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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 2 〜アドリア公国のお墨付き〜



 ゴクトーの眠っている間にΣ('◉⌓◉’)

 



 ゴクトーが混沌とした闇に飲み込まれ、

 意識を失ってから半年が過ぎた頃ーー少しばかり時は遡る。


 天上の人柱トランザニヤが苛立ちながらも、下界を見守る中、

 晴れた朝の日差しを背に、アドリア公国の広大な大理石の大階段を、

 クラン『リリゴパノア♾️』のサブリーダーたちが静かに上がっていく。


 白亜の宮殿とは違い、どこか古めかしい天井。

 大理石が敷き詰められた通路をコツコツと冷たい音を響かせ歩く三人。


 大聖堂を思わせる謁見の間へ足を踏み入れると、

 数多の貴族や騎士たちの視線が一斉に突き刺さった。

 物珍しげな者、警戒の色を隠さない者、

 あるいは国を救った英雄として畏敬の念を向ける者――。

 その様々な思惑が入り混じる重苦しい空気の中を、

 パメラ、アカリ、ミリネアの三人は、

 一歩も引かぬ堂々とした足取りで歩みを進める。


 正面の一際高い玉座には、アドリア公国の公王が威厳をまとって座り、

 その傍らには、王族の血筋を示す静謐な気品を湛えた人々の姿があった。

 さらに、アドリア公国では珍しいーー銀髪の姫と幼い皇子が、

 好奇心旺盛な赤い瞳で、こちらを興味深く見つめている。


 三人は公王の前まで進み出ると、それぞれのやり方で深く、

 しかし尊厳を失わぬ美しさをもって跪いた。


 「お初にお目にかかります、公王陛下、

 わたくしはパメラ・ルシーヌ・カルディア、

 カルディア魔法国ーー王族の末席に連なるものです」


 いつもの【ヒガツク・バラ・ドナイヤ】の装備に身を包み、

 背中や足元の大胆な装飾が妖艶さを醸し出すパメラが、

 涼やかな表情のまま静かに頭を垂れる。


 「お目通りに感謝いたしますわ、公王陛下。私は『ヤマト』の国を治める、

 神代一族の分家ーー巫代朱里と申します。

 この異国では、アカリ・ミシロと言った方がわかりやすいかと……」

 

【メガ・トビデルゾ・ドナイヤ】のオレンジガーターが一際目を引く、

 艶やかな桃色の髪を纏め上げたアカリが、手にした扇子を優雅に開き、

 口元を隠しつつ、どこか余裕のある笑みを浮かべた。


 「ワタクシは、マヌエルの森を治めし『八支族』が一つ、

 『ロカベル』の長女、ミリネア・ロカベルと申す者、どうかよしなに」


 シックなダークトーンの【コダマ・チチ・ドナイヤ】の装備と眼鏡、

 そして、緑色の髪が知的な美しさを醸すミリネアが、

 落ち着き払った仕草で公王への礼を取った。


 謁見の間のざわめきがピタリと止まり、

 すべての人々の視線が、いま、国の命運を救った彼女たちへと集中していた。


 重苦しい沈黙を破り、アドリア公王がゆっくりと口を開く。


「ーーほう。各国の姫たちが冒険者とは……

 つくづく不思議な運命(さだめ)よの。 

 ……クランリリゴパノア♾️の面々よ。

 我がアドリア公国を未曾有の危機から救い出してくれたこと、

 国を代表して余が深く感謝する。

 そなたらの功績に報いるため、

 望む限りの報奨を与えよう。何なりと申すが良い」


 公王の厳かでありながらも温かみのある声が、

 広大な謁見の間に響き渡る。

 富か、名誉か、あるいは領地か――。

 誰もが彼女たちの口からどんな要求が飛び出すか、固唾を呑んで見守った。


 しかし、パメラが顔を上げることなく、

 涼やかな笑みを湛えたままーー静かに首を横に振った。


「お言葉だけで十分です、公王陛下。

 わたくしたちクランリリゴパノア♾️は、

 見返りを求めて、魔獣を討ち払ったわけではありません。

 どうかその報奨は、この国の復興と民のために、お使いくださいませ」


 その欲のない、あまりにも気高い返答に、

 周囲の貴族たちから感嘆のざわめきが漏れた。

 だが、その時――。


「待って!」


 幼い声が、ぴんと張り詰めた空気を切り裂いた。

 玉座のすぐ傍らに控えていた、王の孫であり3歳になるエドワードが、

 周囲の制止を振り切るように一歩前に進み出た。

 銀色の髪を揺らす小さなエドワードが、

 怯むどころか真っ直ぐにパメラを見据えーー

 その赤い瞳に強い憧れの光を宿していた。


「報奨なんかいらない……?

 パメラさんは、カルディア魔法国の姫様なんでしょ?

 兄を探すのには、魔法がいるんだ!ぼくをあなたの弟子にして!」


 突然の王孫からの直談判に、謁見の間は再びどよめいた。

 付き添いの側近たちが青ざめ、

 「エドワード様、お戻りください!」と慌てて声を荒げる。

 3歳の子供が、他国の、しかも一国の皇女であり、

 伝説的な強さを持つ魔導士に弟子入りを願い出るなど、

 前代未聞の事態だった。


 しかし、当のエドワードは引く様子もなく、

 じっとパメラの返答を待っている。


 そんな少年を見上げ、パメラはふっと微かな、

 しかしどこか冷徹さを含んだ笑みを浮かべた。

 彼女はゆっくりと身体を起こし、

 幼いエドワードを静かに見据えながら、諭すような声で告げた。


「お気持ちは嬉しいですが、わたくしの魔法は、

 あなたのような小さなお子が真似できるほど、

 生易しいものではありません。

 それに――王族の誇りがあるのなら、弟子入りを願う前に、

 まずはご自分の足で、その誇るべき未来を切り拓いてみては?」


挿絵(By みてみん)


 冷徹でありながらもどこか諭すようなその言葉に、

 玉座の周囲は一瞬静まり返る。

 しかし、幼いエドワードは怯むどころか、かえって赤い瞳を輝かせ、

 パメラの傍に控えるリリゴパノアの仲間たちへと視線を向けた。


 ーーその緊迫した空気の中、

 桃髪を揺らしながら扇子を軽く閉じたアカリが、

 面白そうにクスクスと笑い声を漏らす。


「まあまあ、パメラさん、そんなに冷たくしなくてもいいじゃない。

 この子、雰囲気がダー様に似ているし、案外筋が良いかもしれないわよ?」


 隣でミリネアもやれやれといった風情で眼鏡の位置を直しながら、

 落ち着いた声で続けた。


「アカリ殿、冷やかすのはそれくらいにしておきましょう。

 ……もっとも、彼女の言う通り、

 カルディア魔法国の姫君であるルシーヌに、師事することが、

 どれほど重い意味を持つかーー

 この国の人々にも少し……考えてもらう必要がありますわね」


 謁見の間に集まった貴族たちがざわめき始める中、

 王座に座る公王は複雑な表情を浮かべつつも、

 孫の秘めたる決意と、

 目の前に跪く者たちの圧倒的な存在感を静かに見据える。


「……孫のことは、おいおい余が説得するとして……しかし困ったものだ。

 これではアドリアの国民に対しても示しがつかん。何か褒美をーー」


 その時ーー。

 豪奢なローブを翻し、白髪の老齢な男が公王の前に跪き、口を開く。


 「恐れながら……このイイダル・コス・ハルツームが陛下に進言いたします。

 この者らのリーダー、ゴクトーは、ワイバーン討伐を始めーー緑龍の討伐、

 あの魔物の群れのスタンピード、

 さらには伝説のサイクロプスさえ、退けた英雄にして、

 我がハルツームの家名と子爵位、さらに私有地を与えし者でございます。

 よろしければ陛下の名のもと、我が家から独立させーー

 アドリア公国の貴族の末端に、加えてみてはいかがでしょうか?」


挿絵(By みてみん)


 その言葉に皇族はおろか、周囲の貴族たちまで目を見開き、

 驚きと歓喜に満ちた声が囁かれる中、公王が眉をひそめる。


 「何だと? ワイバーンの素材には孫娘のエマが目を輝かせ、

 緑龍の肉は娘のマルソー然り、

 孫のエドワードが舌鼓を打ちながら喜んでおった。

 卿が献上してくれたのを誇りに思っておったのだがーー

 

 ゴクトーなる者に、ハルツームの家名を与えただと? 

 それは初耳……だが、卿の進言、余は考えぬこともない」


 「では、ここで、陛下のお心を賜りたく」


「うむ……卿の其方に、後見を任せるとするか……良かろう。

 では、ここで余が命ずる。 

 ゴクトー・コス・ハルツームに伯爵位を与え、

 そして、私有地を正式に領地と定める!

 ……これなら英雄を蔑ろにしたなどと、民に囁かれることもなかろう。

 そうじゃな?卿よ」


 「ハッ! 畏れ多いお言葉、ありがたく」


 深々と頭を下げるイイダル卿の顔には、老獪な笑みが浮かんでいた。


 国の救済という名の恩義の裏で、ゴクトーの預かり知らぬ間に、

 新たな因縁と物語の歯車が、今、音を立てて動き出そうとしていたーー。








 

 読んでくださり、ありがとうございます。

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更新お疲れ様です! 半年前の王宮謁見シーン、パメラさん・アカリさん・ミリネアさんの気品溢れる立ち振る舞いが最高にカッコよかったです!(*/∀\*) エドワード様の弟子入り志願も可愛らしかったですが、…
ゴクトーさんたちの功績がアドリア公国から正式に認められる回で、物語が大きく動いた感じでした。 パメラさん、アカリさん、ミリネアさんが、それぞれの出自を名乗る場面が格好良かったです。改めて見ると、リリ…
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