模擬戦編 6 〜圧倒的な力の差〜
勝ち残ったミーアの次の闘いは、果たして? Σ('◉⌓◉’)
下界を眺めながら神シロが感嘆して零す。
「さすが八支族最強の【ロカベル】じゃわい」
その言葉に顔を上げる女神東雲がほっと胸を撫で下ろす。
一方で、黒銀の瞳でじっと下界を眺めるーー
トランザニヤがポツリと落とす。
「あの龍黒弓がミーアに、呼応し始めたな……」
ーーその頃、ギルド支部の鍛錬場では、
敗北したキキがイブの錬金魔術により、
ミーアが放った黒矢の麻痺毒から救われた直後だった。
◆(トランザニヤが語り部をつとめます)◆
「ミーア、大丈夫か? 無理するなよ。
魔力を使いすぎると、動けなくなるぞ」
ゴクトーが顔色の悪いミーアに声をかける。
ハイエルフであるミーアの魔力量がいくら膨大でも、やはり限界はくる。
陣営から駆けつけたパメラが察して、補助魔法を唱えた。
「【マジック・ヒーリー】!」
真紅の魔法陣の淡い赤い光がミーアを包み込む。
その刹那、彼女の身体から緑色の魔力が溢れてくる。
その様子にパメラが眦を下げながら満足げに尋ねる。
「ミーアちゃん、これでどうかしらん?」
「パメラさん、ありがとう!」
そう答えたミーアも表情を柔らかく和ませる。
「ふふ、あたい、模擬戦には出ないから、これくらいはお安い御用よ」
そう言ってパメラがパチッとウィンクを飛ばすと、
ミーアがさらにほっとした表情を浮かべた。
そんな中、ゴクトーがパメラに魔力回復薬を渡し、
彼女が受け取ると小さく頷く。
一方、クロニクが心配そうな表情でミーアを見つめる中、
イブが感心したように漏らす。
「ミーア姫、ロカベルの魔法は素晴らしいのぅ」
その言葉に睫毛を伏せ、申し訳なさそうにミーアが応える。
「でも……咄嗟に唱えちゃったから、うち、ちょっと卑怯だったかも……」
ミーアの表情が曇るのを見かねたクロニクが口を挟む。
「ミーア姫、戦闘に卑怯も正々堂々もないだろう。
この模擬戦のルールならば、生き残ることが大事なんだから」
そう言って真剣な表情を見せるクロニクにイブも頷く。
「その通りじゃ、クロニク皇子。
姿を消す術を使う者などこの世には、ぎょうさんおるゆぇ。
そう言えば、昔聞いたことがあるのじゃ。
『ヤマト』の国には『シノビ』や『クノイチ』というーー
ギフトを持つ一族がいるとか…… そうじゃろぅ、アカリン?」
最新式テントから出てきた、アカリにイブがパチリとウィンク。
唐突に話を振られたアカリが言葉を濁す。
「ええ、まぁ…」
まだ顔色が冴えないが彼女が軽く頷いた。
その傍では、アカリを支えていたアリーが手を離し、
コガラを優しく撫でる。
他方、イブの陣営では、
キキが両肩をメルルとマルルの双子ボインに支えられながら、
突き上げ式テントへと運ばれていく。
その姿を見届けるゴクトーに、アカリが声をかける。
「ダー様、今のところどちらが優勢ですか?」
そう言ってゴクトーの顔を覗く。
「ミーアの次の対戦相手次第だが……現状は五分五分って、ところかな」
その返答を聞き、アカリが微笑む。
ふと二人に近づくパメラの薔薇のようなフローラルな香りが、
ゴクトーの鼻を擽ぐる。
「ゴクちゃん♪、ミーアちゃんに任せて……やっぱり良かったわねん…」
そう言って、『爆弾』の胸をピタリとゴクトーの背中に押し付けた。
近すぎる距離にゴクトーの顔は真っ赤になった。
「もはやこれ以上は語るまい。説明はいらないだろう」
下界から顔を上げ、苦々しい表情を見せるトランザニヤだったーー。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
場に流れる緊張感が違うものに変わりつつあるーーそんな折。
エリナがどこか物欲しそうな視線で、じっと見つめる。
「エ、エリナ、ど、どうした? 審判だけじゃ……物足りないのか?」
「い、いえ!そ、そうじゃないの。ただ……を……なんでもないわ」
「ん? なんだ? ……を……って?」
動揺しながら『……を』 が気になって問いかけると、
エリナがバッと顔を真っ赤にして飛び避けた。
ふわっと持ち上がるスカートが捲れ、赤と黒の柄が目に飛び込む。
「っわ!」
その瞬間、顔から火が出るかと思った。
『江戸っ子鼓動』が、派手に暴れ出すのを必死で制する。
「……見た、でしょ」
俯いたままのエリナから、掠れた声が漏れる。
咎めるような言葉とは裏腹に、彼女がその場から一歩も動こうとしない。
それどころか、上目遣いに俺の様子を伺うその瞳には、
自分の「秘め事」が俺に届いたことを確かめ、
密かに楽しんでいるような、そんな甘い熱が混じっていた。
潤んだ瞳が、羞恥に震えながらも、
俺の動揺を喜ぶかのようにーー
どこか優越感に満たされているような笑みを溢す。
俺は耳まで熱くなるのを感じつつ、動揺を抑える。
だが、俺の妄想眼”死線”は無情だ。
瞳に焼き付いた「赤と黒」が沸騰する血潮と同調し、
網膜の裏で”死線”が、いつまでもチカチカと暴れ続けていた。
そんな俺を他所に、柔らかい風が舞い込み、
闘技場の土埃が微かに舞う中ーー
エリナが顔を朱らめながら宣言する。
「そ、それより、次の対戦を始めます!」
その澄んだ声が響き渡る。
静かだった闘技場が再び騒つき始めた。
「メルル、ミーア姫は消える【結界魔法】を使うけど、頑張って!」
大剣を背負うココがそう呼びかけると、
ボインのメルルが真剣な顔で頷いた。
「ええ、ココさん。見ててください!マルル姉さん、行ってくるね」
「頑張りなさい、メルル」
双子の姉マルルも、妹の背中をポンッと軽く叩き、エールを送る。
その様子に、ニンマリするイブが零す。
「その”たわわな胸”を貸すつもりで、臨めば良いのじゃ」
「はい、姫様!メルル・ボイン、この胸を貸すつもりで頑張ります!」
メルルがボインを揺らしながら闘技場の中央へ進む。
ししし……名前通りだ……ってか、今はそれどころじゃない。
……集中、集中。
胸中の奥底に沈め、気を取り直し、我に返ったその矢先。
腕を組み、鬼のような形相でミリネアが俺を見据える。
今、ボインに意識がいってたの……気付かれた?
また、思考を勝手に読んだのかッ! ?
不安は的中。ミリネアの低い声が顳顬に響いてくる。
《「大きさなら負けてはおりませんが?……ね、ご主様?」》
《「 読むなあああああ!」》
思わず涙目になり、俺はその場から逃げ出して、がむしゃらに走り出した。
「ゴクどーさん?」
なぜか空気を読めないノビも俺に続いてついてくる。
闘技場の周囲を二人でぐるぐると回り始めた。
イブや師団長たちが腹を抱えて笑う中、
「……ワタクシからは逃れませんわよ! ご主様!」
音もなく追いついてきたミリネアに捕まり、俺は観念した。
ここで『羅刹猟師』のスキルを使うのは、ずるい。
一方で、目の前を通りすぎようとしたノビの首をパメラが掴む。
その瞬間、「ゲコッ」とノビが喉を鳴らした。
「貴様ああああああ!大人しくここで見ていろ!」
パメラの怒号に俺とノビが互いに顔を見合わせ、苦笑する。
闘技場には笑い声が広がり、和やかな空気に包まれた。
そんな中、審判のエリナが憮然としながら、呆れたように零す。
「勝ち残ったミーア姫と、対戦するイブ姫様側の三将は前へ!」
落ち着きを取り戻した場に緊張感が漂う中、
ミーアが少し頬を朱らめながらクロニクに微笑む。
「行ってくるね。皇子!」
その言葉と表情に動揺しつつ、クロニクが応える。
「無理はするんじゃないぞ!」
コクリと頷くミーアが闘技場の中心に歩み寄る。
ミーアとメルルがお互いに軽く礼を取ったーーその瞬間。
「始め!」
エリナの掛け声と同時に、メルルが杖を握りしめて唱え始める。
すると闘技場の風がピタリと止まった。
「深淵に眠りし古の契約よ、
我が血の誓いを糧とし、闇の帳を裂き現世へと顕現せよ。
黄昏の鐘の代わりに杖が響くこの刻、命亡き者よ、我が名の下に従え!
黒炎を纏いし叡智の君、無限の虚無より来たれ!
ーー出でよ、深淵の魔導士!
【ハップル・ポルタ・ダークマジシャン】!」
杖で闘技場の地面をトントンと高い音を奏で叩くと、
黒紫の輝きを放つ【魔法陣】が、彼女の足元に広がり、
空気が一瞬で張り詰めた。
その光景を見つめる仲間たちも息を呑む。
やがて魔法陣の中心から、
黒いローブに黒炎を纏ったーー
『骸骨の魔導士』がゆっくりと浮かび上がった。
「お呼びですか、我が主人よ」
骸骨の魔導士の低い声が響く。
その不気味な登場に「ぅわわぁーーー!」と、
ノビが目を丸くしながら尻もちをつく一方で。
「闇属性の召喚……
まさか、メルルがそんなギフトを持っていたとは……」
審判のエリナも唇をそう動かし、
現れた骸骨魔導士に驚嘆を禁じ得ないようだ。
一方で周囲の騒ぎを他所にイブがポツリ。
「ふふ……ミーア姫も驚いた顔をしておるのぅ」
小さく漏らし薄く笑みを浮かべていた。
俺はミリネアに念話で問いかける。
《「ミリネア、あれは?」》
《「ご主様、メルル殿のギフトは『召喚魔導士』かと、思われます」》
《「やはりそうか…… これが本物の『召喚魔導士』か……」》
握る手に汗を掻きながら眉を絞り、戦況を見つめる。
そんな中、メルルが骸骨魔導士に命を下す。
「殺してはダメよ!補助だけして!」
「御意」
骸骨の魔導士が恭しく一礼し、指示に従い構えを取る。
その一瞬を見逃さず、ミーアが弓に四本の矢をかけて引き絞った。
「姉様が教えてくれたーーこの技!
【ニグスヨ:°テレオタ°:タナァ】!」
詠唱とともに紫炎を纏った四本の矢が放たれた。
骸骨魔導士とメルル双方二手に別かれ、二本ずつの矢が飛んでいく。
その軌道は正確で、誰の目にも命中は確実に思えた。
だがーー。
「【Cold・Stop】!!」
骸骨魔導士が冷静に低い声で詠唱すると、紫炎を纏う矢が弾かれ、
ピキッとした僅かな音を残し、空中で凍りついて停止。
そのまま落下してガシャンと粉砕。
ーー青白い氷の粒子が闘技場に霧散した。
「そんな……!」
番える矢まで凍りつくその魔法に、
焦りの色を隠せないミーアが、すぐに次の矢を番える。
「【イサナ:°ニシ】!」
【ロカベル】の固有魔法を唱え、二本の矢が弾丸のように射出された。
しかし、それに対する骸骨魔導士の対応は一瞬。
「【Wall・Flame】!」
ボォォォッ༄༅༄༅༄!
炎の壁が骸骨魔導士とメルルを包むように現れ、
矢はその中で燃え尽きて消えた。
一方、メルルの唇が艶やな動きを見せる。
「ふふ……でも時間は限られてる。魔力を使い切る前に決着をーー
このまま、押し切ってみせる!」
ミーアの攻撃がことごとく防がれる様子を見て、
メルルが口元に笑みを含ませる。
勢いに乗るかの如くーーメルルが杖を振り、
「【ポルダゥン・パープル・レイン】!」と詠唱。
するとメルルの魔法の矢、七本が紫炎を纏って空中に現れた。
その矢が全てミーアに向かって降り注がれる。
「二対一…… このままだとーーうちが負ける……!」
ミーアの表情には焦りが滲む。
だが彼女が覚悟を決めたように叫ぶ。
「これでうちの姿は、読まれない!【ンラシカイ:°キオオ:ノチウ】!」
彼女の指先から淡い青白い光の粒が閃き、周囲の光が歪む。
次の瞬間、ミーアの姿が掻き消えた。
彼女がロカベルの魔法による【結界】で姿を隠す。
しかし次の瞬間ーー。
「【An・Wrap】!!」
骸骨魔導士が即座に吐くように唱える。
パリンッ!
【結界】が音を立てて砕け散り、
「ここまで、圧倒的だなんて……」
顔面蒼白のミーアの姿が顕になったーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )
ロカベルの魔法の秘密に気づいた方は凄い! ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




