運んでくれたにょは、

 ミリネアしゃんの転移魔法にゃ!」


 アリーも思い出したかのように頬を緩める。


「……そうか、ミリネアありがとう。クロニクも心配かけたな」


 俺の言葉にミリネアは微笑み、クロニクは気まずそうに頬を掻いた。


「腹を満たせば兄貴が治るかと。いや、実は……肉なら持ってたんだよな、

 みんなからわけて貰ったワイバーンの肉が……」


「「「「ええぇぇ!?」」」」


  一斉に驚きの声が上がった。


「でもオイラ、調理なんかできねえし、

 仕方なくノビに頼んだんだ。けどあいつ、まだ怪我が治ってなくてさ……」


 クロニクの視線の先には、

 腕に包帯を巻いたノビが照れくさそうに笑っている。


「結局、ノビはパメラさんに泣きついたんだよね」


 ミンシアの言葉にパメラがさらりと肩をすくめる。


「ええ、でも私も料理は、苦手でして……」


 そんな中、ミリネアが自慢げに胸を張り、唇を動かす。


「それで最終的に、

 ワタクシとアカリ殿がワイバーンの肉の調理を引き受けました!」


 アカリも「久々に腕が鳴ったわ」と自信たっぷりだ。


「おいおい……話が随分逸れたな。まぁいいか……それで味はどうだったんだ?」


 俺が問うと、クロニクが口を押さえて無言になる。


「っえ? もしかして……」


「う、美味かったよ!」


 場が静まり返る中、クロニクが頬を掻きながら続けた。


「……ただ、火力が強すぎて……ちょっと炭っぽかったけどな!」


 その言葉に、全員が吹き出して笑った。

 ダイニングに和んだ空気が流れるーー

 その空気を揺るがす言葉がジュリの口から紡がれた。


「でも……ヘンダーがテンガロンハットを買った魔導具屋や、

 キャリーズ・パミュも半壊して……」


 そう言いながら銀のチューブトップと、

 白い短パンに素足姿の彼女が肩を微かに動かし俯く。


 その様子を見ていたアカリも、

 青い地で牡丹柄の和装の緩んだ胸元を半袖から伸びる美しい腕で、

 整えながら赤いブラトップを隠すように、視線を下げつつ声を絞り出した。


「私がもう少し、強ければ……」


挿絵(By みてみん)


「仕方なかったにゃ……アカリねぇのせいじゃにゃい……

 にゃはっ! それにゃら、あの半壊した店の修理に、

 もう噂の修復屋ーーエルダドワーフと魚人たちが来てたにゃ!」


 アリーの優しい気遣いとその言葉に、

 アカリが「ハッ」としたように顔を上げた。

 明るい彼女の声に場が少し和んだ頃。


「そういや……」


 クロニクが急に『アイテムボックス』を漁り始めた。


「……オイラ、ワイバーンの肉がまだこんなに余ってるんだ」


 クロニクが嬉々とした声で塊肉を掲げて見せる。

 だが、次の瞬間眉を顰めながら口を開いた。


「でも、調理はさっぱりなんだよな……」


「無理っ!クロニクさんには無理なんさ!」


 ノビが即答するが、パメラがニヤリと笑って横目でミリネアを見た。


「となると、料理の腕がある人にお願いするしかないわねん」


 結局、ミリネアとアカリが協力して、

 ダイニングでワイバーンの肉を調理することとなった。



 ジュウッ!



 ワイバーンの肉の脂がフライパンの中で弾ける音が心地良い。

 香りが脳を刺激し、食欲を司る俺の腹の虫ーー

 『ぐうさん』が『妄想図鑑』から顔を出す。

 「うまそう」と素直な言葉を漏らし、脳内の『妄想図鑑』に消えていく。

 

 喉が思わず鳴り、渇きが募る。

 漂う香りに、自然と脳内で開く『妄想図鑑』のページから顔を出す、

 『香りん』にお腹を擽られた。


 二年ぶりの図鑑の仲間たちに思わず俺が口元を緩める中、

 その匂いに釣られるように、仲間たちもテーブルの席につく。


 ミリネアが意味ありげな笑みを浮かべる。


「ふふっ……ご主様、

 これは特別なお料理ですから、心して召し上がってくださいませ」


 一方でアカリも負けじと誇らしげに言った。


「ワイバーン肉は高価なんだから、ありがたく食べてよね!」


 フライパンから立ち上る湯気と香ばしい匂いに包まれ、

 場には温かな雰囲気が漂う。

 

 焼き上がったワイバーンの肉を、がむしゃらにがっつくアリーが、

「ワイバーンのお肉は元気が出るにゃ!」と、

 つぶやきながら口のまわりをぺたぺたに光らせる。


挿絵(By みてみん)

 

 その彼女の言葉と仕草に、ジュリが呆れたような顔をしながら息をつく。

 一方でミリネアとアカリが、その見事な食べっぷりに苦笑していた。


 そんな中、クロニク、ミーア、ミンシアが揃って「いただきます」と、

 ワイバーンの肉にナイフを入れたその瞬間、

 じわっと溢れ出す肉汁に俺の目が奪われた。

 

 

 ……ガーリックの香り?

 それと、少し焦げたような香ばしい香りは、

 醤油のようなものなのだろうか?

 


 腹が鳴るぐらいの良い香りに鼻腔をくすぐられつつ、

 前世の記憶をたぐり寄せる俺を他所に、

 パメラがワイバーンの肉を切り分ける。

 そしてノビの皿と交換しながら「貴様も食え……」と、頬を赤く染めていた。


 一方、ミリネアとアカリも着席、二人もお互いの焼き方を褒めながら、

 切り分けた肉を俺の口へと交互に放り込んでくる。


 噛む暇もないほどに舌の上で溶ける柔らかな甘味が、口一杯に広がる。

 滴るほどに溢れ出す肉汁は、舌先に仄かな鉄の匂いを感じさせた。

 飲み込むのも惜しくなるようなその香ばしい旨さに、

 俺は思わず舌鼓を打つしかなかった。


 

 

 ーーその様子を雲海から覗き込む人柱トランザニヤが、

 ゴクリと唾を飲み込む。

 その刹那、彼の腹の音が天界に響き渡ったーー。

 







 

 読んでくださり、ありがとうございます。

 引き続き楽しんでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )

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― 新着の感想 ―
ワイバーンのお肉美味しそうですね……食べにイセトラワールドに行きたいです☺︎笑 白いTシャツでジーンズ生地のオーバーオールスカートのアリーちゃん←かわいいですね!!! イセトラの食事描写やお洋服の…
更新お疲れ様です! ワイバーンのお肉を囲むみんなのやり取りが本当に温かくて、読んでいてお腹が空いてしまいました! ( ̄¬ ̄) アリーちゃんの『元気が出るにゃ!』の挿絵がとっても可愛いです! パメラさ…
傷ついた仲間たちが集まり、少しずつ日常を取り戻していく流れが温かったです(* ॑꒳ ॑* )⸝ アカリさんやノビさんたちもまだ怪我を残しているのに、ゴクトーさんを気遣って集まってくるところに、仲間同…
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