新生リリゴパノア編 4 〜エリナの心情と支部の受付嬢〜
国士無双様 再登場╰(*´︶`*)╯♡
天上の神々が笑みを浮かべながら下界の様子を窺う中、
その頃ゴクトーは、
冒険者クラン『リリゴパノア♾️』を立ち上げる意志を顕にする。
そして、今後の活動や登録についてーー
ギルド支部の応接室で談義していた。
◆(トランザニヤが語り部をつとめます)◆
「じゃあ……これからの予定だけど……」
エリナ・エイマスが静かに声を漏らす。
ゴクトーは既にクランを結成すると決めていた。
エリナが真剣な眼差しで口を開く。
「アタシたちは、『メデルザード王国』の城下街コンラッドにあるーー
ギルド本部にワイバーンの素材を届けに行かなきゃならないの。
その手続きが終わったら、本部に解散届を出して、
整理がついたら……ここに戻ってくる予定だけれど。
ーーそれまで待っててくれる?」
「ああ、エリナたちの都合を優先してくれ」
ゴクトーの答えにエリナが、照れたように微かに頬を染めた。
(こんなふうに“待っててほしい”なんて……
昔のアタシなら、絶対言えなかったわ)
彼女の想いが、心読スキルでゴクトーに伝わる。
見ているこちらまで思わず赤面してしまう。
一方でエリナが機嫌良さげに艶っぽい唇を光らせる。
「ふふ、ありがとう。メデルザードまで行くには、
アタシたちの従魔……ペガサスでも二日ほどかかるの。
……だから往復で五〜六日は見ておいて欲しい。
ビヨンドの村のギルド支部で落ち合うのはどう?」
そう言うと彼女が立ち上がり、ゴクトーの肩に乗るコガラを優しく撫でる。
その刹那、コガラが気持ちよさそうに眼を細めた。
「ほぅ……ペガサスが従魔なのか……まだ見たことがないな」
ゴクトーが興味深そうに尋ねると、エリナが嬉しそうに微笑む。
「アタシたち『Goddess』は、依頼をこなす際に、よく従魔を使うの。
ペガサスに乗って戦うその姿が、
御伽話のーー神々の戦いに似ているからが所以なの。
パーティをそう名付けたのも、それが理由よ」
エリナの表情には少し恥じらいが滲んでいたが、
どこか誇らしげでもあった。
「可愛いところもあるんだな。
ちょっと意外な一面ですけども?」
小声でつぶやくゴクトーはエリナに頷く。
「そうか……五、六日か。わかった。……待ってるよ」
ゴクトーの笑顔にエリナの顔と小麦色の肌が朱くなる。
その光景を目にしているエリナの妹たちもどこか嬉しそうだ。
下界を覗き込み、様子を窺うこちらまでーー
照れくさくなるのは、さておき。
「急いで戻ってくるわ。それで……戻ったらアタシもリリゴパノアの一員ね」
エリナの声には、どこか期待に満ちた響きがあった。
「ヨシ、クラン登録を先ずしよう」
ゴクトーの一声で、彼らは動き出した。
応接室から受付まで全員で移動すると、
ギルド支部にいる冒険者たちから、鋭い視線を集めた。
まるで、ゴクトーたちを「値踏み」するかのような視線が注がれる。
カウンター横の小さな仕切り扉がパタンと閉まり、
ハウゼン支部長が受付内に入るとすぐに口を開く。
「ゴクトー卿、カードを預からせてくれないか?」
「ああ」
ハウゼンに言われるがまま、
ゴクトーが黒縁の白金カードを差し出した。
一方でエリナが、副支部長のマリズと輸送について会話している。
恰幅の良い中年でーー
ゴクトーたちにダンジョンクリアの報酬をよこした人物だ。
相変わらず額に汗し、ハンカチで拭いながら何やら確認していたーー。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
様子を窺う中、ひとつずつ丁寧に、
エリナがワイバーンの素材を『アイテムボックス』に収めている。
なんだか一回り大きくなったような、
プルプルッと揺れる彼女の胸元に目が奪われる。
彼女の変化はそれだけではない。
どこか女性本来の”美しさ”も滲んでいる。
その動作が自然であるがゆえに、かえって色気を感じてしまう。
チラリと見えるレースに罪悪感を覚え、目をはぐらかす。
だがそれでも、視界の端にはその豊かな揺れが映り込む。
その瞬間ーーバクバクバクバク!
胸の『江戸っ子鼓動』が飛び跳ねた。
「……旦那、あの弾け方、まるで”ボヨンスライム”みたいですぜ!」
「お前なぁ、変なツッコミは入れるなッ!見られてるんだぞッ!」
俺は額に汗しながら、ため息をついた。
案の定ーー事実を知っている仲間たちが呆れた顔をする中、
エリナと妹たちに見られてなかったのが、唯一の救いだった。
ほっと息をついたーーその矢先。
ーーギィィ…… バタンッ!
ギルド支部の扉が開く。
仲間たちとともに目を向けると、
ベテランに感じるーー
傷だらけの装備の老獪な冒険者たちが、ドヤ顔で入ってくる。
その一方でピッカピカの装備を身につける、
初々しい冒険者パーティも入ってきた。
その度にギルド支部の風が違う色や香りを纏って、入れ替わった。
そんな中、アカリがポツリと零す。
「ダー様、私たちも、最初の一歩は、ここからでしたわね」
そう言ってどこか感慨に耽るような表情で、彼女の瞳が揺れる。
……最初にギルドを訪れた時、俺も“見る側”だった。
右も左もわからなくって、強い冒険者たちに憧れたっけな。
心の中に懐かしさが込み上げてくる。
「今は……その視線を俺が受ける立場に、なったってわけね」
俺は小声でつぶやきながら、ニヤリ。
受付でどこか誇らしげに手続きを待っていた。
ギルド支部内は、ガラの悪い冒険者たちの喧騒と罵声が飛び交っている。
この光景にも俺はだいぶ慣れてきた。
一方で、新人冒険者たちの初々しい態度を眺めながら思わず口元を緩める。
そんな中、ハウゼンが隣で控えていたココに、
登録用の羊皮紙を手渡す。
「イドヒさん、ココハナ・カムヨさんの登録をお願いできるかな?」
ハウゼンが手の空いている受付嬢へ向け、人当たりの良い笑みを浮かべた。
だが、微かに緊張を滲ませるココに、
その受付嬢があからさまに嫌そうな顔で愚痴を零す。
「えぇぇぇぇ……ッ! またリリゴパノアさん絡みの案件ですかぁ?」
ココを担当することになったのは、
極めて態度の悪い、ネクタイの色からして、新人らしき受付嬢。
名はーーイドヒ・ドイタ。
顔は良い。
だが、派手な金髪を指でネジネジと弄りながらこちらを睨む様は、
お世辞にも褒められたものではなかった。
イドヒ・ドイタ……。この名前、反対から読むと……あ。
口には出せず、俺はそっとその言葉を心の中に沈めた。
そんな中、ハウゼン支部長が美人の受付嬢――
以前から顔馴染みのコクシ・ムソーさんに俺のカードを差し出した。
「ムソーチーム長、パーティとクランの登録を頼むよ」
「かしこまりました、支部長」
かつて俺には眉間に皺を寄せていた彼女だが、
ハウゼンの言葉には従順に、花が綻ぶような笑みを浮かべる。
……俺の時とは、だいぶ態度が違うけども?
……そうか、受付嬢の中では、かなりの上役なのか。
彼女の制服には、周囲の受付嬢とは一線を画すーー
ゴールドの徽章が鈍く光っていた。
そんな中、コクシ・ムソーチーム長が、
煮え切らない態度を見せるイドヒ嬢に眉を上げる。
「イドヒさんっ! ぼやぼやしないッ!」
発破をかけるコクシ・ムソーさんも、イドヒ・ドイタ受付嬢には、
どうやら手を焼いているらしい。
一方でイドヒ・ドイタ嬢が、どこか不満げな顔で、俺をちら見してくる。
そうか……
師匠が『名は"態”を現す』って、よく言ってたっけ……。
心の中に深く沈める中、
彼女が向ける視線が妙におかしく、思わず笑ってしまった。
手続きを渋々進めるイドヒ・ドイタ嬢が息をつく。
「はい、これ!」
そう言いながら彼女が未だ緊張感が滲むココに、
鉄色の『F級』カードをふんわり手渡す。
そのつっけんどんの言葉とは裏腹に、
手渡す仕草は、どこか彼女の優しさが滲んでいた。
仲間たちがその様子に笑みを浮かべる最中、
「ゴクトー卿、少しここで、待っててもらえるかい?」
ふとハウゼンがそう告げると、ギルドの奥の執務室へと向かった。
暫くすると、ハウゼンが戻り、
真新しい『通信魔導具』を五つ俺に寄越す。
「これなら持ってるぞ」
「っえ?」
「ほら、これだろ?……何か違いがあるのか?」
自分の通信魔導具を見せながら首を傾げた。
「これを持っているとは……ゴクトー卿には驚かされるばかりだよ」
ハウゼンが、軽くため息をつきつつも、笑みを浮かべた。
「これはギルド本部や、アドリア公国ギルド庁との連絡用なんだ。
周波数を合わせれば、ゴクトー卿が使っている通信魔導具でもーー
繋がるはずだよ」
「そうなのか……」
「本部とギルド庁からの指示で渡すように言われているが……
ゴクトー卿以外のメンバーが、持っていた方が良いかもしれないね」
ハウゼンが仲間を見渡しながら苦笑いを浮かべた。
ふと様子を窺っていたジュリが悪戯っぽく微笑み、口を挟む。
「なら、わたしがおひとつ……」
エリナがそれを聞いて小さくつぶやく。
「アタシも欲しい」
「ちょっと待ってくれな」
俺は二人を制す。
「『Goddess』のリーダー、エイマスさんが解散するとなれば、
彼女も通信魔導具を返却する義務があるから……
どうだろう?これは彼女に渡しておくかい?」
「ああ、そうだな……それが良いかもしれない」
俺はハウゼンの言葉に頷きつつ、少し言い淀んでから続けた。
「それにしても……ハウゼン支部長、その……ゴクトー卿って呼ばれると、
何だか、むず痒いんだが……」
ハウゼンが、その言葉に微かに口元を緩ませ、茶化すように言った。
「でもね、もう立派な貴族ですから 人前では一応ね……わかったよ。
呼び方を変えるよ、ゴクトー軍総司令。ははははは」
言い終わると、大げさに笑い出した。
「……おいッ!」
顔に血が昇るのを感じつつ、諦めてーー
俺は通信魔導具をハウゼンに手渡した。
ハウゼンが"ニヤリ”と笑い、魔導端末にそれをスキャンさせる。
端末の画面に小さく光が点滅し、
プレシャス翁との周波数の横に、新たな周波数スイッチが追加された。
「これで準備完了だ。試してみよう」
ハウゼンが通信魔導具のスイッチを入れ、周波数のネジを捻る。
カチッ!
スイッチ音とともに彼が通信魔導具を口に寄せ、話しかけた。
「こちらアドリア公国ビヨンド支部長のハウゼンだ。聞こえますか?」
通信魔導具からノイズ混じりの声が返ってきた。
「ザ……聞こえるぞ。
こちらはギルド本部……ザ……副本部長のオーベルだ……オーヴァ」
「通信魔導具の接続確認だ。
こちらビヨンド支部、問題なし……オーヴァ」
「ザ……了解した。ところで、昨日話していた件だが……
そちらの支部からの『A級』と『S級』の推薦については議決した。
ノビ・フロッグ・ケロッグを『A級』に……ザ……
そして、ミーア・ロカベルを『S級』に昇格とする」
「ありがとう。本部に感謝します。オーヴァ」
「ザ……新たなクランの名前は『リリゴパノア♾️』で間違いないな?
……オーヴァ」
「その通りです……オーヴァ」
通信が切れると、ハウゼンが満足げに、
ニコニコとしながら通信魔導具を俺に差し出す。
その瞬間、聞いていたミーアが嬉しそうに、クロニクをじっと見つめる。
一方で音声を聞いていたノビが涙ながらに口を開く。
「……オラ、本当は無理だって思っでた……
したっけ、『先生が諦めるな』っで、言っでくれたから……
先生! オラ、学院の卒業前に、先生のおかけで『A級』にもなれたんさ!」
興奮したノビが、嬉しさを抑えきれずーー
訛り混じりに唾を飛ばし、声を張り上げる。
顔も涙と鼻水でグシャグシャだ。
そんな中、パメラが柔らかな笑みを浮かべる。
「……とうとうかぁ……この日がこんなに早く来るとは……
良かったわねん」
彼女がどこか感慨深い表情で言の葉を落とし、さらに唇を動かす。
「まぁ、貴様もそれなりに……役には立っていたからな」
そのパメラの言葉には、優しさが滲んでいた。
「おおおおお!違うパターンなんさ!」
そう言ってノビが戯けて見せた。
そんなやり取りの一方で、クロニクがミーアに一言。
「ミーア姫、これでオイラと同じ『S級』だ……な?」
少し照れたような声色で話しかける。
だが、ミーアを見るクロニクの優しさが滲むその目には、
どこか誇らしささえ感じた。
クロニクのその言葉に、
ミーアが『BB(バスト・バスター級)』とも呼ばれるようなーー
胸を抑えつつ、俺の方を見て頬を朱らめる。
「うちがミリネア姉様と同じ『S級』になれるなんて……
リーダーに揉まれた甲斐があったわ……」
「おいおいおいおいおい!」
ツッコミを入れたその瞬間、
クロニクが、羨ましげに俺をチラリと見やり、
片眉を大きくつり上げた。
さらに〝羨ましいです〟と言わんばかりのオッドアイをカッと見開く。
無言の訴えーーそこには密かなる敵意が込められていた。
「睨むなああああーー!」
額から滲む汗を拭いながら思わず叫んでしまった。
周囲が騒つき、俺に視線が集まる中、
イブからハウゼンが白金の冒険者カードを受け取る。
「イブ姫様は、リリゴパノアのパーティに加入っと」
そう言ってどこかバツが悪そうなハウゼンが、
カードを『魔導端末』にスキャンし、何かを打ち込む。
すると、白金のカードに黒い縁が付け加わった。
「これが黒縁白金カードです。リリゴパノアの一員になった証ですね」
「うむ。妾は満足じゃ」
ハウゼンからカードを受け取ったイブがそれを眺める。
その笑顔から、言葉にしなくても十分に嬉しい様子が伝わった。
手続きが終わり、
ハウゼンが穏やかな微笑みを浮かべ、言葉をかける。
「ゴクトー軍総司令……
無事に『リリゴパノア♾️』のクラン登録が完了したようだよ。
代表者はもちろん君だ。
これからも、もしビヨンドの村に何かあれば……よろしく頼む」
「ピ〜〜♪」
ハウゼンとコガラの声に込められた信頼と期待の重みに、
俺はほんの少し肩に力が入るのを感じたーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
このエピソードは仲良くしていただいております、
『国士無双』様をモデルにしたーー受付嬢に再び特別友情出演していただきました。
Xアカウント @13_FSI
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=ファンタジアシリーズ=
『第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜』
作者:国士無双様
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