揺れるズードリア大陸編 21 〜「開け、妄想図鑑!」と開かなくていいジャケットの秘密〜
短めのエピソードですがΣ('◉⌓◉’)
下界を覗き込む神シロが顎髭を撫で付け、つぶやく。
「流石に、この大群は厄介じゃろうて……」
その言葉に女神東雲が鼻息を荒くする。
「いいえ、たかが100体ぐらいの緑龍如き、
ゴクトー君とアカリたちなら余裕ですわ。
それよりあなた!
隠し子の『ビボウ・ミシロ』のことを、わたくしに黙っていましたわね。
詳しく聞かせて貰え・ま・す・か?」
鋭い眼光で睨みつける女神東雲に言い訳もせずーー
その刹那、口から泡を吐き、白目を剥く神シロに呆れつつも、
トランザニヤが黒銀の瞳を閃かせ、下界を眺めた。
◆(トランザニヤが語り部を務めます)◆
ゴゴゴゴゴ……
地響きが鼓膜を揺らし、ハゴネの山々から押し寄せるーー
緑龍の群れが瞬く間に視界を埋め尽くす。
先頭を駆けるのは、
狡猾な詐欺師としてその名を轟かせる『緑龍独眼のボンジ』だ。
人間の姿から巨大な竜の形態へと変異したその巨躯は、
周囲の空気を歪めるほどの圧倒的な魔力を纏っていた。
「オイラの全財産を返せ、このトカゲ野郎がーーッ!」
怒号とともに、クロニクが地面を蹴り飛ばす。
ーーその瞬間、バサッと広げた黒翼が突風を孕み、砂塵を舞い上げた。
「ゴギャラオーーン!」
黒龍姿のクロニクが咆哮を轟かせ、緑龍の群れに突っ込んでいった。
一方、肩から跳ね上がったコガラが七色の翼を閃かせる。
「ピヨォォォォォ!」
甲高い鳴き声を上げながら鋭い風の刃を放ち、
ボンジの視界を強引に切り裂いた。
「小賢しい虫けらが……!」と、
ボンジが巨腕を振り下ろすが、コガラがそれを許さない。
「僕の魔導銃の良い的にゃ!」
ズドォォォォォン!
アリーの魔導銃から放たれた一筋の光弾が、
ボンジの鱗の隙間を的確に撃ち抜く。
凄まじい爆風と土煙が舞う中、
ゴクトーが「開け、妄想図鑑!」と唱えた瞬間、
『妄想図鑑』が彼の目の前に浮かんだ。
「鼓動、空中戦だ。ヴォイングは使えないか?」
その言葉を受け、図鑑から顔を出す『江戸っ子鼓動』が、
どこか言いづらそうに答える。
「旦那、ヴォイングの奴は、臆病風に吹かれて……
ページの隅で縮こまっていやす。 あいつは使えないでやんすね。
……あ! 旦那……ちとヤバいですが、空中戦なら、
アカリ姐さんのオレンジのブラとパンティが魔獣化した……
No.016:橙空魔帆を使いますか?
気球と空飛ぶ帆船のセットなんで……ししし」
「お前なぁ、笑い方まで真似するなッ!
……っと、今は、それどころじゃないな。呼び出せるか?」
「ガッテンでぇ!」
鼻を下から右掌で撫で上げる『江戸っ子鼓動』が、
『妄想図鑑』のページを捲る。
そしてーー
「橙の賢きコンビよ、今その力を!橙空魔帆よ来い!」と紡いだ。
その瞬間、ゆらっと歪む妄想図鑑のページから、
巨大な橙色の気球が「目」となり、空を睨み返す。
大きく膨らむ球体の「口」が「逆さへの字」に歪んだ。
一方で帆船は、雄大に帆を広げ、風を受け止めつつ、
曲線を描き、口を大きく開けて笑う。
船体の布は光を透かし、まるで薄絹の衣を翻すかのように揺れていた。
突然現れた『妄想魔物』に、周囲から驚きの声が上がる中、
「ヨシ、圭介たちは気球の方に乗り込んで、緑龍を迎撃。
他は帆船の方へ乗ってくれ。皆、思う存分暴れろ!」
ゴクトーの指示に従い、頷く仲間たちが乗り込んだ矢先。
先頭で足を踏み入れたアカリが、ニヤリとしながらこちらへ戻ってきた。
そして、視線を向けるアカリがポツリ。
「あの……先ほどの鼓動君のお話を耳にして、打ち明けなければと……。
実は、ダー様に内緒で、ココリドさんに追加でお願いしたこの、
魅了上昇の魔法付与がなされたーーオレンジのインナーセット、
【アマズッパイ・カジツハ・ドナイヤ】に着替えてまいりましたわ!」
揶揄うような声とともにジャケットの前を広げ、
パチッとウィンクするアカリ。
その刹那、ゴクトーがゴクリと喉を鳴らし、
やれやれといった表情で肩をすくめたのは、さておき。
耳まで真っ赤にしたゴクトーが一つ息をつき、真顔になる。
そして、頭上に浮かぶ橙空魔帆を見上げ、
「ステータスオープン!」と唱えた。
すると妄想眼”死線”が、
「主よ、橙空魔帆のステータスは、なかなかだ」と豪語し、
自身のスキル【シジマビジョン】でステータス画面を開いた。
■ 気球ステータス◾️
HP:2000 → 威容にふさわしい生命力。
MP:3000 → アカリの魅了上昇の魔力が空気と混じり、膨大に。
STR:500 → 強靭な弾力で敵を薙ぎ払う。
DEX:90→ 主の影響を受けやすく、ポロリとしそうで難あり。
INT:1000→ 魔物としては高く、相方の頭脳も兼任。
SEXY値:∞ → 見る者はただ跪くしかない。(『江戸っ子鼓動』談)
食い入るようにステータス画面を見つめるゴクトーを他所に、
妄想眼”死線”が同時に口を開く。
「 帆船のステータスだが、
HP2000で、気球と同じく生命力に溢れておるよ。
MP3000は、アカリの魅了上昇、その魔力が空気と混じり合い、
推進力を高めるには十分すぎるほどだ。
STRの1000 ……強靭な艦首の先端を揺らし、催眠効果で、
敵を魅了する力があるようだな。
だが、DEX85……主の影響で帆がスルスルと下がってこないかと心配だ。
INT20は、まぁ納得だな。相方の気球任せらしい。
Cool値の100 は鼓動の主観だ!
出航するその姿は、まるでハリウッド映画のワンシーンだと、
鼓動が嬉しそうに、漏らしていたぞ」
その言葉に耳を傾けるゴクトーが口を開く。
「俺の余計な妄想まで反映されてはいるが……
うむ、まずまずだな。ヨシ、橙空魔帆コンビ頼む!」
その言葉に気球の目尻は下がり、帆船の口が弧を描く。
そしてーー彼とミリネアは砦の壁上で残り、戦況をじっと見据えたーー。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
ShadowWindの面々が影のように気球へと滑り込み、
敵を次々と狩っていく。
中空に飛び上がりながら武器を器用に使う様は、
まさに『忍』ならでは。
「坊やたち、怪我をしても知らないからね〜」
一方で後方の救護テントから、
ミンシアが妖艶な笑みを浮かべつつ、
味方全体を強化する回復・支援魔法の光を放つ。
そのハッカの香りが戦場に広がり、騎士たちの疲労が一瞬で霧散した。
そして、好々爺の姿だったギャランが、ふっとその場からかき消える。
気づけばボンジの真上。
空間そのものを震わせる重力の圧が、巨大な緑龍の頭上から直撃した。
「ガァッ……!? この老いぼれ、ただ者では――」
ボンジが驚愕に目を見開いたーーその瞬間。
空間を裂くような黒と銀の闘気が奴の視界を塗りつぶした。
「お前の相手は……俺だ」
【縮地】の極致。
音すらない神速の踏み込みで、桜刀を抜刀し、俺はボンジの懐へと飛び込む。
隣には、同じく闘気を燃え上がらせ、鞭に魔力を込めるミリネアと、
覚悟を定め、大剣を振り翳すミテミナの姿があった。
「ご主様、一気に片付けますよ!」
「総司令殿の盾となりましょう――!」
全霊を込めた一撃が、緑龍の巨体を捉える。
閃光と爆風が天を焦がし、キヌギス砦を揺らす激闘の幕が、
今まさに切って落とされた――。
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