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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 3 〜『ロカベル』三姉妹の奇跡の記憶〜



 目覚めたゴクトーの元にΣ('◉⌓◉’)





 天上界ではーー。

 人柱のトランザニヤがゴクトーの目覚めに、ほっと息をつく中、


「ズズ…これからじゃわい。ゴクトーが大変になるのは」

「あら、この緑茶、新茶かしら?香りも清々しくて、ほんのり甘みもあるわ」


 一方で下界を眺める神シロと女神東雲は、チグハグな会話を交わし、

 のんびりと茶を啜っていた。



 ーーその頃ゴクトーは『ロカベルの魔法薬材と薬店』で目覚めたばかり。

 まだ、身体も思うように動かぬままだが、

 ざわめく仲間たちが我先にと訪れ、安静にしている余裕と暇もなかった。




 

 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇



 

「ミリネアおおねぇ、ミンシアねぇちゃん、

 ミーアねぇとクロにぃがくるよっ! あるじーー!」


 妖精龍姿のコガラが可愛らしくも、澄んだ声を部屋に響かせた。

 

 一方、ジュリが眉をひそめ、ため息をつく中、

 アリーもどこか寂しげに垂れ耳をピクッと動かす。


「ちっ! 邪魔が入ったわ。じゃぁねへんダー、また後でくるから」

「ちょっと待ってよ、ジュリねぇ、僕も着替えりゅんだから」


 ジュリは舌打ちしながらバスタオルをギュッと巻き直し、

 アリーも青いタオルを身体に巻いて、

 二人してそそくさと部屋を出ていった。


 バタバタ、ペタペタと階段を駆け下りる音が遠ざかっていく。


「ちっ!って、何で舌打ち?……なんだよ、まったく」


 呆れ半分、安堵半分で息をつき、見送っているとーー

 パタパタパタパタ……バタバタッとした、

 階段を駆け上がる複数の足音が響く。

 

 開け放たれたドアから、赤緑の枠に宝石がついた眼鏡をかけ、

 緑髪を美しく束ねたミリネアが顔を覗かせる。

 その表情は、明らかに安堵に満ちていた。

 

 薄手の白いシャツから、豪奢な赤のレースのインナーが透けて見え、

 短いタイトな黒スカートのスリットからは、ちらつく赤いレース。

 シームの赤線とガーターベルトが、まるで一体化したかのようだ。

 その美脚を包む肌色の編みタイツと赤いヒールの姿に、

 思わず俺の妄想眼”死線”が釘付けになった。

 

「ご主様、お気づきになられたのですね……良かったです」


 ミリネアの声は震え、涙を堪えていた。


 挿絵(By みてみん)

 

 真新しいメガネを掛け直す彼女が、

 嬉しそうな笑みを浮かべながらも、その肩は微かに揺れていた。


 そんな中、反対側のドアに寄りかかる、

 黒いフードを目深に被り直すクロニクが、

 「兄貴、良かった……」とポツリと漏らした。

 その表情は悲しげで、彼の目元の一雫がランプの灯りに反射して、

 キラリと光った。

 

 一方で少し緑髪が伸びたミーアは、

 きなり色のサマーニットワンピースを着て、

 ドアの隙間からこちらを覗き込む。 

 胸元が深く切れ込んだーーV字の大胆なデザインに思わず息を呑む。


 ミーアの表情は悲しげだが、何故か部屋に入ってこない。

 ただ拳をギュッと握り締め、

 俺と目が合うと、視線をあらぬ方向へと彷徨わせる。

 彼女の頬に光る一筋の涙が、天窓の日差しに輝いていた。


挿絵(By みてみん)

 

 一方でカールがかかった緑髪を靡かせるミンシアが、

「ご主さん、良かったーー!」と叫び、

 薄青の白衣に袖を通しながら羽織りつつ、笑顔を見せる。

 だがーー。

「例の如く」白衣は、はだけさせていた。

 黒地に金の刺繍のインナー上下をあらわにしながら、

 妖艶なセットのガーターストッキングを日差しに反射させ、

 黒字に金の飾りがついたピンヒールで、コツコツとこちらに歩み寄る。

 まさに、『魔性のエルフ』の名に恥じぬ装いだ。


「おいッ!ミンシア、その格好ッ!」


 思わずツッコミを入れる俺を他所に、ミンシアが慌てながら頬を染めた。

 

「あらッ!ご主さん、ごめんなさいッ!

 病み上がりには、刺激が強かったかしら?」


 挿絵(By みてみん)


 その言葉に苦笑するしかなかった。

 

 ミンシアが艶やかな唇を噛み、まるで言葉を飲み込むように、

 ただこちらを見つめる。

 静けさが漂う中、彼女の涙袋が、じわりと赤く染まっていったーー。


 その姿にクロニクでさえ、眉間に皺を寄せ、

「ミンシアさん、白衣の前は閉めてもらえると……助かる」と、

 どこか言葉を選んでいる様子が見て取れた。


 

 ……みんな……少し窶(やつ)れたな。


 

 その雰囲気に、胸がギュッと締め付けられる。

 彼らがどれだけ心配してくれていたのか、痛いほど伝わってくる。

 2年もの間、死と隣り合わせのーー昏睡状態。

 彼らにとっては、気が気でなかったのだろう。

 目覚めたばかりの俺を気遣う、その心遣いに、

 気まずさばかりが募り、俺の心を重くした。


 だが思い直し、ふっと息をつきながら、口火を切る。

 

「なんだよ? 入れよ。 遠慮するなよ……

 でも、俺が起きたのを、なんでわかった?」


 その俺の問いかけに満を持して、部屋に入ってきたミリネアが、

 俺の左肩にちょこんと乗るコガラを慈しむように撫でた。


「ご主様、コガラが皆に念話を飛ばしたようです」


 目尻から零れる彼女の涙が、

 部屋の板の間にぽちょんと小さな音を立てる中、

 言葉を紡ぐのを控えていたミンシアが零す。

 

「ご主さん、みんな必死で治療したんだけど……。

 その右腕だけ……どうしても治らなかったの」


 ミンシアが肩をすくめ、潤んだ長い睫毛を瞬かせる。

 その表情には、深い悲しみと悔しさが滲み出ていた。

 そんな中、クロニクも肩を落とし、眉をしかめる。


「ミンシアさんが作った万能薬(エリクサー)や【エルフの涙】も、

 飲ませたんだが……兄貴、その腕だけは、どうしても治らなかったんだ」


 そう言いながら拳でドアを叩き、ガツッと鈍い音を響かせた。


 俺は視線を右腕に落とす。確かに感覚が無い。

 いや、まるで他人の腕をくっつけたような違和感さえある。

 動くたびに、骨が軋み、体内でバキバキとした音が鳴る。


 ……これは、治すのには相当……

 『骨が折れるな』と、心の中で自虐ツッコミを入れるーー俺はさておき。


 ミリネアが眉をひそめながら俺の右腕を優しく撫でた。


「ご主様……これはもしかして、古の呪詛術かもしれません。

 高位の魔族たちがよく使うーー『古魔術』らしいのですが、

 ワタクシも文献でしか、知識がないもので……

 カルディア魔法学院に戻れば、少しは調べられるかと」


 彼女の情報と気遣い、さらにその手の平から伝わる温もりが、

 少しだけ痛みを和らげるような気がした。

 癒される心地良さに、眠気が襲ってきた俺を他所に、

 ミーアが瞳に鋭い輝きを宿し、興奮気味に声を張った。


 「リーダー! 【魔族の国】があるって、父様が言ってた!

 もしかして、その国の魔族がズードリア大陸にやってきたんじゃない?」


「おいおい、そんな物騒な話を簡単に言うなよ……」


 呆れつつ俺は言葉にしたが、右腕をさすりながら、

 ミーアの言葉に、ふと心が引っかかる。


 確かにあの異形の姿、聞き慣れない不気味な声に、

 得体の知れない詠唱ーー

 思い出すだけで嫌な汗が背中を伝い、

 胸の奥から再び吐き気が込み上げてくる。

  

 一方で、「心配です」と言わんばかりのミリネアが俺の顔を覗き込む。


「ご主様……お顔の色が優れませんね。何か少しでも召し上がらないと……」


「いや、今はまだ……

 そうだ!コガラの世話を見てくれて、みんなありがとな」


 俺が頭を下げたのを皮切りに、

 ミンシアが「きつそうな」白衣のボタンを無理やりひとつ留め、

 どこか真面目な雰囲気を醸し出した。 

 そして、彼女が唇を噛むーー「これ2年前の白衣だから、キツイわ」と、

 どこか誇らしげだった。



 挿絵(By みてみん)


 そんな中、 「コガラちゃんの面倒を見るのは、当たり前よ」と、

 ミンシアがニヤリーー口元を綻ばせながら続けた。


「クロニク皇子とコガラちゃんがあの時、

 アタシたちを救ってくれたようなもんだから……」


 ミンシアの言葉にミリネアも頷き、思い出すように目を細めた。


「ええ……あの時、黒龍の姿に変化されたクロニク皇子と、

 コガラの翼が、まるで共鳴するように同時に光を放ちました」


 ミリネアの語りは、まるで神話の一節を紡ぐかのようだった。


「それはただ眩しいだけではなく……

 穏やかで、優しく、でも決して抗えない圧倒的な力。

 その光が空間全体を包み込み、静かに波のように広がっていったんです」


 ミリネアの澄んだ声に、

 部屋の空気すら清らかになっていくようだった。


 そんな中、ミンシアが右拳を握りながら口を挟む。


「爆風で飛び散った瓦礫に、その光が触れる度、

 まるで紙みたいに消えていったわ。

 あんな神秘的な光景、二度と忘れられないわ……」


 そう言ってミンシアも遠い記憶に浸るように、口元を引き締めた。


 彼女たちの言葉から浮かび上がる光景は、

 壮絶な戦場の中に生まれた奇跡そのものだったようだ。


 俺はクロニクとコガラに、

 改めて感謝ーー畏敬の念を抱きながら、言葉を飲み込む。


 あの異形の呪詛の残滓さえ、

 二体の龍の力で、打ち消されたんだろうか……。


 思いつつも、右腕と脳に残る感覚は消えない。

 あの呪詛が何を意味するのか、まだ俺は答えを得られずにいた。


「……それにしても、奇跡の連鎖だったわ」


 ミンシアがふと遠くを見るように瞳を細めた。


「奇跡?」


 俺が問い返すと、彼女は静かに頷いた。


「ご主さんが倒れたあの時……アタシらは手の施しようがなかったんです。

 でも、ジュリさんが大魔法で小惑星を落とした次の瞬間ーー

『ロカベルの結界魔法を唱えて!』って……そう叫んだのよね」


 ミーアも真剣な表情で頷く。


「その言葉だけを頼りに、

 アタシらは『ロカベル』最大の結界魔法を三人同時に紡いだの……

 それが功を奏したのかもしれないわ」


 ミンシアの声は穏やかだった。

 一方でミリネアは、その時の情景を思い起こすかのように目を閉じた。


「ええ。奇跡を起こしたジュリ殿のあの叫びがなければ、

 このビヨンド村は、跡形もなく消えていたでしょうね」


「もしあれがなければ、結界も張れなかったし……誰も救えなかったわ」


 ミンシアが静かに言い切った。

 俺は大きく息を吸い込み、肩を落としながらーー


「おかげで、俺は今ここにいる訳か……」


 そう言いながらも、胸の奥には言葉にできない感謝の念が渦巻いていた。


「……クロニク皇子やコガラの力、そしてジュリ殿の叫びの奇跡……

 ワタクシたちは、いくつもの試練を乗り越えてまいりました。

 まるで天に敷かれた軌跡をなぞるようにーー

 それが神々の意思でもあるかのように。

 全て導かれ、助けられたのです。ご主様……」


 ミリネアが穏やかに微笑む中、

 その笑顔に、俺は再び希望の光を見るような気がしたーー。







 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 引き続き、楽しんでいただけたら嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です! 今回はロカベル三姉妹やクロニクくんたちが語る『あの日の真実』に胸が熱くなりました! ジュリちゃんの咄嗟の叫びからの三姉妹の結界、そして二体の龍の光の共鳴という奇跡の連鎖が最高です…
ゴクトーさんの目覚めを喜ぶ仲間たちと、あの戦いで起きた奇跡が語られ、興味深かったです(✧◡✧) ミリネアさん、ミンシアさん、ミーアさん、クロニクさんが駆けつけ、それぞれ涙を見せるところに、この二年間…
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