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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第4幕 真章。  〜軋む異世界の歴史〜

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揺れるズードリア大陸編 20 〜運命の悪戯と”死線”のイタズラ〜


 

 ブックマークと高評価、

 寄せてくださる感想にも感謝です╰(*´︶`*)╯♡

 イラスト多めです。

 熱中症には皆様、お気をつけくださいませΣ('◉⌓◉’)




 


 



 

 天上では。

 下界を眺めながら女神東雲が、ゴクトーとミテミナのやり取りに涙する中、

 神シロが傍らで、ふわりとした雲を千切ってはティッシュに変えていた。


 一方、下界を注視していたトランザニヤが、只ならぬ魔物の気配に気づく。

 

 「ゴクトーもつくづく、ハズレを引くよな……」


 その言葉に女神東雲と神シロがその方向を見据え、

 険しい山の狭間から現れた緑龍の群れに目を丸くする。


 「このタイミングでハゴネに……黒龍を騙した、あの緑龍が現れるとは……

 なんとも因果じゃな……」


 神シロが顎髭を撫で付けながらポツリと漏らす。

 傍らで泣いていた女神東雲の「チーーーンッ!」と、

 勢いよく鼻をかむ音が風雲とともに流れていった。

 


 ーーその頃ゴクトーは、キヌギス砦の通路で、

 育ての親、大恩人であるシスターの妹と思わぬ邂逅を遂げていたーー。





 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇


 





 あふれる涙を手の甲で乱雑に拭いながら、俺は震える息を整える。


 顔を上げれば、ミテミナもまた、

 大粒の涙を瞳に浮かべたままじっと俺を見つめていた。

 

 ……しかし、あの手紙の最後のくだりは、

 余計だった気がするけども……。


 俺が顔を上げたとき、ミテミナがもう耐えきれなくなったのか、

 ぽろぽろと涙を溢し始めていた。


 その姿に思わず俺も言の葉が落ちた。


「まさか、少将がシスターの妹だったとは……」


「……総司令殿。私、ずっと探していたんです。

 メッシュの髪の少年……それを、あなた様から教えてもらえるなんて……」



 挿絵(By みてみん)


 涙を拭った俺は、ぐっと息を呑み込むと、読み終えた手紙を返し、

 ミテミナの肩にそっと手を置いて口元を緩める。


「……そっか。シスターとは、もう15年以上会っていない……

 少将とは、だいぶ歳も離れているように感じるが……」


 俺の言葉に、ミテミナがハッとしたように顔を上げた。

 その瞳に浮かんでいた寂寥感が、俺の胸を締めつける。

 だが彼女が毅然とした態度で唇を動かす。


「はい……姉とは20歳違いで、私は「恥かきっ子」と、よく揶揄われました。

 私を産んですぐに母は亡くなり、

 父もこの手紙を読んでからは、気力も薄れ……家督を私に譲りました。

 その時、父から我が家の『M』の家紋、そのルーツを聞いて……

 私も驚いたのをよく覚えております」


「家紋のルーツ?」


 思わず聞き返す俺に、ミテミナの表情が少し明るさを取り戻す。

 その言葉を待っていたかの如くーー場の空気が穏やかに流れた。


「ええ、実は我が伯爵家の先祖は『ヤマト』の神代一族、

 それも巫女として名を馳せたーー『ビボウ・ミシロ』の末裔なのです」


 その言葉に思わず息を呑むーー。

 『宿命』という二文字が、俺の心に深く刻まれた瞬間でもあった。


 「嘘だろ? 俺の師匠……ナガラや、

 俺の連れも……君と同じ『神代一族』だ」


 その言葉に目を丸くしながらも、ミテミナが口元を緩める。 

 そして、彼女が口を開いた。

 

 「まさか総司令殿と、そんな深いご縁があったなんて……。

 なんだか、運命の悪戯(いたずら)を感じてしまいます」


 「ふふ」と少しだけ照れくさそうに笑うミテミナに、思わず目を奪われる。

 その笑顔とシスターの面影が重なっていったーーその瞬間。

 俺の脳内で『妄想図鑑』が開かれ、複数の影が飛び出した。


 「ずっとこの状況のままーーこれも主のせいに他ならない。

 この二人……

 喚く赤絹・シタギと引っ張るミラ・アカノをどうにかしてくれ……」

 と、妄想眼”死線”が苦笑する。


 ”死線”にしがみつくように、青い肌と角を持つーー

 ズットハートが不敵かつ魅惑的な笑みを浮かべ、

 両腕でしっかりと抱き込んでいた。


「離しなせぇ!この泥棒猫ならぬ、泥棒サキュバス!」


 そう叫びながら”死線”の右腕を必死に引っ張るのは、

 燃え盛る炎を纏う『情熱の赤三角』ことーー赤絹・シタギ。

 その顔には怒りと焦りが入り混じっていた。


 一方、反対側では、青いドレスを纏ったもう一人――青い蝶ミラ・アカノが、

 複雑な表情を浮かべながら、もう片方の腕を青いドレスで絡め取る。


挿絵(By みてみん)


 頭上の神経回路のような網の目からは、

 いくつもの思考の欠片が舞い散り、

 揺れ動く俺の感情がそのまま空間を染め上げていくーー。


 そんな中、”死線”の一つ目まなこが、カチリと一度瞬く。


 「主よ。オレ様だけ、こんな目に遭うのはどうかと思うぞ。

 ああ、そうだ。サキュバスのこいつーーズットハートの影響からか、

 オレ様の【シジマビジョン】が、

 どうやら【シジマクリア・ビジョン】に進化したようだ。ククク」

 

 噛み砕くような笑い声を漏らす”死線”が、スキルを発動させた。


 その刹那、シスターが祈りを捧げる姿とミテミナの姿ーー

 その『中身』が頭に浮かんだ。


「姉は黒、ミテミナは赤。主はどっちだ?

 オレ様は姉の方が好みだ」


 と、悪戯っぽい声を頭に響かせる”死線”。



 ……おいっ!こら”死線”ッ!今、感傷に浸ってるのに、

 俺の妄想を反映させるなよ……。

 何が進化だ……前からその透過スキル、使えるだろッ!


 心の中で、俺は文句を言いつつも、

 その二人の姿を記憶の隅にそっと置いた。



挿絵(By みてみん)


 

 ……これは、お蔵入りだな。


 口には出さず、心に誓う。

 

 そんな中、ミテミナが俺の顔を覗き込み、唇を噛む。


「総司令殿、わたくしの左目の下の紋様が気になりますか?

 これは、初代ーービボウ様の血を引くものが受け継ぐ紋様なのです」


 その言葉に息をつき、我に返った俺は、

 ミテミナを正視できないまま、口を開く。


「……俺の前では、もう少将の鎧は外していい」


「えっ!?」


「ま、間違えた……少将の仮面は外していい……

 これも何かの縁だ。ミテミナって呼ばせてもらうよ」


「ーーはい! ゴクトー……殿」


 彼女が嬉しそうに頷いたーーその瞬間。

 砦の空気がピリリと張り詰めた。


 お互いの胸に温かな絆が灯ったのも束の間。

 遠くの山並みの向こうから、地響きのような低い轟音が響き渡る。


「……ん?」


 俺は表情を引き締め、空を見上げた。


 周囲の空気が急速に冷え込み、

 肌を刺すような威圧感が風に乗って流れてきた。


「ゴクトー殿、この魔力(マナ)は……!」


 ミテミナも一瞬で軍人の顔に戻り、腰の剣に手をかける。


 遥か遠く、険しい山の狭間――ハゴネの方向から、

 漆黒の空を切り裂くように緑色の巨影が次々と姿を現した。


「あの群れは……緑龍か!」


 完全復活を果たしたアザックや砦の面々が動き出すより早く、

 運命は再び、容赦なく牙を剥こうとしていた。


「おい、ミテミナ。感傷に浸っている暇はなさそうだ……行くぞ!」


「御意のままに、軍総司令殿!」


 シスターから受け取った絆を胸に、

 俺は迫り来る緑龍の群れへと、静かなる闘気、

 いや、異様なまでの【覇気】を燃え上がらせた。


 通路に警報サイレンの音が鳴り響く。

 広場に出た俺とミテミナは、物見塔から告げられる音声を耳にする。


 「物見より伝達ーー!

 前方、約5km(キロメージ)に、魔物の群れを発見!

 凄い勢いでこちらに向かってきています。直ちに迎撃体制をーー!」

 

 その緊迫した怒声が砦に響き渡る中、俺の足が自然と止まった。

 シスターの手紙、ミテミナとの絆、そして神代一族の血筋――

 それらすべての想いが、胸の内で熱い塊となって渦巻いている。

 

「……少将。いや、ミテミナ」


「はい、ゴクトー殿!」


「あいつらの相手は、俺が引き受ける。

 お前は砦の指揮と、アザックのサポートを頼む」


 俺の言葉に、ミテミナが一瞬ハッとした顔を見せたが、

 すぐに信頼に満ちた強い瞳で頷いた。


「――御意のままに。ご武運を、総司令殿」


 「ふっ」と笑った彼女に背を向け、

 俺は【縮地】の如き踏み込みで砦の壁を蹴る。

 その瞬間、ズオッ、と俺の全身から噴き出した【覇気】。

 それは周囲の空気を震わせ、まるで青空を焦がすようなーー

 黒と銀の闘気が陽炎の如く揺らめいたのを感じる。


 プライベートな戦いは……一時中断だ。

 さてと……あの数は、一人じゃ、ちと厳しいな。


 心中に沈めたーーその矢先。


 「ご主様、ワタクシたちが居るのをお忘れで?」


 ふっと飛び上がった刹那、壁に降り立ったミリネアに続きーー


 「僕の魔導銃の良い的にゃ」と、

 アリーもザッと土埃を舞い上げ、軽々と着地した。


 目が合う俺たちは、空を覆い尽くす緑龍の大群を見上げる。

 

 挿絵(By みてみん)

 

 

 ふと気配に気づき、俺は視線を左右に向けた。

 コガラを肩に乗せたクロニクが隅に陣取れば、傍に寄り添うミーア。

 アカリとジュリ、イブとココも同じように軽やかに飛び上がり着地。

 さらにShadowWindの面々は気配を消したままーー

 パメラやノビ、ポロンに至るまで、集まってくる。

 そして、皆、遥か先の緑色の群れを見据えていた。


 そんな中、ミーアがこちらに歩み寄り、口を開く。


 「リーダー、ミンシア姉様が張り切ってるの……」


挿絵(By みてみん)


 広場を覗くとミンシアと目が合う。


「坊や〜、おもっきり、やっちゃって〜」と、

 呑気に手を振りながら声を上げ、臨時の救護テントを設営していた。

 

 その動作はどこか妖艶ーー彼女のはだけた白衣姿が見る者の目を奪う。

 その姿で作業をするミンシアは、

 さすが魔性のエルフと言わざるを得ない。

 

 その光景に「姉様……その赤いレース……余計」とミーアが零す。


 「ふふ、アタシは、このボディで、騎士様たちを癒して差しあげているの」

 

 そう言ってミンシアが緑髪を靡かせつつ、

 爽やかなーーハッカのような香りを振り撒く。

 

 その仕草と香りに、ノビが頭を抱えつつ、

「みんな、目のやり場に困ってるんさ!」と嘆く一方で、

 騎士たちが固唾を飲み、その姿に見惚れていた。


 挿絵(By みてみん)



 魔物の大群が押し寄せているのに、緊張感の欠片も無い。

 軍総司令の俺としては、一言注意すべきなのはわかっている。

 だがそんな俺を他所に、緩んだ空気を一変させるほどの威圧が場に漂う。

 

 杖をコツコツと突きながら、

 好々爺の姿で歩みよるギャランが空を見上げた。


 「あの集団は、確か詐欺師の緑龍、独眼のボンジが率いる一党じゃな。

 どれどれ、このワシがひと暴れ……」

 

 そのギャランの言葉に、「待ってください、ギャラン叔父上!」と、

 クロニクの表情が一変した。

 そして一際大きな緑龍を見据え、唇の端を噛み、身体を震わせながら零す。


「間違いねぇ、あいつはオイラの財産を根こそぎ奪った張本人。

 人化した奴に騙されて、オイラはハゴネの山に籠る羽目に……」


 悔しさと怒りが入り混じるクロニクの言葉に、

 思わず俺も拳を握ったーー。


「好きなだけ暴れりゃいい。ケツは俺が持つさ」


 その言葉は仲間たちの【覇気】と、漲る闘志に火をつけたーー。






 

 読んでくださり、ありがとうございます。

 引き続き楽しんでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )

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更新お疲れ様です! ミテミナ少将の先祖が『ヤマト』の神代一族だったという衝撃の事実にゾクゾクしました!(; ・`д・´) ……からの、“死線”さんの透過スキル発動とゴクトーさんの「鎧(仮面)」の言い…
しみじみした再会の余韻から、緑龍襲来へ一気に切り替わる流れがよかったです。 ミテミナさんがシスター・カノンさんの妹だったことに加え、神代一族の血筋までつながってくる展開が熱く、ゴクトーさんが涙を流す…
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