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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第5幕 試章。 〜カルディアへの扉〜

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新たな拠点編 1 〜目覚め〜



 よーし、この新編からダークファンタジーに切り替えるぞッ!Σ('◉⌓◉’)

 




「おい、シロッ!一体、いつまでゴクトーは、寝てやがるんだ?」


 下界をじーーーーーっと眺めていたトランザニヤだったが、

 業を煮やしたように眉を吊り上げ、苛立ちを滲ませる。


「慌てるでないわ、黒銀の、まだ半日ほどしか立っておらんじゃろう?

 ゴクトーにとっては、これで三度目の生き返りなんじゃ。

 いくら神代の大神様ーーワシの父でも、生き返らせるのには時間がかかる。

 そう簡単にはいかぬのじゃ」


 神シロの落ち着き払った返答を聞きながら、

 傍らでは女神東雲がおにぎりを握っていた。


挿絵(By みてみん)


 彼女は「ふふ」っと笑みを溢すと、指についた米粒をぺろりと舐め取る。


「わたくしたちの天界では、

 下界の一日は僅か一分ほどにしか感じられませんがーー

 いくら焦っても仕方がないことですわ、トランザニヤ様。

 それにしても……今年は豊穣だったようで、

 神饌(しんせん)のお米もぷっくり柔らかく、甘みも香りも豊かですわよ。

 まずは腹ごしらえをなさってくださいまし。

 おにぎりの具は鮭にしましたのでお気に召すかと……

 海苔もヤマトの漁師たちが上等なものを奉納してくれましたのよ」


 そう言って、海苔の香ばしいおにぎりをトランザニヤに差し出した。

 

 一方で、額に汗しながら神シロがポテトとオニオンが入った味噌スープを、

 椀に注ぎ味見した。

 湯気が立ち上がるポテトを「はふはふ」と息を吐きながら頬張る神シロに、

 肩をすくめ、クスッとするトランザニヤの表情も次第に緩んでいったーー。



 

 ーーその頃ゴクトーは意識もなく、深い眠りの中、

 三度目の死の縁から這いあがろうとしていた。



 



 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇


 


 挿絵(By みてみん)


「チチチ」


 ブラック・ロック・バードの雛たちの囀りが耳に心地よいーー

 窓から差し込む朝陽が淡く部屋を照らし、静けさだけが支配する空間。

 

 頬にぺとっとした湿り気が伝わり、やがて温かさを感じる。

 俺はゆっくりと瞼を開けた。


 そこは見慣れない部屋だった。

 壁には何枚もの羊皮紙が貼られ、

 走り書きのような古代文字がびっしりと記されている。

 その隣には『ズードリア大鑑』が並ぶ本棚が、重厚な存在感を放っていた。


 視界の端には、天体模型や見慣れない魔導具が所狭しと置かれた机が見える。

 ふと視線を向けた先には、美しい細工が目を惹く木目の箪笥があった。

 引き出しが僅かに開き、【ムラット・シタラ・ドナイヤ】が畳まれ、

 その端から、目立つ『赤のガーターセット』が無造作に、はみ出ていた。


 

 ……なんでこんな場所に?


 

 不意に『妄想図鑑』から姿を現すーー

『江戸っ子鼓動』が涙ながらに飛び跳ねる。


「旦那! 良かったでやんす!図鑑の皆に知らせてきやす!」


 そう言って『江戸っ子鼓動』が図鑑の中にスッと消えていった。

 意識を切り替えようと視線を上げると、

 天窓から降り注ぐ朝陽の灯(とも)りが、部屋全体をはっきりさせ、

 ようやくここがどこか見えてきた。


 ここは間違いない。

『ロカベルの魔法薬材と薬店』ーーミリネアの部屋だ。


 頬を何度も擦り付けるコガラが、

 言葉もないまま、潤んだ赤い目で俺をじっと覗き込む。

 その顔にほだされ、俺は無理やりにも喉奥から声を絞り出す。


「ーー…………」


 だが、声がうまく出せない。


「あるじーー!ずっと、ずっと寝てた!」


 彼女の言葉を聞いたその瞬間、胸に熱いものが込み上げた。


「……お、おはよ……コ、コガラ……」


 思わず出たその言葉にコガラの表情も緩む。


「……悪かったな……コガラ……食事はどうしてた?」


「ミリネアのおおねぇや、ミンシアねぇちゃんとミーアねぇが作って、

 食べさせてくれてたの」


「……ってか、コガラお前……艶っぽくなったな」


「へへぇーー」


挿絵(By みてみん)


 涙ながらのコガラが照れたように笑うのを見て、思わず俺も口元が緩んだ。

 その和やかな空気を壊さないように、そっと起き上がるが、

 身体に力が入らないーー特に右腕の感覚がまったくない。

 

 そんな中、ボン…と小さな音を立てるコガラが妖精龍化すると、

 左肩の上に乗り、上機嫌で俺の頬を舐める。

 どうやら俺も涙を零していたようだ。

 

 そんな中、不安を抱えつつ視線を落とすと、息が詰まった。

 そこにあったのは、まるで空き缶を潰したようにひしゃげた、俺の右腕。

 自分のものとは思えないほどーーひび割れた異様な様。

 痛みすら感じない事に、かえって恐怖が込み上げてきた。


 頭の奥にこびり付く声ーー


『けけけけ……ここでコイツを殺されたら元も子もないんだよぉぉぉーー!

 【Temputh・redie・ flamin・ flaree】』


 あの不気味な呪文と『堕(だ)み声』が脳内で甦ってくる。

 鋲のような突起で覆われた体躯、灰色の肌。

 眼窩から飛び出したように、怪しく光るあの青い目。

 

 血走っていたあの目が、俺を見下ろしていた。

 4本の異様に長い指の2本が「パチン」と鳴った瞬間、

 全身の毛が逆だったのを今でも覚えている。


  ーー爆発。


 轟音とともに、視界が焼けるように白に染まった。

 猛烈な熱風に身体が捻じ曲がり、意識も揺らぎ、

 皮膚は裂け、骨が砕けた痛みと、肌が焦げる匂いが鼻をついた。

 

 微かな記憶を辿れば、耳に届いたあの時の声は、悲鳴なのか、

 誰かの助けを呼ぶ声なのか、それとも僅かな希望だったのかーー。

 それは俺にもわからなかった。

 ただ、あの「パチン」という指の音だけは、

 今も耳にこびりついて離れない。

 

 思い出すだけで胃が軋み、喉が詰まる。

 咳き込みながら、俺はその光景を振り払おうとするーー

 だが視線が再び、ひしゃげた右腕に戻る。

 目の前の現実が、過去の悪夢と重なり、

 むせ返り、酸っぱい胃液が俺の喉を焼き、その場で嘔吐した。


 肩に乗るコガラが俺を見て、妖精龍の姿のまま涙を零す。

 それは貴重な『龍の涙』で、

 彼女が頬に伝う涙を七色の羽で掬い取り、そっと俺の口に入れた。


挿絵(By みてみん)


 その刹那、吐き気がしていた俺の胃の腑がスッキリする。

 さらに食欲まで湧いてきて、思わず腹をさすったほど。

 徐々に活力まで漲ってくるのを感じた。



 その時、慌ただしい足音がバタバタと聞こえてくる。


「あるじーー!ジュリねぇしゃんがくるよ!」


 コガラの声とほぼ同時にバンッ!とドアが乱暴に開け放たれ、

 ジュリが部屋に飛び込んできた。


「へんダァァッ!」


 青いバレッタで濡れた桃髪を纏め、

 桃絹糸のような髪を一筋だけ首筋に垂らしつつ、

 桜の花びらのような香りを漂わせながら、

 白いバスタオルで身体を包むジュリ。

 肩で息をしながら肌を朱に染め、湯気までほんのり漂わせる。

 その姿に思わず見惚れるが、咄嗟に我に返り、頭を振った。


 ……いや待て、冷静になれ俺。

 目の前にいるのは本当にジュリか……?

 なんか胸元が、やたら成長してないか?


挿絵(By みてみん)


 

 言葉を失った俺の思考。それを追い打ちするかのように、

「ジュリねぇ、待つにゃ……あっ! ゴクにぃが起きたにゃ!」

 とアリーまで部屋に入ってきた。

 

 銀髪を押さえ、身体をしっとりと濡らしたまま、

 青いタオルを抱えていた。

 あどけない顔をしながらも、そのスタイルは大胆不敵ーー

 思わずその成長ぶりに目を丸くしつつ、

 苺柄プリティーの上下に息を呑んだ。


「……ちょ、ちょっと待て、ふたりとも!

 お前らのその格好ッ!」


 そうは言いながらも、

 俺の妄想眼”死線”が否応なく、彼女たちの姿に吸い寄せられる。


「……あ、あぶなっ!」


 こぼれる寸前まで”死線”が前に飛び出した俺は、思わず漏らす。

 湯気が立ち上るその二人の姿に、

 身を引いたその瞬間、勢い余って後ろの壁にゴンッ!と頭をぶつけた。


「ふたりとも! そんな姿で部屋に飛び込んでくるなァァァァ!」


 我ながら情けない叫びだと思う。

 俺の獣のような咆哮が部屋に響く中、


「だって……その……」

「ジュリねぇは、ほんとせっかちにゃ!」

 

 ジュリが白いバスタオルの端を弄りながら視線を泳がせ、

 一方で苦笑いのアリーが、軽くため息をつく。

 アリーは、まるで苺のような、ほのかに甘い香りがするーー

 『またたび香』を振り撒きながら、

 揺れる銀髪を掻き上げ、メタリックブリーの瞳を閃かせる。

 その香りと仕草が妙に色っぽい。

 

 湯上がり効果なのか……

 いや、その香りのせいなのか……?


 痛む後頭部を押さえつつ、頭の中では逡巡していた。


 咄嗟にコガラが翼を広げ、俺の視界を遮ってくれる。

 その仕草に一瞬だけ心が和む。

 だが、それも束の間ーー

 再び俺の視界にアリーの姿が飛び込んできた。


「ゴクにぃ、二年も寝込んでたんにゃ。身体の調子はどうかにゃ?」


 そう言って彼女が湯気を纏ったまま、俺の顔を覗き込む。

 その言葉に開いた口が塞がらない。

 

 だが、身体が思うように動かないのも事実。

 眉を絞る俺の表情を見ながら、ジュリが心配そうに顔を寄せる。


「まだ、ダメージが残ってるんじゃないの?」


「いやいや、俺の今のダメージの原因、お前たちダ・カ・ラ!

 ふたりとも、 とりあえず服をッ! 服を着てくれえええぇ!」


「えぇぇ~? 洗濯して、干してきたばっかりなのに?」


 ジュリが頬を膨らませる一方で、アリーがポツリと漏らす。


「僕、やっぱりこの苺柄は子供っぽいかにゃ……?」


挿絵(By みてみん)


 ……おいおい、アリーや、随分と大人びたな。

 『江戸っ子鼓動』がダッシュしてるんですけども……!?


 心の叫びは虚しく空回りするばかりで、

 胸の中では、鼓動が鼻血を出しながら激しく走り回っていたーー。









 このエピソードは仲良くしていただいております、

『黒鍵』様をモデルにしたーー『黒鍵鳥(ブラック・ロック・バード)の雛』に、

 特別友情出演していただきました。


 黒鍵様 Xアカウント @BlackkeyU


 私が愛読する╰(*´︶`*)╯♡


『転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~』

 作者:黒鍵様


 https://ncode.syosetu.com/n6279jv/

 【小説家になろうサイト】でしか読めませんので、

 読んでいただけたら私も嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*。


 ダークファンタジー路線に行くはずがーー(T . T)



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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です! 新章スタート待っていました! 天界でのおにぎりと味噌スープのほっこり場面から一転、ゴクトーさんの右腕の痛々しいトラウマやコガラちゃんの健気さに胸がキュッとなりました。 ……と思っ…
新たな拠点編の始まりということで、ゴクトーさんの目覚めと仲間たちとの再会が心に残りました。 冒頭の天界では、ゴクトーさんを心配するトランザニヤさんたちの横で、おにぎりや味噌スープを作っているのが何と…
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