模擬戦編 7 〜決着〜
ミーアVS メルル どう決着がつくのか ご覧くださいΣ('◉⌓◉’)
「【ポルダゥン・パープル・レイン】!」
ーー師団長メルル・ボインが杖を振り、詠唱。
メルルの魔法の矢、七本が紫炎を纏って空中に現れた。
その矢が全てミーアに向かって降り注がれる。
「ぐっ! はぅ!」
降り注ぐ七本全ての矢は避けきれず、
ミーアの肩に二本の矢が刺さった。
その場に膝をつく彼女。
痛みに耐えながらも、喉の奥から絞り出す。
「まだ……終わってない……!
八支族最強であるーーロカベルの奥義をうちは、ここで使う。
【ヤミカ:°イナエミ】……【ヤミカ:°イナエミ】……
目には見えない神の矢は二本番えた……。
でも、放つにはーー
この”龍黒弓”に頼るしかない!
お願いよ! ”龍黒弓”力を貸して!」
まるで神に懇願するかの如く、
ミーアが矢を番えず、最後の力を振り絞り、
黒い弓の弦を引き、バーンッと放った。
その瞬間ーーゴクトーの頭の中にある言葉が浮かんだ。
『神代魔法を心で読むんだ』
その低く響く声にゴクトーは聞き覚えがあった。
彼の頭を掠める記憶ーー
世界樹の森でミリネアに初めて出会った時の、あの低い声。
夢か妄想か、はたまた、幻っだったような感覚は、
今でも彼の頭から離れないでいた。
動揺を抑えながらも、彼が胸中で紡ぐ。
「……天啓を与えし、神代の大神よ……
その比類なき根源を、その弓と矢に宿し給えーー!」
ゴクトーの「心紡ぎ」が終わったーーその刹那。
黒い弓が黒光に閃き、
弦が弾かれたと同時に、凄まじい稲光が頭上から注がれる。
闘技場に轟く雷鳴。
稲光が止んだーーその時。
メルルの背中には金色に輝く矢が二本刺さり、
“バタンッ”とその場に倒れ込む。
メルルが地に伏すと同時に、
骸骨魔導士の姿が紫の炎に包まれ、燃えるように消えていった。
よろけるミーアがヘナヘナと力無く座り込む。
痛みに顔を歪ませる彼女が固有魔法ーー
【ロカベル】をつぶやく。
「これで痛みは……【ン:ラシカ:°:タレユネム】……」
詠唱したーーその瞬間。
黄緑色に光る、古代文字【ロカベル】を刻む魔法陣が浮かんだ。
仲間たちが固唾を飲んで見守る中、
「やめ! 両者引き分け!!」
エリナの澄んだ声が闘技場に響く。
両陣営から皆が一斉に駆け寄ったーー。
◆(天上の三柱)◆
この様子を眺めていた女神東雲が口火を切る。
「トランザニヤ様、ちょっと力を貸すぎじゃありませんこと?」
その言葉に黒銀の眼を逸らす、
トランザニヤが「ヒュ〜♪」と口笛まで鳴らし、白を切る。
一方で神シロが愚痴を零す。
「いやはや、なんともーーお主には困ったもんじゃ。
またワシが、神代の大神に叱られるんじゃぞ!」
「ししし」
口元を窄めながら笑うトランザニヤが、
どこ吹く風といった表情で、再び下界を眺めた。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
それぞれの陣営が傷ついた二人を気遣い、
張り詰めていた空気が少しだけ緩む。
「ミーア姫! しっかりしろ!」
「ミーア!」
「メルル…! 立てる?」
クロニクとミリネア、双子の姉マルルがそれぞれ声をかける。
(やはり、どちらも侮れないわ……
でも、これで彼女たちの本当の実力が見えた気がするわ)
穏やかではないエリナの心中が”心読”スキルで俺に伝わる。
戦いの余韻がまだ冷めきらぬ中、
クロニクがミーアを抱え、端の方へ移る。
そして彼女を優しく降ろした。
「ミーア姫、大丈夫か?」
クロニクがミーアの肩に刺さった矢を慎重に掴む。
”ズッズッ!”
力を込めてゆっくり引き抜く。
「アーンッ!」
思わず漏れたミーアの声に、クロニクの顔が赤く染まった。
俺も何を隠そうーーそのミーアの艶やかな柔らかい悲鳴に非常に弱い。
バクバク暴れる『江戸っ子鼓動』を抑えつつ、平静を装う。
一方で意識が飛びそうな表情のミーアが、必死に喉奥から声を絞り出す。
「はぁ…はぁ…ミリネア姉様、クロニク皇子、うち……勝てなかった」
そう言ってうなだれるミーアに、
ミリネアが優しく微笑みながら頭を撫でた。
「ミーア、よく頑張りましたね」
クロニクも落ち込む彼女を励ますように、言葉を添える。
「ミーア姫、二対一だったんだ。
それでこれだけ戦えたのなら、実質勝ちも同然さ!」
ミリネアとクロニクの労いに、
ミーアが肩を震わせ、どこか救われたような表情を浮かべた。
その横で心配そうに様子を見ていたノビが、
珍しく空気を読んで口を開く。
「したっけ、一人で師団長二人と闘ってーー
一勝一敗なんて、めちゃくちゃ凄いんさ!」
ノビの熱い語りに、仲間たちもニッコリしながら頷く。
その様子に俺の胸にも熱いものが込み上げてくる。
一方、闘技場でメルルの背中に刺さった矢を見て、
マルルが膝をつき、悔しさなのかーー
自身のスカートの裾をギュッと握りしめ、
矢を抜き取っていた。
その光景を見てイブがポツリ。
「マルルや、黒に水玉とは、なかなか可愛い趣味じゃのぅ」
呑気なイブの言葉にマルルが一瞬だけ頬を染めるも、
そのままの姿勢で二本目の矢を引き抜いた。
次の瞬間、闘技場に澄んだ声が響き渡る。
「【エリア・エクストラ・ヒール】!」
ジュリの詠唱とともに、紫色の魔法陣から淡い緑の光が降り注ぎ、
ミーアとメルルを包み込む。
時を巻き戻すかのように、
ミーアとメルルの傷が塞がり、再生されていく。
見事な範囲治癒魔法を施したジュリに、イブが向き直り声をかける。
「助かった……そう言えば、失礼ながら、そなたの名をまだ聞いておらぬな」
「ジュリ・ミシロです……イブ姫様」
「イブで良いぞぇ。妾もジュリリンと呼ばせてもらうゆえ」
「ふふ、いいわ。それなら教えて!
イブ、さっきのあの魔法って召喚魔法なの?」
「その通りじゃ。妾らダークエルフ固有の【闇召喚魔法】というものじゃな」
その言葉に、ジュリが一瞬瞳を輝かせるも、すぐに俯く。
「そっか……ダークエルフでない、わたしには使えないんだ」
残念そうに落とすその言葉にイブがジュリの肩を軽く叩いて微笑む。
「落胆することはないぞぇ。
【闇】があるように、他にもーー
【光】【雷】【火】【水】【風】【土】といった召喚魔法があると聞く。
ジュリリンにも、使えるものがあるやもしれぬ」
「そうなんだ……」
イブの温かい言葉にジュリが小さく頷き、表情を綻ばせた丁度の頃。
メルルが意識を取り戻し、弱々しい声を漏らす。
「姫様……」
「よく頑張ったぞぇ、メルル」
イブが微笑みかけると、メルルの頬が少しだけ緩む。
姉マルルが妹メルルを支え、”ボインボイン”と胸を揺らし、
突き上げ式テントへと運んでいく。
その光景にしばし目を奪われる俺はさておき。
場が落ち着く中、エリナが闘技場の中央に立ち、
両陣営の様子を確認して声を張る。
「では、再開します! 中堅の方、前へ!」
「出番かにゃ?」
闘技場には新たな闘志が静かに芽生えていた。
俺の肩のに乗るコガラが、
羽をパタつかせ「ピィ(続く)」と鳴いたーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




