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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤの末裔がその物語を塗り替える〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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『Caravan・Climb』の夜編 2 〜大将閣下、美女二人に連行される〜


 

 しかしーーゴクトーの妄想眼”死線”はどうしていつもこうなの? Σ('◉⌓◉’)

 







 天界の神々がゴクトーに期待を寄せ、楽しげに下界を覗く中、

 当の本人は呑気にも、ミリネアとココに挟まれーー

 屋台の前で足を止めていた。





 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇







 「……ココさんや、急にどうした……?

 大将閣下殿って、俺のことだよ……ね?」


「ええ……あなた様しか、おられません」



 混乱しながらも、

 ココの朱く染まったその表情に動揺しつつ、

 絞り出すように喉を広げた。


「そ、そもそも……大将閣下って、なんなんだ?

 軍って、敵国と戦う集団だろ? 俺は軍のことには疎くて……」


 問いかけると、ココが敬礼し、きっちりとした口調で話し始めた。


「ハッ! まず、軍とはーー外部からの武力攻撃や脅威を退け、

 国家の安全を維持するための防衛戦闘組織です。

 国家の機関として公的な予算ーー防衛費や軍事費によって、

 運営されているものであります」


 ココらしい、硬い口調の中にも彼女の几真面目さが窺い知れる。

 少しは理解したものの、いまいちピンとこない。


 一方、肩に乗るコガラに至っては、急に難しいコトバが並んだので、

 聞いているのか聞いていないのかーー

 よくわからないが、何かを知ろうとしているのは確か。

 彼女なりに難しいコトバを理解しようと一言一句に耳を傾けるが、

 右へ左とーーただ首を傾げるばかりだ。

 もちろん俺の隣に寄り添うミリネアは、今の内容を理解しているだろう。

 彼女の表情を見れば察しがつく。


 俺が踏み込んでさらに尋ねようと、口を開こうとしたーーその時。

 ココがまさに”ココぞ”とばかりに唇を動かす。


「僭越ながら、大将閣下殿に申し上げますーー

 軍隊の将官クラスにおける最上位の階級ーーそれが大将であります。

 我が国においては全軍を指揮し、統率する総大将のことでもあります」


「随分とまた、責任重大なポジションなんだな」


 冷や汗が滲み出てくる中、ココに言葉を投げた。

 その俺に彼女が軽く口元を緩めながら唇を動かす。


「おっしゃる通りでございます。

 大将とは、登り詰めた先の最終上位階級であり、

 軍においてはトップーーさらに言えば軍総司令は、

 他の大将にも命を下せる権限を持ち、本国では元帥と称されます」


「っえ? そうなのか? いまいち階級がわからんが?」


 俺の表情を見たミリネアがスッと一歩前に踏み出し、口を挟んだ。


 「階級ならワタクシが……

 将官クラスに至るまでには、まず幹部にならねばなりません。

 そのスタートラインは、 一般の兵士や下士官、

 つまり伍長や軍曹などの上ーー 『士官』からやっと幹部と認められます」


 その澄んだ声はわかりやすく、説得力もある。

 彼女の説明にココが畏敬の眼差しを向け、相槌を打つ。

 俺の表情を見ながらミリネアも頷き、

 屋台の灯りに照らせれ、その艶やかな唇が光る。


 「士官クラスは准尉から始まり、その階級は上がるにつれーー

 少尉、中尉、大尉、そして准佐、少佐、中佐までがそう称されます。

 これは国によって、多少は異なりますが……」


 「ほぅ……」


 変なところから声を出し、ミリネアに答えては見たもののーー

 准尉から中佐まですでに七つも階級がある。

 それもまだ『士官クラス』の説明にすぎない。

 一体大将とやらは、どんだけ上の階級なのかと不安に駆られるばかりだ。


 一方でコガラはその難しい言葉が口から溢れ、

 「じゅんい、ちゅうさ?」と何やらブツクサ並べている。


 困惑を深める俺の表情を鑑み、ココが優しい声音で紡いだ。


「将官クラスーー我がファルダット自由国に至っては……

 大佐から始まり、准将、少将、中将、大将と階級が上がっていきます。

 

 軍においての我は、一師団長に過ぎませぬ。

 階級で言えば准将か、良くても少将止まり……。

 しかし、閣下はハルツーム侯爵家の……軍総司令職であられるゆえ、

 階級で言えば、はるか上官……ですのでーー

 『閣下』と敬称をつけてお呼びするのが、必然かと……」


「ココ殿、呼び方はそれぞれですが、ご主様が不快になられるかと…」


 ミリネアが落ち着いた声で割って入るが、俺は急いで首を横に振った。


「いや、ミリネア、大丈夫だ。俺はどう呼ばれても不快じゃないが……

 ココ師団長、その……大将閣下殿っていうのは、

 ちょっとむず痒いというか……」


「……申し訳ございませぬ。それでは……せめてーー

 閣下とお呼びすることを……許してはいただけないでしょうか……。


 それと、我のことはココとお呼びつけください。

 命を救っていただいた方に、そう呼んでいただけるのは、何よりの誉です。

 ミリネア姫様もどうか、そのように……」


「命を救ったって、大袈裟な話だな……まあ、わかったよ。

 ココか……可愛らしい名前だよな。ししし。なあ、ミリネア?」


「閣下……!」


 口をついて出たその言葉に、ココの顔が朱く染まった。

 彼女は恥じらいながらも、俺の腕をしっかり掴む。


 ことのほか柔らかく、予想”以上”の感触を押し付けてくる。

 一方、ミリネアが、〝苦虫を噛み潰した〟ような表情を浮かべていた。


 彼女の眼差しが俺を射抜いたーーその瞬間。

 俺は諦めにも似た息をつき、肩をすくめた。


 だがーーつい先ほどの記憶が俺の足を引き止める。

 シモンヌ卿とのやりとりでミリネアが送ってきた、念話がふと頭をよぎった。


《「ご主様の好きにして良いと言うなら、

 受け入れても構わないのでは、ないでしょうか?」》


《「ミリネアもそう思うか?」》


《「はい。あくまで形式的なものなら、大きな影響はないでしょう。

 それに……一国の貴族、それも軍総司令ともなればーー

 役に立つ場面もこの先あるかと……」》


 シモンヌ卿から俺が大将の徽章を受け取るか迷っていた時、

 なぜミリネアが背中を押したのかーー『あんな返答を寄越したのか』

 今なら深く頷ける。

 

 俺はとんでもない政治力、いや軍事力を持ってしまったことに、

 改めて気付かされた。一介の冒険者風情の俺がだ。


 思考を巡らせてもキリがない。

 「なるようになるさ」と小さく独り言ち、一旦は足を止めたが、息をつき、

 「行こうか。腸詰め炒めの屋台へ」と二人に促した。


 「行きましょう。ご主様」と笑顔を見せるミリネアと、

 「はい」と可愛らしい声を出すココ。

 一方で肩に乗るコガラは、まだぶつぶつと嘴を動かしていた。


 ミリネアとココ、二人の美女に挟まれながら、メイン通りを歩く。


「すんげー美人だなや」

「まったくだっぺ。ハイエルフとダークエルフが一緒とは、珍しいなや」

「あの種族、仲違いしているはずじゃ」

「へ、あのテンガロンハットの奴、良いカッコしやがって、ムカつくな!」


 俺たちの歩く姿は、間違いなく周囲の注目を浴びていた。


 ……これ、悪目立ち過ぎだろ……。


 周りからの視線を気にしつつも、立ち並ぶ屋台の数々を眺めながら歩く。

 どれも活気に満ちていて、通り過ぎるだけでも、目を引くものばかりだ。


 「こんなふうに、ただ飯の匂いに誘われて歩いたのは……

 いつ以来だったろうか」


 思わず声が漏れる俺に、屋台から威勢の良い声が飛んでくる。


「おまけ、おまけ、おまけだよ!ほれ、持ってけドロボー!」


 色鮮やかな果物、『バナーナ』を山積みにして、叩き売る果物屋台。

 俺は前世の記憶が頭を掠め、それには笑った。


 両隣の二人も嬉しそうに『バナーナ』を眺める中、俺の足が再び止まった。

 正直ーー目に飛び込んできた光景に驚いた。


 更衣室付きのインナー装備専門屋台。

 

 そこは、煌びやかな魔導具の灯に照らされ、虹色の光彩を放つ。

 月が二つ浮かぶ夜空に、その『虹彩』がまるで星々を照らすかのようだった。

 

 息をつく暇もなく、見覚えのあるロゴにミリネアの目が釘付けになった。

 彼女にしては珍しい。

 歩みの速度が早くなるミリネアにつられ、俺とココもその歩調に合わせる。


 屋台前の人だかりの上から覗くミリネアが、

 信じられないーーと、でも言いたげに目を丸くする。

 

「『Caravan・Climb』の新作……? ……最新モデルって書いてありますわ!」

 

 それもそのはず、彼女のお気に入り、

 いや、【ロカベル】三姉妹ーー

 ミンシアやミーアもお気に入りのブランドなのは、周知の事実だ。

 

 ミリネアが俺の腕を離すぐらいだから、興奮気味なのがよくわかる。

 一方で肩に乗るコガラもその屋台を羨ましそうに見る。

 さすがレディだ。

「コガラも”ひとがた”になったら”きれる”?」と、

 言っていたのが思い出されて、思わず口元が緩んでしまった。


 そんな中、ココもどこか恥ずかしげに顔を朱に染めつつ、

 しっかりとその長身を生かして、上から覗き、

 興味深く目を凝らしていた。

 

 一方でその屋台前の人だかりが、

 背の低いドワーフのご婦人方に変わる。

 その瞬間、赤・黄・緑と俺の目に飛び込み、

 ぐわんと目の前が霞む。

 その瞬間、カチッとした音が脳内に響いた。


 脳内でパラパラと開かれる『妄想図鑑』から飛び出したーー

 ”死線”が瞬時に俺の目と同調(シンクロ)する。

 その数コンマ0・5秒の出来事はまさに瞬速。

 

 そして”死線”の【シジマビジョン】が俺の脳内に、

 『Caravan・Climb』を身につけた、ミリネアとココの姿を映し出す。


 「これは、主が本当に見たい彼女たちの姿だ。

 はははーー余計なことだったか?」


 そう言って、”死線”が不敵に笑う。


「揶揄うな、俺の妄想を先読みするなッ!」


 俺の言葉に肩を揺らしながらーー

『ひとつ目まなこ』の瞼をカチッと鳴らし、

『妄想図鑑」に消えていった。


 我に返った俺の額には汗が滲み出ていた。

 そんな俺にミリネアからの念話が頭に響く。


《「今思い浮かべている、緑のレースがお好みならば……

 ワタクシも、ぜひ買わせていただきます。 ご主様」》


挿絵(By みてみん)


 ミリネアが鼻息も荒く、横目で見やり、口元に薄く笑みを浮かべる。


 《「はいはいはいはい……ってか、もうッ!思考を読まないのッ!」》


 返す俺の念話にミリネアとコガラが「「ククククク」」と、

 噛み殺したような笑い声を漏らす。

 俺の思考を読み取ったのだろうが、どうにも腹が立つ。


 一方のココは何が起きたかもわからずに、

 不思議そうに目を丸くしていた。


 眷属化したのは間違いだったのかもしれないーー。


 そう思いつつ、「とりあえず、腸詰炒めの屋台へ急ごう」と、促した。

 二人と一体が未練がましく、インナー装備の屋台を振り返る一方で、

 歩を進めるとーー

 芳しい香りが鼻をくすぐり、脂の弾ける音が微かに耳に届く。

 

 人気なのか、活気のある屋台が一つ。


「いらっしゃい! お客さん、美人さんに囲まれて楽しそうだねぇ!」


 筋骨隆々、リザードマンの店主が、豪快な笑顔を向けてくる。

 その緑の鱗に包まれた太い腕で、ヘラをダイナミックに返す。


挿絵(By みてみん)


 ジュワーッと脂が鉄板に溶け出し、調理中の腸詰炒めから、

 香ばしい匂いが立ち上り、否応なしにーー

 『妄想図鑑』No.08:腹の虫ぐうさんが鳴き声を「ぐうぅ」と漏らす。

 

 肩に乗るコガラもその匂いに釣られてか、

 羽をパサッと広げ、「うまそーー!」とコトバを飛ばしてくる。

 その声に驚きもせず、額に汗をながす店主に俺は注文を告げた。


「あ、あの……腸詰炒めを三皿欲しいんだ。いくらだい?」


 すると、ギザギザの歯から、赤く細い舌をシュルシュルッと出し、

 店主がニヤリと俺を値踏みするような目で見てくる。


「一皿で銀貨4枚、三皿だと銀貨12枚だな。

 その美人さんたち、あんたの連れなんだろ?……

 オラッチはエルフの美人さんには、

 しこたま弱いんだ。 特別に金貨1枚でいいぜ!」


 鉄板で香ばしく焼けた腸詰を器用に掬い上げ、店主が盛り付け始めた。


「ありがとうございます。ご主様、こちらはワタクシが……」


 ミリネアが柔らかく微笑み、小袋から金貨1枚を取り出し、手渡す。

 手が触れ合ったその瞬間ーー

 屋台の店主が満足げにシュルシュルッと舌を出し、腸詰炒め三皿を寄越す。


「へい、お待ち! 美人に囲まれてるんだから、お客さんも幸せ者だな!」


 その言葉に息をつき、ミリネアとココに促す。


「さ、戻るぞ。みんなを待とう」


 二人の視線は柔らかく、そしてコクリと首肯する。

 だが、ふと端に誘導するように、ココが俺の腕を引っ張った。

 そして彼女が俺の耳元で囁く。


「閣下……その……我は………好きでして……」


 よく聞こえないが、ココの表情を感じ取り、問いかける。


「ココ……何か食べたいものでもあるのか?」


 「いえ、ただ、あのオレンジが気になって……」


「なんだ、果物か。なら、さっき通った果物屋台で買っていこうか?」


「いえ、……先程、閣下が頭に思い浮かべられていた……赤のあのインナー装備、

 やはりあの派手な色が、お好みなのでしょうか……?

 我はオレンジ色が好みでしてーー

 スポーツタイプを好みますゆえ、どうか……その……」


挿絵(By みてみん)


「……き、気づいてたのか……ココ……いや、そ、そんな……俺の頭の中身を?」


 戸惑う俺にミリネアから念話が届く。


《「ご主様ーー模擬戦の際、ココ殿の腹部の致命傷を癒した時、

 知らずにココ殿の血が、ご主様の掌に付いていたのかも、知れません。


 その後、ワイバーンのお肉を召し上がった際に、

 きっとココ殿の血が微量ですが、混じったのかと。


 ですが、ワタクシやミーア、コガラほどーー

 彼女はまだ、眷属化されていないようにも見えますね」》


 その念話に息を飲み、言葉を失う。

 確かに、抉れた腹を再生治癒魔法で治療した。

 ジュリの治癒魔法で出血は収まっていたはず。

 だが、ひとつ思い出した節がある。

 ココにお礼を言われた際、彼女の血まみれの敗れた軍服を俺が返した。

 きっとその時だ。やってしまった事に今更、後悔しても仕方ない。

 

 ミリネアは俺の思考を読みとり、返さずとも無言で頷く。

 一方のココは、この思考までは読めないようだ。

 ひとまずほっと息をつく。


 そんな中、ココの乙女心を察したミリネアが口を開く。

 

「ワタクシなど、普段、一人でいる時は、

 ブラを着けることさえ、致しませんので、

 インナー装備というものには、興味はございませんでした」


 「……ん?」


「ワタクシ自身が"お見せしたい”と思う相手もおりませんでしたから……

 それで十分だと考えていたのです」


 「お見せしたいって、なんだよッ!」


 思わず突っ込む俺に、微笑を浮かべるミリネアがお構いなしに続けた。


「……おそらくココ殿も、ワタクシと同じ気持ちなのでしょう。

 ワタクシたちはご主様に、

 人気高級ブランドの『Caravan・Climb』を身につけたーー

 その晴れ姿を、お目通しいただきたいのです。

 ご覧になった上で、どうか“お気に召した”と、お言葉を頂きたく……」


 「おいおいおいおいッ!」


 俺のツッコミが空を切る中、ココが赤面したまま、ミリネアと視線を交わす。


 ふたりの間に言葉はない。

 だが、深い共感を通わせたかのように小さく頷き合う。


「ご主様。どうぞ、ここはワタクシらにお任せくださいませ」


「そ、そうです……閣下。このような些事で、

 お時間を取らせてしまい申し訳ございません。しかし、どうか……」


 ふたりに挟まれ、柔らかい感触が否応なく俺の腕に押し寄せる。


 「いや、俺を巻き込むな! ココ、そんなくっついてこないで……!」


 もはや俺の声すら耳に届かず、ミリネアとココに両腕を拘束され、

 "ズンズン”と引きずられる形で向かう俺の顔はーー

 もはや秒読み、噴火寸前だ。


 理性が危うい俺の頭の中では、

 二人の意図を理解できない混乱だけが渦巻いていた。


 俺、無事に帰れるのか……これッ!


 人生で一番深く、息をついた日の俺だったーー。



「ククククク……ピ〜♪(ちゅづく!)」










 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )

 ブックマークや高評価も感謝です。



 




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― 新着の感想 ―
フォー!( ・`ω・´) ここに来て新タイトル! これは物語が一段深くなりましたね! 続きがますます楽しみです! それはそうと、ミリネアさん!なんてハレンチなんですかっ!(/ω・\)チラッ 全く、こ…
ゴクトーの立場の重さと、屋台通りの賑やかさと、美女二人に振り回される楽しさが詰まってました(* >ω<)b まず、ココが「大将閣下」と呼ぶ理由をきっちり説明するところが、彼女らしかったか、と。 軍…
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