新装備仕立て編 6 〜【コダマ・チチ・ドナイヤ】と衝撃の事実〜
アカリ、ミリネアの新装備お披露目ーー【ドナイヤ】Σ('◉⌓◉’)
「しかし、ルシーヌの末裔は、もの凄い魔力じゃな……
この天界にすら届きそうな膨大さじゃ。
パメラ・ルシーヌ・カルディアか……
彼女が攻撃魔法を学んでおらんでよかったわい」
下界から顔を上げる神シロが感嘆する。
その隣では聞き耳も持たずに、
神シロが開いたスクリーンに映し出されたーー
最新のインナーカタログを女神東雲が夢中でスクロールしていた。
「あなたはこれが好みかしら?」と手を止め微笑み、
「【モンデ・ミタラ・ドナイヤ】、これ、わたくしの好み!」と、
ポチッと買い物カゴに入れ、次に目を向ける。
「あら?この【ヒガツク・バラ・ドナイヤ】も捨てがたいわ……」
ぶつぶつと唇を動かす女神東雲に、頭を抱える神シロはさておき。
一方黒銀の目を下界に落としたままのトランザニヤは、
パメラの魔力の膨大さに息を飲み、ポツリと零す。
「まさか、ルシーヌの生まれ変わりじゃ……神代の大神が転生させた?」
ーーその頃ゴクトーは仲間たちの新たな装備にドギマギしつつも、
仕立て屋ジンロックで、和やかな空気に包まれていた。
◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇
「似合ってるのか……この装備?」
姿見を見ながらシャツに袖を通し、襟元を整え、
独り言ちる俺を他所に、
ミーアから解放されたアリーが獣耳をピクッと動かす。
”シャーーーッ!”
「ん? 猫か?」
いや、違う。それはカーテンが開く音だった。
大きな袖口に白い古代文字を宿した漆黒のローブを翻し、
アカリが姿を現した。
黒い扇子を軽やかに使い、
簪で纏めた桃色の髪からフローラルな香りを漂わせる。
その仕草は、どこまでも優雅で凛としていた。
白のレザーの丈が短いブルゾンに身を包み、
ミスリル鋼が散りばめられた黒いブラトップをチラリと覗かせる。
きっと彼女なりのココリドさんへの気遣いだろう。
その姿に一同が固唾を飲んで見守る中、
ジュリが姉の姿を見ながら口を開く。
「白のレザーミニスカートが、上品に見えて素敵よ。
物理攻撃上昇の付与が施されているーー
【ナイト・アタック・ドナイヤ】のセットか……わたしも買おうか悩む。
でも、やっぱり、黒のガーターと網タイツは、ネーの方が似合うわ!」
そう言って微笑みかけるジュリに、
アカリが「ありがとう、ジュリ」と答えながら、
腿丈の白のレザーブーツをコツ…と鳴らしながらこちらに歩み寄る。
アカリの姿は全体として上品でありながらも、
どこか挑戦的な色気も漂わせていた。
一方俺はアカリの姿に見惚れつつ、
目を逸らしながら姿見の前から離れようとしたーーその時。
「ダー様、その装備、とても素敵ですよ。私の騎士様?」と、
悪戯っぽい目を向けながら艶やかに唇を動かした。
そのアカリの言葉に息をのみ、
胸の『江戸っ子鼓動』がバクッと跳ねる。
即座に、心の中で「暴れるな!」と、
必死で『妄想図鑑』に押し込めては、みたものの。
しかし、動揺は隠しきれず、耳まで熱くなるのを感じた。
そんな俺にコガラからのコトバが飛んできた。
「あるじーー! おめめがいってるよぅーー!」
「コガラ……お前な」
睨む俺を他所にコガラとミーアが顔を見合わせ、
「「ククククク」」と声を噛み殺す。
その瞬間、一同からドッと笑い声が噴き上がった。
その声は天井のシーリングファンの回転に乗るかのように、
店の隅々まで広がっていく。
大きく息をつく俺の傍で、アカリが鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。
「ダー様、どうですか? 似合ってます?」
鏡越しにアカリが俺を見つめる。
「よ、良いんじゃないか……気に入ってるん……だろ?」
喉が詰まりながらも、なんとかアカリに答えた。
「ぅふんっ……良かった……」と、
彼女が淑やかだが、艶のある笑みを浮かべた。
一方でノビとパメラ、クロニクとミーア、ジュリとアリー。
この3組がお互いに装備を褒め合う中、
俺は隣に寄り添うアカリに気を取られていた。
そんな中、店主のジンロックも、
自分が仕立てたローブやジャケットを眺め、
「うん、うん」と頷きながら納得したように口元を緩める。
ーーその時。
シーリングファンに煽られた空気に、
爽やかなシトラスの香りが乗ってくる。
「お待たせいたしました、ご主様」
シャーッとカーテンを開ける音とともに現れたのは、
上品に編み込んだ長い緑髪を微かに風に靡かせ、こちらを覗くミリネア。
彼女が羽織る漆黒のローブの肩には、
【ロカベル】の森と精霊が描かれた徽章が、照明に反射してキラリと光る。
襟元から統一された茶色のレザーコルセットを上品に着こなし、
補助魔導具のロザリオの臍ピアスを鈍く光らせ、こちらへと歩み寄る。
その優雅な姿は、仲間たちの視線を留め、
息をする間も与えず、動きすらも止めてしまうほど。
そんな中、妹のミーアだけは口を開く。
「姉様のあの胸のベルトーーローブの上から装着する仕様で、
装飾には【ロカベル】の徽章をあしらったらしいの。
ココリドさん曰く……姉様は、まだ胸が成長してるって言うの。
『これ以上大きくならないようにしたい』と、
姉様がお願いして作ってもらった特注品なの……確か名前は……」
ミーアが言いかけたーーその瞬間、ミリネアの唇が動いた。
「成長抑制の付与を施してもらった【コダマ・チチ・ドナイヤ】よ。
一点もので、同じものは作れないと……」
その言葉にアカリとパメラの表情がガラリと変わった。
彼女たちの間にはメラメラとした炎が揺らめく。
これは俺の妄想眼ーー
”死線”の【シジマ・ビジョン】によるものなのだが。
一方で他のメンバーはミリネアに羨望の眼差しを向けていた。
さすが七つの大罪ーー Envyの【神の能力】 と、
言われるだけのことはある。
納得しながら、頭の中で電卓を弾く俺に、
ミリネアからの念話が顳顬に響く。
《「ご主様、若干、値が張ってしまいましたが……」》
彼女が真剣な眼差しで俺を見つめる。
《「値段は構わない……が」》
念話を返しながら彼女の威容に見惚れてしまう。
鮮やかな紫のインナーブラを揺らす胸元は、ボタンが二つ留められ、
その豊かな胸と腰の細さをさらに際立たせている。
腰のベルトには鞭を装備。
茶色レザーの超絶短いスカートからは、
一歩踏みだすたびに紫のレースがチラつく。
黒のガーターベルトに編みタイツは、
きっとココリドさんが付与をつけやすいのだろう。
茶色のレザーブーツが床を踏みしめ、硬音を鳴らす。
太腿まで革紐で編み上げられたブーツの仕様は、
ガーターベルトとの相性の良さをさらに感じさせる。
ミリネアが少し照れたように頬を朱らめ、俺の前に優雅に立つ。
その姿に”死線”すら焦点が定まらずにいた。
「凄い素敵」
「似合うにゃ!」
ジュリとアリーが声に出し賞賛を贈る中、
「ミリネア教授、似合ってるわん、その【コダマ】何ちゃら」
「したっけ、先生の方が……」
「目をしっかり開けんかァああああーー貴様ああああ!」
パメラとノビの師弟コンビが『恒例行事』で騒つく中、
クスッとした笑い声が漏れだし、店内に明るい色を添えた。
「やれやれ、でも楽しいよな、ほっとするよ」
俺は口元を緩ませながらつぶやく。
一方でミリネアが俺に軽く頭を下げると、
姿見の前に移動し、自分の姿を俺の目の前で確認する。
……わざとだろッ! 前屈みになるなッ!
もちろん口には出さない。
ミリネアが鏡越しに俺を見つめながら笑みを零し、
彼女の念話が脳内に艶やかに響く。
《「ふふ。見せたいのです。ご主様……1セット金貨4枚のーー
この紫のインナーセット、【ムラット・シタラ・ドナイヤ】を」》
その甘い声が脳内で囁かれた刹那、
胸の『江戸っ子鼓動』が今までにない勢いで、彼方へと走り去る。
だが、不思議だ。
今までなら動揺する俺は、なぜか冷静でいられた。
多分、意識の奥底で俺の眷属だと確信できる実感が、
沸々と溢れ始めたからだろう。
それはもちろんミーア、コガラに至っても同様だ。
ふと不思議な感覚に襲われた俺は意識を戻し、ミリネアに念話を返す。
《「それで、何セット欲しいんだ?」》
その瞬間、ミリネアの念話が頭に響く。
《「【ムラット・シタラ・ドナイヤ】も気に入ってしまい……
7セットは……欲しいのですが……
【コダマ・チチ・ドナイヤ】が、一点もので金貨1500枚と高価ですし……」》
遠慮がちの声色が、さらに拍車をかけるようにーー
彼女の顔色が曇り始めた。
《「金貨1500枚? それに金貨4枚の7セットだろ? 構わんさ」》
俺が念話で即答すると、ミリネアが少し驚いたように顔を上げた。
《「気にするな。俺に使ってくれた、【エルフの涙】に比べたら、安いもんだ」》
俺の念話にミリネアの表情がパァッと明るさを取り戻す。
山間の天気のようにミリネアの顔色がころころと変わる中、
突然、コガラからの念話が響く。
《「あるじーー コガラも、ひとがたになったらきれるーー?」》
《「……ああ……着れるさ」》
可愛らしい目を輝かせるコガラが七色の羽を広げた。
一方でミリネアのエメラルドの瞳が、姿見の鏡から俺を貫く。
「ありがとう……ございます。ご主様の黒いシャツも、とてもお似合いです」
彼女の控えめな声に照れくさくなり、
目をはぐらかして、思わずゴホンと咳払い。
そんな俺を鏡越しに見たミリネアが、ふっと柔らかい表情を浮かべた。
《「ご主様に仕立てていただいたこの装備を……大切に着させていただきます」》
ミリネアの念話が静かに伝わってくる。
その言葉と、嬉しそうな表情に俺は満足した。
もう内心は読まれてもいいか。
ミリネアにはな……。
思いながら苦笑していたーーその矢先。
”フィッティングルーム”のカーテンが勢いよく開いた。
漆黒のローブを纏い、ポロンとイブ、師団長たちが姿を現わす。
堂々とした風格で店内を歩くその姿は、異様な威圧感を放っていた。
娘のココリドも、どこかやりきった感を出しながらーー
口元を緩め、師団長たちの後に続く。
一気に店内が異国情緒たっぷりな香りとともに、
華やかかつ賑やかになった。
シーリングファンのカタカタとしたプロペラ音と、
ジャズの調べがかき消される中、こちらに歩み寄るポロンが口を開く。
「お兄ちゃん、いや、わたちの方がきっと年上だから、
呼び方、変えないとだけど……」
そう言って彼女がモジモジと口籠る。
「呼び方なんか気にしないが……ポロンって、歳は……」と言いかけたが、
アカリからの横槍が入った。
「ダー様、女性に年齢を聞くのは失礼ですから、私が教えますわ。
ポロンさんは80歳だそうです………見えませんよね。ふふ」
その言葉にーー
「「「「「「「「えええええええええええええ!!!!!!」」」」」」」と、
顔を赤くするポロンとアカリ以外、この場の全員が目を丸くし、
驚きの声を上げる中、
コガラも「ピピーーーー!!」と高い声で鳴いたーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
何気にゴクトーの装備もチラッと。【ドナイヤ】はまだ続きます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




