狙われたアドリア公国編 6 〜最大火力をぶつけろ!〜
今回は、意外にもーーΣ('◉⌓◉’)
ブシュ!ブシュ!ブシュ!ブシュ!ブシュ!
詠唱を紡ぎ終え、膝をつくゴクトーの全身には、
その代償とも言うべき印が迸るーー
鮮血が噴き出しながらゴクトーの身体を真っ赤に染め上げていく。
その姿に、ふらふらで、鼻血を垂らす『江戸っ子鼓動』が涙ながらに叫んだ。
「旦那ぁぁーー彼女に新たな名前を!ゲフッ!」
口から吐血しながらも『江戸っ子鼓動』の目は死んではいなかった。
その声に意識も薄れるゴクトーの耳がピクリと動いた。
「……っく、この状況で……な、名付けとは……」
小さくつぶやかれたゴクトーの言葉が灰煙の中に消える最中、
彼は一つの名を脳内でつぶやく。
……漆赤の堕天神――漆グチ・紅子……
瓦礫の上に倒れるゴクトーが目を閉じたその瞬間、
崩壊した街並みに、巨大な赤き影が落ちた。
対するは身長20メージ(m)はあろう、隻眼の巨人――
その巨大な両刃斧を空に掲げ、轟くような低い声で、初めて叫んだ。
「グルゥゥゥーー
我こそは、巨人の王、キングマイクロ・ビーンズなり!
赤き翼を持つ者よ、その身を砕き、土くれに変えてくれようぞ!」
一方、紅蓮の鎧に身を包んだ漆赤の堕天神――
彼女がジェットの推進炎を背負い、
空中で優雅に旋回しながら、冷ややかな笑みを浮かべて名乗りをあげた。
「王、だと? 笑わせるわね。たった今、名付けてもらった漆グチ・紅子よ♥
初めまして……挨拶は済ませたわ。
私はねぇーー脳筋かつ粗野な巨人を狩るために、
この地に降り立った堕天神なの。ふふ。さあ、散りなさい!」
名乗りが終わるや否や、戦闘の火蓋が切られた。
キングマイクロ・ビーンズの振り下ろす斧は、大地を抉り、
家屋を紙細工のように粉砕する。
一方、漆グチ・紅子はジェット噴射で縦横無尽に飛び回り、
斧の隙間を縫って鋭い蹴り、拳を巨軀に叩き込む。
紅い機影は巨人の視界を幻惑し、漆赤の翼は巨人の動きを鈍らせる。
サイクロプスは圧倒的なパワーで村を破壊し尽くすが、
堕天神の機動性には追いつけない。
戦闘は激化し、村の残骸はさらに細かく砕け、
土煙は空を覆い隠そうとしていた。
サイクロプスの【邪気】は、ゴクトーたちにも影響を及ぼし、
彼らの魔力を吸い上げ、少しずつ奪う。
飛び散る瓦礫が舞う中、
ゴクトーたちの装備もボロボロに破れ散っていった。
「ぐぬぬ、小癪な!」
口元を歪めるキングマイクロ・ビーンズが、
斧を強引に振り回し、紅子の回避行動を読もうとしたーーその時。
崩壊した村の端から、不気味な笑い声が聞こえてきた。
「クックックッ……。これはこれは、盛大な歓迎会だな」
土煙を切り裂いて現れたのは、異形の魔族たち。
その先頭には、奇妙な笑みを浮かべた指揮官――ヒバラガガが立っていた。
彼は軍帽を深々と被り直し、悠然と戦闘の中心へと歩み寄る。
その背後には、無数の魔族たちが闇をまとって続いていた。
「邪魔をするな!」
キングマイクロ・ビーンズが斧をヒバラガガに向ける。
「我と彼女の戦いだ! ここに立つ者は、皆、土くれに変えてやる!」
一方でヒバラガガは笑みをこぼしながら軽くいなし、鼻で笑った。
「巨人の王よ、ご機嫌斜めだな。でも、残念ながら、この祭りは我らのものだ。
さぁ宿命の末裔たちよーーお前たちの薄汚い穢れた血で、
この村をさらに美しく染めてやろう!」
ヒバラガガが手を掲げると、魔族の軍勢が一斉に動き出した。
圧倒的なパワーの巨人、紅蓮の堕天神、そして狡猾な魔族の指揮官。
崩壊した村は、三つ巴の混沌とした戦場へと変貌しようとしていたーー。
その光景を眺めながら天上の三柱が何やらヒソヒソと密談していた。
三柱のその表情は尋常とは言えず、むしろ困惑ーー否。
驚愕をあらわにしていた。
「ゴクトーのやつ、このズードリア大陸の歴史をーー
神代魔法で、また塗り替えよった。
それも新たな神大魔法・漆まで生み出しよって。
漆赤の堕天神――漆グチ・紅子じゃと?
世界の理が根本から捻じ曲がったんじゃ、
創造神様が、なんとおしゃるか……」
その言葉は流れる天界の雲の中に消えていく中、
神シロが眉をしかめ、ワナワナと震えだす。
その傍で妻の女神東雲も不安げな表情で、
もう一段上の上位神がいる神殿を見上げつつ、
ふと、唇を動かした。
「これだけの魔力を使ったのですから……。
ゴクトー君を救うには、魔力回復の最大級魔法ーー
【エクストラ・キュアリク・マジック】を使うしかないですわ。
ジュリ、使うならーー今しかないのよ!」
ーーそんな天界での密談など知る由もないゴクトーと、
その仲間たちは、ズタボロな村の惨状に歯噛みしていた。
血塗れのゴクトーは立ち上がりーー
【桜刀・黄金桜一文字】を杖代わりに、
肩で息をしながら巨人と紅子の戦闘を見据える。
だが、力尽きた彼の身体が再び倒れそうになったーーその刹那。
ジュリがハッとしながらも、神秘的な光を瞳に宿した。
次の瞬間、彼女が抜刀した【月刀・常闇】を頭上に翳すと、
紫色の魔法陣がふわりとゴクトーの頭上に浮かび上がる。
そして、ジュリが紡ぎ始めた。
「ーー我が祖先、女神の力をここに賜らんーー
……力無きこの身に、癒やしの力を貸し給えーー!
【エクストラ・キュアリク・マジック】!」
澄んだ声を響かせ、同時に【月刀・常闇】を振り抜く。
桃髪が風に靡くジュリのビビッド・ブルーのレースが、灰色の空に際立つ中、
展開した魔法陣を通して、癒しの光がゴクトーを包み込んだ。
その癒やしの光は、世界を切り裂いた際についたゴクトーの、
鮮血が迸る傷跡を優しく、しかも強制的に縫い合わせていく。
装備さえ再生し、顔色が戻ったゴクトーがつぶやく。
「ジュリ、すまん……」
立ち上がるゴクトーの瞳の奥には、再び闘志が燃え上がっていた。
そのゴクトーの視線に気づき、小さく頷くShadowWindの面々が、
疾風の如く駆け出した。
圭介、篠介、羅音、九音、そして紫苑までーー。
髪を風に靡かせ、それぞれの刃が魔族の集団を狙う。
「せぇぇいっ!」
同時に煌めく刀閃が魔族の中を突っ切る。
異形な魔族の肩、腕、腹、腰、足に彼らの刃が閃いた 。
だが、 その軍勢は微動だにしなかった。
むしろ残虐極まりない彼らの異様な眼差しに、圭介の表情が険しくなる。
「数が……」
篠介も漏らした。
ーー絶望。
誰もがその光景に息を呑む。
喧騒と炎に包まれ、
絶望と死の匂いが立ち込める戦場に、突如として眩い黄金の光が瞬いた。
無数の魔族たちの視線の先、
崩れかけた石畳を蹴り砕くようにして立っていたのはーー
ノビだった。
纏っていた緑の外套は、無惨に引き裂かれてズタボロになり、
あどけなかったはずの顔は、これまでにない激しい怒りに歪んでいた。
だが、何よりも周囲の目を奪ったのは彼の『右腕』だ。
小さな身体には、到底不釣り合いな、その肥大化した異形の巨腕は、
まるで力そのものが顕現したかのようにーー
熱を帯びた黄金の輝きを放つ。
その時、サイクロプスの大斧が地を這うーー
空を切るような低い轟音とともに、九音の身体に直撃した。
「ぐっはっ!」
九音の小柄な身体が吹き飛び、 荒れ地に叩きつけられた。
「ぎをとられるなぁ!」
血を吐くようなノビの怒声が、燃え盛る村に響き渡った。
次の瞬間、彼はその黄金に燃える巨腕を構え、
魔族の軍勢へと単身突撃していく。
「うおぉおお!【ギガント・ナックル】!」
雄叫びとともに放たれる一撃。
激しい光を伴った黄金の拳が叩きつけられるたび、
屈強な魔族たちが悲鳴を上げる間もなくーー
吹き飛ばされ、地に沈んでいく。
必死に前へと進み、ただひたすらに敵を殴り倒していくその姿は、
かつての非力なノビのものとは到底思えない。
命を削るような鬼気迫る【覇気】。
その圧倒的かつ理不尽な破壊力を持つ右腕を前に、
恐れを知らぬはずの魔族たちの足が、この時完全に止まった。
戦場の後方ーー高台からその光景を見下ろしていたのは、
魔族の軍勢を率いる指揮官、ヒバラガガ。
軍服に身を包んだ貌に、鋭い光が宿る。
無数の手駒が一気に、蹴散らされていく予想外の事態を、
彼は冷徹な双眸で見据えていた。
炎と土煙が舞い上がる絶望の淵で、ノビは止まらない。
黄金の光の軌跡を描きながら、
小さな英雄は、最大火力をぶつけ、自ら反撃の道を切り拓いていた――。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
必死に魔族を殴り倒していくその姿は、ノビのものとは思えない。
鬼気迫る表情でノビが魔族たちを殴り倒していく。
一方で、アリーが魔導銃を構え、 血塗れの隻眼を狙った。
「喰りゃえぇぇ!」
バァァァンッ!
魔導弾が隻眼に見事に命中する。
緑の鮮血が吹き出し、地面を黒く染める中、
地響きとともにサイクロプスの叫び声が荒野を揺るがす。
だが、まだ倒れる気配はないものの、
漆赤の堕天神――漆グチ・紅子の打撃を躱しきれてはいなかった。
巨体が狂ったように暴れ、振り払われた衝撃波が周囲の岩を砕く。
そんな中、ジュリが瞼を閉じ、深く息を吸い込む。
空気が張り詰め、彼女の周囲には紫色の魔力が満ち始めた。
俺は一瞬だけ足を止め、
想像もつかないほどの彼女の威厳と美しさに息を呑む。
だが、今は見惚れている場合じゃない。
強引に妄想眼”死線”を引き戻し、
疾走する師団長たちーー
敵を囲むように連携して動く、イブとココの姿を目で追う。
「まだまだ、これからだ……」
自らを奮い立たせ、俺もサイクロプスへ向けて駆け出した。
それとほぼ同時に、「まだ足りないようですわね……!」と、
ミリネアが唇を噛みながら【アッティラの鞭】を繰り出す。
「【スネークチェーン・ウィップ】!」
蛇のようにしなった鞭がサイクロプスの片方の足に巻きつき、
全身に力を込める彼女の歯軋りが漏れる 。
「抑えきれない……ご主様!」
「 任せろ!」
俺は全力で地面を蹴り、サイクロプスの足元に滑り込む。
【桜刀・黄金桜一文字 】と【兼松桜金剛】を交差させ 、
鎖に変化した鞭が巻き付く、その足へと狙いを定める。
「【神焔炎號十文字斬り】!!」
詠唱とともに互いに閃く刃を振り抜いたーーその瞬間 。
鮮やかな緑十字がサイクロプスの皮膚に刻まれた。
ーー時が止まったかのような刹那の静寂。
しかし次の瞬間、十字の傷から吹き出したーー
夥しい鮮血が緑の洪水となって瓦礫を濡らす。
その時だーー。
紅子の振り下ろした左踵がサイクロプスの脳天を直撃。
ズオォォン!
地響きとともに、その巨体が瓦礫の中に倒れこむ。
「【ジャンピング踵落とし】ふふ。上手く決まったわね。
知り合いの、月城姫咲さんから教わった一撃よ♥」と、
赤い双眸を光らせ、紅子がサイクロプスをガシガシ踏みつける。
一方でジュリの詠唱が静かにーー
かつ圧倒的な存在感を持って響き渡った。
「天上に輝きし星々よ、永劫の理を越えて我に応えよ。
運命の輪廻を砕き、地に光を刻め!
宇宙の深淵に眠る声よ、その響きに四大の精霊を招き、
天地を揺るがす力の奔流を束ねよ!」
皆が息を飲み、その声に振り返る。
ジュリが深く息を吸い込みながら 、
天地を支配する力を解放しようとしていたーー。
「 いざ集え、星霊達!月の涙を燃え盛る怒りに変え、
太陽の輝きに裁きの影を宿せ!」
ジュリの詠唱が風を止ませた。
空気が異様な重さを増し、肌にまとわりつく。
サイクロプスの暴れ狂う動きが止まった。
そして警戒するようにジュリを睨む。
だが時既に遅し、ジュリが最後の詠唱を紡いだ。
「全ての軌道を狂わせ、
無限なる宇宙の法則を打ち破れーー!
【アステロイド・バン・エクスプロージョン】!!」
ジュリが膝をつき、詠唱を終えた瞬間、太陽の光が唐突に消えた。
周囲が深淵の闇に包まれたように、空間が軋むような音が轟く。
次の瞬間 、頭上から圧倒的な熱波が降り注ぎ、
地面にひび割れを作っていく。
上空に現れたのは太陽よりも二回りほど小さい、灼熱の小惑星 ーー
それが豪炎を纏い、怒りの天体と言うべき姿で落下してくる。
俺はその凄まじい熱と光に、思わず身を伏せた。
サイクロプスだけが、夥しく噴き出す血の隻眼を上げ 天空を睨みつける。
その隻眼には怯えの色すらなく、ただ抗う意思だけが浮かんでいた。
「くそっ、これで終わってくれ ……!」
俺の祈りを乗せた、巨大な隕石がサイクロプスへと迫ったーー。
苦手な戦闘シーンを読んでくださり、感謝です╰(*´︶`*)╯♡
今回のエピソードは、『語り部ミミズク』様著、
『封神闘仙記 〜スキル無し追放の中年、封神拳で神をも滅す〜』より、
私の大好きな【月城姫咲様】に、特別友情出演していただきました。
語り部ミミズク先生、お許しを〜!
語り部ミミズク様のXアカウント @XO3kHEMqvC51682
私が愛読する╰(*´︶`*)╯♡
語り部ミミズク様の代表作
『【19万PV 感謝!】 封神闘仙記 〜スキル無し追放の中年、封神拳で神をも滅す〜』
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