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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤの末裔がその物語を塗り替える〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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『Caravan・Climb』な夜編 4 〜名はクオン・カゼシロ〜



 ブックマークありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

 




 天上の神々、三柱の一人トランザニヤが雲間から顔を上げる。


 「おい、あの子は、シロと東雲さんの末裔だろ? 

 なんでビヨンド村なんかにいるんだ? 

 本来なら、『ヤマト』から離れないだろ?」



 その言葉に神シロが気まずそうに雲間から顔を上げた。

 一方の女神東雲も顔を上げながら零す。


「きっと、ワタクシの姪、華を探しに来たのでしょう。

 あの子は、家督まで次いだ華を連れ戻そうとーー

 躍起になっていましたから……」


 

 

  



 そんな天上の神々の事など、露程も知らないゴクトーは、

 謎の色白の女性に声をかけ、

 インナーブランド『Caravan・Climb』の屋台の前はーー

 一触即発の雰囲気だった。








 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇





「見た目はか弱く見えるだろうが……オノは『風代(カゼシロ)家』の者。

 そんなに甘く見てもらってはーー困るぞっ!」


 その言葉とともに、

 鋭くも青い【覇気】と魔力(マナ)が、

 色白の彼女の全身から溢れ出した。


 明確な敵意ではないが、こちらを威嚇するには、

 十分過ぎる程の力を感じる。


 挿絵(By みてみん)


 

 あれ?

 アカリとジュリの名は確か、『巫代(ミシロ)』だったよな……?


 

 俺が考えを巡らせる間にも、状況は緊張感を増していく。


「ピィーーーッ!!」


 警告だ。肩に乗るコガラが鋭い鳴き声を上げた。

 コガラもまた、色白の女性の放つ魔力(マナ)と【覇気】に反応したのだろう。


 俺を守るように、ミリネアが鞭を構える。

 彼女の動きに合わせて、

 ココリドお手製の紫のインナー装備ーー

 【ムラット・シタラ・ドナイヤ】がちらつく。

 付与された魔力上昇の効果だろうか。

 装備から溢れ出すような紫の魔力が、ミリネアの身体を包み込んでいく。

 

 一方でココも大剣を握りしめ、赤く瞳を光らせる。

 彼女もまた、素早さ上昇と色気上昇が付与された装備――

 【ナデテ・ミタラ・ドナイヤ】の効果なのか、

 紫色の魔力を全身に滾らせていた。


 二人の動きには、一切の迷いがない。

 即座に、戦闘体勢に入ったことが伝わってきた。



 挿絵(By みてみん)


 一方、目の前の色白の女性は身構えたままーー

 二人を目にしても、全く動じる様子を見せない。


 むしろ、ゆっくりと微笑みながら零す。


「ほほぅ……このハイエルフとダークエルフの二人……

 相当な手練れのようだ。もの凄い魔力と【覇気】を放つものよ」


 彼女の視線が次に、俺の肩のコガラに移る。


「そこの従魔……まだ子供に見えるが、

 これまたもの凄い【覇気】、いや【煌気】を感じる…… まさか……龍か?」


 その場で、何かを考え込むような仕草を見せたかと思うと、

 再び俺に目を向け、彼女が鼻で笑った。


「ふん、鼻の下を伸ばしている御仁は大したことなかろう……

 大した【覇気】も感じぬ。

 ……そうか、この二人のエルフと従魔は護衛か? 笑止……!」


 そう言いながらゆっくりと口角を上げた。


 その“ニヤッ”とした表情には、余裕と自信が滲み出ている。


 俺たちを睨む彼女の眼差しは、一層鋭さを増していった。

 慌てて手を挙げ、一歩踏み出す。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 誤解だ!」


 鋭い視線をこちらに向ける彼女に、思わず声を荒げてしまった。


「俺の師匠も『ヤマト』にいた人なんだ。

 それに、仲間にも『ヤマト』の生まれがいる」


 その言葉に、彼女の目が僅かに細くなる。

 その冷たい視線には、まだこちらを見定める意図がヒシと滲み出ていた。


「何と申した……!?」


 低く、だが鋭い声を漏らし、

 どこか狼狽した様子を見せる彼女が唇を噛む。


「聞き捨てならん。

 『ヤマト』の生まれだと……?

 まさかとは思うが……髪が桃色の姉妹では、あるまいな?」


「ああ、そうだ。アカリとジュリの髪色は、桃色だ」


 俺のその言葉に彼女の肩が跳ね、大きく目を見開いた。


「……っえ?」


 驚愕と困惑が入り混じったような、複雑な表情で零す。


「何と無礼な!」


 「……っえ?!」


 突然、いきり立つ彼女に俺が動揺してしまう。

 ミリネアとココも何が何だか、わからない様子で、

 ただ武器を握りしめたままだった。


 一方で、彼女が一歩前に踏み出し、和小刀を握り直す。


「姫様方を呼び捨てにするなど……風上にも置けん!」


 鋭い声が周囲に響き、空気が再び張り詰める。

 場の緊張が頂に達し、周囲からも、

 ざわざわと色めき立つ声が囁かれ始めた。


 いかん……とりあえず、場の雰囲気を変えねば……。


 思い立ったが吉日。

 軽く前世の歌を口ずさむ。


 「……違う違う。そうじゃ、そうじゃなーい♪ 君の感違〜い〜♪」


 俺は彼女に指を立て、左右に振った。


挿絵(By みてみん)


 しーーーーーーーん。


 二つの月明かりに照らされる俺の影が、長く石畳に伸びる。

 風も止み、遥か彼方から獣人たちの遠吠えだけが、僅かに聞こえた。

 

 周囲の野次馬は首を傾げ、ポカン。

 ミリネアとココも唖然としたまま動かない。

 肩に乗るコガラだけが「ピー♪」と小さく鳴いた。


 俺は、穴があったら入りたいぐらいの羞恥に苛まれながら、

 声を絞り出す。


 「ヨ、ヨーシ……静まったな……さっきの呼び捨ての件だが、

 本人たちが、そう呼べって言ったからだ。仲間だからな」 

 

「姫様が仲間だと?……それは証明できるか?」


 俺の言葉に、彼女の眉がさらに険しくなる。


「まさか……あの二人の姫様がそう呼ばせるとは…… 貴殿は何者ぞ?」


 「ただの妄想と名付けが得意な冒険者ですが……何か?」


 彼女の目がじっと俺を射抜く。

 その視線には、俺が何者かを見極めようとする、強い意志が宿っていた。

 『風代』と名乗った色白の彼女が唇を動かす。


 「……失礼ながら、貴殿の名を聞こう」


「俺か?……俺は、ゴクトーだ」


 名前を告げると、彼女の表情が凍りついたように固まった。

 そして彼女の瞳が見開かれる。


「何ぃ……ゴクトーだと?!」


 和小刀を握る指が一瞬、僅かに緊張を帯びる。


「ご主様!ここはワタクシが!」


「閣下、下がってください!」


「あるじ、きをつけて!」


 ミリネアとココが一歩前に踏み出し、コガラが爪を立てた。


「……コガラ、痛いぞ」


 俺の言葉などお構いなしに場には、

 糸がピンと張られたようなーー緊張感が漂う。


「ゴクトー……では、ギルドで噂の……」


 小さく漏らす色白の彼女の肩が小刻みに震える。

 その刹那、緊張のその糸は、音も立てず切れた。


「貴殿は、ナガラ様の弟子、八咫鴉(やたがらす)殿であるか?」


 彼女の声には、素直な驚きと僅かな警戒が入り混じっていた。


「へぇ?」


 思わず目を見開き、固まってしまった。

 ミリネアとココの表情にもどこか困惑した色が滲む中、

 俺は息をつき、肩をすくめながら答える。


「そう呼ばれてるらしいな」


 彼女は俺を見つめたまま、沈黙。

 何かを深く思い詰める様子が見てとれた。

 そんな中、彼女が俺の目を見据えて口を開く。


「本当に、ナガラ様の弟子、八咫鴉で、間違いはないのか……?」


 「ああ」


「それにしては、貴殿から【覇気】を全く感じぬ……

 『S級』の冒険者と聞いたのだが……

 連れはかなりの手練れだが……そうか仲間が『S級』なのか……」


 何やらぶつくさとつぶやく彼女はさておき。

 場の緊張がほぐれたのを感じたコガラが俺に念話を寄越す。


《「あるじーー!おなかすいた!」》


 その可愛らしい声が顳顬(こめかみ)に響いたーーその瞬間。


 《「腸詰炒めが冷めてしまいますわ。ご主様」》


 ミリネアからも念話が届く。


 《「待て待て待て待て……今、会話の途中でしょうがッ!」》


 思わず脳内で返す。

 一方でコガラとミリネアが「「ククククク」」と、

 笑いを噛み殺したような声を漏らした。


 俺たちが念話を交わす間も、彼女は思考を巡らせる。


(『S級』パーティの、それも、たまたま、

 リーダーになっただけの御仁なのだ……

 それに姫様たちも仲間と言っておったな……

 それなら合点がいく。しかし、この御仁の仲間になど……

 姫様たちは何故なったのだろうか?)


 その思考が丸ごと俺のスキルーー

 心読によって伝わるのが、居た堪れず、思わず唇を噛んでしまった。


 そんな俺を他所に彼女は、小さく息をつき、

 やや冷静さを取り戻したように感じる。

 

 そんな中、ミリネアとココを一瞥する色白の彼女の口元が微かに緩む。


 「名乗られたのでは……オノも名乗らずでは無礼であろう」


「……オノって……独特な一人称だな」


 思わずツッコミは入れておく。

 だが俺のことなどお構いなしに、彼女が口を開く。


「ふっ……オノも胸には、自信があるのだ!」


 言いながら自身の豊かな胸をポンと叩き、

 誇張するかのように胸を張り、

 凛とした声で名乗りを上げた。


「オノは風代九音ーーこの国の言い方に変えれば、

 クオン・カゼシロと申す。

 姫様たちはどこにおられる……?」


 その言葉に俺は、ほっと安堵の息をつく。


「この後……合流する」


「オノもそこへ、あないしてもらえぬか?」


 彼女の目にはどこか憂いが宿る。

 俺は一瞬躊躇した。だが、口から言葉が溢れてしまった。


「それは別に構わないが…… ちょっと落ち着いてくれ」


 彼女が目を閉じ、深く息を吸い込む。

 そして、敵意を剥き出しにしていた彼女の【覇気】が一気に緩んだ。


 一方で、俺は剥き出しにした八重歯を閃かせてやった。

 俺の表情を見た彼女がクスッと笑いながら零す。


「……わかった。オノも場をわきまえず……失礼致した」


 柔らかくなった彼女の表情に、緊張していた俺の肩も少しだけ力が抜ける。

 

 そんな最中、場の空気を裂くように、屋台の女主人の暢気な声が響く。


「旦那もそこのあなたも、ここでの揉め事はゴメンだよ」


 俺たちのやり取りをずっと、女主人は黙視していた。


「はいこれ……サイズも色も揃ってるし、早く代金を払っておくれ。

 1セット金貨1枚、細かい銀貨でも構わないよ。銀貨なら10枚……

 4セットずつで金貨8枚、銀貨なら80枚だよ」


「ああ、すまん。揉めはしない」


 俺が代金を払おうとする横で、

 肩に乗るコガラが、「ピィッ」と鳴き声を上げる。

 場が落ち着いたことをコガラも感じて、安心して羽を畳んでいた。


 一方で、女主人がこちらを一瞥し、低く、肝の据わった笑い声を響かせる。


「ぼぼぼぼぼ」


 ニカリと白い歯を見せる女主人から、「はい、これ」と、

 ミリネアとココに布油紙袋が手渡された。

 紙袋の『Caravan・Climb』のロゴがやたら目立つ。

 二人も緊張していた表情を緩めながらその紙袋を眺めていた。

 その光景を目にしながら、俺は思い立ち念話を飛ばす。


《「ミリネア、この『ヤマト』の女性、アカリたちの知り合いらしいから、

 ついでだ。彼女にサイズの合うーー

 『Caravan・Climb』を買ってやりたいんだが……」》


 その念話にミリネアが目を見開き、

 すぐにーー〝苦虫を噛み潰したような〟表情に変わった。


 そして、俺を見上げる。


「このお方は、女心をどこまでわかっているのかしら……」


 ミリネアの小さく漏らしたその声は、

 再び喧騒を取り戻し始めた周囲の雑音で、俺の耳には届かなかった。

 

 そんな中、ミリネアが察したように、息をつき、

 悪戯っぽい笑みを浮かべーー念話を寄越す。


 《「……ご主様、承知しました。貸しは高くつきますわよ」》


 《「すまん、ミリネア。ああ、構わない」》


 そう返した刹那、ミリネアがクオンに声をかける。


「クオン殿、不躾ですが……よろしければーー

 このミリネアに「サイズ」を測らせていただけませんか?」


 丁寧な口調で申し出る。


 一方でクオンが目を見開き、顔を真っ赤に染めた。


「急に何を申す!節介は無用だ!」


 クオンが強く言い返した。

 だが、その声にはどこか照れが混じり、

 拒絶しきれていないのは、見て取れた。


 さすがミリネア、淡々と艶やかな女主人に声をかける。


「すみませんが……こちらの更衣室とメジャーをお借りできますか?

 ココ殿、クオン殿を更衣室へ連れて行くのを手伝ってください」


「揉めずに買ってくれるんなら使って構わないさ。

 ほら、メジャーだよ。 ぼぼぼ、ゲホッ!」


 女主人が作り笑いを失敗し、むせかえる中、

 メジャーだけはミリネアにきっちり手渡した。

 彼女の『Caravan・Climb』に対しての『商魂』が窺える。

 そして屋台の端を指差して、更衣室の場所を示す。


挿絵(By みてみん)


「ふ、不覚にも嬉しい……」


 小さく漏らすクオンが、チラッと白い歯を見せ、

 ミリネアとココに腕を引かれながら、更衣室へと連れ去られたーー。








 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )

 


 




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― 新着の感想 ―
ゴクトーさん、まさかのその歌!?Σ(゜Д゜〃) これは完全に予想外でした( *´艸`) 新たなる風を連れてきた人物、クオンさん……! いったい彼女との出会いが、物語をどう動かすのか (; ・`ω・´…
「……違う違う。そうじゃ、そうじゃなーい♪ 君の感違〜い〜♪」 このシーン、爆笑して、ビールを吹き出しそうになりました)^o^(www 楓様はギャグセンスも抜群!!! いつもありがとうございます…
クオン・カゼシロ、とても印象に残りました。 最初はかなり緊迫した空気。そんな中、クオンの〖覇気〗にミリネア、ココ、コガラが即座に反応するところで、ただ者ではない感じが一気に伝わってきました。 ゴク…
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