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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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模擬戦編 6 〜圧倒的な力の差〜



 勝ち残ったミーアの次の闘いは、果たして? Σ('◉⌓◉’)

 


 下界を眺めながら神シロが感嘆して零す。


 「さすが八支族最強の【ロカベル】じゃわい」


 その言葉に顔を上げる女神東雲がほっと胸を撫で下ろす。


 一方で、黒銀の瞳でじっと下界を眺めるーー

 トランザニヤがポツリと落とす。


「あの龍黒弓がミーアに、呼応し始めたな……」




 ーーその頃、ギルド支部の鍛錬場では、

 敗北したキキがイブの錬金魔術により、

 ミーアが放った黒矢の麻痺毒から救われた直後だった。





 ◆(トランザニヤが語り部をつとめます)◆





 



「ミーア、大丈夫か? 無理するなよ。

 魔力(マナ)を使いすぎると、動けなくなるぞ」


 ゴクトーが顔色の悪いミーアに声をかける。

 

 ハイエルフであるミーアの魔力量がいくら膨大でも、やはり限界はくる。

 陣営から駆けつけたパメラが察して、補助魔法を唱えた。


「【マジック・ヒーリー】!」

 

 真紅の魔法陣の淡い赤い光がミーアを包み込む。

 その刹那、彼女の身体から緑色の魔力が溢れてくる。

 

 その様子にパメラが眦を下げながら満足げに尋ねる。


「ミーアちゃん、これでどうかしらん?」


「パメラさん、ありがとう!」


 そう答えたミーアも表情を柔らかく和ませる。


「ふふ、あたい、模擬戦には出ないから、これくらいはお安い御用よ」


 そう言ってパメラがパチッとウィンクを飛ばすと、

 ミーアがさらにほっとした表情を浮かべた。


 そんな中、ゴクトーがパメラに魔力回復薬を渡し、

 彼女が受け取ると小さく頷く。


 一方、クロニクが心配そうな表情でミーアを見つめる中、

 イブが感心したように漏らす。


「ミーア姫、ロカベルの魔法は素晴らしいのぅ」


 その言葉に睫毛を伏せ、申し訳なさそうにミーアが応える。


「でも……咄嗟に唱えちゃったから、うち、ちょっと卑怯だったかも……」


 ミーアの表情が曇るのを見かねたクロニクが口を挟む。


「ミーア姫、戦闘に卑怯も正々堂々もないだろう。

 この模擬戦のルールならば、生き残ることが大事なんだから」


 そう言って真剣な表情を見せるクロニクにイブも頷く。


「その通りじゃ、クロニク皇子。

 姿を消す術を使う者などこの世には、ぎょうさんおるゆぇ。

 そう言えば、昔聞いたことがあるのじゃ。


 『ヤマト』の国には『シノビ』や『クノイチ』というーー

 ギフトを持つ一族がいるとか…… そうじゃろぅ、アカリン?」


 最新式テントから出てきた、アカリにイブがパチリとウィンク。

 唐突に話を振られたアカリが言葉を濁す。


「ええ、まぁ…」


 まだ顔色が冴えないが彼女が軽く頷いた。

 その傍では、アカリを支えていたアリーが手を離し、

 コガラを優しく撫でる。


 他方、イブの陣営では、

 キキが両肩をメルルとマルルの双子ボインに支えられながら、

 突き上げ式テントへと運ばれていく。


 その姿を見届けるゴクトーに、アカリが声をかける。


「ダー様、今のところどちらが優勢ですか?」


 そう言ってゴクトーの顔を覗く。


「ミーアの次の対戦相手次第だが……現状は五分五分って、ところかな」


 その返答を聞き、アカリが微笑む。

 ふと二人に近づくパメラの薔薇のようなフローラルな香りが、

 ゴクトーの鼻を擽ぐる。


「ゴクちゃん♪、ミーアちゃんに任せて……やっぱり良かったわねん…」


 そう言って、『爆弾(ダイナマイト)』の胸をピタリとゴクトーの背中に押し付けた。

 近すぎる距離にゴクトーの顔は真っ赤になった。


挿絵(By みてみん)


 

「もはやこれ以上は語るまい。説明はいらないだろう」


 下界から顔を上げ、苦々しい表情を見せるトランザニヤだったーー。


 


 


 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇




 場に流れる緊張感が違うものに変わりつつあるーーそんな折。

 エリナがどこか物欲しそうな視線で、じっと見つめる。


「エ、エリナ、ど、どうした? 審判だけじゃ……物足りないのか?」


「い、いえ!そ、そうじゃないの。ただ……を……なんでもないわ」


「ん? なんだ? ……を……って?」


 動揺しながら『……を』 が気になって問いかけると、

 エリナがバッと顔を真っ赤にして飛び避けた。



 挿絵(By みてみん)


 ふわっと持ち上がるスカートが捲れ、赤と黒の柄が目に飛び込む。

 

「っわ!」

 

 その瞬間、顔から火が出るかと思った。

 『江戸っ子鼓動』が、派手に暴れ出すのを必死で制する。


 「……見た、でしょ」

 

 俯いたままのエリナから、掠れた声が漏れる。

 咎めるような言葉とは裏腹に、彼女がその場から一歩も動こうとしない。

 

 それどころか、上目遣いに俺の様子を伺うその瞳には、

 自分の「秘め事」が俺に届いたことを確かめ、

 密かに楽しんでいるような、そんな甘い熱が混じっていた。


 潤んだ瞳が、羞恥に震えながらも、

 俺の動揺を喜ぶかのようにーー

 どこか優越感に満たされているような笑みを溢す。


 俺は耳まで熱くなるのを感じつつ、動揺を抑える。

 だが、俺の妄想眼”死線”は無情だ。

 瞳に焼き付いた「赤と黒」が沸騰する血潮と同調(シンクロ)し、

 網膜の裏で”死線”が、いつまでもチカチカと暴れ続けていた。


 そんな俺を他所に、柔らかい風が舞い込み、

 闘技場の土埃が微かに舞う中ーー

 エリナが顔を朱らめながら宣言する。


「そ、それより、次の対戦を始めます!」

 

 その澄んだ声が響き渡る。

 静かだった闘技場が再び騒つき始めた。


「メルル、ミーア姫は消える【結界魔法】を使うけど、頑張って!」


 大剣を背負うココがそう呼びかけると、

 ボインのメルルが真剣な顔で頷いた。


「ええ、ココさん。見ててください!マルル姉さん、行ってくるね」


「頑張りなさい、メルル」


 双子の姉マルルも、妹の背中をポンッと軽く叩き、エールを送る。

 その様子に、ニンマリするイブが零す。


「その”たわわな胸”を貸すつもりで、臨めば良いのじゃ」


「はい、姫様!メルル・ボイン、この胸を貸すつもりで頑張ります!」


 メルルがボインを揺らしながら闘技場の中央へ進む。



 ししし……名前通りだ……ってか、今はそれどころじゃない。

 ……集中、集中。


 

 胸中の奥底に沈め、気を取り直し、我に返ったその矢先。

 腕を組み、鬼のような形相でミリネアが俺を見据える。



 今、ボインに意識がいってたの……気付かれた?

 また、思考を勝手に読んだのかッ! ?


 

 不安は的中。ミリネアの低い声が顳顬(こめかみ)に響いてくる。


《「大きさなら負けてはおりませんが?……ね、ご主様?」》


《「 読むなあああああ!」》


 思わず涙目になり、俺はその場から逃げ出して、がむしゃらに走り出した。


「ゴクどーさん?」


 なぜか空気を読めないノビも俺に続いてついてくる。

 闘技場の周囲を二人でぐるぐると回り始めた。


 イブや師団長たちが腹を抱えて笑う中、


「……ワタクシからは逃れませんわよ! ご主様!」


 音もなく追いついてきたミリネアに捕まり、俺は観念した。

 ここで『羅刹猟師』のスキルを使うのは、ずるい。


 一方で、目の前を通りすぎようとしたノビの首をパメラが掴む。

 その瞬間、「ゲコッ」とノビが喉を鳴らした。


「貴様ああああああ!大人しくここで見ていろ!」


 パメラの怒号に俺とノビが互いに顔を見合わせ、苦笑する。

 闘技場には笑い声が広がり、和やかな空気に包まれた。


 そんな中、審判のエリナが憮然としながら、呆れたように零す。

 

「勝ち残ったミーア姫と、対戦するイブ姫様側の三将は前へ!」

 

 落ち着きを取り戻した場に緊張感が漂う中、

 ミーアが少し頬を朱らめながらクロニクに微笑む。


「行ってくるね。皇子!」

 

 その言葉と表情に動揺しつつ、クロニクが応える。


「無理はするんじゃないぞ!」


 コクリと頷くミーアが闘技場の中心に歩み寄る。

 ミーアとメルルがお互いに軽く礼を取ったーーその瞬間。


 「始め!」


 エリナの掛け声と同時に、メルルが杖を握りしめて唱え始める。

 すると闘技場の風がピタリと止まった。


「深淵に眠りし古の契約よ、

 我が血の誓いを糧とし、闇の帳を裂き現世へと顕現せよ。


 黄昏の鐘の代わりに杖が響くこの刻、命亡き者よ、我が名の下に従え!


 黒炎を纏いし叡智の君、無限の虚無より来たれ!


 ーー出でよ、深淵の魔導士!


【ハップル・ポルタ・ダークマジシャン】!」


 杖で闘技場の地面をトントンと高い音を奏で叩くと、

 黒紫の輝きを放つ【魔法陣】が、彼女の足元に広がり、

 空気が一瞬で張り詰めた。


 その光景を見つめる仲間たちも息を呑む。


 やがて魔法陣の中心から、

 黒いローブに黒炎を纏ったーー

『骸骨の魔導士』がゆっくりと浮かび上がった。


「お呼びですか、我が主人よ」


 骸骨の魔導士の低い声が響く。



挿絵(By みてみん)


 

 その不気味な登場に「ぅわわぁーーー!」と、

 ノビが目を丸くしながら尻もちをつく一方で。

 

「闇属性の召喚……

 まさか、メルルがそんなギフトを持っていたとは……」


 審判のエリナも唇をそう動かし、

 現れた骸骨魔導士に驚嘆を禁じ得ないようだ。


 一方で周囲の騒ぎを他所にイブがポツリ。


「ふふ……ミーア姫も驚いた顔をしておるのぅ」

 

 小さく漏らし薄く笑みを浮かべていた。

 俺はミリネアに念話で問いかける。


《「ミリネア、あれは?」》


《「ご主様、メルル殿のギフトは『召喚魔導士』かと、思われます」》


《「やはりそうか…… これが本物の『召喚魔導士』か……」》

 

 握る手に汗を掻きながら眉を絞り、戦況を見つめる。




 そんな中、メルルが骸骨魔導士に命を下す。


「殺してはダメよ!補助だけして!」


「御意」


 骸骨の魔導士が恭しく一礼し、指示に従い構えを取る。


 その一瞬を見逃さず、ミーアが弓に四本の矢をかけて引き絞った。


「姉様が教えてくれたーーこの技!

【ニグスヨ:°テレオタ°:タナァ】!」


 詠唱とともに紫炎を纏った四本の矢が放たれた。

 骸骨魔導士とメルル双方二手に別かれ、二本ずつの矢が飛んでいく。


 その軌道は正確で、誰の目にも命中は確実に思えた。


 だがーー。


「【Cold・Stop】!!」


 骸骨魔導士が冷静に低い声で詠唱すると、紫炎を纏う矢が弾かれ、

 ピキッとした僅かな音を残し、空中で凍りついて停止。

 そのまま落下してガシャンと粉砕。


 挿絵(By みてみん)

 

 ーー青白い氷の粒子が闘技場に霧散した。


「そんな……!」



 番える矢まで凍りつくその魔法に、

 焦りの色を隠せないミーアが、すぐに次の矢を番える。


「【イサナ:°ニシ】!」


 【ロカベル】の固有魔法を唱え、二本の矢が弾丸のように射出された。


 しかし、それに対する骸骨魔導士の対応は一瞬。


「【Wall・Flame】!」


 ボォォォッ༄༅༄༅༄!


 炎の壁が骸骨魔導士とメルルを包むように現れ、

 矢はその中で燃え尽きて消えた。


 一方、メルルの唇が艶やな動きを見せる。


「ふふ……でも時間は限られてる。魔力を使い切る前に決着をーー

 このまま、押し切ってみせる!」


 ミーアの攻撃がことごとく防がれる様子を見て、

 メルルが口元に笑みを含ませる。


 勢いに乗るかの如くーーメルルが杖を振り、


「【ポルダゥン・パープル・レイン】!」と詠唱。


 するとメルルの魔法の矢、七本が紫炎を纏って空中に現れた。

 その矢が全てミーアに向かって降り注がれる。


「二対一…… このままだとーーうちが負ける……!」


 ミーアの表情には焦りが滲む。

 だが彼女が覚悟を決めたように叫ぶ。


「これでうちの姿は、読まれない!【ンラシカイ:°キオオ:ノチウ】!」


 彼女の指先から淡い青白い光の粒が閃き、周囲の光が歪む。

 次の瞬間、ミーアの姿が掻き消えた。

 彼女がロカベルの魔法による【結界】で姿を隠す。


 しかし次の瞬間ーー。


「【An・Wrap】!!」


 骸骨魔導士が即座に吐くように唱える。


 パリンッ!


 【結界】が音を立てて砕け散り、


 「ここまで、圧倒的だなんて……」

 

 顔面蒼白のミーアの姿が顕になったーー。






 








 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )

 ロカベルの魔法の秘密に気づいた方は凄い! ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




 




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― 新着の感想 ―
ミーアちゃん、前回に続き今回も頑張ってるのに! このままじゃ!(´;ω;`) ますます目が離せません! ミーアちゃんがんばれー!(p`・ω・´q)
ミーアが前回の勝利で輝いたのに、今回は通じない展開が刺さりました。 攻撃も結界も読まれて、ひとつずつ手を潰されていく感じも好きでした。 焦りながら矢を番えるミーアが健気で、応援したくなりますp(^_^…
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