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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤの末裔がその物語を塗り替える〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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『Caravan・Climb』な夜編 3 〜インナー装備の屋台にて〜


 

 星評価ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

 



 天界から雲間を覗く神シロが慌てて顔を上げた。


「シノや、『ヤマト』の風が吹き抜けるぞ!」


 その言葉に女神東雲も驚きを隠せ零す。


「華を探してーーこのアドリア公国まで来たのでしょうが、

 ついさっき華はあの離れた離島ーー

 小国トランザニヤに立ったばかりですのに」


 そう言って女神東雲は唇を噛んだ。


 一方で下界の様子をじっと眺めるーー

 トランザニヤの黒銀に輝く瞳の奥がわずかに炎を宿した。


「もう一つの宿命、魔族、いや、四天王が動き出す……」

 





 ーーその頃、ゴクトーは天界の神々の焦りなど知る由もなく、

 暢気にも、眷属のハーフエルフミリネアと妖精龍のコガラを連れ、

 半眷属のダークエルフのココとともにーー

 ビヨンド村の夜市へと繰り出していた。




 


  ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇




「ご主様、いい加減、観念してください」

「閣下、もう少しの辛抱ですから」


 ミリネアとココに挟まれながら、

 俺は半ば強制的にメイン通りを歩いていた。


 肩に乗るレディのコガラも珍しい屋台を目にしながら爪に力を入れる。

 食い込む爪に痛みを覚えつつも、彼女の視線の先にあるーー

 それぞれ異なった人種による販売方法や売り物、

 それに群がる客たちの反応を模して、

 「あるじーーあれほしい」と彼女が目を輝かせていた。

 

 コガラの学習能力の高さと興味本位な知識欲が垣間見れ、

 その速すぎる成長ぶりに感嘆する。


 そんな俺を他所に、両脇の二人の視線が妙な熱を帯びていく。

 腕に感じる柔らかい感触が、一際強く感じたーーその刹那。

 脳内に『江戸っ子鼓動』が吹く法螺貝の音が流れ始めた。


 ファラファー♪ ファラファー♪


 ダカダカダン♪


 妄想眼”死線”が陣太鼓を鳴り響かせるーー。

 

 図鑑No.19:ルーブルン(峡谷の魔性精霊)が突如出現。

 小玉スイカ魔獣『S(スーパー)B(・ボヨン・)B(バスター)』の群れを引き連れて。


「ヤローども、やっちまいな!」


 ルーブルンの命令に「キィーーーー!」と、

 敬礼のように手を掲げる小玉スイカ魔獣『SBB』たち。


 そんな中、露出度が高い赤い装備の女性が現れた。


「ふふ、この”赤絹シタギ”が、そうやすやすとやられると思うなよ!」


 小玉スイカ魔獣『SSB』相手に、赤絹シタギが暴れ出すーー。


 「……って、妄想ですが。旦那、何か?」


 「もうやめような」


 命じると悪びれた様子もなく、脳内の『妄想図鑑』に収まっていく一同。

 我に返った俺は息をつき、冷や汗が背中を伝うのは言うまでもない。

 

 喧噪の中、香ばしい匂いや、

 ジュワーと脂の弾ける音を耳にしながら屋台を眺め、気を紛らわす。

 

 夜道に並ぶ屋台の灯りと二つの月光が、紺碧の夜空に混じり合う。


 やがて風が俺の冷や汗を乾かす頃。

 インナー装備ブランドーー

 『Caravan・Climb』の商品を扱う屋台が見えてきた。


 近づくにつれて、屋台の前に立つひとりの女性の姿が目に留まる。

 小柄だがスタイルも良く、色っぽい雰囲気を纏った色白の女性だ。


 彼女は屋台の前で頬を朱に染め、

 『Caravan・Climb』の『黒のブラトップ』を手に取っていた。


 それをぼんやりと眺め、ため息をついている。



 ……あの人、買うかどうか迷ってるのか……?


 そう思いながらもどこか懐かしい感じさえする彼女に、

 思わず目を奪われてしまう。



 真っ青なショートヘアが風に靡き、

 耳についた桜色のピアスも僅かにチラリ。


 黒い鎖帷子(くさりかたびら)の上に、

 紺色のラメが輝く和装を羽織り、裾をたなびかせる。


 その和装は巫女が着るようなデザインながら、かなり露出が高い。


 鎖帷子の胸元には、くっきりと胸の谷間が現れ、

 "死線”をはぐらかすのが難しい。


 風にぱさっと翻る紺色のミニスカート。

 顕になる美脚には黒い編みタイツにも見える鎖帷子(くさりかたびら)

 石畳を踏みつける足元には黒い長足袋(ながたび)


 腰には和小刀を佩き、『ヤマト』出身のアカリも使う扇子を持つ。



 明らかにーービヨンド村の住人ではないだろう。


 なんか……アカリがダンジョンに挑んだときの最初の装備に似てる……。

 だから懐かしいと感じるのか。

 和小刀に扇子ーーもしかして、『ヤマト』の人か? 

 ……前世で言ったら可愛らしいクノイチっぽい。

 まるでアニメの主人公みたいだ。

 鎖帷子を踏まえれば、間者タイプだろうな。


 思考をフル回転させながら足を止め、彼女を眺めた。


挿絵(By みてみん)

 

 俺が屋台に近づくのに気づいたのか、色白のその女性が振り返るーー。

 俺の姿を捉えた瞬間、彼女は“キッ”と鋭い視線を向け、表情を引き締めた。


 その瞳には、どこか【覇気】めいたものを感じさせる。

 いや、まるで一瞬で相手を見極める『武士』のような眼光。


 なんだ……?この【覇気】は……鋭すぎるだ……ろ?


 俺の思考を読んだミリネアが、念話を寄越す。


《「ご主様……この女性からーー

 どこか見覚えのあるような【覇気】を感じます」》


《「だろ?」》


《「はい。アカリ殿やジュリ殿と似たような【覇気】……」》


《「まさか、『ヤマト』の人間なのか?」》


《「その可能性は高いかと。ですがーー

 コガラも敵意を感じておりませんし……恐らく、危険はないかと」》


 念話のやり取りが続く中、コガラが嘴を光らせる。


《「アカリおねいしゃんとジュリおねいの、においがするよーー」》


 念話に割り込むコガラの鼻腔がひくっと動いた。


《「コガラも感じるのか?」》


《「うん」》


 そう返すコガラが笑みを浮かべる。


《「……まあ、何かしらあるかもしれないがーー

 今のところ、害はないようだ。とりあえず様子見だ」》


 そう念話を交わす間にも、引っ張られる形で俺は、屋台の前に到着した。


 屋台に立つ、女主人がゆっくりと姿を現した。

 透け感がある薄紫のドレスを月光に輝かせる彼女の豊かな胸元には、

 『caravan・climb』のロゴがはっきりとわかるーー

 『黒いブラトップ』が映し出されていた。

 

 カールされた肩までの金髪を掻き上げ、

 艶のある口紅がついた口元を綻ばせる。


 美人でスタイルが抜群。

 軽く微笑む感じは大人の印象を受ける。

 とはいえ、俺と然程変わらないような若々しさも感じる。



 挿絵(By みてみん)


 

 女主人が店前に立つと、色白の女性に声をかける。


「まあまあ、こんな可愛いらしいお嬢さんがーー

 『caravan・climb』の黒のブラトップに興味を持つなんて……

 これはうちのブランドも幸せ者ね。どんなインナー装備をお探しかしら?」


 その言葉に、黒いブラトップを持つ色白の女性の眉間には皺が寄り、

 頬を朱く染めながら俯いた。


 場に一瞬、息苦しい空気、いや、違う。

 ずしりとした緊張感が漂い始めた。


 だがーー。


 察したミリネアが、揶揄うような笑みを一瞬俺に向け、

 女主人に優雅に軽く一礼した。


「ワタクシのご主様は、こちらの品に大変ご興味をお持ちで、

 どうかワタクシたちに、似合うデザインを何点か、

 見繕ってはいただけないでしょうか……?」


 そのミリネアの言葉に思わず突っ込む。


「っえ? ちょっと待て!」


「何か?」


「 何か? じゃないだろッ! 俺の好みの話にするなって!」


「また、ご冗談を……

 ふふふ……では、やはりご主様は”むき出し”の方がお好みで……?」


「ば、馬鹿を言うな……」


 羞恥心、”むき出し”の俺は動揺を隠せないでいた。

 顔に熱を持って抗議する俺を他所に、ミリネアが悪戯っぽい目を向ける。


 一方で隣のココは言葉を失ったかのように、息を飲み、

 『caravan・climb』のインナー装備に目を輝かせるばかり。

 他方、肩に乗るコガラの琥珀の瞳ですら、

 『caravan・climb』の色とりどりに吸い込まれるように閃く始末。


 そんな中、手に持つ『黒のブラトップ』を未だに眺めるーー

 色白の女性も、どこか耳をそば立てながら俺たちの様子を窺う。


 息つく間もなく、屋台の女主人が滑らかに唇を動かす。


「こちらへいらっしゃいな。

 そこのダークエルフのお嬢さん……綺麗ね。

 最新の『Caravan・Climb』に興味があるの?

 好みの色とサイズを教えてくれれば、すぐに用意するわよ。ぼぼぼぼぼ」


「……ってか、その笑い方っ!」


 思わず突っ込む俺を無視して、屋台の女主人が、

 紫の透けるドレスを揺らしながら、ココに優雅な笑みを溢す。


 その笑顔には、どこか含みがあり、まるで相手の心を掴み取るようだ。

 圧倒されるココが目を逸らしつつ、頬を染め軽く会釈し、伏せ目で零す。


「あ、ありがとう……我の好みの色はオレンジで、

 ブラのサイズは、えっと、『Fカップ』のアンダー60だったと。

 パンツはーーあ、いけない。

 いつもの軍にいる癖で……。

 ショーツは『MS』か、『M』サイズがあれば……」


 その言葉に場が静まったかのような錯覚を感じる。

 まるで時が止まったかのように、俺の耳にココの言葉が残る。


挿絵(By みてみん)


 自然と動きが止まり、

 身体がまるで硬直魔法をかけられた直後のようにーー

 そこから動けなくなった。


 正直彼女の口から、サイズを伝える言葉を聞くとは、思わなかった。


 その瞬間ーーえっ? どの瞬間?


 と、動揺しすぎて自我が定まらなくなった。

 いきなり噴き出す汗が額に滝のように滴る中、

 ココが俺の顔をじっと見つめる。


 その視線は、俺の反応を確認しているかのよう。


 ……ココさんや、確かに予想”以上”に大きいですよね……

 おかげで状態”異常”を起こしてますよ。

 まぁ韻を踏むくらい納得してますけども。


 言葉にはできない思いを沈めつつ、その視線に耐えられず、

 俺は顔に熱を籠らせ、慌てて目をはぐらかす。


 すると、女主人が艶やかな笑みを深め、頷いた。


「ぼぼぼぼぼ。……胸、大きいのね。

 着痩せするタイプだなんて、羨ましいわ。待ってて……あるから用意するわ」


 「おいッ!その笑い方ッ!」


 再び突っ込むが、お構いなしだ。

 耳が聞こえているのか不安に駆られるぐらいだ。


 一方で女主人が、

 『Caravan・Climb』を握る手に、グッと力を込めて艶っぽい唇を滑らせる。


「あなたの焦茶色の肌に“ピッタリ”な……

 グレーや黒に白の『Caravan・Climb』もおすすめだけどーー

 ぼぼぼぼぼ……ゲホゲホッ」


 ……ってか、むせてるじゃんかッ!

 作り笑いはやめろおおおおーー!


 女主人にあくまで心中で叫ぶ、虚しい俺を他所に、

 ココがどこか甘えるような声とともに、俺の腕を“ぐいっ”っと引っ張る。


 「閣下~」


 その可愛らしい声とは裏腹に体勢が崩れ、

 危うく俺の顔面がココの谷間に埋まるところだった。


 《「閣下、それってわざとですよね……ふふ」》



 ……っ! ココに突っ込まれた。

 場の空気に呑まれすぎて油断した。


 思いながら息を吸いこみ、一度気持ちを整理する。

 だが動揺はすぐには消えない。

 そんな中、ココが急かすように再び腕を引っ張る。

 思わず言葉が口をつく。


「ぜ、全部の色を……か、買ったら……いいんじゃ…な、ないかな…?」


 喉が閉まるのをやっとの思いで絞り出す。

 慌てる余り、吃ってしまい恥ずかしさが込み上げてくる。


 女主人が俺の声に即反応。ニヤリとほくそ笑む。 

 一方でやり取りを見ていたミリネアが、呆れたような表情を見せる。

 だが彼女が真顔に戻り、女主人に向き直った。


「……ワタクシも色は緑で、ブラのサイズは『Gカップ』のアンダー65。

 ショーツは『M』サイズがあれば……ココ殿と同じくーー

 全て欲しいのですが……」


 ミリネアが言い終えるとパチクリと俺に目を瞬かせる。


挿絵(By みてみん)

 

 その仕草を真似るコガラはさておき。


 一方、注文を受けた女主人が口角を上げーー

 長い睫毛をパチパチとしばかせ俺を見つめる。


 その刹那、血が昇り、顔から火が出そうになった。


「買えば……良いよ」


 思わず諦めにも似た言葉を口にする。


 女主人が、俺の苦悶を楽しむかのように口元を緩める。


「オレンジ色の『F』に、ショーツは『MS』か『M』と、

 それと緑色の『G』にショーツは『M』、この他にーー

 

 グレーに黒と白の『Caravan・Climb』も、なのよ……ね?

 待ってて、用意するわ」


 そう言いながら目を輝かせ、店の裏へ消えていった。


 通行人の目がやたらと俺に集まる中、

 屋台の片隅で『黒のブラ』を手にしていた色白の女性が、

 目が合うと不意に顔を伏せた。


 その場から動かないのが不思議なのだが。

 そのまま、商品を凝視している様子は、

 どこか影を落とすようなーー深い悲しみを感じるのは気のせいだろうか。


 肩に乗るコガラもどこか違和感を感じたのか、爪に力が入っていた。

 穏やかな風が、ふたつの月をわざと隠れるように雲を連れて来る。

 月は隠れるものの、墨空には幾千の星々が輝きを失わずーー

 まるでこの世界を見守るように、優しい煌めきを宿す。


 風が変わり、再びふたつの月が姿を現した。


 月明かりが人影を映し出したその刹那、

 女主人が、持ちきれないほどの『Caravan・Climb』を胸に抱え、

 キャッシャーがあるカウンターに、ばさりと置く。


 ほっと一息つく、女主人の目が突然、訝しいものに変わった。

 色白の女性に向かって、厳しい口調で問いかける。


「ところで……そこの青髪のあなた。

 ずっとぼんやりしてるけどーー

 買うの? それとも買わないの?」


 その言葉に、青髪の女性がゆっくりと顔を上げた。

 目の奥に湛える、冷静さと、どこか物憂げな光が女主人を貫く。


「……まだ、決めてないわ。でも……」


 青髪の女性が『黒のブラ』をそっと持ち直し、続けた。


「黒じゃなく、"派手”な色が似合う人は良いな。羨ましい……」


 彼女の意味深な言葉に、俺、ミリネア、ココは顔を見合わせる。


 彼女の静かな言葉は、得体の知れない疑問を残したまま、

 静かに風とともに消えていった。

 

 立ち姿は凛としたまま、彼女が言の葉を落とす。

 

「オノの国『ヤマト』では……

 このような『乳バンド』をつけておる者は……おりませぬ。


 基本は(ふんどし)、おなごも同様、〝たわわ〟な者は、

 胸にサラシを巻いておる。


 庶民のおなごは腰巻きだけ……

 この大陸に渡ってから、『パンティ』なるものを、

 一度は身につけてはみたもののーー乳バンドは着けたことも皆無。

 

 ブラトップだの……サイズだのと……

 初めて耳にする言葉で、如何様(いかよう)にして良いかわからず、

 ぼんやりとしてしまった」


 異国独特の節廻しーーその言葉に、思わず息を飲む。


 彼女がしばし目を伏せ、短く息をつくと、

 静かに一礼。


「……失礼する」


 その場を立ち去ろうとする彼女に、なぜか胸が締め付けられた。


「やっぱり『ヤマト』の人だったか……」


 思わず声が漏れる。

 

 ブラをつけたことがないんだ。

 知らない土地と文化に戸惑うのも当たり前だ。

 

 ぐるぐると思案、だがあることに気づいた。


 あれ? アカリとジュリに初めて会った時、ブラはつけてたぞ。

 ……そうか、あの二人はこの大陸を旅したって、言ってたもんな。


 逡巡させる俺を他所に立ち去ろうとする彼女。

 気づけば俺は、自然と声をかけていた。


「待ってくれ……!あんたは『ヤマト』の人なのか?」


 その声に彼女が振り返る。

 瞳に宿る冷たい光が俺を射抜く。


「そうだが……女子に強請(ねだ)られ、鼻の下を伸ばしている御仁に、

 (みだ)りに声を掛けられるとは……憐れみか? 無礼であろう」


 彼女の冷ややかな口調には、どこか威厳すら宿っている。


 次の瞬間、彼女の細い指が腰に差した、和小刀を掴む動きを見せた。


「見た目はか弱く見えるだろうが……オノは『風代家』の者。

 そんなに甘く見てもらってはーー困るぞっ!」


 







 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




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― 新着の感想 ―
おお……またしても新たな展開の予感が!(; ・`ω・´) 四天王というキーワードに、初お目見えの女性……続きが気になります! それにしても、ゴクトーさんは今日も嬉しいやら困ったやらですね( *´艸`…
冒頭から天界側では、不穏な空気が……。 「ヤマトの風」や「四天王が動き出す」という言葉が出てきて、夜市の賑やかさの裏で大きな運命が動き始めている――そんな感じがしました。 一方で、下界のゴクトーは…
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